長野県経済に貢献する観光のあり方について
【本郷委員】
観光は宿泊業、運輸、小売りなど幅広い分野を包括している裾野の広い総合産業である。観光庁の調査によると、全国の観光消費額の波及効果はおよそ2倍という大変な倍率である。
長野県の主要産業であるとともに、長野県地域活性化のフロントランナー、大きな大黒柱になると予想される。
したがって、新たな観光需要の創出は、地域経済の具体的な貢献の一つの方法として、観光と他産業との連携があるのではないか。農業の6次産業化の問題も同様である。例えば、農林業と観光、環境と観光、スポーツと観光、いろいろ複合的な組み合わせができるわけで、県では、地域経済への貢献を、戦略、戦術含めて具体的にどのように進めていくのか。これが長野県の観光の再興につながると思うので、方法論について御所見をいただきたい。
【浅井参事】
国内外からの観光客に、地域で消費していただく仕組みを作っていかなければいけないと思っている。
委員から観光×他産業というご提案があったが、こういった取組は、新たな魅力づくりとして、私どももしっかりやっていかなければと思っているところ。
6次産業化により土産品を作っていく、旅館・ホテルで地場産品を使う地産地消の推進、NAGANOワインやジビエなど、従来からの観光だけの取組ではなく、他産業との連携をしていかなければいけない。
今は健康ブームなので、森林セラピーの取組や、長野県は食も魅力なのでそういうものを活かした旅行商品も造成しながら振興していかなければいけない。
そうした取り組みによって、地域の滞在時間を長くしていかなければいけない。
【本郷委員】
ち密な青写真を描いて、それを実行に移すようにお願いしたい。
湯布院にしても、お隣の高山にしてもああいったものは多少ニュアンスが違っても、長野県内にはあるわけで、長野県の持つポテンシャルは、無限の可能性を秘めている。しかし、時代の推移の中で、とんがった個性的なものが足りない。これは他の経済政策全般についても言える。21世紀の新しい成熟社会の日本観光のあり方について、複合的に組み立てて、日本一の長野県観光になるように積極的な観光施策をやってもらいたい。議会としても精一杯お手伝いをしていきたい。
地方創生と観光戦略について
【本郷委員】
今年は地方創成元年、地方が主役の時代になるスタートラインに、経済全般にとっても大事な時代。とりわけ、経済活性化が最大の眼目である。特に産業構造の変化で、ものづくりがGDPの20数パーセントの状況の中で、第3次産業が6割近い。果たすべき役割は非常に大きい。今後、 野池部長の下で一層プライドを持って進めてもらいたい。
地方減少は一番問題で、地方活性化と連動しているわけですが、地方再生政策は2020年までに地方で計30万人分の雇用を生み出す数値目標を掲げている。
昨年成立した地方創生法では、県や市町村に地方版戦略の策定を努力義務として課した。これが一番の問題だと思う。本県における観光産業のウェートは非常に高いわけで、地方版戦略の位置付けが大事。今年度中に、地方創生の地方版戦略を作成することになっているが、現時点での観光の位置付けはどのように考えているのか。
【野池部長】
観光産業は非常にすそ野が広く、この成否が長野県経済の活性化の大きな鍵を握ると思っている。長野県の観光資源を見渡すと、国内、インバウンドに通用する素材がどの地域にもある。工場誘致、企業誘致などは長い時間がかかるが、チャンスという意味では、観光はどこにでもそれを活かす機会がある。そういう意味で、長野県にとっては非常に重要な分野を担っており、観光の責任は重いと思っている。
来年度中に地方創生の戦略を作るということで、現在は、中間とりまとめを出したところだが、その中でも観光に深く関わる柱が掲げられている。
私どもも長野県らしさに光を当て、一過性ではない、地方創生を契機に長野県観光の財産として残るものを戦略の中で推進していきたいと考えている。
【本郷委員】
海外から来るインバウンドは東京と京都を軸にして、地方に次の段階、フェイズが来ていると私たちの皮膚感覚でも感じている。外国人はリッツカールトンとか、ああいったホテルに泊まることには何の興味も示さない。地方が文化性、ストーリー性を、知恵を使って作らなければいけない。ハンチントンやトインビーも言っているが、世界6大文明または7大文明の中で中国と日本は別と明確に言っている。ある意味自信を持たなければいけない。日本が持っている文化性は非常に吸引力がある。
大きな地方版戦略の中で、長野県は全国トップクラスの観光立県であるので、地方版戦略の中で平地観光も含めて、新しい発想力をもって、インバウンドにも対応できる独自性を担保してもらいたいと希望する。
