国際化取り組みのきっかけ
信州まつもと空港の国際化は、ジェット化開港以来、多くの皆さんが、心の中でずっと思ってきたことであります。しかしながら、具現化するためには公式アプローチが必要であり、その最初のスタートが阿部知事2期目の最初の議会となった、平成26年9月定例会本会議での質問で、私が「ジェット化開港20周年を迎えた空港は次のステージを目指す時期だ」と国際化の必要性を知事に申し上げました。
この私の質問に、知事は「国内の国際空港、東アジアまでを視野に就航路線の拡充を考えねばならない」と応じ、それがきっかけとなり、県庁内で国際化の検討が開始され、昨年の6月に「信州まつもと空港の発展・国際化に向けた取組方針」が策定されるまでに至った所であります。
さらに私は、「この取組方針を実現するためには、県庁に専門組織が必要である」と再び各会派代表者会議において知事に進言し、これを受けて、県では昨年11月に「松本空港利活用・国際化推進室」を設置したところであります。
取組方針の進捗スピード
この取組方針の策定、専門組織の設置により、信州まつもと空港の国際化に向けた取組が本格的に始動しました。取組方針が策定されたときに私は、国際化の最終目標である国際定期便の就航に向けて、スピード感を持って取り組み、数年以内には目途を立てるよう、県に強く要望したところであり、県当局も、できる限り早期に就航させるべく取り組むと応じています。
国際観光戦略的要素について
昨年3月に国が策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」では、訪日外国人旅行者数について、平成32年(2020年)には4000万人、平成42年(2030年)には6000万人を目標として掲げており、これを受けて長野県でも「信州創生戦略」のなかで、平成31年の外国人延宿泊者数を200万人とする目標を掲げました。
松本空港は、外国人も多く訪れる国内有数の観光地へのアクセスに優れた、地理的に高いポテンシャルを有した空港であります。この空港の活用を進めることは本県を訪れる外国人観光客のさらなる増加につながると思われます。
訪日誘客支援空港について
先ごろ、信州まつもと空港は、国の「訪日誘客支援空港」に認定され、この認定に当たって、井上会頭さんには、国の選定委員に対するヒアリングに太田副知事とともにご出席いただくなど、ご尽力をいただき感謝申し上げます。
松本空港は、これまでの国際線の実績は乏しいものの、周辺に豊かな自然環境を有するなど空港の持つポテンシャルの高さに、国も訪日誘客の進展を期待していることの表れと、大変うれしく思っているところであります。
国際化に向けては、国際線ターミナル建設やエプロン(駐機場)の拡張、また、駐車場の増設といった重要かつ早急に取り組むべき課題があります。
そのほか、CIQ(関税・出入国管理・検疫)への対応、GPSを利用した着陸進入システムである「RNP―AR」方式の導入などの課題が山積しております。
これらの多くは、国土交通省から支援または認可をいただく必要があり、また今回の認定は、国は伴走支援を行うとのことで、これらの課題についても、大きな進展が望めるところであります。
次期総合5か年計画について
また、現在、県では平成30年度を初年度とする新たな総合5か年計画の策定が進められております。この計画においても信州まつもと空港を、信州唯一の空の玄関口としてしっかり位置づけ、交通ネットワークにおける要衝として、さまざまな取組を進めていかなければならないと考えております。
松本市の観光の拠点としての存在
信州まつもと空港は、平成31年4月から開催される全国都市緑化フェア「信州花フェスタ2019」の主会場である松本平広域公園「信州スカイパーク」との一体的な活用により、観光拠点としての機能を有しております。
松本市には、中心市街地に松本城という国際的な観光拠点があり、空港と松本城は2眼レフの松本の拠点といえます。
これからアジア・太平洋の時代を迎えるなかで、中心市街地と空港を結ぶアクセスを整備し、空港の周囲には諸外国を交えた国際会議等の開催ができるような会議場やホテルといったコンベンションの拠点を整備するなど、松本市も国際水準並みの観光都市を目指していく必要があると考えております。
