「Go To トラベル事業」の動向と今後の見通しについて
【本郷委員】
中村部長をはじめ課長、室長から、大変丁寧な、今後のアフターコロナも見据えた戦略をしっかり説明いただき敬意を表する。また、最も苦労の多いセクターである。100年ぶりの事態であるので、リスクマネジメントという観点で、今回の事態を大局的な観点から見ていくことが大事で、大体全治3年と言われている。2020年、特に今年の2021年は大事で、2022年くらいまで、いろいろな意味で影響が出てくる。1都3県の緊急事態宣言の解除もじき終わると、その後、リバウンドがないことを祈っているわけで、先ほどあったそれぞれの施策が実行できるように、心から祈念している。
OECDから本年度の世界の主要国の経済成長率が発表になった。2021年は、世界は5.6%である。その中で日本が一番低くて2.7%、中国が7.8%、アメリカが6.5%、ユーロが3.9%である。来年は、その影響が出て、世界が4.0%、日本は1.8%、中国が約半分で4.9%、それでアメリカが4.0%、ユーロが3.8%と数字が出ているが、これも観光という非常に裾野の広い産業が、いろいろな意味で陰に陽に影響を与えている感じで、一層、議会も、全力で、観光部とよく密接不可分な関係になりながら、議員の立場で最大限の努力をしなければいけないと再認識をしている。イギリスはロックダウンもしているし、ヨーロッパのどこかの国は、ベンチに座ったり立ち止まることも禁止されて、罰金が4500円取られるようである。そういう状況であるので、大変苦境に立たされている観光産業の、行政としての下支えのために、感染状況が落ち着いたタイミングを捉えながら、今後とも、先ほどの説明の施策を一個一個詰めてもらいたいと思っている。
先月の19日から県民限定で家族割、家族の宿泊割とスキーリフト券の半額割引を開始した。これは、松本市であるが、大きいホテルは、かなり影響が出ているようで、大体、稼働率が、4割くらいのが1割とか2割上がってくると、そういう傾向がある。あるホテルは休業にしてしまうと。松本で一番大きなホテルであるが、そういう状況で、行ったり来たりしているのが状況ではないかと思っている。27日からは、宿泊割の対象を県民全体へ拡大するとともに、冬のアクティビティ商品にも対象を広げるなど、段階的に誘客事業を展開している。
今後、「Go To トラベルキャンペーン」の再開も視野に入れながら、引き続きこうした県独自の施策を実施していく必要があると考えるが、現時点で、「Go To トラベル」の再開に関する国の動向、今後の見通しをどのように考えているか伺う。
【大槻観光誘客課長】
「Go To トラベル」の状況であるが、観光庁の発表によると、事業開始からこれまで、全国で少なくとも8781人万泊の利用で、約4100億円の割引支援額となっていて、また、地域共通クーポンも約1400億円の付与額となっている。各県の状況が未公表ということであるが、本県も、昨年の11月には、県の宿泊割引の上乗せ事業もあって、対前年比9割程度まで延べ宿泊者数が回復するということで、県内経済の再生に「Go To トラベル事業」は、一定の効果があったものと考えている。
事業の今後の見通しであるが、先週、3月5日に観光庁からは、3月8日以降も一時停止は継続すると正式に発表があったし、また、首相や関係大臣の発言では、3月中の再開は現時点では難しいのではないかという状況になっている。また、併せて、報道等によると、再開する場合は、感染が落ち着いている都道府県や地域ブロック単位から先行実施をして、段階的に全国に広げていくという情報がある。我々、いつも情報収集をしているが、県としては、引き続き国の動向を注視しながら、「Go To トラベル」の運用にすぐに対応できるように、様々なケースを想定して、県施策をそれぞれの状況に合わせて機動的に展開できるように準備をしている。
「Go To トラベル」の再開までと再開後の観光誘客の進め方について
【本郷委員】
「Go To トラベル」の再開までと再開後、その動きに応じて、県としてどのように切れ目なく観光誘客を進めていくのか伺う。
【大槻観光誘客課長】
「Go To」再開までは、観光事業者とも連携する中で、宿泊割、リフト券の半額キャンペーンをしっかりやるとともに、また、バス・タクシーの交通機関も支援をすることで、県単独施策を引き続きしっかり実施していきたい。また、感染状況が落ち着いている近隣県にスキーリフト券は広げたが、誘客の範囲を拡大していきたい。
