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平成22年11月定例会 健康福祉委員会 本郷委員 質疑要旨
1.社会保障費、特に医療費の増加と社会保障の将来像について
【本郷委員】
 最近、厚生労働省は医療費に関するデータを発表したようだが、現状はどうなっているか。長野県の数値はどうなっているか。年金、医療、介護、福祉等、あるべき社会保険制度像について伺いたい。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 国の医療費については、先月、厚生労働省から医療費の概況が発表された。それによると、前年度より更に2.0%増加し、34兆円を超え35兆円になろうかという大変大きな額である。年々過去最高を更新している。21年度の医療費の概算が既に発表されているが、長野県も前年度に比べて2.9%増で、こちらも大変な増加を示している。将来の展望であるが、まだまだ高齢者の医療費を中心に伸び続け、平成37年度まで伸びて、そのときには52兆円を超え、今の1.4倍になる。見通しとすれば厳しい状況である。
【本郷委員】
 県も議会も市町村と連携をしながら、新しい時代の社会像を構築しなければならない。
2.ドクターヘリについて
【本郷委員】
 ドクターヘリについては、本会議においても多角的なご議論があった。長野県、地域によって医療の温度差はあるが、スピード感のあるドクターヘリがもし導入された場合、ステップアップした新しい時代としての救急医療体制の構築というものを、予測していかないといけないと思うが、見解を伺いたい。ドクヘリは急性期の病院に入らなければいけない。そのためには、色々審議されているようだが、諸条件を整えなければいけない。そういう中において、その次の段階で、症状が回復した時に、次の病院にスムーズに移行する体制を配慮していくことが必要だと思うが、現状どのようなご認識とプランがあるか。
【角田医療推進課長】
 ドクターヘリに象徴されるような、救急搬送の仕組みが新たに構築されて、救急医療体制がどのように構築されていくか、それに対する考えというご質問だと理解しているが、救急医療体制については、2つの視点が一般的にあるのかなと思う。加えて言えば、何よりも早く、適切な症状に応じた処置が施されることと要約することができると思うが、今現在、県のほうで構築している救急医療体制のうち、こういった観点から、一つ目は、病院にたどり着く前の救護活動をどう充実させるかという観点がある。これについては、実際に救急搬送業務に当たる消防機関、特に救急救命士の養成・研修・再教育、そういったものを充実させることで、病院前の救急活動を充実させていくという観点が、救急体制の充実に対する一つの考え方と思う。
 もう一つは、まさしく病院において、救急救命活動が施されるという意味に置いて、県内の医療機関を、初期救急、二次・三次救急と段階的に整備させていただき、そういった体系の中で、対応させていただくと考えている。こういった考え方は、医療計画の中で体系付けられているわけで、この体制において、先ほどご指摘のあったドクヘリも、より早く、医師による救命処置が施されるという観点から、かなりの貢献が期待できるのではないかと考えている。また、搬送基準に関して、そういった観点から、消防機関との連携を深めるという意味からも、救命救急体制の強化に繋がっていくであろうと考えている。
【本郷委員】
 是非、今の件を確実に構築できるように希望する。特に、地域医療体制の維持向上には、医療機関の機能分担と連携の課題が多いので、この辺を整理することによって、より合理的でスピード感のある医療体制の造形が可能だと思うので、その点はなお、一層のご留意を願いたい。心臓停止3分で50%、呼吸停止10分で50%が死亡というようなことがあるので、これからは、先ほど言ったような合理的な地域医療の機能分担の中において、より一層、救急医療体制を、更に高度化するように一層のご努力を願いたい。
3.市町村国保の広域化について
【本郷委員】
 広域化に向けての考え方の原点として、赤字の地域と赤字の地域が広域化によって一緒になっても良い方向(黒字)にならないと思うが、なぜ広域化するのか説明いただきたい。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 国の高齢者医療制度が年内に最終とりまとめとなることが、目前に迫っている。赤字と赤字が一緒になっても黒字にならないと端的に指摘されている。国の説明では、今後医療費がまだまだ増えていくなかで、例えば小規模な自治体において大きな病気にかかる方がその年たまたまいて、財政的に行き詰まり不安定な状況になる、このような自治体がますます増えてくるので、一段階財政規模の大きい都道府県で運営の責任を担うことに意義があるとしている。
【本郷委員】
 ある県では広域化を進める、ある県ではそうではないということが制度上認められるのか。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 都道府県が広域化を選択する仕組みがあるかどうかについて、当初国では環境の整ったところからとしていたが、現実的に検討していく中で運営が県であったり、市町村であったりと混在する期間があるのは複雑で制度的に難しいとのことで、現在は平成25年度以降のある時期に、全国一律で都道府県の財政運営に移行する制度を想定している。
【本郷委員】
 広域化について、県内市町村長にもいろいろな意見があると概括的に説明があったが、もう少し詳細に教えていただきたい。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 市町村長の受け止めが両意見あり、広域化を進めるべきとの意見としては、(1)負担の平準化を進めて、全体で支えあう仕組みづくりがベストである。(2)県の段階で負担と給付を決められるのがよい。(3)国保財政の状況は待ったなしの状況にあり、広域化に手をつけていかなければ破綻が迫ってくる。一方是非慎重にとの意見もあり、(1)広域化すると財政運営する県と保険料を徴収する市町村が別々になるので、収納率をあげるインセンティブが働きにくくなり、収納率の低下につながる。(2)保健予防事業で、一定程度保険料を低く抑えていることが、市町村ごとにできなくなるようでは困る。以上のような意見があった。ある新聞社の広域化に関する県内市町村長へのアンケートでは、賛成が75%、どちらかといえば反対・反対は22から23%になっている。
【本郷委員】
 保険料がいずれ県一本になるシミュレーションになるので、現在でも県内市町村では格差が大きいので現実的にはハードルが高いと思うがその道筋はどうなるのか。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 保険料を一本化するということは非常に高いハードルと思っている。特に長野県のように全国2番目に格差があるという現実があるので、現実問題として県が標準保険料率を設定するとなると大変難しい問題が出てくると予想される。まだ、みんなで広域化を進めようと合意には至っていない状況にある。市町村国保の広域化について様々な角度から検討する委員会を本年度設置したので、この場で丁寧に議論を積み上げていくことかと考えている。
4.療育センターについて
【本郷委員】
 療育センターの施設整備については、松本市幹部との懇談会で毎回要望がある。6月に部長が直接厚生労働省に出向いて補助制度の創設を要望したと聞いているが、国の動きはどうか。
【寺沢参事兼障害者支援課長】
 発達障害児や重症心身障害児が増加しており、障害の早期発見から療育までを担う療育センターの整備に係る要望は毎年いただいている。飯田市や佐久市では、障害者自立支援法等のサービスの中でセンター機能を展開している。国には今年度だけでなく、昨年度も補助制度の創設を要望したが、前向きな回答はなく、進んでいない。
【本郷委員】
 発達障害は、大きな社会的課題であるので、知事も含めて要望活動の継続をお願いしたい。県内の他の地域の動きと、療育センターの整備に対する県の支援について伺いたい。
【寺沢参事兼障害者支援課長】
  北信地域では、療育センターの施設はないが、県内で最も早く巡回型を実施している。これは保健師、OT、PT、心理士等がチームを組んで、保育所や学校を訪問し、気になる子どもをピックアップして必要な療育を実施するもの。今年度から松本市でも巡回型を実施している。飯田市は、療育センターひまわりに配置したコーディネーターを中心に療育支援を行っているほか、佐久市では保育所を改修して療育センターを整備して取り組んでいる。長野市でも知的障害児通園施設を療育センターにする構想がある。公立施設に対する補助制度はないが、児童デイサービスや知的障害児通園施設として整備する場合は、国庫補助制度が活用できるので、計画が具体化した場合は、採択に向けて国に働きかけを行いたい。
5.発達障害者支援センターについて
【本郷委員】
 こども病院に設置している発達障害者支援センターのスタッフを増やし、療育、相談の充実を図っていくことについて、踏み込んだ判断を頂きたいと思うが、どう考えているか。
【小林健康長寿課長】
 平成17年から、こども病院に発達障害者支援センターの中南信駐在所を設置し、職員が保健福祉事務所等へ出向き、専門的な相談等の支援を行っている。この駐在所はあくまでも中南信地区への出張の便を図るもので、市町村に対する専門的、技術的な支援としては、精神保健福祉センターに設置している発達障害者支援センターと健康長寿課が協力して、市町村に対し、人材育成の研修会、パンフレットの作成、市町村サポートコーチ等の支援を行っている。今後も市町村に対し、よりサポートできるよう、発達障害者支援センターを中心に取り組んでいきたい。なお、参考までに、来年4月に松本の旭町庁舎に開所する「松本あさひ学園」に発達障害者支援センターの中南信駐在所を移転する予定だが、現時点では機能の変更までは考えていない。
【本郷委員】
 発達障害は社会的ニーズの強い問題でもあり、専門性の高い職員の配置など、体制整備について、一層の努力を願いたい。
6.管理栄養士の配置について
【本郷委員】
 健康づくりの観点からも「食育」は重要な位置付けであり、その実践面を担う管理栄養士の増員について、現状及び方向性を伺いたい。
【小林健康長寿課長】
 現在、健康長寿課に管理栄養士を2名配置している。今年4月、健康増進係長に管理栄養士が就いたことから、いわゆるスタッフの管理栄養士は1名となっている。そして、食育に対する関心の高まり、健康増進に関する取組の増加があり、今年度も「3つの星レストラン」の新規事業や県民栄養調査等、例年に増して、管理栄養士の業務が増加しているのも確かである。係では喫煙対策、歯科保健対策も行っており、栄養士には幅広い分野の活躍を期待している。現在の対応は、栄養士でなくてもできる業務については、係内、係外において業務の調整を行っている。また、来年度、係内に歯科医師1名を配置する方向で準備しており、何とかやり繰りする中で体制をとっていきたいと考えている。今後、業務の必要性を精査していく中で、場合によっては人員増も含めて検討していきたいと考えている。
【本郷委員】
 少し踏み込んだ発言も頂いたので、総合的な視点から御高配を願いたい。
7.歯科衛生士の配置について
【本郷委員】
 歯科衛生士の保健福祉事務所への配置、市町村への配置促進について、当面の方向性を伺いたい。
【小林健康長寿課長】