空港の国際化の効果
県が策定した国際化への取組方針の最終目標は、東アジアの都市間を結ぶ国際定期便を2路線週4便と国際チャーター便の年100便の運航としております。
平成27年度に県が実施した松本空港の需要予測調査では、中国、台湾、韓国からのインバウンド利用として、年間約10万人の潜在需要があり、アウトバウンド利用として、年間約3万人の潜在需要があります。
(1)インバウンド効果
将来「中国・上海」と「台湾・台北」へ週2便の定期便が就航した場合、1便当りおおよそ100人の乗客が搭乗するとして、このうちインバウンド客は約70人を占めると考えられ、この場合の年間のインバウンド客数は、15120人となります。
観光庁が調査した平成28年度の外国人観光客の一人当たりの消費額を引用して算出すると、インバウンド客の長野県内における旅行支出額の総額は、単純計算で、8億3000万円と推計できます。
また、延宿泊者数は、45360人(7560人×3泊×2[中国・台湾])となります。国が調査した平成28年の本県の中国と台湾からの外国人延宿泊数は約42万人(従業員数10人以上の施設)であり、この約1割に相当します。
これはわずか2便が就航した場合の試算結果であり、便数が増ええれば、さらに外国人数やその消費額は増えていくと期待されます。
【 参考 】 旅行支出額算定根拠
(1)1人1泊当たり旅行支出(訪日外国人消費動向調査(平成28年観光庁から))
1.中国 19,619円/人・泊、2.台湾 17,008円/人・泊
(2)県内宿泊数想定 3泊
(3)インバウンド者数
定期便:週2便(往復)× 54週 × 1便当り70人利用(想定) = 7,560人
(4)年間旅行支出額
算出方法1人1泊当り旅行支出 × 県内宿泊数 × インバウンド者数
1.中国 4億4,496万円(19,619円 × 3泊 × 7,560人)
2.台湾 3億8,575万円(17,008円 × 3泊 × 7,560人)
合計 8億3,071万円
(2)アウトバウンドの効果
上海や台北から定期便が就航したとき、日本人の利用者は全体の約3割と見込まれ、1便あたり30人程度であります。国の調査等において、長野県から海外へ渡航した者の渡航理由別の人数という調査はないが、観光かビジネスがほとんどを占めるのは明らかであります。
信州まつもと空港は、離着陸できる機種が限定される上、搭乗制限等を行う必要があることから、いわゆるLCCのビジネススタイルは受入できない空港であります。
このため、料金的な比較では、成田や羽田、中部といった大空港を利用する場合と比較したときに、国内の交通費を含めても、なお割高な料金となる可能性があります。
しかしながら、時間的な効果は、単純に空港までの時間、空港における手続きの時間を考えると、松本空港の優位性は高いものがあるといえます。
松本周辺はもちろんのこと、長野県内全域、さらには山梨県なども、松本空港の利用の優位性が高いと考えられ、旅行日数が短い旅行者や、特に忙しいビジネスユーザーにとって、移動時間の短縮は大きなアドバンテージとなると思われます。
国際化への課題
先ほども申し上げたが、国際化に向けては、国際線ターミナル建設やエプロン(駐機場)の拡張、また、駐車場の増設といった重要かつ早急に取り組むべき課題があります。そのほか、CIQ(関税・出入国管理・検疫)への対応、GPSを利用した着陸進入システムである「RNP―AR」方式の導入などの課題が山積しております。
長野県における唯一の「空の玄関口」である信州まつもと空港の国際化は、松本市のみならず長野県全域の発展に欠かせないものであることは衆目の一致しているところであり、現在は、課題の解決の途中ではあるが、これから県を中心に地域が一体となってスピード感を持って確実に実施していかなければなりません。そのためには、県や松本市などの行政だけでは対応に限度があります。商工会議所との協働が欠かせないことは言うまでもないことであり、今後もともにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。