「Go To」再開後であるが、「Go To 事業」を最大限に活用するため、「Go To」と連動した形での連泊割引事業を実施して、長期滞在のニーズを取り込むほか、本県の強みである癒し・自然・アウトドアなど、コロナ禍に即した旅行スタイルを、県外、全国にしっかりPR、情報発信することで、他県との差別化を図って、「Go To」需要をしっかり長野県に取り込んでいきたい。また、一方で、「Go To」に参加していない小規模宿泊施設があるので、引き続き小さなお宿応援事業をやって、小規模宿泊施設をきめ細かく支援するとともに、宿泊客の分散を誘導することで、密にならない誘客を進めていきたい。
感染の拡大と収束が繰り返されるコロナ禍において、臨機応変に感染拡大の防止と社会経済活動の両立を図ることは重要であるので、今後も、「Go To トラベル事業」の運用に対応しながら、県施策をうまく組み合わせて、観光県としてしっかり観光産業を支えていきたい。
【本郷委員】
正確な状況認識と積極的な姿勢を高く評価する。いずれにしても100年ぶりの異常事態で、パンデミックであるので、何としても財政と金融によって、この観光産業を守らなければならないので、中村部長においては、これからも予算の獲得に向けてご努力願いたいし、また、議会も、よく連絡を取って、議決機関としての責務を果たしていきたい。
水際対策の状況及びインバウンドの再開に向けた取組について
【本郷委員】
今後の大きなトレンドとしては、一般論であるが、東京オリンピック・パラリンピック、また来年冬には北京の冬季五輪が開催され、中国のウインタースポーツ人口の増加も見込まれて、長野県にとって巨大なマーケットになるという予測もできる。また、時間はかかると思うが、ワクチン効果が現れてくることで、インバウンドが徐々に回復してくることも、期待の中の一つとしてある。コロナ終局後には、こうしたインバウンド需要を確実に取り込めるような準備も、今から徐々にしていくことが非常に重要である。そこで、インバウンドを取り巻く国内外の状況、水際対策など、出入国の規制など、現在の状況はどんな状況になっているか、メディアで知る範囲のアバウトな状況しか分からないので、その辺の状況を説明願いたい。また、インバウンドの再開に向けて、どのような取組を今から準備しているのか所見を伺う。
【小林国際観光推進室長】
委員指摘のように、今後、Afterコロナ時代を見据えた場合には、この観光機構の役割はますます重要になってくると、県としても認識をしている。先週の一般質問での知事答弁ともやや重なる部分もあるが、観光機構の機能を高めていくには、大きく3つのポイントがあろうかと思っている。一つがこの役割分担、県と観光機構の役割分担であるが、実は平成29年の11月に開催された県の観光戦略推進本部会議、観光戦略2018の骨子案が示されたときであるが、このときに県観光部の役割と観光機構の役割が示されている。県観光部の役割としては、簡単に言うと観光政策の企画立案、観光機構の役割としては、観光振興施策の実行組織と大きな役割が示されて、以後、取組を進めている。
この役割分担として、県が企画したものを、観光機構が、場合によってはそのまま実施するという実行部隊として位置づけたようなイメージが先行していて、実態としても、やや、観光機構で受け身になりがちな面も見受けられるかなという形で、機構としての自主性が十分にまだ発揮できてない面もあろうかと思っている。このため、今後は、もう少し役割分担というものを具体化していく必要があると思っていて、例えば県観光部は、県全体の大きなその観光政策の方向性をまずは担う、決定する。観光機構は、その観光の方針を一緒に共有した上で、しっかり自らも企画立案し実施する。こういった役割分担というものを明記して、お互いが対等で、しかもコミュニケーションを図りながら、一緒になって、十分、その観光機構の機能が発揮できるように、役割分担を再整理していく必要もあろうかと思っている。
さらに、予算についても、今は全て、実は県から観光機構に対して負担金という形で支払っているが、例えば、役割分担を整理した上で、機構が担うべきものというものは、これまでどおり負担金であるが、そうでなくて、外部に委託できるものについては、委託料として整理をする。こういった予算の整理も必要かと思っている。