 歯科保健を担当する課としてお答えする。県における歯科専門職員の配置について全国と比べると、本県は必ずしも充実している状況ではなく、大きな課題として認識している。市町村における歯科衛生士の配置については、市町村によって差はあるが、先進的な取組を他の市町村へ情報提供することを通じて、市町村における歯科保健の取組が進んでいくようにしていきたいと考えている。歯科保健の推進における市町村の役割は大きいと考えており、歯科衛生士のみならず歯科保健の充実について、歯科保健推進条例も踏まえて市町村に対し働きかけていきたいと考えている。
8.歯科保健対策について
【本郷委員】
 歯科保健推進会議(仮称)の予算化、歯科保健実態調査の有効な活用及び8020運動の事業仕分け結果を踏まえ、県独自の事業化について伺いたい。
【小林健康長寿課長】
 歯科保健推進会議については設置する方向で予算要求をし、会議の内容については、歯科医師会等関係団体と協議してまいりたい。歯科保健実態調査については、今年度は既に第1弾を実施済であり、来年度は、介護保険施設、福祉施設等、サービスを受けにくい方へのサービスの提供状況について調査ができるよう検討している。8020運動については、先駆的事業は補助事業として残るため、国庫補助事業を活用できる形を考えながら、対応してまいりたい。
8.県薬剤師会の「お薬相談室」業務への県の支援等について
【本郷委員】
 長野県薬剤師会では、2009年3月に「お薬相談室」を設置しているが、この業務を県の業務として位置付けられないか。また、県から応分の負担を得られないか。
【角田医療推進課長】
 現在、県では、医療法の改正を受け、医療安全支援センターを設置しており、当課及び各保健福祉事務所で医療問題に係る一般の方からの相談を行い、必要に応じ医療機関とも調整を行っている。一方、薬剤師会の「お薬相談室」の相談内容は、一般の県民からの薬の相談に加えて、ドーピングなどかなり専門性が高い相談の比率が高いと聞いている。従って、医療安全支援センターの業務を県の業務として位置付けるのは、一般論として、今の段階では難しいと思うが、議論をしながら検討を加えてまいりたい。
【丸山薬事管理課長】
 県薬剤師会の「お薬相談室」での相談内容は専門的なものが多く、それらへの対応は県薬剤師会の本務のひとつと考えるが、県民の安全対策という点では、県でも対策を講じていることから、県薬剤師会と相談しながら、県からどのような支援ができるのか検討していきたい。
9.県生活衛生営業指導センターへの国の補助金について
【本郷委員】
 長野県生活衛生同業組合連合会は、県民生活にあらゆる分野で密着している非常に大きな組織である。会長さん、役員さんとコミュニケーションしたが、都道府県の生活衛生営業指導センターの経費は国、県の補助金が90%を占める。長野県は4人態勢で主に衛生、経営、融資等の相談をやっている。厚生労働省の事業仕分けの結果で一旦廃止になったようであるが、新たにゼロから再構築して、総額で1割カットの概算要求がなされた。1割カットも大変なことである。長野県生活衛生同業組合連合会は裾野が広い組織であるので、国に対し、強く要望していただきたい。もちろん、私ども議会も党、関係諸機関に要望していく。ぜひ、その点、御高配いただきたい。
【小林食品・生活衛生課長】
 生活衛生営業指導センターの補助金について、一次の事業仕分けで整理され、また、二次の事業仕分けで再度、一旦廃止と整理された。その中で、最終的には、精査をした上で、再度要求するようにという意見が出されている。県としては、一回目の事業仕分けの際にも、全国的な取りまとめのなかで、長野県も趣旨に同意して国へ要望を行った経過がある。クリーニング、理・美容などの中小の事業者がかかわっている部分であり、経営相談を行うなど、なくてはならない組織であることから、従来の補助金の確保を要望していく。
平成22年9月定例会 健康福祉委員会 本郷委員 質疑要旨
1.ドクターヘリについて
【本郷委員】
 中南信地区へのドクターヘリ配備に当たっての、準備の状況、対応スケジュール、財政面、運航開始時期等、全体像について説明をお願いしたい。
【角田医療推進課長】
 今月中に配備検討委員会を設置し、その中で専門家からなる皆様の御意見をいただいて、具体的な課題について議論をしながらクリアしていく。時期については、早ければ来週中ぐらいには設置させていただきたい。予算の対応というのもあるので、課題を議論していただく中で、必要な経費を要求するよう対応させていただきたいと思う。財政的には、現在、佐久総合病院の運航経費を補助金という形で、1億8千8百万円ほど予算計上させていただいている。その内の半額が国庫補助、もう半額が県負担ということになっている。2機目に関しては、今後の予算要求の中で対応・確定させていただきたい。ハード・ソフト面での課題ということでは、特に基地病院をどこにするのかということが、ハード面での一番の課題であると思っている。一般的には、ヘリの効果を上げるため、より広いエリアを対応できる場所にドクターヘリを配備することが、基地病院選定にあたって、一つの前提条件になると思う。もう一つ、ソフト面では、基地病院における人員体制、特に医師1名、看護師1名が365日搭乗できる体制が必須条件であるため、救命救急に専従できる医師と看護師の配備がきちんとできるかどうかというのが、一番のポイントになろうかと思う。また、佐久の例をとると、県が財政負担するもののほか、初年度に格納庫など、色々なハード面での整備を病院に負担いただいたという経過もあるので、その辺の病院側負担も含めて、ご相談させていただきたいと考えている。
【本郷委員】
 本会議で知事が明確に発言されているので、きちんとした体制が進むように、色々課題はあるとは思うが、鋭意ご努力をよろしくお願いしたい。
2.医療費の推移について
【本郷委員】
 医療費の推移はどうなっているか。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
 平成21年度の概算医療費は、国全体で3.5%、1兆2千億円増えて約35兆円となっている。 長野県では国の伸びよりは低いが、2.9%の増加で、5千6百億円となっている。
3.女性医師の勤務環境改善について
【本郷委員】
「必要医師数実態調査」によると本県の必要医師数は485人であったが、どのような認識か。
【鳥海衛生技監兼医師確保対策室長】
 平成18年度に県医師会、県病院協議会で実施した「医師確保に係る調査」では不足している医師数が479人、県のドクターバンク事業の求人数も直近で404人であり、今回の必要医師数も想定された数字ではあるが、厳しい状況を示していると認識している。身を引き締めて医師確保に取り組んでいきたい。
【本郷委員】
 女性医師が働き続け、活躍していただくことは、医師確保の観点からも大切である。女性医師数はどうか。特に産婦人科で女性医師が多いと聞いている。
【鳥海衛生技監兼医師確保対策室長】
 2年毎に国が実施している調査(平成20)によると県内の医師数は4,264人、そのうち女性医師数は662人、15.5%である。最近の医師国家試験合格者の34%が女性であり、20才代の医師をみると、全国では36%、本県では少し下がって27.4%が女性である。また、産婦人科は女性医師の比率が高く、全国の産科・産婦人科の医師のうちで20才代では約7割が女性である。女性医師に引き続き働いていただかないと医師不足は解決しない。
【本郷委員】
 女性医師が働き続けられる環境づくりが大切だが、課題は何か。
【鳥海衛生技監兼医師確保対策室長】
 平成19年度に県と信州大学が共同して実施した「女性医師就業に関するアンケート」によると、女性医師が仕事をやめるきっかけは、結婚、出産、育児が多い。当直を免除するなどの職場の理解や家庭、特に夫の理解が必要であり、ライフステージを通じて働き続けられることが大事である。女性医師のモチベーションの維持も課題である。「女性医師ネットワーク協議会」でも医師不足の中で女性だからといって勤務環境の改善を言い出すことは難しい状況にあり、男性医師も含めた勤務環境の整備も大事であるとの意見もあった。女性医師が働き続けられないと医師不足の解決は難しい。
【本郷委員】
 社会的な要因もあるが、女性医師は医師不足解消の重要なカードになる。これからも女性医師の勤務環境整備にご高配をお願いしたい。
4.がん対策について
【本郷委員】
 がんは県民の死亡原因の3分の1を占め、県民も関心が高い。議会は議連を作って対応している。県は推進計画、アクションプランを策定して推進している。その中で、がん診療連携拠点病院のない圏域への支援として、がん相談支援センターを設置していくとしていたが、取組状況はどうか。
【小林健康長寿課長】
拠点病院を増やすための施策として、拠点病院未整備の上田、木曽、大北、北信の4地域の中核病院が、がん相談支援センターを設置する際に1箇所250万円の補助を出した。木曽病院では4月から、一番遅い北信病院も8月から業務を始めた。部屋の改修や専門研修を受ける等で開始時期には違いがあったが、県でもPRをし、多いところでは月に40件を超える相談を受けているセンターもある。
【本郷委員】
 がん相談支援センターではどのように相談を行っているのか。
【小林健康長寿課長】
 看護師等が専門的な研修を受け、相談員として電話や面接で、がんに関する医療情報の提供や、受診上の相談、助言等を行っている。
【本郷委員】
 拠点病院が近くにあるのが良いと思うが、拠点病院指定の条件はいろいろある。県として、どう対応していくか。
【小林健康長寿課長】
 現在、北信圏域は長野圏域でカバーしているが、他の3圏域は、拠点病院が未指定の状況。指定条件は厳しく改定されている。県の取組だけでなく、病院自身の努力も必要。指定されるためには、放射線治療医の確保、高額な放射線設備の導入が課題。設備については、わずかながら助成する仕組みがあるが、放射線治療医は全国的に不足しており、県内で賄うのは難しい。本会議でも答弁させていただいたが、患者の円滑な紹介など県民の利便性を高める連携とともに、群馬大学には放射線治療医が比較的多くいるので、県外施設と県内医療機関の橋渡しのサポートをするなどしてまいりたい。また、既指定施設の機能評価を行っているので、その具体的なノウハウを、これから拠点病院を目指す医療機関に提供するなど、拠点病院の整備に向けて努力していきたい。
【本郷委員】
 拠点病院が増加するよう、努力願いたい。ところで、がんに罹った人の痛みを和らげるため、緩和医療が注目され、末期でなくても効果があると言われているが、どんな状況か。
【小林健康長寿課長】
 緩和ケアの提供は拠点病院整備の条件の一つとなっているので、拠点病院では実施しているが、拠点病院以外でも実施できるよう県で研修会を開催している。今年は木曽で開催予定。
【本郷委員】
 陽子線治療の話もあったが、20世紀はがんとの戦いで、何十年か経てば、がんはなくなるとされていたがなくならない。この最先端技術の時代に何とかならないものか。
【小林健康長寿課長】
 個人的な見解としては、何がどの病気に効くとは単純いかないもの。治療だけでなく、たばこ対策や食生活改善でそれぞれ4分の1から3分の1、その他運動やウィルスの問題もあるが、一つのがんが、何が原因でできるかは解明されていない。現時点で有効な、薬や手術、粒子線治療など、できることをやっていくしかない。なってしまったがんの治療とは別に、がんにならないよう、予防や検診を進めることも重要。21世紀になったからと言って、科学や技術で全て解決できるとはならない。がんの研究に期待しながら、できることを行ってまいりたい。
