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平成24年11月定例会 環境商工観光委員会 本郷委員 質疑要旨
温暖化防止の長期目標について
【本郷委員】
成熟国家における、新たな経済成長の概念において、低炭素社会をいかに実現していくかが、我が国における大局的な国家戦略、基本認識として重要と考えている。現在、長野県地球温暖化防止県民計画の改定作業を進め、2月議会条例改正の予定と聞いているが、2050年の長期目標について、温室効果ガス排出量80%の削減、最大電力需給75%の削減という非常に高い目標であり、県民へ大きな影響が及ぶと推測されるが、現在の議論はどのような状況か。
【中島温暖化対策課長】
成熟国家における低炭素社会の実現、経済成長と連動しながら同時に温室効果ガスの削減ができる社会を目指した戦略にしていきたい。温室効果ガス排出量を2050年に80%削減の目標については、国の第4次環境基本計画において位置づけられており、国際的なIPCCの議論の中で、今後の気温上昇を2℃以内に抑えるためには先進国で80%削減が必要という議論から出てきた数値。県としても、現段階で、国の動きを尊重したもの。
最大電力需要については、現在、国の目標は無く、長野県独自の目標。中間報告、パブリックコメント、10地域での地域懇談会、関係業界との意見交換会・ステークホルダー会議等を開き、目標についても様々な意見が出されたところ。一つは、国で検討している革新的エネルギー環境戦略に基づく2013年以降の新しい温暖化対策の計画などの国の動向を注視していきたい。また、地域懇談会やパブコメ等における意見を踏まえ、最大電力需要75%削減の目標については、現在見直す方向で調整しているところ。今後も国の動向、関係団体等の意見を踏まえながら、目標を設定していきたい。
リサイクル等の状況について
【本郷委員】
長野県における廃棄物の発生状況及びリサイクルの状況が現在どのようになっているかお答えいただきたい。
【中島温暖化対策課長】
新しい計画の中で、事業者に対する温室効果ガス排出抑制を求める計画書制度、家を新築した際に住宅建築物に対して省エネ・自然エネに関する検討を求める制度について、検討をしている。制度については、ステークホルダー会議において、経営者協会等の事業者団体、工務店協会や建築士会等の建築業界団体に会議に参加していただきご意見をいただいた。また、個別に各業界団体とも意見交換の場を設け、それらの意見を踏まえ制度の詳細を詰めているところ。現段階で、提案している排出抑制計画書制度、建築主に対する建築物の省エネ・自然エネの検討制度について、関係者の理解をいただいている。
【古厩廃棄物対策課長】
一般廃棄物の発生状況については、総排出量という観点で申し上げると、平成20年が72万1千トン、平成21年が69万8千トン、平成22年が67万9千トンとなっており、割合で言うと毎年2〜3%ずつ減少している。1人当たりに換算すると平成20年が全国平均1033グラムに対し、長野県では907グラムで全国第5位、平成21年は全国平均が994グラムに対して長野県は881グラムで全国第4位、平成22年全国平均が976グラムに対して長野県は862グラムで全国第4位となっている。
リサイクル率については、平成20年度は全国平均20.3%に対して長野県は24.6%で全国第6位、平成21年度は全国平均20.5%に対して長野県は24.7%で全国第4位、平成22年度は全国平均20.8%に対して本県は25.8%で全国第3位という状況である。
産業廃棄物については統計的に一般廃棄物と少し異なっているが、平成16年の頃の長野県の総排出量が358万5千トンほどあった。直近では平成20年の数字となるが370万9千トンである。わずかに増えているが、これは下水道の普及に伴って下水道汚泥が増えてしまった分があるためである。下水道汚泥を除けば減少傾向にある。産廃のリサイクル率については、平成16年当時が41%、平成20年が38.8%という状況である。
ゴミ減量への取組について
【本郷委員】
長野県における廃棄物の減量およびリサイクルに関する取り組み状況について、今の質問とコインの裏表の関係になるがどのようになっているか。
【古厩廃棄物対策課長】
先ほどのご質問に対して申し上げた数字に見られるように、ごみの減量化、リサイクルの取り組みについても長野県は全国的にも大変進んだ県かなと思っている。一般廃棄物については市町村が実施主体であり、市町村の色々な取り組み、積極的な取り組みによるところが大きいと考えている。
また、長野県民の生真面目と言いますか、分別なんかもしっかりするし、県民性も大いにいい方向に影響しているのかなと思っている。県とすれば廃棄物処理法の中で市町村を積極的に助言・指導するという立場があり、市町村の廃棄物の発生抑制・リサイクルに向けて、県としても後押ししているところである。たとえば、一般廃棄物の処理実務セミナーを毎年開催しており、市町村の職員に対して3Rの全国的に先進的な事例の紹介や研究などを毎年行っている。また、市町村の担当者を集めての意見交換会を概ね地方事務所の単位ぐらいで実施しており個別の課題についての議論をしているところである。
また、再三委員会でも出ている、私どもの行っている食べ残しを減らそう県民運動やレジ袋削減県民スクラム運動によっても、ごみの削減、リサイクル率の向上についての啓発を行っているところである。また、産業廃棄物についても、産業廃棄物3Rフォーラムを開催して、製造業等の排出事業者にお集まりいただき、先進的な事例等の事例発表等を行っている。
また、大量に廃棄物を排出する大きな事業者と、産業廃棄物減量化適正処理実践協定を県と事業者の間で結び、各事業者の方々が毎年ごみをこの位抑制するんだ、この位リサイクルするんだという計画を作っていただき、それを県の方に提出していただいて、実際どのような効果があったかも報告いただき、HPで発表している。産業廃棄物の発生抑制もこの様な形で行っている。総じて、10月の強化月間のときには、長野県の循環型社会推進大会も行っており、産廃一廃にかかわらず、ごみの減量化・リサイクル、そういった循環型社会形成に向けた運動を行っているところである。
補正予算の意義について
【本郷委員】
一人当たりの全国のごみの排出量は平成12年の1185グラムをピークに減少を続けており、平成20年には1033グラムに対して長野県は907グラムで、こうした事業の推進は事業者と個々の取り組み、行政指導等が三位一体となって絡んできているわけであるが、その観点から今回の補正予算の意義を改めて再認識したいと思うがその点はいかがか。
【古厩廃棄物対策課長】
委員のご指摘の通り、先ほどから色々と申し上げたが、ごみの減量化・リサイクル等については行政、県市町村も頑張っているわけであるが、一番は何を言っても排出をする事業者、家庭の個人こういった方々が自主的・積極的に取り組んでいただくことが一番肝要かなと思っている。我々は事業者、消費者・県民の方々に、きっかけ作りをするのが務めかなと思っている。マイバッグ普及のためのレジ袋無料配布中止の今回の補正予算も同様であり、構造からすればレジ袋はやめましょうという話になるが、これも一つの象徴であり、子供からお年寄りまで一番手に触れる機会の多いレジ袋を象徴として、他のあらゆる生産物・ごみを皆さん自主的に、積極的に減らしていきましょうと願ってのものである。長野県の豊かな自然・地球環境を守る事業になっている。
小型家電リサイクル法について
【本郷委員】
先日、産業廃棄物協会との勉強会があり、レアメタル等の問題について、「小型家電リサイクル法」正式には「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」において、市町村が受けてやっていくことで、市町村が回収の窓口になっていくのですが、事業者が資格を持っていなくても、アウトサイダー的な方がいて、そのような問題において、県の市町村に対する健全な意味での強い指導力を発揮して欲しいという要望が強い。当然基礎自治体の市町村が主体的であるのですが、上位関係である県が統合的な立場から、業界が苦悩をしているので、レアメタルひとつとっても、これが本格的に始まれば、中国等の関係についても神経を使わなくてもいい問題と文献で出ているが、このあたりの県の実態はどのような状況か。
【古厩廃棄物対策課長】
「小型家電リサイクル法」は、今年8月10日に国会で成立した。法律の目的は、小型家電の中にレアメタルなどが入っており、それがそのまま埋立処分されたり、東南アジアなどに流れてしまうなど、貴重なレアメタルを日本国内で確保する目的がひとつ。また、最終処分場にも限りがあり、少しでもごみを減らすことにより、最終処分場の逼迫に対する問題もある。また、レアメタルのような希少なものもあるが、鉛などそのまま埋め立てると環境に負荷を与えるものもあるので、埋め立てを減らしていくなどの目的により作られた法律かと考えます。
法律は8月に成立したが、法律では概略部分が示されているだけであり、市町村が基本的には回収をして、国が認定する業者に引き渡すというようなアウトラインが決まっているが、細部については、来年1月か2月ぐらいに、政省令やガイドラインが決まると伺っている。
情報がまだ、未確定な部分があるので、市町村も悩んでいる部分があるかと思っています。このような状況があるので、県としても国の情報を的確に早めに把握し、市町村を集めて、国の職員を呼び、説明会などをして情報を共有しながら、法律の趣旨に沿うよう、県も市町村に対して指導していきたいと考えている。
【本郷委員】
現状はわかりました。法律の趣旨に沿った運用がされないことを危惧されているので、市町村に対して、ステージに乗ってもらうことと共有の認識を持つこと。また、産業廃棄物協会ともコミュニケーション良くして欲しい。現実の法体系を民間の業者はまだよくわかっていない部分があると思うので、そのあたりの情報交換を積極的にしてもらうと不透明な部分が明確になると思うので、市町村や業界に対しても正確な情報提供をお願いする。
信州リサイクル製品認定制度の継続について
【本郷委員】
信州リサイクル製品認定制度は、3年間の延長の後、平成26年度にはなくなるとのこと。しかし、業界は制度の継続を希望している。
66製品のうち、再生砕石は、本制度によりマーケットでの流通を得ている。しかし、制度がなくなると、現状でも自然の石の方の流通量が7:3〜8:2と非常に多く、対応に苦慮することになる。
業界では、信州リサイクル製品認定制度を評価している。業界自身の自主努力も重要であることは認識しているが、マーケットでの流通についてご配慮いただきたいと議会では業界より相談をいただいている。行政当局の見解を伺いながら業界の方々とも話したいと考えている。
県の指導力を発揮してもらい、本制度が3年後になくなるとしても、せっかくの制度をいい形で残してもらうことによりリサイクル製品のマーケットが残って行くようにしてもらいたい。これができれば持続型社会のひとつの証左になる。これについてのご見解をいただきたい。
【古厩廃棄物対策課長】
本制度については、概ねリサイクルという言葉も県民に浸透し、また66品目が現在認定されている。現在では、県がやらなくても巷にはリサイクル製品が多く出てきている時代になってきていることから、制度自体も一定の効果を得ることができたと思われ、新たな認定は23年度をもって終了した。
しかし、現在登録されている66品目については、向こう3年間はしっかりと様々PRをして、マーケットでの流通を確保するよう努力している。
特に、66品目ある中で、公共事業系の道路の基盤材等として使えるものが43品目ある。こういったものの需要はどうしても公共事業に頼らざるを得ないところがある。よって、建設部、農政部、林務部など公共事業系の部署に利用促進の働きかけを行っている。特に、建設部では認定製品を使うためのモデル事業があり、積極的に利用してもらっている。昨年をもって新たな認定を終了しているが、我々もこれで終わりとは思ってはいない。ただ、県が関与したものは一定の成果を得たと思っている。今現在関係団体の方々と話をして、県が直接関与しなくても民間ベースで同じ形が継続できないかと研究している。今後、うまく調整がとれたあかつきには衣替えをして再スタートしたいと考えている。