ものづくり産業振興戦略プランについて
【本郷委員】
地方創生元年の今年は、地方創生関連が1兆円、地方財政計画が1兆円ということで、本格的な地方創生元年であることは間違いない。
長野県は非正規の問題など、色々内在しているが、何事も100点満点というわけにはいかない。企業のオーナーも必ず正社員にしたいわけで、プロセスの中で企業の体力をつけないといけないが、その辺で時差があり、直感力で5年はかかると思っている。そうしないと15年のデフレを脱却できるわけがないが、ただあまり焦ってはいけない。
そういった視点から長野県の企業は、下請け型、受注加工型が大多数を占めているのが現状である。従って、提案型、研究型の底上げを図ることが一番重要で、中核的な企業をいかに産業労働部としてもインセンティブを働かせるか、議会にも共通の責任がある。
熊本県の西原村が内閣府の市町村別経済指標で高い競争力で全国第1位と出ており、非常に印象的であった。これは分析・計数機械の大手で京都に本社がある堀場製作所の子会社であるが、世界の半分のシェアを占めている。従って、生産技術、ハイテクノロジーを軸にして、全世界工場のマザー工場的な役割を担っている。
こういったものを長野県の中で、どのような形で戦略的な計画を立てて持ってくるかが、産業労働部の非常に重要な役割だと思っている。
本社機能を東京23区から地方に移転した場合の税制上の優遇策等、メディアにも色々出てはいるが、ものづくり産業振興戦略プランが策定されてから3年が経過している中で、今後強化すべき取組とプランニングがあればお聞きしたい。
【吉澤産業労働参事兼産業政策課長】
長野県の産業において、ものづくり産業が県内総生産に占める割合は2割を超えている。
長野県では、ものづくり産業振興戦略プランを、平成24年から28年度を対象に進めてきている。
現状について、製造業の付加価値額は目標を2.5兆円に設定しているが、県内の一部企業の海外展開に影響を受け、現状は1.8兆円になっている。
有効求人倍率については、1.0倍以上を目標にしているが、昨年の平均は1.09で、着実に良い状況に進んでいる。
また、工場立地件数を5年間で200件を目標にしているが、26年の上期まで入れると115件。26年上期の2年半経過した時点で、57%ということで、順調に進んではいる。
付加価値額については、乖離があり、まだ2年あるが、あらゆる施策を動員して目標達成したいと考えている。
現在のプランについては、28年に終わりになるが、同じ様な形で、ものづくりを真ん中に据える形で考えていく場合には、大都市圏から地方への誘致という策も出ている。北陸新幹線の金沢開業ということで、石川県や富山県については、大手の立地が進んでいるという話もある。地域間競争が激しくなってきている中で、県としてもどのようにして企業集積を図るかを考えていかなければならない。
また、世界の競争の少ないところ、ニッチなところでグローバル展開する企業が出てくることで、県としても中核企業に育成していく。それを中心として、裾野の広い産業を創るのが良いと考えている。
そして、IOT(Internet of Things)ということで、第4の産業革命がドイツやインドで始まっているが、インターネットを通じて工場同士の連携や、工場と消費者を結びつけることで新しい革命を興すことを踏まえて、これから長野県としては、ものづくり産業振興戦略プランを更にいいものにしていきたいと考えている。
【本郷委員】
振り返ってみれば、長野県も農業県ではあるが、工業面から見れば、養蚕業、精密機械、電子と続き、第4世代をどうするかということで、産業構造がものすごい勢いで変化している。
政治の立場から言えば、未来の世代に対する責任が大変強いものがあり、次世代産業については、私たちの子供や孫たちのために、今からシーズ、種をまいておかなければならない。
そのための戦略性が問われる中で、中長期的な視点を常にもって、20年、30年、50年先を見据えた産業施策をどうしていくかを今から考えていく責任がある。
今、新しいエコノミストの概念でグローバル圏とローカル圏というものがベストセラーになっている。現実にはGDPの7割、雇用の8割がローカル経済圏で担保している。つまり地方創生の一番の基軸は、そこにあるわけで、地方再生なくして日本の再生はない。そういった意味でローカル経済圏の認識を深くしなければならない。
予算編成の考え方について
【本郷委員】
全体の経済は回復基調にあることは間違いない。エコノミストの言葉を借りれば、好循環のメカニズムの段階に入ってきたと思っている。