5.食品の安全・安心確保のための条例について
【本郷委員】
 以前、村井知事から、条例制定に取り組むという明快な答弁があった。今定例会においても食品安全対策連絡協議会を設置したという答弁があったが、具体的な進行状況はどうか。
【小林食品・生活衛生課長】
 長野県食品安全対策連絡会議については、8月19日に第1回目を開催したところ。会議は、食品の生産から消費までの各段階に関わる企画部、総務部、商工労働部、農政部、林務部、教育委員会及び健康福祉部の関係各課により構成している。その中で、食品の安全対策や全国の自治体の状況の現状把握、情報の共有を図った。今後、必要に応じ会議を開催し、条例制定に向けて進めてまいりたい。
【本郷委員】
 今後、もう少し踏み込んで検討委員会などを作る考えはあるのか。
【小林食品・生活衛生課長】
 検討委員会については、次年度の設置に向けて、予算措置について現在進めているところ。
【本郷委員】
 予算の裏付けがないと抽象論になってしまうので、新しい知事のもと、この条例がテイクオフできるよう精励願いたい。
6.阿部知事の基本政策集について
【本郷委員】
 本会議で質疑がなされなかった健康福祉部関係の主な項目と今後の取組は。
【桑島健康福祉部長】
 健康福祉部の事業に関係する項目は非常に多い。例えば医師確保対策や院内助産院の設置支援、障害者スポーツを通じた健康づくり、介護保険制度、福祉のまちづくり条例の見直しなどいくつかある。
7.障害者の就労支援について
【本郷委員】
 障害者の経済的な自立は大きな目標であるが、深刻な経済情勢の中で、障害者雇用も厳しい状況が続いていると心配している。国や商工労働部とも連携して対応していると思うが、どのような対応をしているか伺いたい。
【寺沢参事兼障害者支援課長】
 障害者の一般雇用に向けて、県では、労働局、ハローワーク、障害者職業センターといった国の機関と情報交換を行いながら、本人の希望や能力・適正に沿った仕事に就労できるよう努めている。商工労働部では、職業開拓を行う求人開拓員の広域的な配置や10地方事務所における無料職業紹介事業を実施している。健康福祉部では、県下10圏域に、国委託事業である就業支援ワーカー22名を配置し、障害者の相談に応じたり、雇用主である企業の理解、職場定着のための本人支援と雇用職場側からの相談にも応じているところ。県下の平成21年度の新規就職者は1,044人で、総合支援センターの就業支援ワーカーが関わった就職者は270人ほどである。
8.介護保険制度に対する中期的展望について
【本郷委員】
 平成24年度からの第5期計画を見据え、来年度、様々な市町村に関係の深い施策が出るものと予測している。中期的な展望に立った取り組みについて県の認識を伺いたい。
【有賀介護支援室長】
 国の老人福祉関係の概算要求では介護給付費が5%を超える状況であるが、平成24年度からの第5期計画に向け、社会保障審議会の介護保険部会で様々な課題が出され、これを見据えて平成23年度に新規事業が打ち出される。特に注目する事業は二つあり、「お泊まりデイサービス」、「24時間地域巡回型訪問介護」で、他にも認知症対策など様々あるが、額的にも大きな事業の位置付けである。背景には特養の入所待機者の増加があり、本県を含め全国的に42万人と言われる中、施設整備が必要なものの追いつかない状況を踏まえている。介護保険部会では「なぜ特養入所を希望するのか」との議論に対し、「家族の負担が非常に大きい」、「施設は24時間のサービスが受けられる」、「医療的な対応が可能」等の指摘があった。在宅介護をする方々が、特養等の提供サービスを地域で受けられるならば、施設入所をしなくてもよいのではとの議論である。アンケート調査でも7割以上の方が住み慣れた自宅での介護を希望しており、この視点から二つの事業が出てきている。最近、佐久市中込の宅幼老所を伺って意見交換する中で、デイは通常10時頃の迎えで夕方帰るが、夜間の仕事の方は、夕方から夜中までの預りのニーズが非常にあると聞いた。「お泊まりデイ」については、基本は夕方のところを延長して深夜まで預かる機能。また、ショートステイは2か月程前からの予約を要するところを、デイに続く急な宿泊の希望に応じる機能を念頭に、来年から8,000床を整備していく予算である。「24時間サービス」は、通常、訪問介護が1日1回から複数回、1時間ほど訪問するところを、夜中も含め365日24時間、医療も踏まえた必要なケアプランに沿って訪問することで、特養並みのサービスが提供できるものである。
【本郷委員】
 新しい施策として稼動するように、県としても導入に向けて努力いただきたい。自宅で2年ほど妻が父の介護に携わったが、自宅以外は頑なに拒んだので、他の方々もこのような例で苦労されていると思う。本来、介護保険導入時の理念は、在宅基本で、困難になれば施設サービスであったが、実際は逆になった。また、家庭内に複雑な事情があり、厄介な問題が内在するのが現代社会でもある。ぜひ、県としても5期計画に、お泊まりデイ、24時間サービスを位置付けてほしいが、経済的な負担の面はどうか。
【有賀介護支援室長】
 介護保険部会での議論、あるいは厚生労働省では、明確ではないが、第5期計画中に、全て介護保険サービスとして1割負担で介護給付費の中に入ってくることを想定して検討が進められている。以前、毛利委員からご質問のあった県独自施策の緊急宿泊事業と同じような形でデイサービスも宿泊可とし、報酬単価を決め、1割負担で利用できる、こうした流れになるものと考えている。
【本郷委員】
 市町村とも連携を取り、良い意味で普遍化し、広がっていくようお願いしたい。
9.成年後見制度について
【本郷委員】
 10年目を迎えた成年後見制度は、核家族化等様々な問題を抱えているが、全国と長野県の状況は。
【吉川地域福祉課長】
 平成21年度において、全国21409件、長野県367件となっている。
【本郷委員】
 家庭裁判所の申し立ても少なく、全国平均40件、本県9件となっているが、成年後見支援センターの支援も必要では。
【吉川地域福祉課長】
 本人、配偶者、親族、市町村長が代理で申立てでき、平成21年度は、県内市町村長申立て20件の実績がある。人材、費用の問題もあるが、市町村の広域的な成年後見支援センター設置については、財政的な支援(地域福祉総合助成金)が可能であるので周知を図りたい。
平成22年6月定例会 健康福祉委員会 質疑要旨
1.健康福祉部の発足について
 新しい部が発足して3ヶ月が経過した。滑り出しをどのように感じているか。
【桑島健康福祉部長】
  大きな部となり、仕事のすきまができないようにしたい。知事も言う「ゴーイング コンサーン」ということで、サービスが途切れないよう気をつけている。福祉分野は当初、知識がやや不足していると感じたので、現地機関を訪問して声を聞くよう努めた。業務が幅広いので、マネジメントも大切だと感じており、懸案事項をピックアップして、解決方法や目標を定め、業務工程表をもとに3ヶ月程度に1回進捗管理を行い、しっかり取り組んでいきたい。
2.地域主権改革について
 地域主権改革、介護保険制度、障害者支援制度など、各種制度変更の検討が国において進められている。地域主権改革のうち、社会福祉施設等の設置管理基準を条例で定めることになる「義務付け・枠付けの見直し」について、部として現状をどう認識し、対応していくのか。
【野池参事兼健康福祉政策課長】
  国地域主権改革には、補助金の一括交付金化や国の出先機関の再編などもあり、いずれについても大きな関心を持っている。「義務付け・枠付けの見直し」は地方自治体の自主性を強化し、自由度の拡大を図るもの。ただし、施設等の設置管理基準を自由に定められるということではなく、「省令に従うべき基準」、「標準」、「招請を参酌すべき基準」の3つに分類される。これを定める省令がどうなるのか、アンテナを高くして国の動向を注視していく。
3.介護保険制度の見直しについて
 介護保険制度の見直しに関する課題は一番重要な問題であり、県としての今後の主な取組みについて伺う。まず、介護給付費が増加する一途にあり、現状で財源確保をどうしていくのか伺いたい。
【有賀介護保険室長】
  産介護保険制度は3年ごとに見直しされている。第4期は21年度からスタートしたが、早晩第5期の話に移っていく。国の流れでは第5期に向けて、平成22年5月早々に国の社会保障審議会介護保険部会において、様々な議論が始まっている。
 財源の関係で数字を申し上げると、制度発足から10年経過したが、介護保険スタート時には概ね3兆3千億円ほどであったものが、平成22年には2倍を悠に超え、7兆3千億円を超えるものと見ている。
 長野県でも、介護保険スタート時の給付費は655億円ほどであったものが、今現在1,500億円と、サービスの広がりとともに給付費も膨大となっている。
 介護保険の財源の半分は、国・県・市町村の税金、半分は65歳以上あるいは40歳以上の方の保険料で制度設計がなされている。
 今後、介護給付費は、サービスが充実するほど費用は大きくなるが、この費用を保険料で賄うのか、市町村・国なりの税で賄うのかは5期の大きな課題であろうかと思う。
 国では、介護保険部会の提言を11月に受け、それを踏まえて来年の通常国会に介護保険の一部改正が出てくる予定であるので、その状況を見ながら、県としても地域の実状に合わせた要望は、国に対して意見等求めていきたい。
 介護職員の人材確保についても、前内閣から色々やっているが、この確保を具体的にどうするのか。私も、幾つかの法人の理事、評議員などを務めているが、大変苦労しているところだ。
 また、特別養護老人ホームの施設入所者の待機者がますます多くなって、本来、介護保険は施設から在宅へというのが厚生労働省の基本理念であったが、現実はかなり違っている。
 ケアハウスが老健化し、老健が特養化しているが、その現状に対し、厚生労働省は強い指導ができていないため、かなりあいまいな手詰まり状態にある。それをサポートする人材確保も待遇面で苦労しており、多少報酬を上げたりしているが、一番苦労されるところで医師不足と同様の問題が現場で起きている。以上二点お答えいただきたい。
【有賀介護保険室長】
 福祉人材をどのように確保していくかは、財政基盤と併せ大きな課題であるが、国の試算だと3年ほど前には115万人程度の介護人材であったところ、早晩高齢化が進めば、将来的には例えば255万人くらいの介護人材が必要ではなかろうかと予測されている。お金もかかるが、それを支えるマンパワーをどのように確保していくのかということも必要である。
 昨日もご説明したが、人材確保のためには能力のある方の研修等も必要であるが、正にそれで生活をしていく側面もあるので、福祉を支える方の処遇面で、より介護現場に参入しやすい環境を作らねばならないと思っている。
 併せて、介護報酬をそれに見合う形で上げれば、これに伴い介護給付費も上がるという相反する部分もあるが、いずれにせよ、サービス水準の維持・向上のためには、福祉人材は非常に大きな課題だと思っており、県の実情を踏まえた要望を国にしていく。また、本県は在宅だけで、5131人の特別養護老人ホームの待機者がおり、年々増加している状況にある。
 国も県も、施設整備は必要と認識している。併せて、本来であれば62%の方が住みなれた在宅で、という希望もあるので、施設整備を進めると同時に在宅サービスの充実を進めながら、施設待機者のニーズに応えていく。今年の秋までに国において色々議論も進むので、県の実情を踏まえた対応をしていきたい。
