県行政における人材確保について
【本郷委員】
先輩お二人から大変重要な問題の御指摘がございました。日本の中には多くの分野がございますが、社会工学的に考察すれば、政治行政の拘束力は極めて強いものがあるわけでございますし、逆に申せば、その責務は大変大きなものであると私は認識をしております。そういう意味から、今、いろいろお話がありましたけれども、相当の決意をもって私どもも、また、行政のみなさんも両輪となって、祖国日本のためにそしてまた故郷のために頑張っていただきたいと思うところでございます。総務省のデータによりますと、地方公務員の数は1994年の約328万人をピークに減少し、2020年には280万人とピーク時の85%程度になっております。うち、一般行政部門では、新型コロナウイルス感染症等の対応により、近年若干の増加傾向あるものの、ピーク時から20%程度の減少という現実でございます。人口減少に伴い、自治体の人口も減少し、財源も減少していることを踏まえると、増加傾向の部門もあるようですが、当然、現在よりもさらに少ない職員数で、行政運営が求められることになります。しかしながら、今後さらに社会保障にかかわる経費は増大が想定されますし、高度経済成長期に建設された公共施設、インフラの老朽化による建て替え、改修に要する費用は増大が想定されます。さらには、近年深刻化する災害への対応などをはじめ、行政が担うべき業務が増大していくことともなるわけであります。先の国による地方の行政改革の推進の方針を受け、長野県だけではなく、全国の地方公共団体の定員削減が進められてきたところですが、今後増大する業務を少ない人員で対応することが想定され、このような状況のもと、公務員としていかに良質な人材を確保するかが課題となると考えております。前段主なことを述べましたが、人口減少の中で、20年30年先を見据えた長期的な視点からの人材確保について、中長期的な観点で結構ですが、どのようにしていくか玉井総務部長のご見解をお伺いしたいと思います。
【玉井総務部長】
先を見越した人材確保についてということでございます。私も昨今感じるのは、これまで成長から安定、人口増から人口減、さらにはコロナや自然災害が頻発していまして、これらに起因する厳しい財政運営ということで、今まさに時代の転換点にあるのではないかと考えているところでございます。そういう意味では、いま、この時やらなければならないことを、まさに先を見越してやる、やらなければいけない、今まさに重要な時期だという認識でそう感じております。委員御指摘のとおり、人口減少の中でいかに優位な人材を確保するかということが、大きな課題でございます。長期的な視点に立って、やはり職員の採用とか、育成、今から進めていかなければ、手遅れになるという状況かとあらためて認識をしておるところです。特にこの度の新型コロナを経験して、人々の行動様式とか考え方が大きく変化をしている状況かと思います。そういう意味で、県民の価値観とか考え方が多様化、複雑化しており、これに対しては我々県職員もしっかりついていかなければいけないことを痛切に感じております。そのたびに私どももこれまで以上に県民のニーズを的確に把握し、柔軟な発想ができるようなスキルを身に着ける必要があるんだろうということで、そのためにどうすればよいかということですが、職員自ら主体的に学ぶこと、それからまた国や市町村、民間企業などに職員を派遣することで、いわゆる他人の釜の飯を食うとよくいわれますけれども、そういう意味で様々な経験とか刺激を受けること。さらに、若いうちから責任ある業務を経験して幹部人材を早くから育成するなど、今まで以上に先を見越した登用、育成も必要ではないかと思っております。また、採用ということで申し上げますと、様々な課題に積極的かつ柔軟に対応できるような社会人経験者とか人物重視の試験など多様な人材の採用も引き続き進めていきたいと考えております。加えて、来年度職員の定年の引き上げもございますので、高齢層の職員の専門性を今まで以上に高めるなど、そうした意味での育成、活用も課題かと思っております。先を見据えた職員の確保、育成、活用につきまして、今年度新たに行政機構審議会の部会を設けましたので、こうした委員のみなさんのご意見もいただきながら課題に的確に対応できるよう努めてまいりたいと思います。
今後の県組織の在り方について
【本郷委員】