【本郷委員】
今のご答弁により認識を深めることができた。市町村の中にもかなり温度差があるので、県が全体として是非強い指導力を発揮してもらいたいと業者は言っているので、この点をご理解願いたい。そうすることによってマーケットでの流通が確保される。小型家電リサイクル法と信州リサクル認定制度について強い要望をいただいたので、一段のご高配をいただきたい。
商工労働部・観光部・労働委員会
デフレに対する見解について
【本郷委員】
昨日、中小企業の経営者からお話をお聞きしたが、経済情勢は、大変厳しい状況にあると認識している。雇用の面でも、大手企業の雇用調整による問題が起きている。現在、デフレの長期化問題に直面している。知事も一般質問で答えていたが、デフレ問題について、大局的な視点からの見解を、商工労働部長にお聞きしたい。
【太田商工労働部長】
端的に言うと、需要不足と供給過剰により、ものが売れないために価格が下がり、結果、企業業績が悪化し、従業員の所得が減り、それが家計を圧迫し、一層景気が悪くなる状況にあると考えている。政府の見解では、17年間デフレが続いているとのことであり、この間、日本銀行では、ゼロ金利に近い金融政策を行っていると承知している。
日本銀行の金融政策について
【本郷委員】
金融政策の中では、量的緩和の是非が問われている。日本銀行が、政府発行の建設国債を購入する買いオペレーションについて、見解をお聞きしたい。
【太田商工労働部長】
一般論でいうと、デフレに対する金融政策は2つあり、一つは金利をどこまで下げられるかということ、もう一つは、今お話があったように、市場に出回る貨幣の流通量を増やすことと認識している。発行された建設国債を日本銀行が買い支えた場合、市場にお金が出回ることは事実といえる。また、公共事業によって投資されたお金が一般社会に出回り、少なくともその間については、景気に対して良い影響があるとみている。
【本郷委員】
健全な抑制力を持ち、日本銀行の独自性を担保しながらも、量的緩和について、適切に運用をしていかなければいけないと考えている。
財政出動の必要性について
【本郷委員】
財政出動は、政府が行えるデフレ対策の一つと考えられる。地方公共団体である長野県も、言い方を変えれば長野県の「政府」といえる存在であり、長野県の政府として、県が、金融政策、財政出動について明確に戦略を出さなければ、状況の打破は難しい。これについて、見解をお聞きしたい。
【太田商工労働部長】
短期的、中長期的に分けて考える必要がある。短期的に見ると、中山間地においては建設業が大きな雇用吸収力を持っているため、一般論で言うと、財政出動により公共事業を行うことで、地域の景気・雇用に良い影響を与えると考えている。しかし、いつまでも公共事業に頼ることはできないと認識している。
中長期的にみると、財政出動とは少し違うが、産業の活性化が必要である。それには、お金を使える世帯を増やし、需要を喚起する必要がある。方法としては、企業利益の従業員への配分を多くして、可処分所得を増やす方法がある。もう一つの方法としては、市場において魅力あるヒット商品を生み出すことがある。この厳しい中でも、スマートフォン関連の企業は、忙しい状況が続いている。
また、家や自動車等の消費は、産業連関の観点から見ても波及効果が大きく、これらの商品を、国民、県民が、安心してローンを組んででも買えるようになれば、効果が大きいと考えられる。ヒット商品を生むとか、労働分配を変えるとか、どこかの段階できっかけを作ることが必要である。
【本郷委員】
正しい解釈だと思う。実は、日本の輸出比率はそれほど高くなく、必要なのは内需の拡大である。
そのためには、次世代の産業に対して中期的な展望を持つ必要がある。併せて、年金、医療、介護、子育てなどの社会保障制度を明確にし、国民に安心感を与えることで、個人資産を動かす必要がある。県に出来ることには限度があると思うが、頑張っていただきたい。
中小企業金融円滑化法について
【本郷委員】
金融円滑化法について、10日ほど前に金融庁の方々と意見交換をした。金融担当大臣談話を踏まえ、「来年3月で(円滑化法)終了となるが、
?金融機関が貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努める。
?金融検査・監督の目線やスタンス。
?検査・監督を通じて、金融機関に対し、関係金融機関と十分な連携を図りながら貸付条件の変更等の円滑な資金供給に努めるよう促す。
?不良債権の定義。
以上については、円滑化法の期限到来後もこれまでと何ら変わらない。
また、金融機関に対して、借り手の経営課題に応じた最適な解決策を借り手の立場に立って提案し、十分な時間をかけて実行支援するよう促す。」と言われた。
これは、霞ヶ関のしたたかな表現であり、実際、来年3月に(円滑化法)期限到来すれば法的拘束力が無くなるため、現実には違う風景が出てくると予測している。従って、先般、この法律の期限延長という意見書を全会派一致して、本会議で可決した。
金融庁の話では、「国では企業再生支援機構、県では中小企業再生支援協議会が非常に適切に運営をされているので、ここで是非、良い形で対応していただきたい。また、ファンド等が出来れば更に理想的である」と言われているが、現実には、全国で30〜40兆円の不良債権が出ることは既に報道がされている。
当然、金融当局はA、B、Cランクに分けるため、来年4月1日以降どうなるか分からない。そこまでを見通して対応しなければいけないと思うが、総じて太田部長にご見解をお伺いしたい。
【太田商工労働部長】
金融円滑化法について、もともとはリーマン・ショックの影響の緩和ということで金融庁で当時の亀井金融大臣が主唱でやられた「モラトリアム」というべきものだと思っている。当初は、21年12月からで23年3月で終わる予定が、景気がなかなか良くならないこと、もう一つは震災の影響もあって、2度延長され、来年の3月で最終的な期限となっている。
いくつかの対策として、一つは、金融大臣の談話を指針として私どもにも来ているが、円滑化法終了後でも金融機関においては、企業からの借換要望について、真摯に応えてほしいというもの。もう一つは、再生支援協議会について、金融機関等から派遣していただいている専門家が、企業の再生計画の策定を支援し、それに基づいて貸付条件の見直しをはじめ企業そのものの活性化を図ることである。
これについては、計画を作るまでに非常に時間がかかるという問題があったが、今夏の通達により、再生計画の策定期間が短縮されるように支援方法が変更された。加えて、各金融機関の協力により、10月1日から再生支援協議会の人数を増やしたところで、実際、相談件数なども増加している。
もう一つは、金融そのものだが、先ほどの金融機関の努力も当然必要と思っており、また、各金融機関にも依頼する予定であるが、私どもも借換のための制度資金があり、来年の3月で取扱期間終了の予定であるが、延長する方向で今、制度設計をしているところであり、財政当局で認めていただければ、来年度以降、その方向でやっていきたいと検討している。
もう一つは、先ほど経営支援課長から説明したが、金融円滑化法の期限到来に関わる相談窓口を商工会連合会の各単会70会と協調して開設をしており、来年3月まで、場合によっては、それ以降まで含めて、個別の相談に対応するように考えている。
【本郷委員】
私の友人も数人、この制度を利用しており、来年もし、(円滑化法)即、期限終了となれば、廃業という覚悟でやっているほど現実味がある話なので、総力戦で、今、回答をいただいた方向でソフトランディング出来るよう是非ともご対応をお願いしたい。
商店街支援策について
【本郷委員】
昨日の中央会との懇談の中で、長野県は全国的にみて商店街施策に対して比較的クールだという話があった。他県は国の施策も活用して丁寧にやっているというということだが、いかがか。
【山崎経営支援課長】
県の対応がクールではないかということについては、予算が少ないと言われることもあるが、少ないなりにできる限りの対応をしている。商店街の方々とも補助事業の打合せなどの際に、どのような形での支援が一番良いかを話し合いながら施策をつめている。景気動向の悪化等で商店街の経営も苦しい状況だが、知恵を出してできる限りのことをやっているところ。
【本郷委員】
クールだという印象を持っているということであるから、フランクな関係を作っていかなければならない。行政側の姿勢が問われている。国の施策も活用しながらアクティブな支援をし、事務的な関わりだけでなく人間的な関わりを持ちながら問題解決の糸口を見つけて欲しい。
【本郷委員】
長野県の進むべき進路について、コンパクトにお話いただきたい。
【太田商工労働部長】
商店街の関係については、誰が中心になって振興していくかという人の問題がある。岩村田商店街の阿部さんのような商店街を引っ張っていける人材の発掘及び育成に来年度以降も力を入れていきたい。
長野県の進むべき針路について
【本郷委員】
短期的には景気対策、中長期的には産業構造の変化という課題があると思うが、それを含めて、長野県の進むべき針路について、商工労働部長にお聞きしたい。
【太田商工労働部長】
私どもでは、製造業の振興を中心に、この3月「長野県ものづくり産業振興戦略プラン」をとりまとめ、企業の皆さまにもご理解をいただいている。このプランでは、「健康・医療」、「環境・エネルギー」、「次世代交通」分野への産業展開を目指している。
特に「健康・医療」分野は、長寿高齢化社会を迎える中で、内需の拡大が期待できる分野であり、ものづくり産業に留まらず、周辺産業も含めて、注力していきたい。また、長野県は長寿の先進県なので、これを活かしてビジネスモデルを構築することができれば、日本中に広まることも期待できる。
【本郷委員】
観念的、抽象的ではなく、実用的、実践的に施策に結び付けていくのが行政の役割である。プラクティカルな行政の推進をお願いしたい。
中国との交流等について
【本郷委員】
今年11月、5年に1度の共産党大会が終了し、習近平氏をはじめとする新たな指導体制が決まり、中国との関係はますます重要なものになると考えるが、今後どのように交流を続けていくのか。
【白鳥国際課長】
昨今日中情勢について、日中友好協会など識者の観測によると、指導部交代後、改善に向かうとの見通しがあるものの、今後も状況を注視していく必要がある。中国との関係は、複雑な問題を包含しながらも、以前にも増して重要。昨今の情勢は、日中国交正常化40周年に至る今日までに築き上げてきた良好な関係が瓦解し、再建までの道のりは不透明かつ厳しいものがある。一挙に良好な関係に戻すことは困難であるにしても、来年は長野県と河北省の友好提携30周年記念事業を予定しているので、地方政府同士や草の根交流など、顔の見える交流を重ね、中国との良好な関係構築に寄与したい。
尖閣諸島問題後の観光客の現状について
【本郷委員】
尖閣諸島問題について、現在、長野県の観光にどのような影響が出ているか。また、成長著しい中国からの誘致、インバウンド対策についてお聞かせいただきたい。
【佐藤国際観光推進室長】
尖閣諸島問題後の観光客の現状等について、日本政府観光局の発表によれば、10月の中国から日本への全体の入込客数は、前年10月に比べて3万5千人程、率にして約33%減少しており、国別で見ると、中国が一番の減少となっている。日本全体で観光客数を見ると、中国は韓国に次いで2番目だが、長野県に限っては5番目で、長野県全体の観光客の中で占める中国の割合は低く、今回の尖閣問題に関して、今のところそれ程大きな影響を受けていない。
ただし、中国には13億の人数がいるので、長野県としてもターゲットを絞って誘客に取り組んでいきたい。中国ではここ数年スキーブームが起こっており、長野県のパウダースノーのスキーを楽しんでいただきたいのと、日本への教育旅行に非常に熱心なので、教育旅行の誘致についてもあわせて取り組んでいく。