 室長答弁の最後のところが大事だと思う。在宅介護を支援していくためには、医療と介護の連携という視点が重要と思われるが、その点の共通認識は持っているので、更に具体性を持たせるよう努力をお願いしたい。最後に、国の見直しに関する今後のタイムスケジュールと県の対応について基本線を伺いたい。
【有賀介護支援室長】
 承知している段階の回答となるが、5月から始まった国の検討においては、基本的な議論は介護保険部会で月2回程度のペースで議論されると聞いている。この中で、様々な調査も行うと聞いており、11月を目途に部会の提言をまとめることとなっている。これに併せて通常国会において一部改正が行われることと思う
 国の調査結果や介護保険部会の様々な議論も示されてくるが、本年3月末の速報値で高齢化率が26.4%と全国より高いこと、中山間地が多く、都市部に比してサービスの効率化を図る必要があることなど、本県の特殊事情を折に触れて国に要望していく必要があると思っている。
 県においても、具体的な第5期に向けた介護給付費やサービス基準の議論は同時並行で進めていく。今年度、県が行う「高齢者生活・介護に関する実態調査」は、本年12月1日現在の状況について様々な内容を調査する。
 その中には、元気な高齢者の状況、要介護者の状況もあるが、特養待機者の状況については、在宅に限らず、他の施設に入所している方の状況もある。
 また、介護関係事業者について、処遇も含め経営状況はどうなのかなど、今までに増して調査を掘り下げる必要があろうかと思っている。こうした掘り下げにより、第5期の介護保険事業支援計画、市町村の介護保険事業計画の中に反映していく必要があると考えている。今年度は、こうしたスケジュールに沿って、様々な議論を進めていきたい。
4.障害者の地域生活移行について
 自立支援法は施行当初から「利用者負担」を中心に批判が絶えず、国は、施行された年から法の円滑な運営を期して特別対策を打ち出して法の定着に努めてきた。しかし、民主党政権となり、「障がい者制度改革推進本部」を立ち上げ、新たな制度構築に向けて検討がなされていると伺っている。そこで、「障がい者制度改革推進本部」の検討状況と今後の制度改革の見通し及び県としての対応について伺いたい。
【寺沢参事兼障害者支援課長】
国の検討状況については、障がい者制度改革推進本部(平成21年12月8日設置 障がい者制度改革推進会議(平成22年1月12日 第一回開催、これまでに15回開催)。
 今後の見通しは、障がい者制度改革推進会議において、平成23年度夏までに、障がい者制度改革全体の「改革の基本方針」をまとめ、総合福祉部会において「障害者総合福祉法(仮称)」の議論を進め(H22.6.22部会の論点表)、平成23年夏をめどに素案をまとめ、平成24年通常国会へ法案提出、訴訟でも約束していて平成25年8月までの施行を目指すとしている。県としては、国の検討状況等を注視し、必要に応じて改革の内容等について国に働きかけていきたい。また、特別対策について、着実に実行していく。
 障害者の地域生活移行について、長野県は国の施策に先駆けてに取り組んできたが、障害者制度の改革が予定される中で、今後の見通しはいかが。
【寺沢参事兼障害者支援課長】
 民主党のマニュフェストでも、制度の谷間を生まず、障害者が地域で自立した生活を営めるようにするとしており、県としても引き続き、知的障害者入所施設から地域生活への移行や精神障害者の退院を促進するため、生活の場であるグループホームや日中活動の場の整備などを支援してまいりたい。
5.食品安全条例の制定について
 今井敦議員の質問に対して知事から答弁があった食品の安全安心確保のための条例について、今、条例化する理由は何か。また、どのような内容と効果を予想しているのか。
【小林食品・生活衛生課長】
 既存の法令に基づき計画的に監視指導を実施しているところであるが、県民の不安が払拭されていない状況である。
 また、条例制定を求める住民要望が特定の団体にとどまらず広がりを見せていること、全国的に基本方針を条例化する流れがあり、近年その動きが加速していることから、本県においても条例制定に向けた検討を開始すべきと考えた。
 内容については「長野県における食品の安全確保のための基本方針」(平成7年策定)を基に、生産者、事業者及び行政の責務と消費者の役割を、高い次元でより明確に位置づけること、審議会など、様々な立場の者から意見を伺う場の設置、及び自主回収の報告義務づけなどを盛り込むよう、県民、関係者の意見を聞きながら検討してまいりたい。
 検討を始めるにあたっては、策定作業、施行までのスケジュールはどうか。
 また、関係事業者や消費者の意見を聞き、調整していく手続き、会議が必要と思うがどうか。
【小林食品・生活衛生課長】
 庁内関係部局と調整の上、検討委員会の設置に向け検討していく。並行して関係事業者団体や消費者団体と意見調整を行いながら、検討委員の人選を進めていく。
 検討委員会を開催していく中で、条例に盛り込むべき内容等を検討していきたい。
 先進県の制定、運用状況はどうか。
 実際の効果はどうか。これらを踏まえて、特に長野県ではどのような内容、運用を考えているか。
【小林食品・生活衛生課長】
 本年6月現在、25都道府県が同様の条例を制定している。また、3県が策定作業中であり、このうち岩手県ではこの6月定例会に上程されていると聞いている
 他県の条例の内容をみると、基本方針や理念を条例化したものが多く、数値として表れる効果等は見えにくいが、既存法令に基づく監視指導の成果と併せ、食の安心に効果を上げているものと思われる。
 また、事業者が行う違反等食品の自主回収報告を義務付けている自治体があり、既存法令から一歩踏み込んだ規制により効果を上げている。
6.認知症対策について
  認知症高齢者対策の県としての考え(全体像)についてお聞きしたい。
【小林健康長寿課長】
 県としてはサービスがきちんと提供できるように、住民への啓発あるいは医療、福祉、介護が手を結んで地域で支えることができる社会づくりを目指して取り組んでいく。
7.地域福祉総合助成金について
  地域福祉総合助成金は多額の不用額が生じていたため、制度改善されたと聞くが、決算を含めた状況は。
【【吉川地域福祉課長】
 平成21年度から旧社会部各課に分かれ細分化されていた県単(1/2)事業を、14区分から市町村提案事業を含め4区分に統合し有効活用を図った。
 平成19年度執行率70%(不用額1億1千万円)、平成20年度執行率75%(不用額8千万円)、平成21年度執行率81%(不用額5千万円)と徐々に改善している。
 市長会の陳情で所要額の満額をという要望もあるが、裁量も含め再度見解をお聞きしたい。
【吉川地域福祉課長】
 予算3億円という制約があり満額の要望は無理である。
 市町村に対しては、年度末の決算で不用額が生じるため、精度の良い要望額の要求と、変更の場合の早めの連絡をお願いするとともに、県も市町村提案事業のPRに努め、引き続き有効な執行に努めてまいりたい。
平成22年2月定例会 環境商工観光委員会 質疑要旨
商工労働部関係
1.長野県の成長戦略について
 産業構造が本質的に変化し、地方の基幹産業が疲弊している。持続的成長を維持していくにはどうすればよいか。これからの長野県のあるべき成長戦略について、部長の見解を伺いたい。
【黒田商工労働部長】
  平成14年〜19年のいざなぎ超え景気を分析すると、実は大企業の業況が良く経済を支えていたが、その反面、公共工事の減少により建設業が衰退した。また、大型店の進出により地域の商業が衰退した。総じて見れば、地方は疲弊していたと考える。
 その結果、国や地方の財政負担が増加してしまった。一方、年金問題をはじめとする社会保障制度の充実が必要とされている。こうした状況から、ある程度の経済成長はやはり必要であると認識している。そのためには、成長戦略をしっかり固めていく必要がある。例えて言うなら、縦糸に成長分野、横糸に技術力の向上などをしっかりやっていいかなければならない。その一つが産業振興戦略プランでありますが、全ての事業には着手していますが、策定時とは状況が変わっているので、時間軸を前倒ししていかないといけないと考えている。
2.企業誘致について
 (1)倒産件数が増加し、地方経済は劣化し、大変な事態となっている。
企業誘致も都県間競争が激化し、いかにしたたかに戦略を立てていくかが鍵を握る。
そこで、今年度、企業誘致の立地件数は何件か、また、トレンドや全国と比較してどうか伺いたい。
【大日方経営支援課長】
  国の立地動向調査は1000平方メートル以上の土地の取得を対象として、半期毎に調査している。21年前期のデータでは、全国的に設備投資が減少していて、対前年比マイナス47%であり、これは昭和55年に統計を取り始めてから、1番悪い数値である。
 長野県の平成20年の状況は、47件で全国10位、21年前半は昨年の前半に比べ1件減の18件で全国6位である。全国で立地件数が減少している中で、相対的に順位が上がったが、21年後半は厳しい状況であり、年間では30件いかないと思われる。
 中期総合計画で年40件の立地を目標としているが、達成は難しい状況である。
 全国では、静岡、群馬、茨城、兵庫、愛知がここ数年の上位5県である。本県も、昭和57、58年は全国1位であった。八十二経済研究所による設備動向調査は対前年比マイナス44%であり、全国と近い数値になっている。
3.企業誘致について
 (2)東京、名古屋、大阪事務所と視察したが、過酷な状況でありながら、誘致活動をがんばっており、ご努力に敬意を表する。企業誘致を進めるにあたり、創意、工夫している点や戦略はどうか伺いたい。
【大日方経営支援課長】
  産学官の連携による企業誘致にあたり、テクノ財団や大学等と連携していく。まず、訪問する企業をリストアップし、チームを組んで取組むことを来年度の重点とする。
 従来、売上高にポイントを置いて企業を抽出しアンケートを行っていたが、今年度は視点を変えて、社長が長野県出身、信州大学卒、2期連続利益を上げている研究所がある企業、2期連続利益を上げている企業、約3500社に実施し、この回答があった企業を中心に今年度から来年度にかけて訪問を行う。
 また、希望する市町村と共同で、産業誘致ナビに登録する。このホームページには1日500人程度がアクセスし、問い合わせがあるので、この情報を活かしていく。
 展示会では職員の派遣や、立地のパンフレットを配布し、誘致活動を行っている。ものづくり産業応援助成金についても、改正を行ったので、誘致につながるようにPRしていく。
3.金融政策について
 企業誘致の実績が上がるように、一層のご努力を期待する。
(1)中小企業金融円滑化法が12月4日に施行され、大手メガバンク配下の9行の実績を見ると、中小企業分の申込は2万件、貸出総額で9000億円近く、そのうちの実際に返済の見直しに応じたのは全体の2割にあたる約4000件で、貸出総額は約3000億円となっている。法の施行に伴い、中小企業からの申請が約2倍、住宅ローンの関係が4、5倍との実績も出ており、県内でも増えていると聞いている。
 長野県内の具体的な数字が分かれば教えていただきたい。
【大日方経営支援課長】
 報道の後、金融機関に照会したところ、報告義務については、金融機関が四半期ごと、信用金庫などのその他の金融機関は半期ごととなっている。照会した地方銀行では、現在集計中で出せるものはないとの回答であった。4半期報告が4月に行われ、45日以内に公表する義務があるので、5月半ばごろではないか。事業者の融資に関しては2割位の増、個人の住宅ローンについては2倍との話であった。