玉井総務部長におかれましては、正確な歴史的な自覚をお持ちでございますので安心をいたしました。いずれにしても人口減少の問題は極めて深刻な事態でございまして、シミュレーションによれば1億2,000万人の日本がいずれ8,000万人台くらいになると、そろそろメディアでも発表されております。そしてまた、団塊の世代でもあと何年かで、2050年問題という表現でメディアでは言っておりますが、さらにそれに続く団塊の世代ジュニアの問題と連動してきて、少子化問題と高齢化社会というものがあって、そして社会保障制度の財政的負担が相当レベルになるということでございますので、何としてもこの事態を回避して健全なる県政運営が遂行できるように、私どもも期待しておりますし、また議会も同様の強い責任があると感じておりますが、いずれにいたしましても、今のような解釈の中で長野県政が健全に運営できるよう心からご期待を申し上げる次第でございます。
次に、もう分かっていることでございますが、広い県土に10広域ごとに設置された地域振興局をはじめ、東信、北信、中信、南信と4信ごとに配置された消費生活センターや労政事務所等、さらに13か所に設置された建設事務所など多くの現地機関があります。これらの現地機関では様々な県民ニーズをはじめ、市町村との連携を含めた大変な業務を担っていただいているところであります。職員数が将来に向かって減少することが想定される中、こういった県民サービスに直結する現地機関においても県が担うべき行政サービスが職員数の減少により担えなくなってしまうのではないかと危惧するところですが、今後の県の組織の在り方について、御所見をもう一度玉井総務部長にお伺いします。いずれにしても、この人口減少問題は国家社会にとっても最重要でありますし、長野県にとっても同様であります。この問題について県の職員はかつて1万人近くいたと私どもはお聞きしますが、現在は6,000人台ということ。そういう中において県民ニーズは極めて多様化しておりまして、特に社会保障制度を財政的にいかに担保するかという大変深刻な事態であります。もう一度、玉井部長にご見解をお伺いいたします。
【玉井総務部長】
今後の県組織の在り方というご質問でございます。委員御指摘のとおり本県、非常に広く、個性豊かな地域に恵まれていると。これがまさに長野県の特色であり、良さではないかと認識をしているところです。一方で人口減少に伴い、大きな方向性としては、現在職員数が少ない中で行政運営を求められることも覚悟しなければいけない。それは現地機関といえども例外ではないかと考えております。一方で昨今、道路状況を改善したり、デジタル化も非常に進展していたり、先ほど申し上げた職員の専門性の確保も非常に重要な視点で、市町村のみなさんとの連携等、まさに時代の転換点にしっかり対応していかなければいけないということかと思います。また県民の行動範囲、様式も変わって、ニーズも多様化しているという中で組織の在り方も、やはり行政サービス、10広域単位でかちっと決めて今後やらなければいけないかというと、その辺は、今後の検討課題でもあるのかなということも認識しております。現在も、行政機構審議会で人口減少時代を見据えた県組織の在り方ということで部会を設けて検討する予定でおりますので、先を見越した県行政の在り方について検討してまいりたいと考えてございます。
【本郷委員】
ご回答ありがとうございました。1919年のスペイン風邪以来、100年ぶりのこの大きなパンデミックが起きたわけでございます。そういう意味では、私どもは自分自身では自覚しておりませんが、社会の変容があらゆる分野で起きてきていると。そういう中で先ほど萩原先生からお話がありましたけれども、採用についても多様性をもって柔軟にやっていくことによって、この減少した職員数に対する社会的ニーズの多様化に対して対応してくと、こういうことは方向性としては正しいと思います。しかし、いずれにしても私たちは今、歴史の十字路にいるわけで、ウクライナの問題が今度、東アジアにもし転戦した場合には、自らの国は自らで守るということでないと、21世紀から20世紀に戻っているような状況でございますので、そういう意味で、県当局はとりわけ今回のコロナ禍によって都道府県行政の自立性と重要性が再認識されて、官邸や政府与党も知事会の意見を採用せざるを得ないという状況になってきております。私も国会議員秘書としていましたのでよく知っておりますが、建物は大変すばらしいものになりましたが、衆議院、参議院、決算特別委員会をはじめ、各委員会の答弁に追われて、天下国家をどういうふうに持っていくかということは、清水部長は経験あると思いますけど、霞ヶ関にいる頃は、そんな余裕は全くないと。最後の結論は大臣が出すわけでありますけれども、それまでの過程が霞ヶ関で書かなければいけないという状況でありますので、何分、玉井総務部長、今のようなご判断の中で積極的な21世紀中盤から後半にかけての長野県政のあるべきシステムについてさらに深堀をしていただきたいと申し上げます。ご答弁ありがとうございました。
県行政として鉄道の役割について
【本郷委員】