中国は今まで団体ツアーが中心だったが、ここ数年、個人旅行、いわゆる家族連れが非常に増えていて、ほとんどは東京に4泊ないし5泊くらい滞在するのが中心になっている。その方々をいかに長野県に呼んでくるかを考えていかなければならない。
観光振興基本計画について
【本郷委員】
地域経済活性化への貢献をどのようにしていくのか。信州暮らしとは何か。また、山岳高原を活かした世界水準の観光地の形成とあるが、どのように作ろうとしているのか。
【浅井観光企画課長】
地域経済の活性化の実現には、いかに観光客にたくさん来ていただけるかが重要である。今まではキャンペーンが中心で、観光地を訪れてもすぐに離れてしまい消費に結びついていない実態があったことから、体験型観光や滞在型観光を進め、消費に結び付けていきたい。そのためには、楽しい体験・滞在メニューが必要と考えており、他の産業と連携した商品を作っていきたい。
また、地域のファンを作り、リピーターにつなげていくことによっても、地域経済活性化への貢献を果たしていきたい。県民の日常をどう活かしていくのか、委員が指摘したとおり、県民が自信を持つことが重要である。県民の普段の生活が都会の人には魅力であり、長野県観光につなげていきたい。
また、住民の地域の暮らしを楽しみたいというニーズが高まっており、住民のできることを活かして長野県観光に参画してほしい。山岳高原を活かした世界水準の観光地については、長野県の差別化には山岳高原が売りであり、これを使って観光につなげたい。自然や景観を保全し、滞在型の観光を進めたい。計画づくりを行い、予算編成を固めていきたいが、地域によって事情が異なるので、地域と協議し、県としてできることを考えていきたい。
信州ブランド戦略について
【本郷委員】
ブランドコンセプトの「信州主義」について、哲学的な長野県人はなかなかいい所に目をつけたと思っているが、一般の県民の皆さんに当時者意識を持ってもらうには、それなりの努力が必要だが、どうやっていくのか。また、本格的なブランド戦略の策定を機に行政機関の発信力は大胆に見直すべきであり、県庁界隈で終わってしまう可能性が強いと思うが、今後の見解を伺いたい。
【熊谷信州ブランド推進室長】
県民一人一人の行動につなげるためには、どのようにしていったらいいのかという御指摘。「信州主義」自体が、県民一人一人が誇りを持って、日常の身近な生活を価値のあるものだと発信していこうというものであり、ブランド研究会でも行動を引き出す言葉として非常に高い評価をいただいているが、県民の皆さんに身近な合言葉として使っていただくためには、工夫が必要であるという御指摘もいただいている。
現在、県内のコピーライターからなるチームを設け、県民のみなさんの共感が得られる解説、県民向けに行動を呼びかけるキャッチフレーズ等を策定するよう検討している。また、「信州主義」を良く表現している事例などを、ビジュアルを交え、自分の周りのものに価値があることを身近に感じてもらい、納得のもとに行動につなげていく形で進めてまいりたいと思っている。
情報発信を抜本的に変えていく必要があるという点について。マークやロゴなどを統一的に使用していくことは、行政機関だけではなく、市町村、民間企業、県民のみなさんにも浸透していくことが必要だと考えている。ビジュアルアイデンティティ戦略、所謂VI戦略、既に民間では10年、20年前からやっているが、こういったものを県民運動として進めていく。ただ、首都圏の専門家にもアドバイスをいただいているが、電波メディア、テレビCMなどで集中的にイメージを流していくことに加え、現在は会員、メンバーズクラブ、Web、口コミといった個々の趣向を刺激する、個々のニーズにマッチしていく集中的かつ効果的な情報発信の工夫が必要であり、何よりもブランド戦略が、やってみたら自分の実になっていた、メリットがあると感じてもらうことが一番重要であると思っている。
小さな成功事例でもいいので、どんどん積み上げて、ブランド戦略が経済の活性化につながるものであると、県民のみなさんに認識していただくことにより、自発的に自分もやってみようと思える県民運動にしてまいりたい。
平成24年9月定例会 環境商工観光委員会 本郷委員 質疑要旨
温室効果ガス排出目標について
【本郷委員】
新計画の中間報告があった。温室効果ガスの排出量の目標は短期10%、中期30%、2050年は長期が80%となっているが、80%は大変なこと。国全体の根本的なエネルギー構成が変わらなければ厳しい。国の温室効果ガス排出目標の2050年目標はどうなっているのか。
【中島温暖化対策課長】
平成24年4月27日に閣議決定された第4次環境基本計画によると、2050年までに80%削減の目標が設定されている。設定の背景として、IPCC第4次評価報告書では、産業革命以前と比較して世界の平均気温の上昇を2℃に留めるためには先進国全体で2050年までに先進国全体で排出量を80〜95%削減することが必要。バックキャスティングの考え方からこういった目標で設定されている。
自然エネルギーの確保について
【本郷委員】
国の目標に沿ってやるというが、それだけの自然エネルギーの確保が本当にできるのか。原子力の問題も視野に入れながら、中期目標がどのくらいリアリティのあるものか。
【中島温暖化対策課長】
温室効果ガスを削減するためには、省エネルギーと、自然エネルギーの普及が、2本の柱となってくる。加えて、国のエネルギー政策がどういったエネルギー体系をもってくるかにもよる。今回県が掲げる目標の背景としては、国の目標を参考にしながらバックキャスティングで平均気温上昇を2℃に留める観点から定めている。現段階では、国の目標についても、積み上げ的に目標があるわけではなくて、2050年の先を見通しながら、現段階からできる対策又はエネルギー政策のあり方を検討している。そういった観点から、県の計画も2020年までの目標を達成するための対策を盛り込んでいる。2050年までの、体系的な積み上げには、現段階では盛り込める状態ではないが、ただ、エネルギー政策の展開や、自然エネルギー、省エネルギーの推進のためには、早期の段階から取り組みが必要ということで2050年の目標についても掲げている。高い目標に沿って、かつ、経済活動にも悪影響を与えず、経済の成長にもつながるような対策を早期から取り組むためのものとして、2020年までの計画を今回定めてきた。
【本郷委員】
2020年短期の目標は8年先。自然エネルギーの発電は太陽光、バイオマス、水力等、それぞれどれくらい増加させることができるのか、また、そのための政策はどのようにお考えか、目標達成する見通しがあるのか。
【中島温暖化対策課長】
発電設備容量の内訳について。現段階の計画案では、2020年までに30万キロワット拡大。具体的には太陽光25.5万キロワット、小水力1万キロワット、バイオマス3万キロワット、地熱等その他5万キロワット。目標設定の考え方は、7月からの固定価格買取制度の導入や、長野県内のポテンシャル、近年の導入状況を踏まえて設定をしている。その目標を達成できる促進策で、計画の中に情報の基盤整備から経験の蓄積等さまざまな政策を提案しているところ。なお、固定価格買取制度も7月から導入されたところで、9月段階では動向が見えないところもある。おそらく9月、10月以降、県内の具体的な計画が見えてくると考えている。こういったことで、この半年間、この目標が達成できるかもを含め、促進策についても再精査をして、目標設定していきたい。
グリーンニューディール基金について
【本郷委員】
最後にグリーンニューディール基金の補正予算に盛り込んでいるが、今回の予算の本当の意味と、残額約8億円しかないと聞いているが、どのように使うのか。
【中島温暖化対策課長】
予算の狙いについては、県は今年自然エネルギー元年として、一村一自然エネルギープロジェクトの展開をしているところだが、長野県として取り組んでいくためには、すべての市町村が自然エネルギーの取組を本格化していただくことが重要かと考えている。まったくこれまで取り組んでこなかった市町村もあるが、一歩を踏み出してもらう。それと、防災に強いまちづくりでこの予算を活用してまいりたい。残額はあと7億円程度、市町村、県、公共施設の防災環境まちづくりのために使っていきたい。基金の枠は、民間事業の枠を設けることになっているので、残り1億は民間事業者について防災拠点における再生可能エネルギーの整備に活用していきたい。
商工労働部・観光部・労働委員会
次世代産業について
【本郷委員】
付加価値の高い次世代産業で長野県はいくつもメニューがあるが、本当の意味で長野県の主力産業をどこに置いていくのか。背骨となる産業はなにか。もう少し掘り下げたご意見を頂きたい。
【石原秀樹産業政策課長】
この春作成した長野県ものづくり産業振興戦略プランの中で私どもの考え方を展開しているところ。従来から長野県においては、危機的な状況において、繊維から精密機械、電機、情報、機械と業種を変えてきた。
現在も大変な時期にある認識に立ち、目指すべき分野としては、健康・医療、環境・エネルギー、次世代交通の3分野を、これから新しく築く産業分野だと認識している。
ただし、3分野しかやらないわけではなく、これまで育ててきた分野も大切にし、従来型の富士山型から八ヶ岳型、経済の変化にも強い産業づくりを目指しているところである。
需要をどのように産業の活力に結び付けるのかについては、現在一番需要が大きいところはアジアの新興国であり、それを長野県の活力にすべく、目指すべき市場として中国、またはASEANを中心としたアジア新興国をいれているところである。
その他に先進国の中において、長野県または日本の特徴である高齢化もしくは健康分野で、最初はニッチかもしれないが、今後大きく伸びるであろう分野があり、産学官が連携し新しい取り組みを進めていきたいと考えている。
【本郷委員】
だいたいのイメージはわかった。本格的な次世代産業の育成となると、産学官ということだが、新興国は国家資本主義、つまり行政と政治と業界が三位一体となって攻めてきている。長野県もそのような意味においては、一般論の話として終わっている。
部長にはリーダーシップを発揮していただき、3本柱をどのようにマーケット化していくのか、長野県としての強い意志が必要だと私は予感している。
経済三団体を束ねて次世代のマーケットをどうしていくのか、今の感じでは表層的なレベルで終わっている。今回の経済の問題は単なる景気循環論ではなく、危機の分水嶺に立ちすくんでいる状態なので、当局におかれては、議会側にも共有する意識として、経済再生について本格的なプロジェクトチームを作っていただき、もう一歩進んだ戦略戦術の構築お願いしたい。
エコカー補助金終了等の影響について
【本郷委員】
エコカー補助金終了に伴う県内企業への影響はいかがか。また、電力エネルギー確保のため、化石燃料の輸入が増加し、国際収支が赤字となっている状況である。こうした現状に対する認識はいかがか。
【石原秀樹産業政策課長】
自動車産業は裾野の広い産業であり、エコカー補助金終了に伴う県内企業への影響は、大変気になるところ。
電力エネルギーの調達コスト増加に伴う電気料金の上昇は、県民や企業の負担が今後見込まれるところであり、国においても将来を見据えた対策等を示して欲しいと思っている。
今後とも、国の動きを注視しながら、環境部とも連携し、対応していきたい。
【本郷委員】
電気料金の上昇に伴い、県民や県内企業の負担が増加する。県も国の動きを視野に入れながら、対応いただきたい。
中小企業円滑化法について
【本郷委員】
金融円滑化法の来年3月の終了に伴い、金融機関が条件変更を認めないと約30兆円の不良債権が出ると言われている。県内中小企業に関して、この金融円滑化法はどのような意味があったのか、どのような対策が行われてきたのか教えていただきたい。
【山崎経営支援課長】
金融円滑化法は、企業が金融機関から借りた資金を条件変更が出来る、また、金融機関はそれを不良債権に計上しなくてもよい仕組みで、平成21年12月に中小企業の資金繰りを支援する目的で施行された。
