【本郷委員】
観光に係る戦略を実現するため、国においては、国際観光旅客税の徴収により、観光基盤の拡充強化を図っている。
人口減少化の中、県・市町村の観光施策において、十分な財源を確保するため、関係者から幅広く意見を聞く等、検討を始める時期であるが、どのように考えるか。
【熊谷観光部長】
他の県、市町村では、検討を進めているが、税ありきで始めて議論が滞っている自治体が見受けられる。何をするために財源が必要なのか、どのくらいの長野県の基盤を作るのか。そのためにどのくらいの金額が必要か。一般財源の負担や国からの補填や県外からの負担等、財源の総額をみた上で、税の負担のあり方を考えていく。
営業本部について
【本郷委員】
新年度から知事自らが本部長となり営業本部が発足され、職員自らが売り込みを行う他、マーケティングデータの調査や分析、国内外への販路の開拓、ターゲットを定めた高付加価値での販売、市場ニーズの生産者等へのフィードバックなどに取り組んでいくとされている。営業本部設置の目的や思い、どういう体制でどのような仕事をして何を実現したいのか。
銀座NAGANOが営業本部の首都圏サテライトという位置づけになるということだが、具体的な役割や機能について現時点の考えや見通しを伺う。
【熊谷観光部長】
営業本部の活動の中でマーケティングサイクルが非常に重要となってくる。今までは農政部のような生産振興部局が市場調査と、これからの市場に受ける新品種の開発、流通対策まで行っていたが、公平の原則という観点から、商談会の場の設定やおいしい信州ふーどとしての発信といった横並びのことしか行えていなかった。そのため、マーケティングサイクルの中で、商品がどのように売れて、消費者はどのように感じたのかという最後の販売戦略が生産振興部局でも銀座NAGANOでもできていなかった。このサイクルを回すためにも、市場戦略と商品戦略だけでなく販売戦略にも力をいれて取り組んでいくということが営業本部の設立に対する思いである。
営業本部の体制は営業促進班とメディアブランド発信班2班体制である。職員は14名で営業販売促進班には民間の専門家を2名、メディアブランド発信班には民間の経験者を1名入れて、それらの知識と経験を学びながら職員の能力を高めていきたいと考えている。
具体的な取組みとしては、マーケティング・モニタリング調査も行うが、マッチング支援と販路開拓支援、重点品目の集中的な売り込みという3つの組み立てで行っていく。特に重点品目は生産振興担当部局と業界からの推薦を参考に、事業者とマンツーマンで売り込みに行く。それ以外の品目はマッチングサイトを作りインターネット上の取引を前提に営業本部の職員が常にモバイルを持ち販売の展開をしていくということも行おうと考えている。
今後の銀座NAGANOの位置づけとして、マーケティング・モニタリングの機能と売り込み商品のショーウィンドー的な機能、イベント・キャンペーンの展開機能、酒類の卸販売機能、帳合機能の5点が挙げられる。帳合機能とは、生産者が取引先と個々に銀行口座を結ぶのではなく、銀座NAGANOが代行することを意味し、銀座NAGANO自体も今後は長野県内の小規模で高品質な商品を作っている生産者のために中間商社的な機能を備えていくことも考えている。
観光業の人材不足に対する外国人材の活用について
【本郷委員】
国は深刻な人手不足を背景に、これまで高度専門職に限定していた施策を転換し、外国人労働者の受け入れ拡大に大きく舵をきり、入管法の改正を行った。改正入管法では、高度専門職以外に幅広い業務に従事できる在留資格が新たに創設され、今年4月から特定技能1号として14業種で受け入れがされることとなった。
観光関係では、訪日外国人旅行者の増加、宿泊需要の増大に対するため、宿泊分野としてフロント、レストランサービス、接客など従事する外国人労働者を5年間で最大22000人受け入れる方針を示している。これに対応するため、観光部も新たに観光業外国人材採用支援事業を行うとしているが、宿泊事業者からは、外国人材の活用についてどの程度の要望があるのか。また、この事業について、今後どのように進めていこうとしているのか。さらに、これ以外の方法でも外国人材の活用につなげる取組が必要だと思うが、どの様に対応していくのか。
【熊谷部長】
今まで宿泊業の皆様は独自でルートを作ったり、県でも日中友好事業の一環で、中国対外友好合作服務中心と協力してインターンシップの受入を行ってきたところである。観光部でもアンケートを実施したところ、人手が不足しているという事業者は全体の46.1%に達するとともに、外国人材の積極的活用については実施中又は実施したいとする回答が29.3%あった。さらに、海外現地採用面接会に参加したいか聞いたところ、回答があった事業者から推計すると約150社が参加したいという回答をいただいており、関心の高さを感じている。
今後どのように進めるかについて、観光業就業促進・生産性向上協議会を立ち上げ、海外現地採用面接会を行う国の選定のほか、先ほどのアンケートでは、57.8%の企業が宿舎を用意するとの回答があったこともあり、より良い受入環境の整備、日本語支援、コミュニティの形成、生活環境の改善等などについても検討を進め、慎重に行っていきたい。
具体的に想定している国は、東アジアもしくは東南アジアあたりであるが、専門の委託業者をプロポーザルで選定し、年2回、県内での事前説明会と海外での合同企業面接会を実施したいと考えている。
他の方策については、平成24年から国際課が窓口となり、中国対外友好合作服務中心と中国人大学生のインターンシップの受入れを進めており、日本で学ぶ外国人留学生に対して産業労働部と連携して県内外で企業説明会を開催していきたい。
2018年のインバウンドの状況と今後の戦略について
【本郷委員】
日本政府観光局の発表によると、2018年の訪日外客数は、前年比8.7%増の3119万2千人で、統計を取り始めた1964年以降最多となるとともに、初めて3千万人を超えた。市場別では、中国が838万人と、全市場を通じ初めて800万人を超えたほか、主要20市場のうち香港を除く19市場で過去最高を記録したとのことである。
そのような状況の中、本県の状況はいかがか。また、その状況を受け、新年度はどのような戦略を考えているのか。
【宮原国際観光推進室長】
本県における外国人延べ宿泊者数は、2018年1年間で、146万4670人と過去最高を記録した。また、対前年比は13.5%増で、全国の伸びである11.2%増を上回った。
市場別にみると、台湾が前年比30.6%増の39万1190人と過去最高を記録するとともに、本県がプロモーションの対象国としている13市場のうち、前年を下回ったのは香港のみで、それ以外の12市場においては、全ての市場で過去最高の延べ宿泊者数を記録している。
今年秋に開催されるラグビーワールドカップや来年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、今後ますます増加が予想される訪日外国人旅行者を、東京や大阪など大都市から本県にしっかり取り込みたいと考えている。そのために、地域で創ろう!NAGANOベスト1000旅行商品造成事業により、県内各地で観光地域づくりに取り組んでいる皆さんと一緒に、多種多様な外国人旅行者の興味や趣味嗜好にマッチした旅行商品づくりを行う予定。そして、タビマエやタビナカで外国人旅行者が旅行商品の情報を適時にそして容易に入手できるよう、県公式観光サイトの全面的な見直しも行っていく。また県内周遊フリーパスの造成など受入環境整備を行っていくとともに、プロモーションについても重点対象としている13市場ごとに特性やトレンドを分析し、個別の戦略を立て、効率的に進めていきたい。これら施策の推進にあたっては、昨日設立した長野県インバウンド推進協議会と連携をとり、民間のノウハウとスピード感を取りいれながら進めて参りたい。