プライマリーバランスの問題をよく論じるが、戦後それに成功したのはクリントン大統領だけ。ICTによってプライマリーバランスをクリアしたもの。
一に経済、二に経済、三に経済とまでは言わないが、経済成長がいかに重要であるかということ。115兆円の社会保障制度を担保するにも、経済成長がなければ、年金・医療・介護・福祉はとても動かない。また、消費税は1%で2.5兆円なので、仮に将来いろいろなことが起きたとしてもやはり2%程度の経済成長をしていかなければならない。
OECDはこの20年間、約2〜3%前後の成長だった。中国については言うまでもないが、その間、日本はずっとマイナス成長だったので、今、マクロ的に一番重要なこととしてはデフレからの脱却が全て。中国の現在のGDPはご存じのとおり1,200兆円。日本はかつて530兆円までいったが、現在は1割減って480兆円。いかにデフレが怖いかということだが、政府の異次元の金融政策は当たりである。諸々言う人がいるが、デフレスパイラルに陥ったら、日本はほぼ立ち行かなくなる状態が予想されるので、財政出動、経済成長ということになる。リーマン・ショックの際、米国は90兆円、中国は60兆円、日銀は10兆円だった。あれで更にデフレが加速した。
そういった意味で、健全な1〜2%の経済成長を堅持しなければならない中において、石原部長や吉澤参事や、仁科室長等から66%を占める第3次産業へシフトしていくという話が出たが、製造業が20数%なので、正しい視点だと思う。
政府がこの度、経済対策として出した総額3兆1,180億円の平成26年度補正予算が2月3日に成立した。この目玉は総額約4,200億円の「地域住民生活等緊急支援のための交付金」で、内訳は先ほど話が出たが「地域消費喚起・生活支援型」が2,500億円、「地方創生先行型」が1,700億円。本県に関しても32億7千万円で先般、早期議決をしたところ。
先ほどのデータの通りなので、その他の話はしないが、つまりは「よい形のメカニズム」に入ってきたということ。
そこで、石原部長に伺うが、俯瞰的な視点で、現状において政府もこれだけの手を打っている。国の補正予算も視野に入れて、どのような形で産業労働部として予算編成をしたのか、大局的な観点での見解を伺いたい。
【石原産業政策監兼産業労働部長】
来年度の予算編成に対する我々の基本的な考え方についてお話しする。我々の新年度予算編成については、まず、現状認識からスタートした。2つ目としては、これまでやってきた施策の継続の可否の検討。3つ目としては新しいニーズがあるかどうかの確認。そして最後は限られた財源、ヒト・カネ・時間をどのように配分して効果的なことをやっていくのかという4点に絞って予算を編成してきたところ。
本郷委員が仰るとおり、現在、アベノミクスの第1の矢、第2の矢によってかなりよい環境状態になってきたと考えている。従って、これから成長戦略という形で規制改革等も行っていくわけだが、時間がない中で、皆さんと一緒に、官民が一体となって、新しい施策を打っていく必要があると考えている。
まず、現状認識だが、国全体の経済状況は円安と株高によって輸出企業や大企業を中心によい方向に向かっているということは皆さん確認されているところだと思う。今後は、大企業については今春の賃上げが大きなポイントとなると考えている。しかし、県内の中小企業をみると、円安が少し行き過ぎているのではないかというところ。原材料費やエネルギー費用が経営を圧迫しているという現状がある。しかし、中小企業の方々も、将来に向かってよい人材を確保するためにはやはり賃上げをしなければならないという、極めて厳しい状況にあると考えている。その状況をみる限りにおいて、企業間にも多少なりとも格差の問題があると思うが、それをいかに詰めていくかということが我々の仕事だと考えてきた。
2つ目として、これまでの事業の継続の可否。先ほども申し上げたが、しあわせ信州創造プランやものづくり産業振興戦略プランが、現在の時代とミスマッチがあるならばそれを是正していかなければならないと、もう一度点検を行ったところ。方向性は間違っていなかったというのが結論。続けていくべき事業の継続はしっかりやっていこうと考えている。
次に新たなニーズの確認。この中においてはご指摘いただいたサービス産業の関係、ものづくりだけでなく、2つ目のいわゆる推進エンジンとして、サービス産業をいかに付加価値の高いものとしてつくっていくかということがある。また、2つ目としてはようやく動きつつある創業支援。創業をしっかりとやっていこうと我々は考えているところ。