県内事業者への効果としては、金融円滑化法施行以来、県内企業の倒産が大きく伸びていないことから、一定の効果があったことが分かる。
関東財務局の資料では、長野県内における条件変更の実行率は94%を超える状況であり、金融機関も真摯に対応している。
期限切れを迎えることで、県内事業者の間には、金融機関から条件変更が認められなくなると不安の声がある。
県では、金融円滑化法が施行されて、借換対策や再生支援の資金メニューを拡充するなど対応してきており、来年の期限切れを睨んで対応を検討していく。
【本郷委員】
企業の経営は全く改善されておらず、県では、金融円滑化法が来年3月に終了することへの対応策を、相当深刻に考えていなければいけない。
半年後のことであり、「貸した資金のほとんどが、難しい状況があるという認識の中で、県はどう対応するのか」と、もし本会議で質問があった場合に、「今、考えています」と答えたら、世の中の経済情勢を全く知らないことと同じである。
来年3月が終了期限となっており、この事態は極めて危機的な状況である。
金融機関がどう判断をされていくのか、それに対して、一般論として対応は、A、B、Cの3つくらいに分かれる。そういうことも正確にシミュレーションして、県として万全な態勢を取らないといけない。
社会的な不安が相当広がっているところに来年3月に金融円滑化法が終了した時にどうするのか、県も大きな責任を負わなければいけないので、部長のお考えをお聞きしたい。
【太田部長】
金融円滑化法の終了にあたり、国もパッケージという形で、それに対応する措置をいくつか提言している。
例えば、再生支援協議会の機能強化については、既に、10月1日から人数を増やして体制を強化している。
今まで再生支援協議会があまり使われなかった理由の一つは、再生計画に時間がかかるためである。
金融機関が企業の実態を見ながら再生計画の原案を作り、それを基に再生支援協議会の中で計画を作る仕組みにすることで処理期間を短縮していくこととした。
もう一つは、金融機関のコンサルティング機能の強化で、各金融機関で相当力が入っており、実際に今貸している企業に対して、今後の企業の経営の在り方や体制について、金融機関がもっと全面的に出て、資金の貸し借りだけではなく、経営の中身まで一緒になって今後を考える動きが既に始まっている。
【本郷委員】
私も銀行の頭取や信金の理事長などトップと話をしているが、今のお話のとおり、対応策を考えている。行政が大きな責任を持っているので、県で金融機関とさらに密接にお話しをしていただいて、システム的にこの問題をどうしていくのか対応をお願いしたい。
観光振興基本計画について
【本郷委員】
現行の観光振興基本計画の目標が1億人に対して現状は8500万人である。何が足りなかったのか。今後何をどうしていくのか。
【浅井観光企画課長】
課題は多くあるが、地域経済に貢献しなかったことが一つである。地域にお金が落ちる仕組みが必要である。また、満足度、特に食と土産物が低く、質とおもてなしが課題である。審議会からは、地域経営やマーケティングの視点が指摘され、そのための人材が必要である。中間とりまとめでは、目指す姿として、県民総参加、地域づくりにより、ファンをつくりリピーターを増やす、また面的な地域づくりをしていくなど3点を掲げた。施策については、施策例から検討していく。
【本郷委員】
本庁と地方事務所の役割に関して、地域観光戦略会議をどのようにしていくのか。
【浅井観光企画課長】
地方事務所に地域観光戦略会議を設置した。地域の連携を協議するものがなかったので、関係者の連携の役割を果たしている。新しい観光振興基本計画で地域ビジョンをつくっていくが、この会議での検討の結果がビジョンにつながっていくものと考える。
ブランド戦略の策定状況について
【本郷委員】
民間企業・市町村はそれぞれ理念を持ってブランド作りを行っている。それらと今回のブランド戦略・行動計画の関係性はどうなっているのか。個々が持っているブランド力を、いかに包括的に活かしていくのか。
【熊谷信州ブランド推進室長】
今回のブランド戦略は、「コンセプト」と、コンセプトと連動する「行動計画」の2本立て。これによって、県民・企業・市町村が同じ方向を向いて発信をし、ブランド力を磨いていく。
コンセプトは信州のアイデンティティをベースとしているので、企業等で考えられてきたブランドと齟齬が生まれる可能性は低い。県民・企業・市町村には、個々のブランドの下支えとしてコンセプトを使い、信州の良さを語っていただきたい。そうすることによって、自らのブランドがさらに強化されるのではないかと考えている。
【本郷委員】
信州は真面目と言われるが、裏を返せば地味ということ。ぜひブランド戦略をブラッシュアップして頑張ってほしい。ところで、ブランドコンセプトを見ると、「信州」と「長野」、両方の呼称を使用している。区別はどうなっているのか。
【熊谷信州ブランド推進室長】
今回の戦略の狙いは、統一感のある発信である。過去の取組みをみると、県の呼称を一本化することには無理があるようだ。そこで双方の呼称使用について今回は基準を設けていきたい。
国内向けにはアンケートで支持の高かった「信州」、国外向けには五輪関係で認知度の高い「長野」もしくは「NAGANO」を使用、という区分を検討している。
尖閣諸島問題の影響について
【本郷委員】
尖閣諸島問題の観光への影響があればお聞きしたい。
【白鳥国際課長】
交流事業において、中国に行く事業と中国から来る事業とある訳だが、今のところ、こちらから行く事業は、市町村関係等々で10件ほど中止になっている。
インバウンドについては、中国から来る事業が3件ほど位中止になっており、大きな影響が出ている。
平成24年2月定例会 健康福祉委員会 本郷委員 質疑要旨
TPPについて
【本郷委員】
TPPに関しては、医療も大きな課題である。アメリカでは初診料が1万2千円から4万円、盲腸であれば、8日間の入院に560万円、上腕骨折の入院手術では120万円。さらに無保険者は4千万人を超える。アメリカは自己責任という価値観で、日本とは大きな違いがある。TPPで皆保険・皆年金が浸食される恐れがある。医療面では混合診療、株式会社参入、外国人医師などの問題があるが、どういう方向が望まれるか、部長の所見を伺いたい。
【眞鍋健康福祉部長】
社会保障は緻密に制度がつくられている。経済状況はグローバル化の中で、国際的な影響を受けざるを得ない状況で、TPPが医療を始めとする社会保障に与える影響を見極める必要があり、重大な関心をもっている。医療に関する交渉はTPPで初めて取り上げられたわけではなく、アメリカと激しい交渉を行ってきている。かつてのMOSS協議では、市場分野別の個別協議がなされ、自動車産業や医療も1980年代に交渉が行われた。その後、日米構造協議で個別分野から、文化や制度的なことも交渉の対象になった。そして日米包括経済協議があり、年次改革の要望書が毎年出されるという状況になってきた。主に医薬品と医療機器は保険制度の中で、国が価格を設定している。私が2004年の医療分野の交渉に参加したときは、向こうから、価格を上げてほしいと言われたが、日本の医療保険財政を守るためには、野放図に上げる訳にはいかない。聞くべきところは聞き、譲れないところは譲らないという交渉を続けてきた。交渉は今も続いている。
アメリカは皆保険の撤廃を求める可能性がある。アメリカにはメディケア、メディケイドの制度もあるが、基本的には自由市場。日本もそうすべきだと言ってくるかもしれない。あるいは保険の範囲の縮小、これは混合診療であるが、厚労省も認めない立場。他にも、アメリカから保険外診療を増やすことによる医療保険会社の市場の拡大、営利企業の参入、医薬品や医療機器の価格の自由化なども求められるだろう。
現在、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)では皆保険は対象外と発言していると報道にはあったが、どこまでのことを指しているのか真意を正す必要がある。公的医療保険があるという前提での個別ルールの改善については交渉すべきだが、公的医療保険そのものに踏み込んでくるようであれば、断固反対であり、保険制度の根幹は守っていく必要がある。
あくまで私見だが、日本の外交力が心配である。今、米韓でFTA交渉を行っており、韓国はTPPに参加していない。交渉段階で日本の不利益につながるようであれば、交渉を打ち切ることも必要ではないかと考える。
社会保障について
【本郷委員】
税収は1998年に2647億円あったのが。2010年には1909億円にまで減っている中、県の歳出に占める民生費は、95年の751億円(6.7%)から、2011年には1354億円(15.6%)と、率では倍増している。国全体の社会保障給付費は108兆円にのぼり、毎年1兆円ずつ増える見込み。国の一般会計でも厚労省は30兆円近い予算と、国の政策予算の半分を占めている。県の社会保障関係費は平成20年度は806億円であったのが、平成24年度には955億円に増えている。経済成長と所得再分配の両睨みが必要だが、法人2税の税収も下がっている中で、抜本的な検討が必要であるが、大局的な観点から民生費や税収について、部長に見解を伺いたい。
【眞鍋健康福祉部長】
社会保障が社会・経済の基盤であり、経済活動が社会保障の原資を生むという循環関係にあり、持続していくことが必要である。
税と社会保障の所得再配分効果をみると、高齢世代には恩恵が大きいが、将来を担う世代には欠けている構造であり、是正が必要である。人口減、低成長の中で社会保障を堅持することは困難であり、一定程度の負担増のコンセンサスも得ないといけない。一方、負担増で経済が停滞したり、手厚すぎる保障で健全な競争意識や自己実現欲を阻害してもいけない。こうしたバランスをどうとって持続可能な社会にしていくかが求められているし、困難さも伴う。
私見であるが、対策としては正攻法でやるしかないと思う。金融工学は失敗したと思っている。現状は変えられないが、将来像を示して、この時点を乗り切れば、ここを我慢していけば、将来は大丈夫というような説明をしていくことが必要である。
長野県は長寿で就業率も高く医療費も低いという特長があり、高齢化や景気低迷を乗り越えるトップランナーになりえる。そのモデルとして全国に示していくことも長野県の役割ではないか。行政官は行政実務の中で政策目標の実現性を検証して実行すること。先ほどのような長野県の役割を果たしていくには、地に足のついた政策を提案できるようにしていきたい。
障害者制度改革について
【本郷委員】
国においては、障害者自立支援法に代わる「制度の谷間のない新たな総合的な福祉法制」の創設に向けた検討を進めており、平成25年8月までの実施を目指していると承知している。
県議会でも昨年12月に「障害者総合福祉法(仮称)の早期制定等を求める意見書」を国に提出した。国における現在の検討状況等について、県が把握されているところを伺いたい。
【佐藤障害者支援課長】
平成18年度に施行された障害者自立支援法では、原則1割の自己負担が導入されたことから、各地で違憲訴訟が相次いだ。その後、平成21年9月に成立した民主党を中心とする連立政権では、障害者自立支援法の廃止を打ち出し、和解となった経緯がある。
平成22年4月以降、「障害者制度改革推進会議総合福祉部会」で議論を重ね、平成23年8月に「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」が取りまとめられた。
本年2月に入り厚生労働省案が示されたが、「骨格提言」の内容の多くが取り入れられなかったため、関係者から強い反発の声が上がっている。
厚生労働省は、民主党の障害者ワーキングチームなどの意見を踏まえ、法案の修正を行い、法案は2月29日に民主党の厚生労働部門会議で了承されたところである。
改正の概要としては、(1)法律の名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に変更、(2)障害者の範囲に「難病」を追加、(3)グループホームとケアホームの一元化などがあり、施行後3年以内を目途にサービスの在り方等について障害者やその家族の意見を聴いて検討し、所要の措置を講ずるものとしている。利用者負担の原則無料化は、既に負担軽減措置を講じていることから見送った。厚生労働省では、今月中旬の閣議決定を経て、法案を提出する予定である。