今日、世界を一変させた新型コロナウイルス感染症、一刻の猶予も許されない気候変動問題、輸入資源価格高騰による海外への所得流出、コロナ禍での人口減少、少子高齢化などの一層の人口減少、内外の問題が同時かつ複合的にわが国にも押し寄せてきております。コロナを契機とした社会変容が進み、また、人口減少、経済再生といった対応すべき課題が多様化、複雑化する状況下では、地方は国の指示を待つのではなく、自ら在るべき姿と未来を切り拓く構想を描き、各地域の実情に即した取り組みを、迅速かつ柔軟に実施、実現していかなければならない、そういう歴史的な新しい位置づけに、中央行政、地方政治がきてるということでございます。そういう観点から、あと一点だけお伺いしたいと思います。
まず、身近な問題では地域住民の通学、通勤の大切な足であり、観光や経済活動の基盤としても重要な社会インフラであり、こうした国内外の状況に大きな影響を受けている鉄道についてお伺いいたします。明治5年に新橋横浜間に鉄道が開通して今年でちょうど150年を迎えます。本県でも蒸気機関車から電車、そして新幹線開業と、鉄道は発展を続け長年にわたり地域の基幹的、広域的な公共交通として重要な役割を担ってきました。しかしながら、沿線人口の減少という従来からの課題に加え、新型コロナウイルス感染症拡大により旅客収入が減少するなど、全国各地で鉄道の維持が困難な状況になっております。長野県においても、連日報道されているとおりでございます。このため、国土交通省においては、全国の地域鉄道の在り方について、有識者会議を立ち上げ検討を進めておりますが、このような中、県として鉄道の役割をどのように考え、どのように維持に繋げていく、そういう方向性を持っているのかお伺いいたします。
【石坂交通政策課長】
鉄道の役割をどのように考え、どのように維持していくのかというご質問を頂戴いたしました。委員御指摘の通り、鉄道は、通勤、通学、通院といった地域の皆さんの日常生活を支える、非常に重要な交通手段であります。加えまして、全国につながる交通網の一部として、観光、経済といった面でも大変重要な役割を果たしているところであります。また、今後、北陸新幹線がさらなる延伸、そしてまたリニア中央新幹線の新規開業ということで、まさに全国各地と本県、時間、距離が大幅に短縮されるというメリットがございます。その整備効果を県内各地に広く影響を与えさせるためにも高規格幹線道路にあわせまして、在来線鉄道の役割の重要性、存在の意義というのも益々高まってくるものと考えております。鉄道の維持に向けまして、県として、しなの鉄道含む民鉄4社に対しましては、レールですとか、枕木といった安全運行を支える鉄道設備の維持に関しまして、ずっと補助をしているところでございますが、それに加えて、今般のコロナ禍で大変厳しい経営環境になるという中で、今まで類似の補正予算、議会にお認めいただきまして、運行継続、経営安定を図ってきたところでございます。今定例会におきましても、原油高騰で、運転動力費が高騰している中で、その支援の補正予算についてご提案も申し上げているところでございます。JRローカル線につきましては、まさに全国的、広域的なネットワークの一部ということでございまして、そこをまず国でしっかり維持するという考えを示していただきたいということで、先般も国土交通省に対し、鉄道ネットワークの維持確保について国としてしっかり財政支援をしていただく、また、仕組みづくりをしていただくという部分を知事から要望させていただいたところでございます。先ほど委員から国の検討会の話もございましたが、この国の動向をしっかり注視しながら、利用促進、沿線自治体とともにしっかりと取り組むとともに、さらなる高齢化の進展やカーボンニュートラルといった観点もございます。鉄道ネットワークの維持に向けて、県としてもしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
【本郷委員】
ご答弁ありがとうございました。先ほど望月先生が申し上げた通り、過疎の問題もみんな連携してまいりますし、運転免許も全員持っているわけではございませんし、後期高齢者の免許更新には新しい試験制度が導入されたようでございます。そういうものも含めて、行政が健全な意味で優しさを発揮して、200万県民の日常生活が担保できるように、今後とも次の時代を見据えた施策をぜひご提言いただけるようによろしくお願いを申し上げます。
地方分権について
【本郷委員】