次に、効率性について考えた。重点的に取り組むことは何かということ。新しいニーズに基づくサービス産業振興については、走りながらしっかりと考えていこうということで、様々な方からご意見をいただきながら、ここまでつくってきたところ。
また、産業イノベーション推進本部の議論の中において、健康・医療の分野についてもしっかりと対応していかなければならないと考えている。
また、雇用面においては、昨年までは若者を中心にやってきたが、「若者+女性」ということで、特に子育て期を終えた女性、又は子育て中の女性、この方々が県内に約2万人いる。仕事をしたくてもなかなか仕事に入れない方、この方々への支援をしっかりとやっていこうということで積み上げてきたところ。
その中においては、今回の国の交付金制度を有効活用して、県内経済の下支え、消費の拡大もしっかりとやっていこうと予算をつくりあげた。
長野県の海外誘客戦略について
【本郷議員】
国際経済は国際金融資本が大きな影響力を及ぼす極めて不健全な経済状況になっていて、フランスの経済学者の著書が大変話題になっている。
製造業が日本経済をけん引してきた時代から、1990年以降中国、台湾、韓国、シンガポールなどに優位性を取られている。また、先進国に例のない少子高齢化と人口減少は、我が国の経済にとって大きな課題である。アベノミクスによる円安の効果により、外国人観光客の誘致は成長戦略の中で評価されており、かつては700万人であった訪日外客者数が1300万人と、ほぼ倍になった。しかし、フランスの外客者数は8000万人であるが、日本は世界では座念ながら27位、アジアでも8位とこれから伸びる余地が残っている。マクロ的に見ると、世界観光機関によると全世界の旅行客数は増加の一途をたどっており、平成22年は9.4億人であるが、平成32年は13.6億人、平成42年は平成22年の倍の18.1億人と推計されている。
県内は20数パーセントを占める製造業は基軸であるが、ボリューム的には製造業から観光に大きくシフトしている1丁目1番地であり、長期的には両にらみをしながら施策を進めなければいけない。こういった流れを着実につかむことが重要であり、外国人旅行者10人の消費額は、定住人口1人分の消費効果があるとされている。
インバウンドに積極的に取り組むことは、内需や雇用の拡大にとって大きな貢献となる。観光資源を世界に発信し、外国人旅行者の誘致拡大を図ることは長野県の経済成長の最大の柱となることは言うまでもない。長野県の海外誘客戦略について、観光部長に伺う。
【野池部長】
海外からの誘客戦略について、ビザの緩和や和食の日本としての発信、国を挙げての海外プロモーションなどの効果を実感している。各県がこの恩恵を受けているが、そういう中で全国平均以上の誘客を長野県は実現しなければいけない。そのためには、こういった風は、全都道府県に満遍なく吹くわけであるので、長野県独自の努力をしていかなければならない。これまで長野県は海外の市場に一歩遅れて入っている状況もあるので、東南アジアなど新市場に積極的に参入していきたい。
情報発信も変わってきており、ホームページをご覧くださいではなく、県のレベルでも詳細な問い合わせがあるため、迅速にコミュニケーションをとる形でレスポンスをすると長野県ファンが増える。来年度予算をお願いしている情報発信員を含め、コミニュニケーション型の情報発信をしていきたい。
また、外国の方が来て移動にストレスがあると1回だけの来訪で終わってしまう。一番要望が多いのはインターネットに繋がる環境であるので、宿泊施設や駅などにおいて無料公衆無線LANには補助制度を設けるが、多言語案内板の整備などを含め、行政だけでなく、地域ごと水準をあわせる「つながるNAGANO協議会」を設けて、地域全体で足並みを揃えて受入環境を整えてまいりたい。
【本郷議員】
外国人旅行者は東京と京都を結ぶゴールデンルートから次の段階で地方に来ており、突出した長野県にならなければいけない。日本は時間に正確だから、外国の方はどこの路線もスマートフォンで調べ、バスや電車に乗って移動する。話に出たSNSを含めてきめ細かな情報を提供することは大事。先般、高山市に行った際に駅から10分程度の和風の旅館に泊まったら、宿泊客の3分の1程度は外国人だった。おかみさんに聞いたら英語で通常会話をしている。政策として高山市なり商工会議所なりがやっているという。そういった受入環境整備を行わないとリピーターにならない。長野県には13年後にはリニアも来るので、中長期的な観点も含めて、きめ細かな対応をお願いしたい。
松本山雅を活用した観光PRについて