県では、これまでも国に対し、新たな制度の設計に当たっては、障害当事者や地方公共団体の意見を十分に聞き、地方の財政負担にも配慮した持続可能な制度とすることを要望してきたが、今後も法案審議の状況等を注視したい。
介護保険制度の現状と課題について
【本郷委員】
介護保険制度が始まってから12年間の総括を伺いたい。また今後の課題についても伺いたい。
【有賀介護支援室長】
介護保険が始まる時に要介護認定を受けた高齢者は当時5万2千人だったが、現在10万人弱、約8割伸びている。この間のサービス状況として、在宅系で多く利用されているデイサービスは、開始当初、全県で86万回だったものが、今年度末見込みで271万回、3.2倍に伸びている。
ホームヘルプサービスも当初107万回だったものが現在410万回、伸び率で3.8倍である。要介護認定高齢者の80%の伸び率と比べ、在宅のサービス量はそれ以上、飛躍的に伸びている。
施設系では特養・老健・介護療養型病床とあるが、介護保険開始当初は1万2千床ほどで、10万人当たり2499床。これは全国の85%、全国平均より15%ほど低い状況だった。これが、平成21年になると、1万7千床強、10万人当たり3106床、全国平均より1割伸びている。本県においては着実にサービス供給量が増えている。
昨日、来年から始まる第5期高齢者プランの説明をしたが、高齢者のニーズを踏まえながら市町村で在宅サービスを大きく伸ばすことを計画しているところ。
一方の課題だが、3点ほどあると思っている。介護保険開始時の税収は2500億を超え、県の予算も1兆円を超えていたが、平成22年には税収は1900億、県の予算は8600億と少なくなってきている反面、介護給付費の状況は、当初は全国で654億であったものが、現在は1500億を超え、増加の一途を辿っている。次期プランの3年間で1700億円ずつかかる見込みであり、負担と給付の問題が非常に大きいと考える。現行は半分を税金、半分を保険料で行っているが、この制度を続けていけば、介護保険料は第6、7期と増えていくと思われる。
2点目は介護の人材の問題で、平成21年に国が示した数字によると、介護事業所のうち半分が福祉人材不足となっている。有効求人倍率も1.3倍を超えている状況である。
3点目に、特養等の待機者の増加をどう解消するか。施設整備は大きな課題で、予算が認められれば第5期に向けて整備をしていくが、果たして施設整備の増だけでよいのかということもあり、在宅も考慮し、バランスある整備が課題だと考えている。
【本郷委員】
日本の戦後復興を国策としたことにより、人口が大都市に集中し、そのため農村社会が疲弊し、更に三世代の家族構成が崩壊した。現在は、要介護者を社会全体でみることが非常に困難な状況になってきており、政治が介護制度の仕組みを再考しなければいけない大きな歴史的な転換期にきていると考えている。
福祉のまちづくり条例の改正について
【本郷委員】
福祉のまちづくり条例改正にあたり、バリアフリー法との不整合への対応や、時代にあった配慮など、考えていることについて伺いたい。特に、パーキング・パーミット制度の導入について要望する。
【吉川地域福祉課長】
条例と法律とは、対象施設、構造上の基準等が相違しており、それぞれ、二重の手続きが必要となっている。
条例改正にあたっては、このような法との整合性をとるとともに、法に基づく上乗せ基準も検討したい。
また、時代にあった観点からは、ご要望のあったパーキングパーミット制度の導入、障害者等の外出支援が重要なことから、大人用ベットの導入やバリアフリーマップのHP掲載など、事業者の理解を得ながら、できるだけ多く取り上げていきたい。
第6次長野県保健医療計画について
【本郷委員】
第6次長野県保健医療計画策定の現在の体制はどうか伺いたい。また、策定に対する国の考え方や、2次医療圏に対する国の見直しの考え方について、伺いたい。
【山本医療推進課長】
県立病院機構の勝山理事長を委員長とした15名からなる長野県保健医療計画策定委員会を設置して策定に着手し、これまで、11月と2月の2回、委員会を開催した。更に専門的な5つのワーキンググループを3月中に開催する予定としており、そこでは、DPC分析や県民医療意識調査の現状把握を行い、各委員の意見を聞きながら策定を進めていく予定である。
12月の国の医療計画見直しに関する検討会では、2次医療圏のあり方、事業ごとのPDCAサイクルの推進、在宅医療の充実・強化、4疾病5事業に精神疾患追加、医療従事者の確保、災害時医療体制整備などについて、見直しの基本的な考え方を示しており、3月下旬に国から正式に示される見込みである。
国の検討会においては、人口20万人未満かつ流入人口20%未満、流出20%以上の二次医療圏は見直し検討の対象にするとなっており、上伊那、木曽、大北、北信の4圏域が検討対象となるが、見直さない場合には検討結果の理由が必要となっている。この問題については、審議会などで十分な審議をいただき、検討を進めていきたいと考えている。
子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会について
【本郷委員】
子どもアンケート調査結果について、「子どもの育ちを支えるしくみを考える委員会」でどのような意見が出されたのか伺いたい。
【北澤こども・家庭課長】
1月30日に第3回委員会を開催し、議論をしていただいた。その中で、多くの子どもたちは、毎日が楽しく、自分のことが好きで、周りの大人たちから大切にされている、また、大人は子どもの話をよく聞いてくれていると感じており、これは子どもたちの育ちを支えるための社会的な基盤があると考えられ、こうしたよい面を大事にさらに進めていくことが重要であるとの意見が出された。
一方で、大人や友だちから傷付けられた経験をしても、誰にも相談もせずに、ただ我慢している子どもたちがいる。これは、公的相談窓口の認知度が低いなど、子どものための取組が十分に周知されていないのではないかという意見も出された。併せて、このような課題に対応するためにも、子どもが安心して相談できる相談救済システムの整備であるとか、子ども支援や子育て支援が総合的に取り組めるような基礎的なものが必要ではないかという意見も出されたところである。
【本郷委員】
平成24年度の委員会の主な取り組みについて、伺いたい。
【北澤こども・家庭課長】
現在、アンケート調査のほか、県や民間の取組状況をまとめ、そこから見えてくる課題を整理している。この3月に開催する第4回委員会で議論を深め、来年度早々の委員会を目途に中間的な取りまとめを行っていただく予定である。その他、当事者である子どもたちに討論してもらう会議を開催し、そこでの意見を委員会に反映させる予定である。
社会福祉施設等における利用者預り金の管理について
【本郷委員】
社会福祉施設の利用者の預り金に関する着服事件が、メディアにしばしば登場する。
預り金の管理は、利用者にとって重要なサービスの提供であるが、逆のことが起きてしまっている。現在の状況と県として今後どのような再発防止策をとるべきか、伺いたい。
【藤澤福祉監査室長】
事件は、平成23年8月に県社会福祉事業団が駒ヶ根市で運営するグループホームで、12月には佐久広域連合が運営する救護施設で発生した。
グループホームは平成22年3月から23年8月までの間に約380万円の、救護施設は平成22年12月から23年12月までの間に約130万円の入所者預り金からの着服があった。利用者預り金以外にも平成23年12月に老健施設で利用者負担金の着服があった。
同様の案件で指導監査を行った事例としては、平成20年度と22年度に1件ずつあり、今年度は特筆して多発したと認識している。
これら事件は、経済的虐待と言うべき重大な財産権の侵害であり、再発防止のためには手順書の不備やチェック体制の不備・マンネリ化という現状の中で、健康福祉部全体の統一的な取組みとして社会福祉法人の長及び社会福祉施設の長あてに、再発防止に向け注意喚起を促す部長通知と「預り金管理規程」及び「事故報告書」を例示した各課長通知を施行し、再度預り金について厳格な取扱いを行うよう指導した。
預り金管理規程は、確実でわかりやすい内容とするため、手順やフロー図、書類の様式を示した。規程の内容には、通帳と印鑑の保管を分け、別々の職員が管理する相互チェック体制の確立や、管理・出納・保管の各責任者の役割の分離と明確化などを規定した。
また、事故報告書の様式を示し、不適正事案が発生した場合は、応急的対応や今後の再発防止策の検討など遅滞なく報告を求めることとしている。病院の精神科でも入所者の預り金を管理していることから、健康長寿課長名で病院長あて注意喚起した。
今後は、預り金管理規程に基づき、預り金の適正な管理が行われるよう、適切な指導をしてまいりたい。
平成24年2月定例会 代表質問 本郷委員 質疑要旨
防災復旧対策について
【本郷委員】
災害時など不測の事態への緊急復旧対応にあたる地元建設業がその役割を十分に発揮できるような新たなる制度や仕組みを長野県として早急に構築することが必要と考えるが、所見を伺いたい。
【知事】
○地元建設企業に対しては、この度の豪雪に対する除雪や災害復旧工事等にご対応いただき感謝。平素からも維持補修や災害時の緊急活動等、なくてはならない存在であると認識。
○災害時の緊急対応や道路の推持補修業務については、従来より、早急な対応をするために、地元建設企業による緊急当番登録制度を実施している。平成22年度からは、地元建設企業が共同して、年間を通じて契約でき、安定的・効率的な企業経営が可能となる地域稚持型の契約方式を導入し、順次、対象区域を拡大しているところ。
○さらに、災害復旧工事に関しても、総合評価落札方式において、地域を熟知し、災害応急活動を行っている地元企業を評価する入札制度を、この4月から試行する。
○今後も、現状分析を行い、県議会の「入札制度研究会」や「地域を支える建設業検討会議」などからのご意見もいただきながら、地元建設企業が十分に力を発揮できるようよりよい制度を目指す。
新たな総合5か年計画に盛り込みたいテーマについて
【本郷委員】
新たな総合5か年計画の策定にあたり、「長野県の望ましい20年後の姿」をイメージした「たたき台」や3つの「望ましい県の未来像」が提示されたところだが、知事自身がこの計画に盛り込みたいと考えている「テーマ」と言うべきものはどのようなものか伺いたい。
【知事】
○物質的な豊かさの追求が個人の幸福に直結する時代が過ぎ去り、成熟した社会を迎える中で、「人間生活優先の地域」、「持続可能な地域」が重要。
○長野県の特色としての、美しい景観や豊かな自然、先人たちが連綿と引き継いできた伝統や文化、自然エネルギーの活用への大いなる可能性など数多くの優れた財産を活かし、「誰にでも居場所と出番がある」、「世界に貢献する」、ゆとりとうるおいがある」長野県を創造していきたいと考えているところ。
○新たな総合5か年計画は、総花的でない、本県の個性を伸ばした特色のある計画としてまいりたい。
新たな総合5か年計画のフレームと性格について
【本郷委員】
これまでの検討経過を見ていると、県が策定しようとしているのが、「長期構想」なのか「5か年計画」なのか判然としないように感じるが、知事はこの計画をどのようなフレームのものにしようと考えているのか、また、計画にどのような性格を持たせようと考えているのか、現時点での考えを伺いたい。
【知事】
○今回の新たな総合5か年計画策定を機に、長野県の長期構想である「未来への提言」を廃止したいと考えているところ。
○今後5年間の計画を策定するためには、まずは中・長期的な視点からの望ましい姿を描いた上で、その望ましい姿に至る過程のうち計画期間中に行うべき方策を明らかにすることが必要。そのため、総合計画審議会において「20年後の望ましい長野県の姿」について議論されているものと認識。