 また、県の制度資金では昨年2月に借換資金を創設しているが、12月の借換実績は前3ヶ月に比べ金額で2割位、件数で4割位の伸びとなっている。
3.金融政策について
 (2)印象として、メガバンクの方が反応が早く、県内の金融機関はデータが揃わない等、動きが少ない感じがする。中小企業金融円滑化法を地元中小企業に有効に作動させるための考えをお聞きしたい。
【大日方経営支援課長】
  県内の金融機関の実績が遅れているような印象を与えてしまったが、県の制度資金では、本年度、借換が一番多かったのは4月から7月であり、12月の法施行前に借換のピークが来たものと感じている。
 具体的な数字はないが、関東財務局のアンケート調査が2月に報告されており、その結果によると、法施行後、地方銀行24行のうち、「かなり増えた」が4行、「少し増えた」が16行、「余り変わらない」が4行となっている。また、信用金庫では72金庫のうち、「かなり増えた」が11金庫、「少し増えた」が31金庫、「余り変わらない」が30金庫となっており、信用金庫に至っては余り変わらないが多くなっている。
 その中でも、住宅ローンについては、大きく報道された関係からアナウンス効果があり、地銀24行中16行が「かなり増えた」と回答しており、住宅ローンについては借換が大きく進んだと考えている。
 このアンケート調査と金融機関へ照会した内容を総合すると、地域の金融機関は、一昨年の金融危機以来、融資先を全部回るなど、実態把握を行うことにより、予め借換が必要なものについては、十分対応してきたという回答が多く、地域密着型の金融に努めているという回答が多かった。
 法施行に当たって、金融庁が金融機関への監督指針を出したが、その中で「金融機関は、経営再建計画を策定した場合は、その進捗状況を適切に管理するとともに、必要に応じ中小企業に対して助言を行っているか検査する。」という項目が追加され、金融庁でも積極的に地域金融を進めていくことを監督方針の中に入れており、県としてもその方向で地域の金融機関が進んでいくことを期待している。
3.金融政策について
 (3)1万3千件の倒産のほとんどが、資金繰りが原因。また、短期の資金繰りが厳しい状況になっているようである。想像以上に銀行のハードルは高い状況である。金融円滑化法により3年間の条件変更を受けると、短期資金の借入が厳しい状況となると風評でいわれている。3年間棚上げにするわけであるので、新規の短期資金等の融資には影響はないのか。状況が分かれば教えていただきたい。
【大日方経営支援課長】
 3年間棚上げするについては話題になったところであるが、対象者のハードルが高い。対象者は保証協会の保証を受けたことのない人、政府系の金融機関から借りたことがない人が条件となっており、3年間延長の申し出は長野県では1件もない。
 都銀で2割の条件変更に応じたと話をしたが、実際は、審査中の案件が多く、最終的にはほとんどが条件変更されると思われる。
 お断りした「謝絶」は1%未満であり、ほとんどが申込者の要望に応じた何らかの条件変更に応じていると解釈している。
3.金融政策について
 (4)中小企業金融円滑化法については、柔軟に対応するよう指導もあるようなので、いい形で行政指導をしていただきたい。
 制度資金は、過去最高の1200億円を融資目標とする予算を組んでいただいたが、今年度の12月から3月までの状況はどうか。また、現在の中小企業の資金繰りについて、どの様に認識しているか。
 また代位弁済が増えているが、信用保証協会に対して税金により処置した後、どの様に対応しているのかあわせて伺いたい。
【大日方経営支援課長】
  昨年度は、緊急保証制度により大変な伸びを示しており、12月から3月までの間で、前年比30%から70%の伸びであった。特に、緊急保証制度に対応している特別経営安定対策資金は5倍から10倍の伸びであった。今年度になり、10、11月頃から落ち着き始め、12月、1月は一昨年並の資金の需要になっている。
 信用保証協会に聞いてみたところ、この様な状況は、県の制度資金だけでなく、県全体の資金も1月は昨年の半分位と一昨年並になっている。また全国的にも昨年の半分より少ない状況にあるとの回答であった。また、関東財務局の発表によると、地銀24行の12月末までの資金は前年より減っている状況である。
 運転資金については、秋までに借りた結果、新たな借入を行わず、既に借り入れた資金の中で資金繰りを行い、先行き不透明な中、備えていると考えている。将来返済しなければならないので過大には借りないという企業が多い。
 信用保証協会では保証料の約半分を保険料として日本政策金融公庫に保険を掛けている。代位弁済に至った場合は保険金として普通保証の場合は70%、特別保証の場合80%が下りてくる。代位弁済した信用保証協会は、代弁した企業に対して、資産状況の調査を行い、債務者の中で調整を行いながら回収している。
3.金融政策について
 (5)21年度の第二次補正予算の成立を受けて、2月15日から景気対応緊急保証が実施されているが、県の制度資金と連動性はあるのか。
【大日方経営支援課長】
  平成20年10月31日から実施されている緊急保証制度は、当初の545業種から793業種まで対象業種を拡大してきたが、2月15日から開始されている景気対応緊急保証制度では、原則として全業種が対象となっている。
 また、使い勝手がよくなったというのは、緊急保証制度では、前3か月の売上げ実績が前年の同期と比較してマイナス3%という条件となっていたが、去年の一番悪い時との比較になるため、過去2か年に改められた。
 国の見直しが4月に実施される見込みであったため、県では、11月からは独自に前3か年との比較で対応してきたところであるが、国では2月15日から過去2か年との比較で対応することとなった。
 県の制度資金への影響としては、特別経営安定対策資金により対応しているが、新しい制度の変更点が2点だけであり、貸付対象額や据置期間の変更がなかったことから県の制度も変更することなく、今までどおりに対応していく。
3.金融政策について
 (6)デフレは先進国の中で日本だけである。日本銀行の金融政策の量的緩和策についての見解を伺いたい。
【黒田商工労働部長】
  一番の問題はデフレのギャップ、内閣府の計算によると30兆円と若干改善されたようである。
 デフレ解消の特効薬は中々ないが、一つは金融政策、もう一つはデフレをどの様に縮めるかという実体経済の問題がある。実体経済的には個人消費を刺激して需要を喚起する。個人消費では3割くらいしか効果がないという説もあるので、大事なのは企業自身を元気にする施策、減税や規制緩和といった施策を個人消費の刺激とバランスよくやらないと、30兆円のギャップは中々縮まらないと考えている。
 もう一つの金融の問題は、財政と日銀の金融の問題と両方あると思っている。デフレは、経済の血液であるお金が流れていない状況であるので、日銀の施策に期待している。
 金融面では、地方でできることは中々ないが、中小企業制度資金も額を増やすことによって、市中に血液たるお金を少しでも流したいという意味も込めて、1200億円という設定をした。何れにしても、日銀には多いに期待している。
観光部関係
1.観光振興の意気込みについて
  20世紀、世界の人口は3・5倍、農業生産額も7・5倍と膨張してきた。しかしながら、現在の日本は減少傾向にある。2008年に観光庁が発足したが、リーマンショックなど、グローバルな問題が発生している。
 フランスには8000万人が観光に訪れており、日本の10倍である。日本には国家戦略としての明確な観光戦略がなかったのではないか。
 平成22年度は観光部発足4年目であり、再興計画の3年目でもある。外的な環境は非常に厳しい中で、気を引き締めていかなければならない。日本の成長戦略の柱は観光振興であるという認識のもと、観光部の意気込みを伺いたい。
【久保田観光部長】
  平成19年に観光部を設置し4年目となる。「観光立県長野」再興計画も3年度目となる。そういうことから、平成22年度は正念場と考えており、成果を出さなければならない。我々の努力が足らないといわれるかもしれないが、観光が外部の要因に左右されやすいことは事実である。しかし、将来に向かって布石を打っていくという姿勢で取り組んでいる。
 今年は春のイベントがあり、秋には信州DCがある。これに向けては、各地域の取組を大事にしたい。強化するとともに、熱を上げていきたい。
 地域全体のたたずまい、生活などのトータルの魅力を売る産業が観光であると思う。その際には、行政だけではなく、関係者だけでもなく、一人ひとりが重要性を感じて取り組んでいくことが大切であるが、全体への働きかけは未だ不十分と感じている。県民みんなで取り組むという視点では、さわやかにもてなそう県民運動を進めたい。
 観光は製造業とは異なり、地域を離れては存在しない産業である。すべてが商品であり、地産地消でもある。掛け声だけでなく、具体的に訴えていきたい。
2.河北省のポテンシャルについて
 中国については、北京、上海というところに目が行くが、河北省経済交流推進事業が予算計上されているが、河北省が持っているポテンシャルについて説明していただきたい。
【田中国際課長】
  河北省は、人口が約8千万人、面積は長野県の約14倍の規模である。北京に隣接し発展しており、省内の渤海湾沿岸部においては、港湾整備の国家プロジェクトが進められている。企業誘致に積極的になっており、将来への期待が高い。
3.観光圏整備事業について
 中国と日本という国家間の競争と同時に、都道府県間の競争が激化してくるので、今回の事業への予算付けを契機に、河北省との関係を「てこ」に、観光、経済をからめながら努力していただきたい。
 全国で30地域が認定されている観光圏のうち長野県関係は栄村の雪国観光圏のみであるが、長野県の観光圏に対する考えについて伺いたい。
【石原観光振興課長】
 観光圏については、基本的に、地域が一体となって主体的に判断するものと考えている。現在、富士見町と原村が山梨県北杜市と八ヶ岳観光圏、大町市が富山県立山町と立山黒部アルペンルート観光圏の動きがある。
 また、富山湾・黒部峡谷・越中にいかわ観光圏が小谷村・白馬村・新潟県糸魚川市へ地域拡大の動きがある。
 今後も、引き続き、適切な情報提供をするなど観光圏を検討している地域を支援していく。
4.温泉地・スキー場地区再生モデル事業について
 今後も、観光圏が広がるよう支援をしていただきたい。
 (1)21年度で3年度目を迎えた温泉地・スキー場地区再生モデル事業の成果はいかがか伺いたい。
【石原観光振興課長】
 19年度から11地区をモデル地区に選定して事業を進めている。例えば、昼神温泉では、温泉ミストによる泉質のよさのPR、足湯による環境整備、おもてなしなどの取組み、浅間温泉では、案内マップサイトの制作、旅館のトイレや傘の貸出しによるおもてなしなどの取組みを行ってきている。
 今後、モデル事業の成果発表会を開催し、成果が他の地域の参考になるよう情報提供を進めていきたい。
4.温泉地・スキー場地区再生モデル事業について
 (2)19年度採択地区は22年度で事業終了となるが、23年度以降の事業の展開について伺いたい。
【石原観光振興課長】
 この事業はまだ24年度まで継続するので、後継事業は考えていない。
5.インバウンドについて
 温泉ブームが激化しており、温泉の復活が重要なキーワードとなってくるので、今後も掘り下げた議論をしていただきたい。
 21年度のインバウンド事業の課題・反省とそれを来年度にどう繋げていくか伺いたい。
【石原観光振興課長】
