警察力維持強化のための人的基盤強化に関する取組について
【本郷委員】
長野県警においては、尾崎本部長を中心に崇高な理念のもと昼夜を分かたず、県民の安全安心のために尽力をいただいていることに心から敬意を表する。
刑法犯も縮小傾向にあり、交通事故も減少しているということであるが、反面で、文明化社会の成熟とともにサイバーの問題が出てきて、ICTの進化に伴い事案が複合的に内在化してきている。また、暴力団の問題、覚せい剤、特殊詐欺など、事案が多面的になっている。加えて、県民からも様々なニーズがあり、警察官が過重な仕事をしていることについて、私どもも何とかしなければならないという気持ちでは同じ土俵に乗っているつもりである。
基本的には、近代国家の秩序の維持、あるいは統治機構の視点から、警察の果たすべき役割は極めて重要である。
2020年に4千万人のインバウンドが予測される一つの要因として、秩序が保たれていることがあるが、そこでも警察行政の役割の重要性を再認識できる。
警察力の維持・強化のための人的基盤強化の取組の視点から質問する。
当県の警察官の一人当たりの負担人口は全国的に見ても非常に高く、警察官の計画的な増員は、極めて重要な課題であると認識している。
その一方で、増員と並行して、大量退職期がまさに到来中であることを踏まえつつ、警察力の維持・強化のため、警察官一人ひとりのスキルアップを図りながら、執行力の維持・効果を図っていくことが重要であると思う。
県内の総人口は、かつて222万人であったところ、現在は219万人となっているが、少子化が急速に進んでいる中で、いかに優秀な人材を確保していくかが警察力の維持・強化においても大変重要なポイントではないかと思う。
また、優秀な人材確保とともに新規採用者の早期戦力化に向けた様々な取組、職員個々の誇りと使命感の醸成、知識と技能を有する退職警察職員の効果的な活用など、警察力の維持・強化のためには広い視野で俯瞰的な立場から施策を実行する必要があると認識している。
全体状況の認識は、本部長と共通していると思うが、それを分解して数点質問する。まず、近年の定年退職者及び新規採用者の推移について伺う。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
委員ご指摘のとおり、本県警でも大量退職時代が続いている。
平成10年度頃までは、毎年度70名前後で推移していたところ、それ以降、徐々に増加傾向に転じ、平成18年度からは毎年150名前後が退職している。こうした傾向は、あと5年程度、平成33年度までは続く見込みである。
【本郷委員】
実戦的な現場を知っているフットワークや判断力の良い警察官が喪失していくわけである。いかに現状の戦力を維持するか、議会側としても相談して努力していきたい。
さらに分析すると、年代別構成比率が問題になってくると思う。各年代のバランスが非常に大事になってくると思うが、いかがか。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
大量退職に伴い新規採用者も増えており、今年も160名前後の新規採用者を採用予定である。年代別の構成比であるが、若手警察官の占める割合が増えており、本年4月現在で30%強、3分の1に近い者が30歳未満の警察官というのが実情である。
【本郷委員】
その3分の1の若手警察職員の方々は優秀であると思うが、現場第一主義ということで言えば、できるだけ知恵を使って、実戦に対応できる警察官が偏在化しないように、普遍的に県下で対応できるように考えていただきたい。
長野県警察の受験は非常にグレードが高いため、IQの高い方が入っていると聞くが、それだけ警察の仕事が高度化していることの証左である。警察官採用試験の受験倍率の推移と優秀な人材の確保のための取組と努力について伺う。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
先ほど申し上げたように若手警察官が非常に増えている中で、若手の早期育成が重要であり、また、その前段として、優秀な人材の確保は極めて重要である。そのような認識の上で、現在、組織的な課題として捉えているところである。
受験倍率については、最近の雇用情勢や少子化の影響もあると思うが、県警の倍率も落ちている。従前は競争倍率が7倍前後で推移していたが、昨年度の競争率が4倍と落ち込みが激しく、今年も同様の状態が続いている。
【本郷委員】