【本郷委員】
3月14日、北陸新幹線が金沢駅まで延伸開業する。出発式や大きなセレモニーが開催されるようだが、松本市でも大きな行事が行われる。
JR東日本の社長は松本からバスに乗って上高地へ行き、高山や飛騨、金沢、東京と周遊する好循環がいいのではないか、とインタビューで答えていた。いい形にしなければいけない。
サッカーの松本山雅は明後日、豊田スタジアムでJ1の初戦を、3月14日にホームでサンフレッチェ広島と戦う。観客数は年間26万7千人とJ2ではトップだった。向こうの受け入れ態勢も最大限の余地を与えている。松本山雅がJ1に昇格したことは、県内及び地元松本の皆さんのハードとソフトがいいように絡んだわけであり、北陸新幹線や善光寺御開帳とともに、きわめて発信力、吸引力があるJ1昇格である。文化性、社会資本の整備、そしてスポーツ、さらにはセイジ・オザワ松本フェスティバルを含めて、重層的に重要な位置付けになってくると思われる。松本山雅の試合を活用して、全県の観光情報を提供し、効果を全県に波及させることが重要。PRのための総合的な予算編成をしているのかお聞きしたい。
【戸田観光誘客課長】
松本山雅の試合には県外から多くのサポーターが集まる非常に貴重な機会と認識。昨年よりもさらに多くの方に来ていただける状況にある。昨年は松本地方事務所を通じ、ホームゲームと隣県のアウェイゲームで全県の観光PRを行ってきたところ。
今年は、更に多くの集客が見込まれることから、地元と調整し、より効果的なPRに努めてまいりたい。
また、九州で行われる試合については、信州まつも空港の利用促進の観点から。空港と連携した周遊観光推進事業で予算を盛ってあり、5月には佐賀でPRする予定。10月には逆に佐賀からこちらに来ていただく。そういったときに、県外から訪れるサポーターに文化も含めた長野県の情報を発信し、再度、長野県に来ていただけるよう努めてまいりたい。
環境分野における人材育成について
【本郷委員】
人類文明は長い道のりを歩いてきたが、大きな分かれ道にある。それは終焉か未来への道とするかという有名な言葉がある。
今日の環境問題はあらゆるカテゴリーの中で、最も重要な問題だと思っている。気候難民、気候変動と中東やアフリカで起こっている紛争等も、気候変動に起因するものが内在している。環境問題は今後の政治の最大の問題になると思っている。特に今年、COP21が12月にフランスのパリで開かれるが、環境と経済成長の両立の合意をいかにとるか。消極的な視点での新しい未来への選択、または新しい未来への文明論を私たちが持たなくてはいけない。
知事も申していたけれど、最後は人材、環境分野における人材育成について、お伺いしたい。
持続可能な開発のための教育、これをESDというが、昨年11月、愛知県と岡山県において「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ国際会議」が、皇太子殿下のご臨席のもと、ユネスコと日本政府の共催により開催された。
会議には「持続可能な未来に向けて今学ぶ」という理念の下、1,000 人以上の参加者が集まり大きな反響を呼んだ。
会議の最後には「あいち・なごや宣言」が採択された。
ESDを理念として、環境開発など現代社会の課題、複合的な問題を視野に入れながら持続可能な社会をいかに造形していくかという学習活動が重要である。特に重要なのが、環境分野の人材育成である。
18世紀半ば、産業革命以降に高い経済成長を成し遂げた結果、地球環境に大きな負荷を与え、地球的規模での問題となっている。
環境の取組みを行う人材の育成は地域から始まる。そうした視点から、環境分野での県の人材育成についてどのような認識を持っているか環境部長に聞きたい。
【山本環境部長】
昨年11月の「ESDに関するユネスコ国際会議」については、環境部の取組にも関係することから、注目していたところ。議員お話のとおり、我が国の提唱によって始まった国際的な取組であり、世界各地でESDの取組が広がっていることを大変喜ばしく思う。
現在、我々は、様々な課題に直面している。例えば、気候変動問題について、昨年9月には国連気候サミットが開催され、新たな枠組みの構築に向けた各国の政治的意思が確認されるなど、世界全体で克服していこうという気運が高まっている。
長野県でも、予算案でお示ししているとおり、地球温暖化に適応した技術等の開発を促進するために関係機関でデータベースを構築する取組や、しじみが取れる諏訪湖を目指すための再生手法検討事業、登山道の修繕など山岳環境を整備するためのパイロット事業など、来年度は環境部の取組をさらに前進させる。