○この総合計画の策定に当たっては、中・長期的な県政運営の道しるべとしての性格を持った計画として、県民の皆様が共感し、協働していただける夢と希望に満ちた長野県の将来像を、県議会や県民の皆様と一緒になって描いてまいりたい。
建設事業債発行の考え方
【本郷委員】
財政規律を確保するためのルールとして、「今後の当初予算における通常債(建設事業債)の発行額は、平成24年度当初予算額の範囲内とする」としているが、各年度における通常債(建設事業債)の発行総額を含め、予算編成・財政運営とは、単純に上限を設けるべきではなく、もっと柔軟で、政策的、戦略的であるべきではないかと考えるが、所見を伺いたい。
【知事】
○平成23年度末の県債残高は1兆5,750億円となり、その償還に充たる公債費が24年度当初予算で1,410億円と予算全体の16・8%を占め、歳出を圧迫する大きな要因となっている。
○こうしたことから、先般公表した「長野県行政・財政改革方針(案)」において県債発行の考え方についてお示ししたところ。
○この中で建設事業債については、世代間負担の公平を図るため、真に必要な社会資本整備の財源として活用していくこととしているが、臨時財政対策債の増加により、県債残高が28年度には1兆6,485億円に達する状況にある中で、「可能な限り子どもたちの世代に付けを回さない」という観点から、今後の当初予算における発行額は、原則として平成24年度当初予算額の範囲内とし、毎年度の予算編成の中で発行の抑制に努める所存。
○ただし、年度途中における災害や経済対策など緊急な対応が必要な場合は、その財源として活用するなど柔軟に対応していく。
森林づくり県民税の評価及び今後の方針について
【本郷委員】
「森林づくり県民税」について、平成24年度末で5年間の実施期間を終了するが、この「森林づくり県民税」についての評価及び今後の取扱についての方針を伺いたい。
【知事】
○森林づくり県民税については、平成22年度までの3年間で、18億円余の税収を活用し、手入れの遅れている里山の間伐の推進などの施策を展開。
○これまでに、集落周辺の手入れの遅れた里山において、諏訪湖8個分に相当する約1万5百ヘクタールの間伐を実施したほか、森林づくりに関する地域固有の課題解決や大人から子供までが木に触れる機会の創出など、一定の成果をあげているものと認識。
○今後に向けては、県民の皆様に御負担いただいていることを十分念頭に置きつつ、「森林づくり県民会議」及び「長野県地方税制研究会」の検討結果を踏まえ、継続する場合は、県民への丁寧な説明を経て、遅くとも9月県議会で条例の提案ができるよう進めていく所存。
独自の新たな政策税制の導入について
【本郷委員】
長野県独自の新たな政策税制の導入について、県としてどのような方針を持っているのか、見解を伺いたい。
【知事】
○県民主権の県政を実現するためには、従来の手法や発想にとらわれず、県民の暮らしの安心・安全を確保し、地域のことは地域で解決することができる仕組みを構築する、本当の意味での地方分権が重要であると認識。従来、その財源としての税の基本的な仕組みは国が決めているが、分権の時代においては、県自らが税のあり方や活用について議論することが必要と考え、今年度から「長野県地方税制研究会」を設置し、地方自治運営の根幹である「税」のあり方について、検討を始めているところ。
○有識者の皆様から意見、提言等を賜りながら、県政課題に重点的に活用していける「財源としての税」と、政策課題の実現を間接的に支える「インセンティブとなる税」の二つの観点から、長野県独自の政策税制を検討してまいりたい。
予算案におけるメリハリ、知事が考える方向性について
【本郷委員】
平成24年度当初予算案について、「大胆な事業の間伐による財源の重点配分」を基本理念に掲げて予算編成をしてきたが、この予算案が事業を厳選したメリハリのあるものとなっているのか、知事の考える方向性というものをこの予算案で示すことができたのか、率直な見解を伺いたい。
【知事】
○平成24年度当初予算案は、中期総合計画の最終年の予算として、計画を進捗させ、新たな総合5か年計画への橋渡しの努力をする中で、「信州らしさを活かした元気創出」予算として、厳しい経済環境の中で、県民全体が元気を出してもらえるような予算とすべく出来る限リメリハリを付け編成したところ。
○このような観点に立って、県内産業の下支えや雇用の確保等の当面する課題に、引き続き積極的に対応するとともに、「信州らしさ」を一層強化し、長野県の強みをさらに発展させていくため、「自然エネルギーの普及拡大による自立した地域の創造」や「人や企業に選ばれる信州の創造と発信」、「美しい信州の環境・景観の保全と創造」など10の視点で事業を構築したところ。
○具体的には、信州自然エネルギー元年として、太陽光や小水力などを活用した具体的な取組の推進や、県内経済の活性化を図るため商談会や展示会の予算の充実などにより、地域の元気を創出していく。
地方事務所長からの施策提案について
【本郷委員】
「地方事務所長からの施策提案制度」について、平成24年度からの本格実施の際には、地域戦略会議において協議された施策を提案するとしているが、今後、新たな総合5か年計画での策定が必要とされる10圏域ごとの「地域編」とこの施策提案制度を明確に関連付けることで、一層の相乗効果が期待できると思う。そこで、「地方事務所長からの施策提案制度」について、本年度の評価及び来年度以降の実施方針について伺いたい。
【知事】
○私は、地域や現場の声をより一層県政に反映させたいとの想いから、県と市町村が一緒に地域課題に取り組む「地域戦略会議」を地方事務所ごとに設置し、そこで協議された事項などを県の施策や予算に反映する仕組みとして、地方事務所長による施策提案制度を構築したもの。
○しかし、「地域戦略会議」が本格的な協議に至っていないことから、今回は試行として地方事務所長が考える施策の提案を、私はじめ各部局長が直接聞くことで、地域ごとの課題を共有しながら予算編成に取り組んだところ。
○施策形成・予算編成に時間が十分確保できなかったものの、それぞれの所長が捉える地域の課題について、各部局と現地機関が連携・協力し、24項目の提案に対し、22項目で具体化を図るなど、一定程度反映できたものと考えている。
○来年度については、議員ご指摘のとおり、「地域戦略会議」は地域課題解決に向けた県と市町村との協働の場であることから、そこでの議論を新たな総合5か年計画「地域編」にも反映し、その上で、25年度に実施すべき施策について提案していただくことを期待したい。
「行政改革」の取組に対する基本的な姿勢について
【本郷委員】
長野県の「行政改革」に取り組むにあたって、知事が考えている基本的な姿勢について伺いたい。併せて、新たな行革方針を「行政・財政改革方針」としたことについて、知事の意図と思いを伺いたい。
【知事】
○行政改革に取り組むに当たり、今回新たに、これまで当たり前のこととして明確に意識してこなかった、組織の使命・目的(ミッション)、目指す姿(ビジョン)、行動の指針(バリュー)からなる県の「行政経営理念」を定めていきたいと考えているところ。
○これまでの行政改革は、国・地方いずれも「行財政改革」と一括りで論じられることが多く、ともすると、財政を健全化するための職員数の削減や組織の縮小などが行政改革の主眼であると捉えられていたのではないかと思料。
○一方、私の目指す行政改革は、組織・職員の持つ力を最大限発揮し、県民サービスの充実や、県民主権の県政の実現を図る、いわゆる「行政の質的向上」に力点を置いて取り組むもの。これまで、財政改革の文脈の中で行政改革が語られてきたが、こうした考えから、今回、あえて行政改革と財政改革を分けているところ。
○新たな方針の理念や具体的な取組の5つの柱に沿って、職員とともに本気の改革に取り組むことにより、県民の皆様に全国に誇れる最高品質の行政サービスを提供し、県民の期待や社会の要請に応える県行政の実現を図ってまいる所存。
現行の行財政改革プランの評価について
【本郷委員】
現行の「長野県行財政改革プラン」と、このプランの下で進められてきた長野県の行財政改革の取組について、どのように評価しているのか伺いたい。
【知事】
○現行の行財政改革プランは、平成19年度から23年度までを計画期間として、「分権改革」「行政システム改革」「財政構造改革」の3つの柱に沿って改革に取り組んできたところ。
○行政システム改革においては、県立病院の地方独立行政法人化や指定管理者制度の導入など、業務の外部化や組織のスリム化・効率化を進め、職員の削減数は計画の1,556人を上回る2,193人(全職員数の7・4%の減少率)となっているところ。
○また、財政構造改革においても、県税収入の確保や、県有財産の有効活用、事業見直しなどの歳入確保・歳出削減に取り組み、効果額は、計画時の1,592億円を上回る1,669億円に達する見通しであり、効率的な行財政運営の推進という面で一定の成果を挙げているものと認識。
○しかしながら、依然として厳しい財政状況が続く中、新たな総合5か年計画に基づく施策を着実に実行できる行政・財政基盤の確立・社会情勢の変化や多様化するニーズに対応した質の高いサービスの提供・小規模な町村が数多く存在する本県の特徴を踏まえた独自の自治のあり方の検討が必要であり、先にお答えしたように、新たな方針を策定し、更なる行政・財政改革に取り組んでまいる所存。
「新しい公共」を活用した行政運営のあり方について
【本郷委員】
新たな行政・財政改革方針がこれまでの「行財政改革プラン」と異なる大きな特徴としては、「県民参加と協働の推進」を強く掲げている点にある。そこで、国の追従ではない長野県に相応しい「新しい公共の創出」とはどのようなものか。内閣府所管の「新しい公共支援事業」を活用するだけではない長野県として主体的に指向する「新しい公共」とは何なのか。長野県における「新しい公共を活用した行政運営のあり方」はどうあるべきかについて、知事の考え方を伺いたい。
【知事】
○本県では、内閣府の「新しい公共支援事業交付金」を活用した取組を行うに当たって、国から示された事業内容の例示に追随するのではなく、「県民協働を進める信州円卓会議」でもご議論いただきながら、長野県独自の視点で事業内容の検討を行ってきたところ。それにより、平成24年度においては、NPOの活動基盤強化につなげるため、幅広い県民、企業がインターネットを活用して、応援したいNPOに寄附することができる新たな仕組みを構築する事業や、長野県内の企業、行政機関などで活躍してきた人たちを、NPOを応援する人材として育成・登録し、その能力、ノウハウをNPO活動に活かしていただく事業などを予定。
○また、行政運営についても、長野県行政・財政改革方針(案)で、県民参加と協働の推進を通じ「新しい公共」を創り出すことを柱の一つとしており、「新しい公共」のこのような位置付けは本県の特徴。
○そのため、県民・NPO・企業等と行政との協働推進のための効果的方策について円卓会議で更に議論していただくほか、共創・協働フォーラムの開催や、協働を進めるためのガイドブックの作成なども予定し、これらの事業を通じて、多様な活動主体との協働を進め、「新しい公共」の利点を生かした行政運営を構築してまいりたい。
信州型事業仕分けの課題について
【本郷委員】
知事は、今後、新たな政策評価・事務事業評価制度を含め新しい制度の仕組みを検討するとしているが、これまで実施した2回の「信州型事業仕分け」について、どこに課題があったと認識されているのか伺いたい。
【知事】
○これまで2回にわたり信州型事業仕分けを実施してきたが、・公開性、外部の視点といった基本的な考え方に基づく、開かれた県政運営の推進、・行政では気付かなかった、県民目線での問題提起・仕分けの議論の予算への反映といった意義があった一方、・施策評価、事務事業評価と並行して実施することによる重複感があるのではないか、・県の目指すべき施策の方向性を踏まえた議論が、必ずしも十分になされなかったのではないか、などの課題があったものと認識。
○本来、事業点検の議論は、県の目指すべき方向性を踏まえて、事業の目的や手段がその方向に適ったものであるかとの視点からなされるべきものであり、政策評価、事務事業評価との関係についても整理が必要であると思料。