最後に組織面というのがある。やはり民間の発想で活動できるような体制が大事だと思っていて、例えば、外部の民間からもっと積極的な提言を受け入れられるような仕組みを構築する、こういったアイデアも、今、あろうかと思っていて、こういった改革をこれからも進めながら、この観光機構の機能を十分に発揮できるように、より一層、最後は観光地から頼られる存在になるように、県も一緒になって取り組んでいきたいと思っている。
Afterコロナを見据えた観光地域づくりについて
【本郷委員】
コロナによって、旅行に対する意識や旅行のスタイルも大きく変化している。こうした変化は、コロナ後も完全に元に戻るわけではなく、ある程度定着していくものと認識しなければならない。個々の事業者による対応だけではなく、県や市町村など行政、地元観光協会、関連事業団体など、それぞれの役割を発揮して、観光ニーズの変化や課題の解決に連携して対応していくことが不可欠である。したがって、コロナ終局後を見据え、昨年、策定した「Afterコロナ時代を見据えた観光振興方針」に基づき、魅力ある観光づくり、観光地間の広域的な連携など、どのように進めていくのか伺う。
【田中山岳高原観光課長】
コロナ禍の影響によって、3密の回避とか、テレワークの普及といった社会変革は、コロナ収束後も続くものと考えている。長野県が持つ広々とした大自然とか、あるいは都会から近い、こういった有利な条件は、今後の長野県にとっては、大きなチャンスになるものと考えている。ただ、一方で、アドバンテージだけに頼り過ぎてしまうと、その恩恵というのは一過性に終わってしまうものと考えて、危惧している。
そこで、まず地域にある豊かな自然環境に加えて、その土地ならではの歴史とか文化をうまく組み合わせることで、さらにその地域の魅力をブラッシュアップする工夫は必要かと思っている。例えば、南信州であれば、清内路地区の手作り花火が非常に有名であるが、これをただこう見て終わる、こういった観光とはせずに、その地元の指導者の方と一緒に、そのお祭りの一環に参加する、あるいはその手作り花火にも一緒に参加してもらう。地域の人と触れ合えるようなコンテンツをつくっていくことで、再び信州に遊びに来たくなる、戻って来たくなる、信州リピーターの獲得につなげていく、こういったことをつくり出していくことを、県としてもしっかり支援していきたい。
さらに大事なことは、それぞれの観光地が魅力を深めることによって、それを広域的な連携によって、次の観光地へつなげていくことが大事である。例えば清内路であると、天龍村の舟下り、あるいは喬木村の果樹農園など、別の魅力へつなげていくことが大事だと思っている。それによって、結果的にこのエリア全体で、観光消費額の増加につなげていくことが大事だと思っているので、県としても、引き続きであるが、観光機構の担当と一緒に地域間のつなぎ役となって、広域連携がしっかり進むように、コロナ禍の今だからこそ、この地域の魅力づくり、広域連携をしっかり進めていきたい。
【本郷委員】
そのような認識で、これから戦略的に進めていただきたい。
長野県観光のあるべき姿について
【本郷委員】
長野から松本に戻るときに、最後のトンネルを抜けると有名な安曇野が見えて、その正面に常念岳をはじめ北アルプスが連なっているわけで、僕らは小さいときから見ているから普通であるが、一般の方から見たときに、北アルプスの晴れたときの、特に冬の晴れた日の景観というのは圧倒的であって、私もスイスには2度ほど行っているが、スイスは登山列車で、ユングフラウヨッホやアイガーのところまで中へ入っていって、そこから降りて氷河を見せる。信州としてのほかの他県にないものすごい価値観を持っていて、この認識を私どもは再認識をしなければいけないわけで、このような観点から、国際水準並みの観光戦略ということを知事はよく本会議でも述べていて、ぜひそういう高い志を持って、観光部としては一層ご精励をいただきたい。
最後に、県の宿泊割、「Go To トラベルキャンペーン」などの支えがなくとも、足腰の強い観光地づくり、全国のお客様から選ばれる観光づくりを着実に進めることが重要であり、今、私が余分な話をしたが、そういうものを、もう一回、再発見して、各課・室長からの答弁を総括して、中長期的な視点から長野県の将来を展望し、長野県観光のあるべき姿について、中村観光部長に俯瞰的な視点から将来ビジョンを伺う。
【中村観光部長】