最後に地方分権の観点から、我が国のコロナ対応を振り返ると、現場を熟知した最前線の地方が各知事のもと臨機応変かつ機動的に常に対処してきました。霞ヶ関は地方の尽力により乗り切ったといっても過言ではありません。つまり、都道府県のデータを集約して予算委員会で答弁をしているわけでありますから、皆さんのデータなくして日本の国は動かないわけです。私たちは、先行きが不透明で将来の予測が困難な時代を生き抜かなければなりません。そのためには、地域が自らの発想と創意工夫によって問題解決を図るための基盤整備、国から地方への権限移譲、地方分権を強力に進めていく必要があります。地方分権一括法がもう10年ほど前に法律ができましたが、現実には作動しておりません。そういう意味でも、地方分権を強力に進めていく必要があるという、ある意味では政治的な判断でございますが、この国では、明治政府以来、中央集権体制が続いています。かたや、アメリカやドイツでは州知事の権限が極めて大きく、例えばニューヨーク知事やその他の州の知事の発言は外交安全保障については大統領が持っておりますが、その他はほとんど知事が持っております。つまり、州知事の権限が大きく、地方制度を定めるのは連邦政府ではなくて各州であります。様々な課題への迅速、柔軟な対応にはわが国においても知事の権限の強化が極めて必要かと思われます。したがって、地方分権の一丁目一番地はその辺から、切り口を割いていかなければならないと思っております。そこで、国はもとより他の自治体の勤務経験を豊富に有し、国と地方の関係性を熟知される企画振興部長に地方分権について俯瞰的な視点での御所見、この国を変革するラストチャンスとの強い決意を感じますので、ぜひ御所見をお伺いしたいと思います。
【清水企画振興部長】
地方分権について俯瞰的な視点からということでご質問いただきました。平成7年に地方分権推進法が成立いたしまして、国と地方の関係が上下主従から対等協力という形に変わりまして、機関委任事務が廃止、権限移譲といったものが進められてきております。最近では、地方が国に対して制度改正を提案できるという、提案募集方式という方式も行われており、国の方でも分権を進めるという姿勢は見せているというところではございます。本県ではこうした国の動きを活用しながら、県民の利便性向上に取り組むということで、例えば今申し上げた提案募集方式ということで申しますと、わが県はかなり積極的に国に提案している県の一つでございまして、これまで47件提案し、そのうち22件が実現したということで、それだけ国の制度を本県の提案で変えさせてきており、一定の成果を挙げてきていると思っております。知事自身も自ら率先し、全国知事会等の場で、現場だからこその問題提起を提言されておりまして、実際に先般閣議決定された骨太の方針2022の中で地方への計画策定の義務付け、要は国が法律で自治体にこういった対策のために計画を作りなさいと、いろいろ努力義務だったりしておるわけですけれども、それが地方にとって相当の事務の負担になっているということもありまして、計画の内容や手続きを相当程度自治体の裁量に委ねるという方向性が閣議決定されたということに、知事の提言がつながってきているということで、県全体としても積極的に分権に対して取り組んできているところでございます。しかしながら、知事も常々、分権は道半ばであるということを主張されておりますし、私自身も本質的な部分での対等協力関係というところまで至っているのかということは、確かにまだ疑問がないわけではないと思っております。私自身、これまで大阪府と宮城県で勤務したことがありますが、当然、県によって全然実情は違いますし、特に長野県の場合は77の市町村がありまして、地理的な特性ですとか産業構造、人口構成というものも全然違うという中で、霞ヶ関で全国画一的な制度を作って、自治体にやってもらうというこのやり方もかなり難しくなってきているのではないかと、長野県にきて思いを強くしているところでございます。先ほど、委員からも十字路に立っているというご発言がありましたけれども、まさに今、大きな岐路にこの国は立たされていると思っております。その中でこれまでの価値観や仕組みが本当にこれからの時代に適合しているのかどうかという点であらゆる制度、仕組みを総ざらいで見ていくという点では、やはり国と地方の関係というものもこれまでのキャッチアップ型の時代には有効であったこの中央集権というやり方から、この複雑多様化する社会、県民のニーズに応えていくにはやはり、地域の実情に応じた施策を地方が自ら実践していけるような体制にしていくということが重要ではないかと感じております。この長野県で積極的に分権提案、知事も相当具体的な提言をされておりますので、しっかり県としても国に提言を行いながら国と地方の関係を、少しでも県にとっていいような形になるよう微力ではございますが努力していきたいと考えております。
【本郷委員】
玉井部長、清水部長から長野県の、そしてまた日本の未来に展望が持てるご答弁をいただきましてありがとうございました。ぜひ、そういった理念のもとに一層ご尽力いただくことを祈念して私からの質問を終わります。ありがとうございました。