環境分野の人材育成については、持続可能な社会の実現に向けて具体的な行動に結び付けることが目的であり、長野県環境基本計画の基本テーマ「参加と連携で築く 豊かな環境・持続可能な信州」は、まさにESDの趣旨と合致すると認識している。そのためには、単なる知識の修得だけではなく、自然体験、社会体験、生活体験などの実体験を通じた経験が重要と考える。
環境部には、技術職員や研究員など環境問題に造詣が深い職員が多く在籍している。今後も、職員の専門的な知識を活用し、あらゆる機会を通じて県内に知見を普及するとともに、環境保全活動の実践を支援していくことにより「参加と連携」の輪を広げてまいりたい。
【本郷委員】
今、部長から重要な発言をいただいた。大切なところは、単なる知識の習得だけでなく自然体験、社会体験、生活体験の実体験の経験が非常に重要だということで私どもと共通認識を持っている。多くの県民が様々な環境問題に対して、山本部長からあった参加と連携による取組がポイントであるという指摘である。実践的に取り組むことが重要であり、来年度参加と連携にかかわる取組について、具体的に各課長から説明いただきたい。
【塩谷環境政策課長】
参加と連携にかかわる実践的な取組ということでご質問いただいた。本日最初に説明した施策体系の中でも参加と連携による環境保全については、施策の1番上に掲げており、重要な柱と考えている。
各課の役割分担については、環境政策課では個別の分野に関わらない共通の取組の応援を、各課ではそれぞれの個別の分野ということで、役割分担をして進めている。
環境政策課で所管している大きな事業は、環境フェアの開催ということで、来年度地域での出展を3か所から6か所に増やすという形で、充実をして進めてまいりたいと考えている。
また、環境保全研究所では、広く県民の皆さん向けに身近な環境体験、情報提供、講座も行っている。来年度についても工夫しながらこういった活動を進めてまいりたい。
【長田環境エネルギー課長】
2つの事業について御説明したい。
1つは、資料2に記載の、環境エネルギー戦略推進事業の一つである「信州自然エネルギー・環境教育支援事業」について。
教育委員会が自然エネルギー地域基金を活用し、県内の高等学校等が行う自然エネルギーや環境に関する教育活動に対して支援するもので、平成26年度は、岡谷工業高校のバイオマス燃料の製造等をはじめ8校の活動に助成した。将来地域の自然エネルギー事業を担う若者を育てること、中長期的な人材育成を目的に推進している。将来自然エネルギー等の環境に係わる活動が地域で盛んになることを目指している。
2つ目は、信州省エネ大作戦について。
長野県は、震災以来、夏と冬に県民総ぐるみの節電・省エネ運動として、省エネ大作戦を展開している。
最大電力需要を削減する県独自の数値目標を掲げ、県民の皆様と目標を共有し、県民との協力や連携をしながら省エネの取組を行う事業となっている。
当課が担当する施策は、広範な県民の参加や取組が不可欠であるため、来年度もこの点を重視しながら施策を進めてまいりたい。
【村田水大気環境課長】
子供たちをきれいな川に連れ出して、川の環境を見ていく事業として、本県では「せせらぎサイエンス事業」という事業があるが、県として直接行う事業として、そうした活動を行うリーダーの養成を行っている。毎年10名程度が受講していただいており、受講された方がリーダーとして活動を行っていただいている。毎年、概ね20グループで、1,000名程度が参加している。
また、本県を代表する湖である諏訪湖や野尻湖の周辺では、小学生が水質検査等を体験していただく取組を行っている。
また、近年問題となっているアレチウリの駆除のための研修会を行い、受講していただいた方が地域で活動をしていただいている。
こうした活動により人材育成を図っていくほか、特に子供たちに長野県の環境を良くするという意識を持っていただきたいと考えている。
【清澤生活排水課長】
当課に係る事項としては、多くの方々に下水道終末処理場を見学いただいており、言わば、処理場が「実体験の場」となっていることである。
県が管理している4処理場では、年間8,000人ほどの見学者があり、そのうちの6割が小学生の社会見学である。
排水口から消えてなくなる排水については、なかなか関心を寄せてもらえないが、その一旦見えなくなった排水を再び見ることができるのが処理場であり、それがどのように処理されているのかを見ていただくことにより、生活排水処理の役割を理解してもらえるのではないかと考える。