○このような観点から、新たに策定する中期総合計画における目標の設定にあわせ、新たな政策評価事業点検の仕組みを検討することとし、議会の皆様方にも御協力をお願いした次第。
今後検討する新たな制度について
【本郷委員】
また、今後検討するとしている新たな制度を「外部評価」の手段として考えているのか、「事務事業の見直し・行政効率化」の手段として位置づけているのか伺いたい。その上で、執行機関自らが行う政策評価・事務事業評価とは、本来如何にあるべきものと認識されているのか、基本的な考えを伺いたい。
【知事】
○新たな政策評価・事業点検の仕組みは、これまで並行して実施してきた、施策評価、事務事業評価と信州型事業仕分けについて、あり方等をしっかり整理し見直そうとするもの。
○新たな仕組みは、信州型事業仕分けにおいて一定の評価をいただいた公開性の確保、外部の視点といった考え方を保ちつつ、事務事業の見直し・行政効率化の手段の一つに位置付けてまいる所存。
○本来、執行機関が実施する政策評価・事業点検は、県の目指すべき方向に沿った目標に向け、達成のために必要な事業の計画、予算の編成及び執行、事業成果の点検というPDCAサイクルの中に位置付けられるものと考えており、大変大切な仕組みと認識しているところ。
望ましい組織と職員のあり方について
【本郷委員】
知事は、県民主権の県政を実現するために、職員に対して「共感力」「政策力」「発信力」を強く求めているが、職員のモチベーションと知事の理念との間に距離感を感じる。組織マネジメント、人材マネジメントという観点から、県の現状をどう捉えているのか。望ましい組織と職員のあり方はどうあるべきか。考えを伺いたい。
【総務部長】
○組織体がその目的・使命の実現に向けて力を発揮するためには、価値観や方法論に違いがある個々の構成員が、組織体の目的・使命を明確に認識し、実現のための統率のとれた行動を的確に取っていくことが必要であり、それを実現していくマネジメントが必要。
○今回の行政・財政改革方針案では、行政経営理念として県組織の使命・目的、目指す姿、それらを達成するための行動指針・価値観を明示した。職員一人ひとりが改革方針の策定に参画し、県の使命や、職員としての行動のあるべき方向を自分のものとしてとらえ、人任せではなく自ら意識して行動していくことが求められる。
○そのためには活発に意見を言い、議論し、行動できる県組織にしていくことが大切。そこで、今年度は全ての職場で情報発信やホスピタリティの向上をテーマに業務改善に取り組んだが、来年度は、職員全員が業務改善、政策提言を行い、業務への反映を目指す「一人1改善・1提案」に取り組みたい。
○こうした具体的な取組を通じて、職員の主体的な参加・取組が、組織としての成果とともに職員のやりがいに結び付くようにしていきたい。
長野県経済再生に向けての経済戦略構想について
【本郷委員】
現在、長野県中小企業振興審議会において、次期産業振興プランが策定中とのことであるが、審議会において未来を見据えて挑戦すべき新しい分野について、どのような議論が行われているのかも含め知事自身の長野県経済再生に向けての経済戦略構想を伺いたい。
【知事】
○県内製造業は、輸出関連を中心とした高い競争力により県内経済を牽引し、地域の雇用を創出してきたものの、アジア諸国の工業力がさらに高まり、歴史的な円高が続く中で、成長に向けた新たな展開が求められていると認識。
○長野県経済を再び成長軌道に乗せるためには、現在の主力である情報・電子産業のほかに、新たな柱となる新産業を育てるとともに、成長する新しい市場に積極的に展開していくことが不可欠。
○ これが、長野県経済の再生の道と考えている。
○中小企業振興審議会においても、今後、成長が期待される「健康・医療」、「環境・エネルギー」、「次世代交通」の3つの分野への挑戦と、有望な市場である「アジア新興国市場」や、日本を含む「先進国の(福祉や医療などの)需要が拡大する市場」への新たな事業展開を御提言いただいたところ。
○来年度からスタートする「長野県ものづくり産業振興戦略プラン(仮称)」では、この審議会の提言を受け、これらの成長分野と新たな市場をターゲットに、ものづくり産業を中心に据えた、産学官が一体となった集中的な取組を、県が中心となって推進してまいる所存。
○重点的な取組の一つとしては、長野県テクノ財団に「イノベーション推進本部」を設置し、例えば医療分野では、信州大学などの協力の下、医療現場のニーズと、大学の研究成果、県内企業の技術のマッチングを行うなど、国際的な産学官連携を推進する予定。
○審議会では、「長野県の強みを活かした長野県らしさのあるプランとすべき」との御提言もいただいており、長野県の有する高度な精密・電子技術や、農産品、水などの地域資源、自然エネルギーなどを活用した「新たな産業の創出」も目指してまいりたいと思料。
○さらに、アジア新興国市場への展開においては、海外展示会への出展支援などにより、販路開拓を積極的に推進し、外貨の獲得による県内経済の活性化を重点的に進めてまいる所存。
農業・農村の再生強化について
【本郷委員】
農業・農村をどうするかということは、単なる産業の一分野として論じるのではなく、文化を含めた社会の基盤そのものとして捉えるべきと考えるが、新しい時代の地域再生施策は如何にあるべきか、知事が考える農業・農村の再生強化に向けた骨太の将来ビジョンを何いたい。
【知事】
○産業としての農業振興と地域社会としての農村振興を区分した施策展開が必要と認識。
○本格的な人口減少など、時代の転換点を迎える中、特に、農業・農村は地域を支える担い手の減少が顕著となることから、これへの対応が再生・強化の鍵であると考える。
○産業としての農業の振興については、国内のみならず国際的な視点に立った本県農業の体質強化が必要である。そのため、園芸を中心とした生産力の強化や長野県ならではのオリジナル品種の生産振興、消費者ニーズに対応した的確なマーケテイングを推進してまいる。
○また、次代を担う競争力・経営力の高い農業経営者の育成が急務である。そのため、就農研修や就農後の経営安定・所得向上に向けた支援の充実を図ってまいる。
○農村の振興については、地域独自の農産物や食、農村景観や農村文化など、農村資源の活用を進める。そのため、地域で大切に守られてきた信州伝統野菜等の振興を図るほか、特に来年度においては「世界に誇る信州の農村景観育成事業」により信州の良好な農村景観を保全・育成するための基本方針等を策定してまいる。
○更に、都市圏から人を呼び込み農村の活性化に資するため、移住・交流や観光に力を入れてまいる。そのため、新たに観光部に「移住・交流課」を設置する。
○これらの取組により、人々が暮らし続けられる地域づくりを進める所存。
次期食と農業農村振興計画について
【本郷委員】
平成20年に策定された「長野県会と農業農村振興計画」が平成24年度には最終年度を迎えることになるが、ポスト食と農業農村振興計画について、どこに軸足を置き、何を目標としたものとするのか、知事の考えを伺いたい。
【知事】
○大きく2つの視点に立って考えたい。1つは、国際化の進展を含めた市場経済の中で勝ち抜き、食料供給を担う産業として本県農業の活力と生産力を高めるため、意欲ある農業経営者が夢を持って経営に取り組めるようにするにはどうあるべきか。
○もう1つは、中山間地域の多い本県において、地域雇用、景観、文化を維持している農業・農村の社会的役割を明確にしながら、そこに人々が暮らし続けられるため、皆が役割と出番がある地域とするにはどうあるべきか。
○次期食と農業農村振興計画については、この2つの柱を支える「人」を基軸にして議論を深めてまいりたいと考えている。
○去る2月9日には、食と農業農村振興審議会に対し次期計画策定の諮問をしたところであり、県民や関係団体の皆様からのご意見・ご提言もいただく中で、新たな総合5か年計画と整合を図りつつ、次期振興計画の策定を進めてまいりたい。
新たな総合交通ビジョンの策定にあたり、道路整備網の位置づけについて
【本郷委員】
新たな総合交通ビジョンの策定にあたっては、交通手段の維持・確保だけではなく、道路整備網も併せて位置づけることが必要と思うが、考えを伺いたい。
【知事】
○長野県は、内陸県であること、また、広大な県土を有し、急峻な地形であることから、中山間地域も多く、県内外の各地域との人や物の移動において、自動車が果たす役割は大きい。
○道路網は、自動車による人や物の移動を通じて、産業や観光などの経済活動を支えるとともに、災害発生時には、救助、救援活動のために重要な役割を果たすもの。
○交通ネットワークは、基盤の整備と交通手段の確保という両面がそろってはじめて成立し、地域の活性化や生活の安全、安心に役立つことができることから、新総合交通ビジョンの策定にあたっては、公共交通の確保とともに、それを支える基盤としての主要な道路網の整備のあり方についても、描き出せるよう進めてまいりたい。
高速交通及び地域公共交通の確保のために、県内各地域の実情把握と市町村等との連携について
【本郷委員】
高速交通及び地域公共交通の確保のためには、県内各地域の実情をしっかり聞き、また、市町村等との連携の下で策定すべきと思うが、今後、どのように取り組んでいくのか伺いたい。
【知事】
○長野県は、ひとつの県で、北陸新幹線の延伸とともに、リニア中央新幹線の整備を推進するなど、全国でも他に例のない高速交通網の進展に取り組んでいるところであり、また、地域公共交通に対しても、多くの市町村がそれぞれ工夫して維持に努めるなど、各地域における実情は異なっている。
○長野県新総合交通ビジョン検討委員会においては、検討にあたり、現場に赴いて、地域との意見交換会を行うこととし、先日も、リニア中央新幹線に関する現地調査を行った上で、下伊那及び上伊那の方々との意見交換会を開催したところ。
○検討委員会では、引き続き、県内各地域や交通事業者との意見交換を行う予定であるが、県としても、市町村への文書による照会や、県民、企業へのアンケートを実施するなどにより、地域の実情や県民のさまざまなお考えを把握するよう努めながら、市町村等と連携して、取り組んでまいりたい。
新たな総合交通ビジョンに対する知事の考えと決意について
【本郷委員】
今回策定されるビジョンは、ダイナミックな発想の下に県民に夢と希望を与えるものであるべきと考えるが、知事の考えと併せて決意を伺いたい。
【知事】
○長野県は、今大きな転換点を迎えている。すなわち、北陸新幹線が金沢から、さらにその先の関西方面までつながり、リニア中央新幹線が長野県と東京、名古屋、大阪を結ぶようになる。
○一方で、少子高齢化、人口減少が進み、バス・鉄道といった地域公共交通が、住民の生活をこれからも支えていくことができるのか、より切迫した状況になると認識。
○こうした状況を踏まえ、新しい総合交通ビジョンおいては、地域振興と一体となった交通体系のあり方を示していくとともに、安心して住み続けることができる地域づくりに資する交通体系を構築していくという観点が必要となる。
○県としては、地域とともに、責任を持って公共交通を担っていくという決意のもと、交通体系のあり方について、ビジョンの中できちんとした形で示してまいりたい。
「信州まつもと空港」における貨物輸送と就航率向上について
【本郷委員】
信州まつもと空港におけるFDAのエンプラエルによる貨物輸送の可能性と、GPSの活用による就航率向上への取組について、考えを伺いたい。
【知事】
○「信州まつもと空港」における航空貨物の輸送については、JALの就航時には、機械部品や郵便貨物などの輸送を行っていたものであり、「まつもと空港」を活用する一つの方策として大切な観点。
○FDAにおいては、これまで旅客業務を優先して、定期便の安定的な運航に努めてきたところであるが、本年7月で定期便の運航が3年目を迎えることもあり、航空貨物の取扱をFDAの新たな事業展開として、県としても研究してまいりたい。