現在、需要喚起という局面であるが、感染の波に応じて適切な手を打つということもあって、より細かく区切らざるを得ない。今回、大分厳しい状況であるが、事業者さんと、こういうことをやるに当たっては、非常に細かい意思疎通が重要で、この意見交換を頻繁にやっていて、今回、非常に財産になっている。これをステップに、次の段階に行かなければならない。委員からも、こういったものがなくてもやらなければいけないのではないかという発言もあって、まさにそのとおりである。今は、需要喚起ということで必要であるが、これがない状態、公的なこういうものがなくても、やっていかなければいけない。これをいかに事業者さんとつくっていくかが大事であって、今年度、ずっとやってきたもので、財産に発展させるということと思っている。
実は、長野県の観光もいろいろな課題がコロナ以前からあって、国内のお客様がだんだん減ってきている。それから日帰りのお客様が逆に多くなって、宿泊の方が少なくなってきている。こういうことがもう数年くらい前から起きていて、だんだんこういう状態になっている。これは大問題であったが、これが一気に、今回の新型コロナウイルスの影響で噴き出し、改めて加速された状況になっている。これが突きつけられて、いち早く立ち直らなければいけないところを、前は何となくこう行くのではないかと思っていたが、そうはならないとよく分かることで、ここの対策をどうやってつくっていくか、逆に、そういう意味でのチャンスだと捉えたほうがいいのではないかと思っている。
そういう中で、一番は国内のお客様だと思っている。インバウンドのお客様も多いが、大体1割くらいであるから、長野県のお客様はやはり県外のお客様に支えられているというのが7割近くであるので、それが前から減ってきていることは大問題なので、いかにてこ入れしていくかであるが、本当に20年、30年くらい前の頃は「さわやか信州」と言っていればお客様が来ていた時代であるので、国内のお客様が何もしなくてもお越しになっていた。そういうところを夢見てずっと来ていたが、それはもうあり得ず、お客様をいかに取り返していくか、また振り向いてもらえるかが勝負で、ここをいち早く立て直すところが今回と思っている。
数年前から少し動きがあって、二地域居住とか、関係人口とか言われたりしていたし、テレワークとか、数年前から少しずつ出てきていた。これが、働き方とかいろいろな状況の中で、観光と境目がもうなくなってきている。そういう地域をつくっていくことが、これからなのだろうと思っている。
それをやるには、自分たちで稼ぐというか、そういうエリアはどこなのかを見極めて考える。それは別に一つの行政区ではないので、どこの範囲までが、自分たちが稼ごうとしている地域なのかを、その人たちで考える。それが県内に複数あることが大事で、そこのエリアだけで完結するのではなくて、いろいろな複数のところとエリア同士で稼ごうという感覚でいかないと、これからはいけない。そういう状況の境目のない観光地づくり、観光地をつくるにもそういうエリア間同士の連携をやっていく、それがあるべき姿かなと。そこに、しっかり顧客データを取るという、これが加わった上で考えていく。こういうことを将来に向けてやっていかざるを得ない状況の中で、県はしっかり支援していきたい。
【本郷委員】
今、大変複合的な観点から、中村部長の見解を聞いて安心した。3年くらい前になると思うが、委員会視察で夏目漱石の小説に出てくる道後温泉に行って、大変びっくりした。歩いて、一回りすると大体40~50分である。例の有名な旅館はきちんと残っていて、それもメンテナンスしているが、その一帯全体が、新しいコンセプトで非常にすばらしいものができている。そういう多面的で立体的な拠点主義的なものをやっていかないと、今、長野県全体の温泉街がやや元気がないということで、大変心配をしている。そういう意味においても、行政論や財政論からいっても、今回のコロナ禍によって、都道府県の位置づけがものすごく高くなった。だから衆議院・参議院予算委員会の答弁も、各知事からのデータによっての答えが非常に多い。そういう意味で、基礎的自治体はもちろんコミュニティの関係から非常に重要であるが、財政論から言うと、長野県は、今度、1兆2000億円を超えているわけで、これから観光戦略も、都道府県の役割が非常に重要になってくる。そういうものもデータを集約して霞が関に行くわけであるから、中村観光部長に、プライドを持って、長野県全体の観光振興の指導的役割を強く果たすことを期待する。