 昨年は当初から新型インフルエンザなどの外的要因が大きかった。その逆風の中で実施された、知事をトップにした台湾への訪問において、日本の状況をきちんと説明することにより、昨年の秋口から訪日教育旅行がV字回復することができた。このようなことから、海外に向け日本の状況をきちんと説明し理解してもらうことが重要だと学んだ。
 来年度については重点地区ごとの戦略をたて、それぞれに必要な情報を的確に発信していくことを重要課題として取り組んでいく。
6.国際会議について
 21年度はアスパック、日中韓観光大臣会合が開かれ大変多くの方がお見えになったが、来年度以降はどのような事業があるのか伺いたい。
【石原観光振興課長】
  今年度は特にアスパック開催がインバウンド誘客に繋がった。来年については具体的な事業予定はないが、今後は国際会議だけでなく全国会議の誘致が長野県経済の活性化に結びつくものと考えている。「技能五輪」については誘致に成功し、実施が決まっている。その他、「産業観光フォーラム」 などの全国規模の会議を積極的に誘致していきたい。
環境部関係
1.環境行政のあるべき姿について
  この度退職する白井部長に、環境行政について大局的な観点からの感想を伺いたい。先程の説明の中で、環境と経済の両立という言葉があったが、日本の新たな成長モデルをどのように構築するかが、現在、大変重要な課題となっている。そういう面から、これからの日本、あるいは長野県の環境行政のあるべき姿について見解を伺いたい。
【白井環境部長】
 日本においては、かつての高度経済成長を経て、まず公害問題が非常にクローズアップされた時期があった。一方で、長野県は自然に恵まれ優れた環境を有する県として、水や緑に代表される美しい自然環境を保全するということにも力を注いできた。最近、今日的な課題となっているのは温暖化や廃棄物対策であり、環境行政も様々な時代を反映して新たなニーズに対応するために変わってきたものと考えている。
 指摘のとおり、環境と経済の好循環をどのように実現していくかは非常に重要な課題である。長野県においては、産業もその時代時代に合わせて発展してきたが、そうした中で環境に対する技術がかなり集積している。長野県の成長戦略として、環境技術で経済成長を図っていく必要があるのではないか。このことは、ひいては日本の生きる道にもつながってくるのではないかと考えている。
2.地球温暖化対策について
 (1)環境と経済の両立が最大の政治・行政課題となるなかで、地球温暖化対策基本法が12日に国会提出予定のようである。鳩山首相が1990年比で2020年までに25%削減するという目標を立てた。危惧しているのは、これまで日本は世界トップクラスの努力をしてきたわけで、真水だけで25%削減するとした場合、環境と経済がうまくいくのかと考えている。また、技術開発に必要な経済成長戦略とエネルギー戦略のバランスが重要と考えるが、効果と負担の割合がはっきりしていない。方向性は理解するが心配もある中で、この点について、部長はどう考えているか所見を伺いたい。
【白井環境部長】
  政府が基本法案を提出している中で、今後最終的な調整がされると考えているが、例えば、国内の排出権取引であれば、公平な排出枠の設定などの課題も抱えている。排出権取引は、EUで先行しているが、ラーニング バイ ドゥーイングという形で、実際に動きながら学んでいくということで、EUでも試行錯誤しながら8年間ほどかけて実施したと聞いている。今後日本で実施する上でも、様々な検討がなされるべきだと考えている。他にも、例えば太陽光発電について全量買取制度があるが、これは国民に一定の負担をしてもらうものであり、何らかの形で負担をしていかなければならないと考えている。その点で、経済の状況を見ながら、一方で先進国として果たさなければならない役割があるので、バランスを取っていく必要があると考えている。今後、25%達成のための具体的なロードマップが検討されているので、中状況の中でどうなっていくのか、また長野県として何をすべきかについて、検討していく必要がある。
2.地球温暖化対策について
 (2)昨年のCOP15では各国の国益が優先され、残念ながらそれが政治権力の実態であって、国連はひとつの理念があっても機能しない。今年の11月〜12月にメキシコでCOP16が開催されるが、米中とEUとの力関係で、どれぐらい根本的な話し合いができるか不透明であるし、来年は南アフリカでCOP17が開かれ、高度の政治的合意ができるかどうかと考えている。
 部長の答弁に排出量取引のことがあったが、排出削減に貢献している企業は除く必要があると思う。そういう中で全ての企業を対象にするのかということが1点と、排出削減が高度化しており、企業負担が年間1兆円以上と言われている中で、日本の役割として排出削減の方向性の理念を出しながら、トップランナー・フロントランナーとしての環境エネルギー技術を発展途上国への支援という形で、役割を果たすべきではないか。部長の総括的な見解を伺いたい。
【白井環境部長】
 排出量取引は、現在も京都議定書のクリーン開発メカニズムという形で実際行われているが、これは技術支援と排出量購入の両方を行うもの。日本は世界全体の4%ほどを排出しているにすぎず、これから成長する中国や、すでに大量排出している米国等で排出削減が行われない限り、排出削減は厳しいと思っている。とりわけ、アジアへの支援ということで考えると、石炭を主要燃料にしている国に対して技術援助をするなど、国内ばかりでなく、海外への援助という方向性が良いと考えている。今後、世界に対する外交において、政府もしっかりした役割を果たしてほしいと考えている。
2.地球温暖化対策について
 (3)減CO2アクションキャンペーンをはじめ、エコポイント事業、ノーマイカー一斉運動等、県民一人ひとりの取組が非常に重要だが、極度に疲弊した地方経済の中で、環境問題を啓蒙啓発していくのは大変厄介な問題である。「家庭の省エネ“見える化”事業」だが、この「見える化」が果たして一般社会の中で、どのように評価されるのかと考えているが、この事業に込めた心意気について伺いたい。
【山本環境政策課長】
  今年度、県でも太陽光発電を導入するなど、「見える化」ということで、県民に見てもらい次の行動に移してもらうというキーワードとして行ってきたものであり、新年度事業では、家庭に働きかけをするにあたり、「見える化」という名称がよいのではないかと考えたものである。減CO2アクションキャンペーン、エコポイント事業とステップアップする中で、さらに、具体的な削減効果を見える形で進められないかなということで事業を作り上げた。アドバイザーが家庭に入っていき、どの部分がエネルギーを大量に消費しているのか、どこを改善すれば良くなるのかといったことを可視化していきたいと思っている。家族構成や年齢、ライフステージやライフサイクルなどによっても異なってくると思う。家庭内の大口の排出枠を見つけて、効率的な省エネを図っていくことが改善に繋がり、大きな効果が出ればランニングコスト削減にも繋がるので、家庭にとっても経済的メリットが生じて実践しやすくなるのではないかと思っている。そういう趣旨で、アドバイザーが各家庭で排出要因、効率的な対策、対策に伴う削減量、経済性などを示していきたいという考えで提案している。
2.地球温暖化対策について
 (4)アドバイザーが重要な役割を果たすということで、講習会を入口としてやっていくと。その場合、NPOや環境保全協会など各種団体との連携が必要になるという説明があった。これをきっかけとして、家庭での省エネ活動に広がりを持たせるとのことだが、この可能性、広がりの見込みについて、所見を伺いたい。
【山本環境政策課長】
 段階を踏むということで、いきなり家庭に入っていくということではなく、地域での省エネ普及のための巡回講習会をやっていきたいと考えている。市町村、環境団体、消費者団体、社会教育関係、男女共同参画などの会議とも合わせて積極的に開催したいと考えている。また、エネルギー供給側である電気・ガス等様々な団体があるが、そういう業界にも協力してもらい、省エネ巡回講習会に来た人が、パンフレットを見たり、相談するといったことができないかと考えている。
 また、事業の広がりについては、減CO2アクションキャンペーンや信州エコポイント事業に取り組んでいる家庭に参加を呼びかけていきたいと思っている。さらに、現在約200名が活動をしている地球温暖化防止活動推進員の協力を得たり、住宅では新築や増改築の際に省エネを考えることが多いと思うので、そういう人に働きかけができるように考えていきたいと思っている。
2.地球温暖化対策について
 (5)現在住宅業界では、小規模オーナーが苦労している。ただ、大型の住宅よりもエコを理念とした住宅の方が、やや値段が高くてもセールスポイントとなっているようである。そうした企業の営業マンが家庭に入っていくわけだから、今の答弁は非常に重要だと思う。住宅関係との連携を拡大していただきたい。
 さて、この事業はふるさと雇用再生特別基金を財源として、家庭をターゲットとしてやるわけだが、2012年度までの継続性が重要だと思う。その点についてはどのようにロードマップを考えているか伺いたい。
【山本環境政策課長】
 新規事業等についても、県の財政が厳しい中で、様々な財源を活用して実施している。この事業はふるさと雇用再生特別基金の財源を活用して、実施していきたいと考えている。
 ただ、この事業は委託事業で2年間のみという制約がある。そこで2年目に事例集を作成しようと考えており、良い省エネ診断事例を掲載し、多くの人の契機としてもらおうと考えている。ついては、環境フェアなどの場を通じて、周知啓発をしていきたいと考えている。また、先程も答弁したが、地球温暖化防止活動推進員にもアドバイザーの活動に参加してもらい、技術を習得するなどの広がりを図っていきたいと考えている。また、家庭に入って省エネ診断をするにあたっては、CO2削減も大事だが、経済的メリットもあると思っているので、将来的にはこのような事業を行う、環境NPOや企業などが出てくるのではないかと考えている。いつまでも県で続けるのではなく、始めの部分を県がやることによって、NPOやベンチャー企業に引き継げないかということを期待しているところである。
3.信州の名水・秘水について
 行政は誘発性が大事であり、あとは民間にやってもらうことが、普遍的に進める方法だというのはその通りだと思う。最初の厳しいところを主要な事業として、努力していただきたい。
 信州の名水・秘水については、今年は信州DCの年であるので、パンフレットの作成やHPによる広報だけでなく、観光部と連携してマスコミに取り上げてもらうのは、ブランド力を高めるためにも重要と思うが所見を伺いたい。
【前沢水大気環境課長】
 2月8日に公表し、マスコミにも取り上げられた。今後も県の広報媒体でPRしていくが、選定委員が自発的にラジオや新聞のコラムなどでPRしているものもある。観光部と連携して信州DCにも取り上げてもらいたいと思っている。
 3月23日に開催する認定式、その後のシンポジウムで名水を活かした地域づくりの事例発表とかパネルディスカッションを実施し、マスコミにも取り上げていただく機会になる。県が情報発信するばかりでなく、市町村をはじめ地域の方が、その価値に気付き、地域の財産として大事だと考え、保全し、発信していくことが大切だと思う。
 今回認定した名水等から、そのきっかけになったと言っていただいたところがいくつかあるので、大変嬉しく思っている。市町村とも連携し、いろいろな機会を通じてPRしていきたいと考えている。