思っていた以上に難しい問題が内在化していることを確認した。したがって、若手警察職員の早期戦力化というのは簡単ではないことは素人でも予測できるが、若手警察官の戦力強化においては、執行部としても苦慮していると思う。現状の取組状況はいかがか。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
若手警察官の育成については、従来は、先輩の背中を見て覚えろという風潮もあったが、現状ではそんなことも言っていられず。1日でも早く若手を戦力化する必要があるのが実情であり、教養の手法として、様々な職務執行を自ら体験させるロールプレイング方式というものに力を入れている。
また、現職の警察官の中でも、それぞれ卓越した技能を有する者がいるため、そういった者を「技能指導官」として指定した上で、若手の指導に当たらせるなど、実戦的な教養手法を取り入れている。
【本郷委員】
ぜひ、実効性あるものにしていただきたい。実力のある経験豊かな退職した警察職員の活用状況も重要な点であると思うが、その点について、配慮している点を説明願いたい。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
退職警察職員の有効活用という点であるが、若手職員の早期育成、あるいは、現職のすべての職員に、自分の仕事に誇りと使命感を持たせるという意味でも、退職警察職員の伝承教養は非常に重要であると捉えている。現状として、それぞれの部門で優れた実績を残した先輩方を伝承官として委嘱し、警察学校や警察署に出向いて経験に基づいた生の職務倫理教養を行っていただいている。また、それに加えて、再任用制度の拡充や交番相談員やスクールサポーターといった非常勤職員の活用を通じて、退職者の組織での活用を図るとともに、若手の指導育成にも尽力いただいているという状況である。
【本郷委員】
有機的に絡ませながら束ねて、長野県警の警察力の低下を招かないように一層の努力を願いたい。
天皇皇后両陛下をお迎えしての植樹祭では。大変厳しい警備の中で、見事にクリアをされ、たいへん感謝を申し上げる。また、山の日、交通大臣会合と、今年は3大事業があるわけだが、並行して、今日も梓川で大変な事件が起きたようで、それぞれ次元の違うことであっても、大変な状況であるので、なお、一層頑張っていただきたい。
最後に、他県に先駆けて実施している施策や今後の重要課題について伺う。
(油井警務部首席参事官兼警務課長)
全国警察で相当工夫を凝らして行っているところである。ある意味出尽くしたというところもあるが、警視庁では、優秀な人材確保のためにインターシップ制度を取り入れているといった取組も図っている。他県の状況を参考にしながら、人的基盤の強化に組織として取り組んでいきたいと考えている。
松本空港の国際化について
【本郷委員】
< 要望 >
松本空港の国際化については、各党の定例会ごとに、知事に対して要望してきたが、ようやく方向性が示された。課題はいろいろあるが、小岩企画振興部長から国際化に向けて強い意志表明があり、また10年というスパンではなく、数年というスパンで実現を目指すという決意も感じ取っているところ。是非ともスピード感を持って進めてほしい。
また、私から知事に提案した「松本空港国際化推進室」については、9月から10月ぐらいには設置するようお願いしたい。それが本庁の基幹的発進力になり、同時に市町村とのプロジェクトチームで推進するという方向でお願いする。
松本空港は、アジア太平洋時代における長野県の国際化における窓口として大変重要であるので、なお一層の取組を進めていただきたい。議会側も全面的にサポートしていきたい。
大北森林組合問題について
【本郷委員】
現代の企業経営にとってコンプライアンス(法令遵守)の重要性は益々高まっている。フォルクスワーゲンや東芝など世界的な大企業でも企業経営の根幹を揺るがす事態に発展している例がみられる。地方自治体においても、住民からの信頼に応え、効率的・効果的に住民サービスを提供するためには、民間企業以上にコンプライアンス体制の構築が必要である。
県では、大北森林組合等の補助金不適正受給案件を受け、本年を「コンプライアンス元年」として、林務部のみならず県組織を挙げて取組を進めているところと承知している。具体的にどのような方策でコンプライアンスを推進していくのか。最終的に、目指すべき姿をどう考えるか。
(小林総務部長)