○「まつもと空港」の就航率の向上にむけては、私も国に対して要請した飛行方式の変更により、昨年6月2日から空港に着陸するかどうかを判断する基準が下げられた結果、「まつもと空港」の長年の懸案であった天候による欠航が、昨年度の2・4%から、今年度は現時点で1・1%と、確実に減少したところ。
○GPSを活用した新たな飛行方式については、飛行経路のより柔軟な設定により、地形の制約が緩和されると認識しているが、GPSに対応した飛行機の設定や、パイロットの訓練など、FDAの対応が必要となるため、「まつもと空港」へ導入した場合の効果や影響を見極めながら、FDAとともに研究してまいりたい。
自然エネルギー・再生可能エネルギーの普及拡大について
【本郷委員】
自然エネルギーの普及拡大に関して、平成24年度予算案においてどのような重点化が図られているのか、また今後どのように取り組んでいくのか。農業用水を活用した小水力発電を担当している農政部の対応について伺いたい。
【農政部長】
○自然エネルギーに関する農政部の対応についてのお尋ねですが、農業用水を活用した小水力発電について、県では平成20年度から、県土地改良事業団体連合会など関係機関と連携を図りながら、候補地に関する調査研究を実施してきており、併せて、平成21年度からは、市町村、土地改良区等を対象とした研修会を開催しているところです。
○平成24年度においては、新たに発電施設建設モデル事業を創設し、実用化の目処がついた小水力発電1箇所、そしてまた、太陽光発電2箇所の建設に併せて着手したしいと考えております。本事業では、発電施設の建設から運営の過程で明らかとなる課題を検証し、その結果を市町村、土地改良区等にフィードバックすることとしております。
○今後は、モデル事業の検証結果や再生可能エネルギー特別措置法の固定価格買取制度の動向等を踏まえつつ、農業用水などを活用した自然エネルギーの普及拡大に向けて積極的に推進してまいります。
自然エネルギー・再生可能エネルギーの普及拡大について
【本郷委員】
自然エネルギーの普及拡大に関して、平成24年度予算案においてどのような重点化が図られているのか、また今後どのように取り組んでいくのか。木質バイオマス等の普及拡大を担当している林務部の対応について伺いたい。
【林務部長】
〇木質バイオマス等の普及拡大についてのお尋ねですが、木質バイオマス利用につきましては、今年度、木質バイオマス需要開拓調査を実施しており、その中で、温泉施設等でのボイラ導入に対する期待が高いことが明らかになってきましたことから、来年度、こうした分野への導入支援を積極的に進めることとしております。
○さらに、公共施設や個人が導入するペレットストーブへの設置費用に対する支援や間伐材を薪として利用していくための講習会を開催するなど、環境部と連携し、木質バイオマスの普及拡大に努めてまいります。
○今後は、木質バイオマス利用拡大のため、地域の製材工場の端材等を、工場で使用する乾燥機の熱源や発電等に利用する体制づくりについても進めてまいります。
○いずれにしましても森林県である長野県の特性を活かし、再生可能な自然エネルギーともなる木材を様々な形で利用するべく森林づくり指針で掲げた木質バイオマス利用量、現状6万立法メートルを、10年後には約3・6倍の21万7千立法メートルに拡大させることを目標として取組んでまいります。
資金調達・ファイナンスに係る県のイニシアチブ、固定価格買取制度に係る県に対応について
【本郷委員】
自然エネルギーの普及拡大は、地域経済の活性化に寄与するものでなくてはならないと考えるが、事業化に際しての資金調達、ファイナンスについて、県として何らかのイニシアティブをとっていく用意があるのか、7月に始まる「固定価格買取制度」に向けて何らかの対応を検討しているのか伺いたい。
【環境部長】
○自然エネルギーの導入により地域経済を活性化していくためには、地域の企業等が事業主体となり、地域の資金を活用して自然エネルギー事業を行うことで、地域に雇用を生み出すとともに、地域の中で資金を循環させていくことが有効であると考えております。
○今年7月からの固定価格買取制度の施行により、自然エネルギーによる発電事業がビジネスとして展開できる基盤が整うことから、長野県としては、官民連携による自然エネルギー信州ネット等を通じて、地域の主体が自然エネルギービジネスを立ち上げていけるよう人材育成や地域における検討の場づくりを支援してきたところです。
○このようなビジネスの展開にあたっては、議員ご指摘の、事業化に際しての資金調達、ファイナンスにあたって、地域の金融機関からの融資など、地域資金を活用していくことが重要であり、特に特定の事業を担保とするプロジェクトファイナンスが有効であると考えております。そこで、「自然エネルギー信州ネット」において、地域金融機関の参画も得ながら、自然エネルギー事業に対するプロジェクトファイナンスに関する研究会を開催しているところです。
○長野県としては、今後は、具体的な事業化の案件に際し、資金調達、ファイナンスが円滑に進むよう、地域金融機関との連携を強化してまいりたいと考えております。
県としての「自然エネルギーの普及計画」の策定について
【本郷委員】
県として「自然エネルギーの普及拡大」を大規模に進めようとするのであれば、現在のように単発的なやり方ではなく、県としての目標や施策体系を県民に早急に提示した上で進めていくべきと考えるが、長野県としての「自然エネルギーの普及計画」の策定について伺いたい。
【環境部長】
○自然エネルギーの普及拡大を本格的に進めていくためには、議員ご指摘のとおり、自然エネルギーの導入目標を掲げ、目標達成のための施策を体系的に講じていくことが非常に重要であると考えています。
○本年度実施している地球温暖化対策戦略再構築事業において、長野県における自然エネルギーの導入状況や導入ポテンシャルを調査するとともに、今後の自然エネルギーの普及に係る課題を整理し、自然エネルギーの推進方策について検討しているところです。
○来年度は、今年度の検討結果及び国の「エネルギー基本計画」の見直しの動向を踏まえながら、新たな地球温暖化対策の戦略計画の策定の中で、長野県の自然エネルギーの導入目標や当該目標を達成するため、自然エネルギーの供給サイド及びエネルギーを利用する需要サイドの双方の視点を入れた体系的な自然エネルギーの推進方策を検討してまいりたいと考えております。
土地売買等の事前届出制度について
【本郷委員】
県では、地下水などの水源の保全上重要な地域を指定した上で、その区域内で土地取引をする場合は、土地所有者に知事への届出を義務付け、必要に応じて届出者に助言する仕組みを導入するため、新たな条例の制定を検討しているとのことである。地下水など水資源保全のための制度としては、様々な方法論が考えられるところであるが、「土地売買等の契約前に知事へ届出る制度」が望ましいと考えた理由を伺いたい。
【知事】
○私たちの生活の源である水資源やこれを涵養する水源林は県民共有の財産であり、これらの保全は大変重要であるとの認識のもと、昨年2月、庁内の関係部局における検討組織を設置し、水源林及び水資源の保全について検討を行ってきたが、先日その検討結果をとりまとめ、公表したところ。
○検討の過程で、全国各地で取得目的が不明な土地取引が確認されていることで、水源地独占や、地下水の大量取水への懸念や不安の声が上がってきていることがわかり、水源地における土地取引の把握や大量取水への対応が必要であると認識したところ。
○土地の規制については、日本の法制上土地所有権が非常に強固な制度となっており、どの程度のことまで都道府県レベルでできるのかについては、法律の専門家などのご意見を聞きながら踏み込んだ検討をしていく必要がある。
○当面、法律との関係からも可能な範囲と考えられ、水源地を守るという観点からも、抑止効果が期待される事前届出制度の創設を視野に入れた検討を行っていくこととしたところ。
取水行為にも着目した制度について
【本郷委員】
条例化にあたっては、土地取引とともに、取水行為にも着目した制度の方が実効性が高いとも言われているところであるが、この点について見解を伺いたい。
【知事】
○もうひとつの大量取水への対応については、地下水の取水規制が有効な手段であると認識している。
〇地下水取水に関する規制は、その内容に差はあるものの、既に45市町村が条例等により対応していることや、佐久地域の市町村や安曇野市では、地下水の取水規制を盛り込んだ条例制定を検討するなど、市町村の新たな取組みも進んでいる。
○更には、地下水は地域によって実態が異なっている上、地下水の賦存量(地下水の総量)などのデータは水道事業を所管している市町村が把握している場合が多い。
〇こうした状況を踏まえ、県として制度設計をするにあたって、地下水の取水に関する規制については、市町村条例による対応で十分かも含め、市町村と十分に協議していく必要があると考えている。
「水資源を利用する際のルールづくり」や「水資源を維持するための仕組みづくり」への取組みについて
【本郷委員】
水資源の問題に関して最も重要なことは、「水資源を利用する際のルール」や「水資源を維持するための仕組み」を如何に構築するかであるが、長野県としてこれらの点について、どのように取り組んでいくつもりか伺いたい。
【知事】
○議員ご指摘のとおり、水資源を保全していくためには、水資源の節度ある利用と、水源地の管理や地下水の涵養が重要であると認識している。
○これまで水資源は、地域の共有財産として、地域の中で一定のルールによって守られてきたが、最近の水資源をめぐる状況に対応できる新たなルールづくりの検討が必要となってきている。
○また、重要な水源林を公的管理の下に置き、森林整備を進めていくことや、遊休農地の活用や浸透性舗装の普及などの涵養対策の推進も、水資源の保全のために欠かすことのできない施策であると認識している。
○一方、水資源をめぐる事情は地域によって異なっていることから地域の実情に合った対策を検討していく必要があるほか、産業振興という視点から、水資源の利活用という点についても検討が必要であると考えている。
○こうしたことから、水資源保全の検討にあたっては、来年度環境審議会に有識者や法律の専門家などによる専門委員会を設置し、幅広い観点から検討していくとともに、市町村とも十分に協議して、長野県として、実効性のある水資源保全対策を推進してまいりたい。
我が国の社会保障制度のあり方と、本県としての対応について
【本郷委員】
経済成長と社会保障は切り離して考えることのできないテーマであり、経済成長と財政再建を複合的に進め、両立させていくことが求められている。県においても「現場の視点でとらえた社会保障懇話会」を立ち上げているところであるが、知事は、困難を増す国や地方の財政状況と予断を許さない経済情勢を踏まえて、我が国の社会保障をどうあるべきと考えているか、また、真の地方分権の時代の中にあって、県としてはどのように対応していくのか伺いたい。
【知事】
○社会保障は、年金、医療、介護、子育て支援、低所得者対策などの給付を通じて国民生活の安定を図るもの。この制度が機能することで、私たちは加齢に伴う不安や健康上の心配を過度に感じることなく、安心して日々暮らしていくことができる。
○このように、社会保障制度は我が国の社会・経済を支える重要な基盤である一方、活発な社会・経済活動が社会保障を支えている、言わば互いに循環する関係。こうした循環の関係を将来にわたって持続することが求められており、そのためには、国民の理解のもとで給付と負担をバランスさせていくことが必要。
○県としては、地域医療の充実、認知症高齢者に対する支援、高齢者や障害者のための施設整備など、まずは社会保障制度における県の責任を果たしていくこととしているが、国と地方の役割分担など様々な課題もみえてきている。
○先日、「現場の視点でとらえた社会保障懇話会」の初回の会合を開催したところであるが、こうした場での議論も踏まえ、現場や生活者の視点で望ましい制度をめざして国に対して提言を行うとともに、県の政策に反映させていく。
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