4.生物多様性確保対策事業について
 名古屋市で開催されるCOP10のエクスカーションを活用し、観光部とも連携して、マスメディアを活用し、観光振興を図ってほしいと思っているが、所見を伺いたい。
【塩入自然保護課長】
 COP10のエクスカーションは自由参加なので、魅力あるコース設定を心掛けたい。マスコミのPRは大変重要であり、また観光部とも連携していく。 また、「長野県魅力発信ブログ」でネイチャーツーリズムについて情報発信している。
5.資源循環システム構築事業について
 資料9の「資源循環システム構築事業」で、この中の4つの事業においても、特に、今年度諏訪市をモデル地域にした「食べ残しを減らそう」推進事業は、朝の全国ニュースで全国に放映され、これだけで私ども自然に知ることができたところである。このような事業についての、マスメディアの活用策、情報化時代における認識や施策についてどう考えるか。
【石田廃棄物対策課長兼廃棄物監視指導課長】
 マスメディアに対するPRについて。委員の指摘のように、「食べ残しを減らそう」推進事業については、NHKや信越放送を始めとして、民放各局や新聞各社でも取りあげていただき、この事業の滑り出しの段階から多くの皆さんに関心をもってもらうことができた。それをまず続けていくことも大切であるが、食べ残しやレジ袋の削減といった啓発においては、県民の皆さんの個々の意識に訴えかけることが必要不可欠と考えており、その意味で県民「みんな」の目に直接見せる媒体としての、報道やメディアは存分に活用しなければならないのではないかと考えている。
 それと同時に、特に、食品残さの発生抑制については、来年度は家庭での食べ残しを減らすこともターゲットにしていることから、小中学校の給食だよりや市町村広報誌といったミニメディアも活用した啓発も行ってまいりたい。
 個人的な考えではあるが、マスメディアに対しては、徹底した事前の案内が必要と考え、必要に応じて取材等もお願いしてきているが、それは今後も徹底してまいりたい。
6.微小粒子状物質PM2・5について
 マスメディアだけでなくミニメディアも使った多様性をもった啓発を大いにやっていただきたい。
 教育的視点ももった市民社会における意識改革というのは、特にレジ袋の削減などは松本市や中信地域でも非常に熱心なボランティア活動が行われているが、いかにネットワーク化して地域社会に定着させるかが課題であり、その意味でマスコミの果たす役割は大きい。
 この事業の中の4つのテーマが少しでも前進するように、一層の努力をお願いしたい。
(1) 大気中に浮遊する微小粒子状物質に対する環境基準PM2・5が定められたとある。ダイオキシン濃度などはだいぶ定着して、その意味と内容が健康に関しても理解されているが、PM2・5については知識がないので、この微小粒子状物質はどういう関わり合いになっているのか、生活や健康面でどういうふうに理解していいのか伺いたい。
【前沢水大気環境課長】
 大気中に浮遊する細かい粒子のうち、2・5μm以下のものをPM2・5と言う。これまでも10μm以下のものは浮遊粒子状物質として環境基準が昭和48年に定められており、県内では環境基準をクリアしている。
 PM2・5はさらに小さいものなので、肺の奥深くまで入りやすいため、肺がん、呼吸器疾患などの健康影響があるということで、欧米では既に環境基準が決まっている。ダイオキシンは化学物質であるが、PM2・5は大きさだけで決められており、昨年9月に環境基準が定められた。環境基準は人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準であり、行政上のひとつの目標値である。仮に超過したとしてもすぐ健康に影響が現れるものではないが、基準をクリアできるように施策を講じていく。県ではPM2・5測定器を配備して新年度から5箇所で測定をする予定である。
6.微小粒子状物質PM2・5について
 (2)いたずらに危機意識を煽ってもいけないが、本質的な問題であるので、県民にはどういう形で一般的な知識として啓発をしていったらよいと考えているか伺いたい。
【前沢水大気環境課長】
 県民に対しては来年度から県内各地で測定していくので、結果を公表していく中でPM2・5について理解を深めていく。
7.「水循環・資源循環のみち2010」構想について
 新しい概念であるので、時間をかけて、プロセスを踏んで、県民によくわかるようにしていただきたい。
 部長の議案説明には、平成22年度に「水循環・資源循環のみち2010」構想についてまとめるとあるが、処理施設、ある意味プラントなので、巨額の投資がされており、施設の老朽化や機能低下等があると思う。保健衛生、環境面などで重要な役割を果たしてきたと思うが、プラント故に負の部分もあり、実態が掌握しにくいとも思っている。しかし、汚泥の効率的な処理や経営の効率化という観点から見れば、分析が可能ではないかと思う。いずれにしても、古くなった巨大プラントに対して、建設部でも道路、橋の問題が急浮上している。ひとつの視点として、県民の安全・安心の視点からどのように考えるか見解を伺いたい。
【小口生活排水課長】
  「水循環・資源循環のみち2010」構想については、現在、2つの大きな課題があると考えている。1つには、人口減少、市町村合併等の社会情勢の変化や流入下水量の減少予測、現実的に減少している状況がある。また、現在、400の下水道と農業集落排水施設があり、まだ増設が必要なところはあるが、全て稼動している状況である。施設の長寿命化対策、改築・更新費用の確保などを含めて「生活排水処理の経営改善」が大きな課題となっている。
 もう1つは、汚泥や消化ガスなどバイオマスの有効な利活用と安定的な処理について。現在、下水道汚泥の多くが県外へ運搬され、セメント原料として利用されているが、国内のセメント需要の減少など、安定的な処分に対するリスクがある。また、農業集落排水施設や浄化槽汚泥、生し尿については、し尿処理施設で処理しているが、これについても更新が必要になってくる。これに対して、今、構想として3つのプランを検討している。
 1つ目は、下水道・農業集落排水事業・浄化槽等で、その地域に合った効率的な整備の棲み分けをしっかり行い、必要な場合には処理区の統合や再編成を行う「効率的な生活排水施設の整備」。具体的には、整備区域の見直しや農業集落排水施設と下水道の統合などである。
 2つ目は、必要な場合の汚泥処理の広域化、汚泥の持つエネルギーの利活用、安定的な最終処分方法の推進など、「バイオマスの利活用」。具体的には、消化ガスの利用、また将来的には、リンなどの活用も含めたバイオマスの有効利活用である。
 3つ目は、経営計画の策定、効率的な維持管理業務、広域化による管理経営の推進、あるいは、使用料の適正化、接続促進、経営状況の明確化による経営基盤の強化といった「経営プラン」。
 この3つのプランを市町村や各流域下水道でそれぞれ構想原案として、今年度末までに提出してもらうこととしている。今後は、平成22年8月〜9月を目途に、県の構想として取りまとめていきたいと考えている。
平成22年2月定例会 一般質問及び質疑の内容
1.本県、日本を取り巻く世界情勢について
 今日の日本の政治、経済情勢は、その展望が不透明であり、地方自治にも深刻な影響を与えている。とりわけ地方経済の疲弊は近年経験のないものであり、この難局打開のためには、大状況、中状況、小状況ごとの的確な分析が必要である。
大状況分析として、世界的視野に立った見地から、
(1)米国経済・中国経済の現状と今後の展望について
(2)基軸通貨としてのドルについて
(3)激動の国際経済に共通する課題について
(4)APEC議長国として日本の存在感をいかに提示できるか
(5)極東における日本の安全保障と50年を迎える日米同盟のあるべき姿について知事の見解を伺いたい。
【知事】
 世界経済のグローバル化が進展する中、米国は個人消費を中心とした強力な内需主導型の経済構造を築き上げ、GDPの約7割を占める個人消費の拡大と貿易赤字を中心とした経常収支赤字の拡大が、世界経済の成長の原動力であった。
 しかしながら、今回の金融危機により、個人消費が大幅に減少し、我が国のほか、アジアやヨーロッパ諸国に大きな影響を与えた。
 米国経済は、引き続き深刻な状況にあるが、政策効果もあり、景気は緩やかに持ち直している。先行きについては、基調としては緩やかな持ち直しが続くと見込まれるが、雇用の悪化等により、景気が低迷を続けるリスクもある。
 一方、中国は、名目GDPが1979年から2008年までの30年間で約82倍となり、IMF(国際通貨基金)は、2010年に中国の名目GDPが日本を上回り、世界第2位の経済大国になると予想しているなど、世界における中国経済の位置づけは、ますます大きくなると思われる。
 世界同時不況後の景気刺激策の効果もあり、中国の景気は内需を中心に拡大しており、先行きについては、引き続き内需が堅調に推移するとみられることから、拡大傾向が続くと見込まれている。
 国際経済におけるアメリカの相対的地位の変化から、基軸通貨であるドルの地位も相対的に低下しているのではないかといわれているが、外国為替取引高に占める通貨別割合や外貨準備高に占める通貨別構成などを見ると、依然としてドルは約半数を占めている。
 現時点において、経済力でアメリカをしのぐ国はなく、ニューヨークは世界の金融センターとして確固たる地位を確立していることから、今後もドルの基軸通貨体制が続くものと思われる。
 世界的な経済危機が発生以来、自国の産業への支援や雇用の確保のためと思われる保護主義的措置の導入を求める圧力が各国で高まっている。
 保護主義によって世界貿易が縮小することを回避するためにも、自由貿易を推進する必要があり、ルールに基づく多角的自由貿易体制をさらに強化していくことが不可欠である。
 そうした点からも、今年、APEC議長国を務める日本が、アジア太平洋地域の経済成長の持続と地域の連携強化のために、重要な役割を果たすことを期待する。
 お尋ねの日米安保、日米同盟をめぐっては、米軍基地移設問題を含め、国民の間に様々な議論があり、個人的には、どうあるべきかという思いはあるが、国が責任をもって検討すべき事項であり、知事の立場でいろいろ申し上げるのは避けるべきであると考えている。
 ただ、日本が戦後今日まで、平和を維持し、その中で経済発展を遂げてきた背景には、現に日米安保体制の存在があったことは否めない事実ではないか。
 日本を含むアジア太平洋地域には、依然として領土問題や統一問題などがくすぶっており、不確実な要素が存在する安全保障環境の下、軍事大国にはならないとしている日本が、平和と安全を維持しつつ経済活動を行うには、現在の体制を維持せざるを得ないのも現実ではないか。
 いずれにしても、条約署名50周年に当たり、日米安保体制を中核とする日米同盟を、21世紀に相応しいものとするための協議が日米両国間で始まろうとしているので、その推移を見守りたい。
2.日本経済の現状と今後の展望について
 中状況分析として、日本経済と財政の現状を踏まえ、平成22年の日本経済をどのように見通しておられるか、更にデフレ、円高についての基本認識について、知事自身の日本経済成長戦略についての見解、更には安定的からネガティプ化へと国債の格付け見通しが引き下げられたことへの見解、財政悪化から来る長期金利急騰の懸念について、また国の経済対策の問題点についてそれぞれ所見を伺いたい。
【知事】
 現在の厳しい日本経済の根源は、デフレギャップにあると認識。これを埋める手立てとして、短期的には公共部門による需要喚起、中長期的には、個人消費の拡大と企業活動の活発化による内需の拡大を図り、海外の活力も取り込みながら、民間部門の需要を拡大していくことが肝要。