大北森林組合等における補助金不適正受給事案については、県職員一人ひとりが重く受け止め、ひとり林務部の話ではないというところが出発点だと考えている。私たち一人ひとりが、これを契機にどのように県民の期待や要請に応えられる組織になっていくか、これは時代の変化もあるので、それに即応してやっていかなければならないと深く自覚する必要があると思っている。具体的には、本年度、各部局及び地方事務所ごとにコンプライアンス委員会を立ち上げ、それぞれのところで行政経営理念を始め、発生した事案や今後の働きやすい職場づくりや取組みなどの検討を始めているところ。そういった中で、全庁一斉に業務の棚卸を各部局で実施している。総務部から取組をはじめているところであるが、これは経費の削減ということもあるが、より職員が働きやすい、風通しがよい職場づくりにもつなげていかなければならないと思っている。
これらを十分達成できるように、これから各部局等のコンプライアンス委員会及び部局長会議の場で共有しながら、しっかりと取組み、そうした組織に再生していくことが私どもの目指すところであると考えている。
【本郷委員】
ぜひ、全職員が一丸となって県民の幸せと生活向上のために一層コンプライアンス意識を徹底してもらいたい。
現地機関の見直しについて
【本郷委員】
信州創生戦略は、計画策定段階から具体的な施策の実行段階へと新たなステージへ移行している。国・県・市町村の総合戦略においてすべての枕詞は、「人口減少」であり、先進国の中でも日本国は大きなパラダイムシフトが起きていることは周知のとおり。県民参加のもと、関係機関の連携によって地域自らが主体的に取り組める体制地域自らが主体的に取り組める体制の構築が求められている。一億総活躍社会、活力ある日本社会を維持するためには、地方創生はその中核を成すものであり、「信州創生戦略」の成功こそが、現在の県政の最重要テーマであることは言うまでもない。
総合戦略において長野県の人口は、一定の政策を講じたとしても2060年には161万人。更に、特段の政策を講じない場合は2060年に130万人余りまで減少するとされており、生産年齢人口の減少など人口減少がもたらす影響は、我が国経済ばかりではなく、私たちが暮らす地域社会の存立をも脅かすものであり、その影響は計り知れない。
「現地機関の見直し」はそうしたパラダイムシフトを認識した上で、「信州創生に一丸となって取り組み、県民の期待に応えることができる新たな現地機関を目指して」としており、時代認識は正鵠を射たものとなっている。この度の見直しは、10圏域における主体性、或いは現地住民との複合的なコラボレーションなど、従来の形だけのものではなく、時代の変革に合わせた改革が必要である。現地機関の見直しの趣旨と目指すところについて、行政改革課長にお聞きするとともに、総務部長の意気込みを伺う。
(井出行政改革課長)
人口減少が進行しているという時代の流れにあって、これまでの行政の枠組み・体制だけでは対応できない課題が生じている。こうした状況を踏まえ、これまでの組織の壁、或いは縦割りの壁を越えて、連携しながら総合力が発揮できるような現地機関にしていかなければならない。具体的には、横断的な対応が必要な課題について、地方事務所を改組した地域振興局が中心となって他の現地機関とともに取り組む体制を構築していきたいと考えており、そのために必要な予算・人員等を確保することができる仕組みとしていきたい。これにより、地域振興局長がリーダーシップを発揮し、地域で課題に取り組める「課題解決をする機能」を持つ組織としたい。
(小林総務部長)
現地機関の見直しの大きな流れとしては、現地のことは現地でできるようにすることであり、横の連携をしっかり行い、地域課題に立ち向かことが重要である。これまでも数十年かけて取り組んできた課題であるが、それが十分に達成できていないということでもある。したがって、単に局ができればいいという訳でなく、それぞれの専門性や迅速性などの長所を活かし、しっかりと横の連携を取りながら、本庁サポートのもと、局を中心に現地が動いていくといった組織とすることが重要と考えている。まさに「背水の陣」で取り組みたい。
【本郷委員】
他県の地域振興局を視察してきたが、形だけで中身が変わっていないという印象を受けている。最終的には予算の独立性、人事、本庁との関係など難しい問題もあるが、長野県方式の実効性のある現地機関となるように、熟慮を重ね、他県の例も参考にしながら血の通ったシステムとしてほしい。
地方と大都市の関係について
【本郷委員】
暮らしやすく、子どもを産み、育てやすい地方から人口が流出し、結婚できない、子どもが出来ない環境下にある一都三県へ一極集中している。こうした不条理な現状をふまえ、地方創生における「地方と大都市の関係」をどのように認識しているのか。