その「気付き」が「水への関心」、さらには「水質保全活動」につながることを期待している。
このため、多くの方々に処理場を訪れていただき、この実体験をしていただけるよう取組を続けてまいりたい。
【山?自然保護課長】
登山道の持続的利用については、多くの山岳関係者が参加と連携を深めてもらわなければ成り立たない事業なので、一層強化する取組につなげていきたい。
また、生物多様性の保全については、一部の人や一部の保護団体ではなくて、県民、企業、あるいは都市部の力もお借りするという、11月議会委員会での本郷委員からのご指摘を踏まえ、予算案につながったのが「人と生きもの パートナーシップ推進事業」である。
このように、より参加と連携が深まる形の中で、今ある自然を将来に引き継いでいけるよう取り組んでまいりたい。
【宮村資源循環推進課長】
来年度の第4期県廃棄物処理計画策定にあたっても、県民の皆様の環境活動への参加と連携という視点が最も大切な視点であると考えている。
また、個別の事業でいうと、チャレンジ800ごみ減量推進事業は、県民や市町村、企業、それぞれの皆様の参加・協力をいただかないと進められない事業であり、この事業に参加していただく中で、環境分野の担い手として成長いただければと思っている。同じことは、レジ袋の削減活動にも言える。
他に、県下で毎年、「きれいな信州環境美化運動」を実施しており、例年、約20万人の県民の方に参加していただいている。
こうした誰もが参加できる身近な環境活動の促進により、環境分野の担い手の育成に努めてまいりたい。
【本郷委員】
各課長から簡にして要を得て短時間でまとめていただいた。
最後は部長に聞きます。各課に置いて実践的な施策に取り組んでいることを深く認識したところ。次世代を担う子どもに対する期待も大きいわけなので、環境部の果たす役割をさらに認識していただきたい。昨年度、私は屋代高校付属中学校で、小松副議長や広報委員の皆さんと約80人の生徒が参加して「こんにちは県議会」を開催し、子供どもたちの皮膚感覚でいろいろとフランクな討論をしてきた。地域づくりの中における子どもたちの将来の責務が大きいか、同時に議会の責任も感じた。環境分野の育成の観点から、教育委員会とも一層密に連携を図ってほしい。
そうした意味から、長野県の自然環境の保全を担っていく子どもたちに対する環境部の取組を通じて、環境部長はどんなことを期待しているのか、所見を伺いたい。
【山本環境部長】
自然環境の保全を担っていく子どもたちに対して、各取組を通じて期待することは何かというお尋ねかと思う。
各課長からいろいろな話をさせていただいた。県は、広く県民が関心を持ってもらう、環境保全活動に参加する意欲、環境問題を解決する能力を高めるために、それぞれの年齢層に応じて参加と連携の取組を進めている。
特に子どもへの取組については、小中学校の理科、それから総合的な時間を取り入れてもらうなど、環境部だけではなくて、各部が連携して取り組んでいる。子どものころから親しんでもらう中では、今、小学生が県庁を訪問して、様々な取組をしているわけですが、それを見てもらう、学んでもらう「こども記者体験」を行っている。昨年6月から本年1月まで全体では466件、4,060人が参加している。環境部の取組については、59件、500人以上の方が参加してもらっている。健康福祉部、農政部に次いで第3位と、大変多くの小学生に実際に見てもらっている。
参加と連携により持続可能な地域をつくるためには、御指摘のとおりに息の長い取り組みが何よりも大切。特に子どもたちには県の取組をはじめとするあらゆる機会を通じて、長野県の自然の豊かさ、大切さを理解してもらいたい。また、地域の環境を自分たちで守り育てていく気持ちが、意識の涵養が何よりも重要であって、環境保全の取り組みが引き継がれて、発展されていく、大きくなっていくことを強く期待したい。
退職に際しての思い等について
【本郷委員】
今年度をもって山本環境部長、村田水大気環境課長がご退職とお聞きしている。
山本部長におかれましては、市町村課長、諏訪地方事務所長、企業局長、そして現在の環境部長と県の中枢で様々な要職を務めて、県政発展のため大変なご尽力をいただいた。また、村田課長におかれましては、下水道公社南信管理事務所長を経て、平成24年から現在の水大気環境課長を務めている。大気保全や水質保全の分野を中心に長年にわたり環境行政にご尽力いただいた。この場を借りて深く感謝を申し上げるとともに、御退職後のますますの御活躍とご健勝を心からお祈り申し上げる。
これまでのご経験から、今後の県政、後輩の県職員に対し何か申し述べることがあればお聞かせいただきたい。