長野県議会経済活性化議員連盟(会長本郷一彦)主催の第3回研修会 このためにも、為替レートの安定が望まれるところ。
 国の経済対策や新成長戦略の具現化、あるいは新たな施策の実施については、景気低迷により税収が大幅に落ち込む中で、その裏付けとなる財源が大きな課題となっており、国債の大量発行による財政悪化や、これに伴う長期金利の急騰懸念、国債の格付け見通しの引き下げなどが報じられているところ。
 国には、財政健全化に向けての道筋を早急に示すとともに、市場の信認を確保しながら、規律ある財政運営を期待。
 平成22年の日本経済は、世界経済の回復や各種経済対策の効果などを背景に、緩やかに回復するものと見込まれるが、厳しい雇用情勢にあるうえ、デフレ圧力や円高といった懸念要素もあり、決して楽観できない。
 日本経済の成長にとっては、内需の拡大を図りながら、今後も高い成長が期待されるアジア諸国・新興国市場の活力を取り込んでいく戦略が必要である。
 このため、国内では、環境や健康などの新たな分野で需要を創出するとともに、アジアを中心とする海外に対しては、日本の優れた技術を活かすことのできる環境・省エネといった分野での働きかけをしていくことが肝要と考える。
 この難局を乗り越え、飛躍のチャンスとして生かせるよう、国と地方が一体となって、景気回復に向けて取り組んでまいる所存。
3.長野県経済及び産業の状況について
 小状況分析として、今回の世界同時不況が長野県経済に及ぼした影響及び世界同時不況の教訓をどのように分析され、今後の長野県産業の成長戦略に生かしていかれるのか伺いたい。
【知事】
 長野県経済は、世界同時不況により、内需と外需のバランスが崩れ、輸出依存率が高く県内総生産の約3割を占める製造業の生産が、急激かつ大幅に減少し、鉱工業生産指数の下落幅が過去最大となったほか、有効求人倍率も過去最低となるなど、非常に大きな打撃を受けたところ。
 これは、欧米市場が一時的に崩壊したことが原因であり、長野県の強みである技術力が海外との競争で、決して敗北したものではないと認識。
 したがって、ものづくりを基本とし、産業振興戦略プランに掲げる、マーケティングカと技術力を高めるという方向性は、現在も変わりはなく、今回のような経済環境の変化に耐え得る体力を持った産業の育成が不可欠と考えている。
 このため、世界を常に一歩をリードする高度な技術開発の推進などにより、巨大な消費地として変貌を遂げつつあるアジア諸国・新興国市場などの需要を取り込むとともに、成長が期待される環境・健康関連産業への取組や地域資源の活用、農商工等の連携による新事業・新商品の創出など、自立型内需産業の育成が必要であると考えている。
 いずれにせよ、長野県産業の活性化のため、常に国内外の経済動向を注視しつつ、将来を見据えた産業振興施策を展開してまいりたい。
3.長野県経済及び産業の状況について
 県では、来年度、海外駐在員を深センから、貿易及び交通の要衝である香港に配置替えし、民間企業のオフィスに駐在させるとのことであるが、県の海外事務所を県の単独事務所とするのではなく、民間企業のオフィスへの配置することで、県内企業の海外進出を十分に支援できるのか伺いたい。
【商工労働部長】
 海外駐在員の配置替えに関する質問。長野県経済にとって、「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国のみならずアセアン諸国など、世界経済の成長センターであるアジアの需要を取り込むことは重要。
 このため、海外駐在員の配置については、新年度から、上海はその機能を残しつつ、深センは交通・貿易のハブである香港へと変更し、アジア全体を視野に入れた体制とすることとしており、香港での常駐箇所は県内で唯一海外に支店を有する金融機関である八十二銀行の香港支店内を予定している。
 これにより、単独事務所の管理業務が不要となり経費の削減も図れることに加え、八十二銀行が有するアジアの強固なネットワークを活用した、より迅速かつ正確で広域にわたる金融・経済の情報提供などが可能となるほか、世界各地からヒト(人材)・モノ(貨物)・カネ(金融)そして情報が集まる香港の特性を最大限に活用した広範な販路開拓機会の創出や多様な引合・斡旋を実施することができる。
 今後もアジア市場の需要を確実に捉え、アジアの成長と連動した長野県経済の活性化が図れるよう、海外駐在員による県内企業の事業展開、販路開拓の支援に努めてまいる。
4.科学技術産真の振興策について
 現在、本県では、平成22年度から31年度までの10年間を計画期間とする「科学技術産業振興指針」を策定中であるが、この指針で目指す、県の科学技術の創出と振興に対する中長期的な方針を伺いたい。また、科学技術振興の取組には、スピード感が求められるが、計画初年度である平鹿22年度において、県として取り組む施策は、どのようなものになるのか伺いたい。
【商工労働部長】
 科学技術は、県内産業の技術力向上の原動力であり、国際競争に打ち勝つ先端産業づくりに必要であるとともに、安全・安心で質の高い県民生活を実現するためにも重要であると認識。
 現在策定中の指針では、科学技術人材の育成や産学官連携による研究開発体制の構築、製造業と農業、あるいは林業など異なる分野の融合化技術の創出、科学技術を活かした新たな産業づくりなどの方向を示し、産業界のニーズに応じた技術開発支援等に重点的に取り組むこととしている。
 平成22年度は、「地域中核産学官連携拠点」や「信州メディカルシーズ育成拠点」などの新たな枠組みにより、次世代産業の核となる高機能部品等の創出、成長が期待される医療分野の機器や機能性食品等の開発をめざすほか、エ業技術総合センターに整備した最新鋭試験機器を活用した技術開発支援や産学官研究グループの研究開発を助成する事業などを実施してまいることとしている。
 今後、県内外の科学技術関連機関等の協力を得ながら、指針に基づく施策を実施し、科学技術に根ざした長野県産業の活性化を図ってまいりたい。
4.科学技術産真の振興策について
 産学官による研究開発体制を一層強化して、本県経済の成長の源となる新たな研究・技術開発を進め、「技術立県・長野」として確固たる地位を築いていくための振興戦略をどのように考えるのか伺いたい。
【商工労働部長】
 「技術立県・長野」の地位を築くためには、厳しい国際競争に勝つレベルヘ技術力を高め、世界市場をリードするような企業群を増やしていく必要。そのため、企業が持つ技術蓄積と大学の持つ研究シーズを結びつけ、互いの力を合わせる産学官連携による共同研究開発が有効と考える。
 幸い、県内大学には素材、材料分野の研究シーズが多く、企業の既存製品、部品の高機能化に役立つことに加え、環境、健康・医療、航空宇宙といった新しい分野への応用も期待できる。
 そのため、先ず、産学官連携では、(1)知的クラスター創成事業においては、着実に芽が出始めており、更に推進してまいりたい。(2)平成22年度から、より事業化に繋がるよう、共同研究グループに対して、県とテクノ財団が一緒になり、新たな資金支援制度を創設する予定。(3)産学官共同研究のグループ作りを担っているテクノ財団において、昨年12月からコーディネート体制を強化し、今後、個別グループに対し、国等の提案公募型研究開発資金の導入を支援していく。
 次に、これをバックアップする県の基盤整備として、共同研究による試作品の評価分析については、本年度、工業技術総合センターに導入を進めている最新鋭の測定機を使い、一層高度な測定データを提供していく。
 県外からの研究機開の誘致については、産学官で企業誘致チームを組み、県外から研究所や研究開発型企業の誘致にも努め、技術開発の高度化を図る。
 このように、言わば「長野方式」としての振興戦略を推進し、「技術立県・長野」の地位を築いて行きたい。
4.科学技術産業の振興策について
 高度なものづくり産業の象徴とも言える航空宇宙産業を振興させ、長野県の産業を多様化し、その活力を取り戻していくためにも、航空宇宙産業が次世代の、本県の基幹産業の一つとして花開くように、県として積極的に取り組んでいくべきと考えるが、所見を伺いたい。
【商工労働部長】
 航空宇宙産業の振興への取組に関する質問。航空宇宙産業の市場規模は、平成20年度で1兆2262億円と前年に比べ約10%の伸びを示しており、参入するにはハードルが高いものの、今後も成長が期待できる分野と考えている。
福岡システムLSI総合開発センターにて研究員より説明を受ける 新たに参入を目指す動きとして、県テクノ財団の「NAGANO航空宇宙プロジェクト」や飯田・下伊那地域の、「飯田航空宇宙プロジェクト」が立ち上がり、両方で100近くの企業、団体が参画し、技術研修や展示会でのPR等の活動を展開している。
 また、航空機向け新材料の開発では、知的クラスター創成事業の一環として、工業技術総合センターと県内企業が組んで、軽量且つ強度があるチタンとカーボンナノチューブの新しい合金開発に取り組んでいる。
 いずれにしても、本県の新経済対策において、航空宇宙分野を目指す分野の一つとして取り上げたところであり、県として、工業技術総合センターの最先端測定機の活用、産学官連携による共同研究の促進などを通じて、県内企業の新規参入、取引拡大、技術力向上を支援して行く。
4.科学技術産業の振興策について
 内陸県・長野の産業振興を進める上で、ネット社会に的確に対応していくことが不可欠と考えるが、ネット社会を見据えた本県におけるIT技術を活用した産業振興策並びに創業支援策について伺う。
【商工労働部長】
 ネット社会を見据えた本県の産業振興戦略とIT技術を活用した産業振興策、創業支嶺策に関する質問。
 携帯電話の所有が一人一台に、また、インターネットの人口普及率か80%に迫る現代社会においてIT技術を活用した企業経営は不可欠である。
 しかしながら、中小企業におけるIT技術の活用は、ウェブサイトの開設、生産や在庫の管理などの業務改善にとどまっており、経営革新を図るために十分活用している企業は多くない状況である。
 IT技術を活用した産業振興策については、財団法人長野県中小企業振興センターの専門家派遣事業や、社団法人長野県情報サービス振興協会(NISA)の人材育成事業などを通じて対応しているところである。
 また来年度は新たに、地域資源を活用した製品や農商工連携による製品を製造・販売している事業者のインターネット市場への対応を支援する「インターネット活用型販路開拓事業」を実施する。
 アドバイザーによる訪問相談などを通じて「ネットショップ」の有効性について普及啓発を行いながら、新たに開設しようとする事業者へ経費の一部を助成する。
 さらに、ネットショップを運営している事業者を一堂に集めた「ネット上のフェア」を開催するなど、本県の特色ある商品をアピールし販路の開拓につなげる
 創業支援策については、中小企業振興センターを中核に商工会や商工会議所などの70の支援機開が連携した「ながの産業支援ネット」で対応している。
 また、県下には10ケ所、111室の「インキュベータ(創業支援施設)」が存在していることから、各機関が連携し、技術開発から販路開拓までを総合的に支援している。
 日進月歩のIT技術を活用した経営革新の余地は無限大にあると考えられるため、産業振興策や創業支援策についてもネット社会の動向を見据えながら展開してまいる。
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