(小岩企画振興部長)
地方創生は「地方を良くしよう」という単純なものではない。地方と都市の両方があって日本があるわけで、その両方が良くならなければこの国全体は良くならない、と認識している。景気が悪化すると、都市部への人口流入が加速する、というのがデータ上も明らかであり、国全体の景気が良くならないと、地方はますます疲弊していく悪循環に陥る。以前は、地方からの人口流入先の都市部が、日本全体の景気を引っ張っていたが、現在は、都市部もインフラ整備、医療や政治などの面で限界が出てきている。長野県を「地方」と位置付ければ、長野県のことだけを考えるのではなくて、地方から見た都市部の課題を含めた広い視野を持ち、地方と都市の相関関係の中で地方のあり方を考えていくべきである。この趣旨に基づいて、信州創生戦略の中に「相乗効果」という言葉を敢えて入れさせてもらった。大きな捉え方の中で地方創生に取り組んでいきたいと考えている。
移住施策の推進について
【本郷委員】
創生戦略の「郷学・郷就」という造語は、的を射ておりいい表現。だが、現実的に日本の企業を見ると、世界トップ企業の1,200社のうち、日本企業は150社であり、東京に本社を置くのは105社。集中度は70%。アメリカ企業は489社あるが、(首都に本社を置くのは)40社に過ぎず集中度は9%。スイスやドイツも同程度。本社を置くことは、雇用を生むなどいい影響がある。研究所にも同様の効果がある。地方に本社機能・研究所を誘致することが好循環の一つの始点となり、それが真の社会のイノベーションに繋がる。そういう意味で大都市からの移住についてどう取り組むのか。
(丹羽 楽園信州・移住推進室長)
現在、個人の価値観が多様化している中で、多様な働き方、暮らし方を定着させていく必要がある。信州創生戦略においては、農ある暮らしとやりがいのある仕事を両立するライフスタイルや、長野県独自の豊かなゆとりある暮らしを発信することとしている。また、子育て世代・家庭、女性の視点を大切にしながら、官民一体となって移住施策を推進していく。具体的には、田舎暮らし「楽園信州」推進協議会を活性化・体制強化し、官民一体となって移住施策を推進していく。また、民間事業者と連携し、「楽園信州空き家バンク」での住まいの情報提供や、UIターン転職セミナーの中で就職情報を提供していきたい。さらに、三大都市圏に専門の移住相談員を配置し、ふるさと回帰支援センターでは相談体制の充実強化をしながら、きめ細かに移住相談の対応をしていく。他にも、本日提案させていただいた、大都市と比較した長野県での暮らしの優位性を数値化し、それを説得あるものとして発信し、移住施策を推進していきたい。
地方創生について
【本郷委員】
長野県の労働生産性は全国平均の約800万円より少ない約700万円で第33位である。労働生産性を高めるためには相応の賃金、安定した雇用形態、やりがいのある仕事が必要である。県や市町村、産業界、労働界がオール信州で有機的につながり施策を実行することが信州創生の成功の成否を握ると考えている。具体的にどのような体制で総合戦略を推進していくかお聞きしたい。
(伊藤総合政策課長)
信州創生戦略は県だけでなく、様々な機関にも同じ方向を向いて取り組んでいただく必要がある。このため戦略の策定に当たっては、産学官労の11団体で構成する「長野県人口定着・確かな暮らし実現会議」を立ち上げた。これは諮問機関ではなく、戦略を実行していくための推進組織として位置づけている。具体的には、宅建協会と連携した移住施策、金融機関と連携した企業の経営指導、経済4団体や連合長野、長野労働局と連携した働き方改革などを行っている。実現会議をハブとして県がコーディネートしながら各機関と連携して施策を進めていく。
【本郷委員】
世界経済は大きな転換期にある。資本が増加するための実物投資空間が限界を迎えており、グローバリズムを安易に広げていくわけにはいかない。グローバル化や東京への一極集中は地方創生の目指す姿とは正反対の方向であり、長野県としてどう対応していくかお聞きしたい。
(小岩企画振興部長)
イギリスのEU離脱やアメリカ大統領選、東南アジアの様々な問題など、グローバル化の反動が出てきている。知らないうちに大きな流れに飲み込まれることの無いように、グローバル化と適切な距離感を保ちながら今後すべきことを見極める必要がある。信州創生戦略では「活力と循環の信州経済の創出」を掲げているが、外に依存しすぎない、ある程度自立した経済構造に体質改善していく必要があると考える。