【山本環境部長】
昭和52年に採用されて以来38年間勤務し、環境部は最後の2年間お世話になった。この2年間を通じ、環境行政の重要性を改めて認識した。
これからの県の最重要課題である地方創生、人口減少対策等において、環境部の占める役割はますます大きくなっていくものと考える。
そのように大変重要な環境行政に携わる中、職員の皆さんに支えていただき一緒に仕事ができたことに大変感謝している。
職員の皆さんにはこれからも一致団結し、環境行政の推進に一所懸命取り組んでいただき、長野県が一層発展されるよう心から願う。
委員の皆様には常に大所高所からご指導賜り感謝。
今まで環境基本計画のテーマである参加と連携について、県行政の一員として推進してきたところ、これからは一市民として実践にあたっていきたい。
【村田水大気環境課長】
3年間、環境委員会でお世話になったが、一番思い出に残っているのは、本郷委員からも21世紀は水の時代であるとその重要性について御指導いただきながら「長野県豊かな水資源の保全に関する条例」を制定したことである。ただし、条例に基づく水資源保全地域の指定が進んでいないことが心残りである。
また、先程野澤委員から御指導いただいた、諏訪湖のシジミの再生について、もう少し取り組んでみたかった希望がある。これらの課題については、後任に託していきたい。
委員の皆様には、これまで暖かく御指導いただき感謝申し上げる。今後とも御指導をお願いしたい。
食品産業について
【本郷委員】
食品産業について、長野県はみそが全国シェア43%など、お醤油、ワインなども含めて発酵食品は強い。健康長寿県ならではのこと。特に凍り豆腐は約100%のシェアを占める。長野県は、ローカル経済圏とグローバル経済圏と両方持ち合わせ、良い資質をもっている。4月にオープンするしあわせ信州食品開発センタ―がその拠点となるが、具体的な取り組みをしていくのか。
【ものづくり振興課長】
議員ご指摘のとおり、食品産業は本県ものづくり産業の中で、出荷額においても、また雇用面においても、 さらに地域に根差した産業として重要な産業である。ものづくり産業振興プランにおいても次世代を担う産業の一つ、健康・医療分野の中に機能性食品を掲げており、県ではその開発拠点として工業技術総合センター食品技術部門にしあわせ信州食品開発センターの整備を進めてきた。
当センターは4月にオープンするが、ここを拠点とし、県内の食品企業と県では産業労働部、農政部、林務部、健康福祉部、観光部そして各部の試験場、さらには信州大学や関係機関を加えた産学官連携体制を整え、長野県の健康長寿を支えてきたと言われている発酵技術等を活かして、具体的な新食品開発を進める。
現時点での計画案としては、ターゲットを2つに絞っており、一つは有望な販路向けで、コンビニや新幹線内で販売できる商品、もう一つは増加している外国人観光客、特にサミットや東京オリンピックに向けた商品開発を進めたいと考えている。
伝統工芸品について
【本郷委員】
歴史伝統のストーリー性は観光戦略とも絡んでくるわけで、新幹線で早く着けばいいというものではない。長野県の持つ可能性は非常に強いものがある。
昨年は、飯田水引、松代焼、栄村つぐら、信州からまつ家具が新たに長野県伝統的工芸品として指定された。
県内の伝統的工芸品のブランド力向上と活性化を目指して将来を見据えた振興策についてお聞きしたい。
【ものづくり振興課長】
伝統的工芸品は、年々生産額が減少しており、産地によってはほとんど後継者がおらず継続が困難なところもある。
しかしながら、小規模ながらも雇用を生み出し特定の地域の経済を支える重要な産業である。これらの伝統的工芸品を今後も地域を担う産業として活性化して行くためには、古いものをそのまま継承するのではなく、基本的な伝統技術は活かしながらも、その時代の生活様式や消費者ニーズにマッチした新商品により新たな提案をし続けることが生き残るためには必要と考えている。
2月には、ながの東急シェルシェで伝統的工芸品指定産地と県内のクラフト事業者とのコラボ展「信州の手しごと博覧会」を開催し、大勢の方々に実施に見て、触れていただき、消費者ニーズの把握に努め、また出展者同士の交流を行ったところであるが、今後は、各産地の実情を把握しそれぞれの産地の課題に沿った形で、意欲的な産地に対し具体的な支援をしたいと考えている。
また、平成27年度新たに東京の富裕層や外国人向けの新商品開発を進め、東京などで展示即売会を開催する方向で検討を始めたほか、食品と合わせた提案、あるいは石川県など他産地と共同でPRすることも、関係部局と一緒に検討したいと考えている。