1.社会保障費、特に医療費の増加と社会保障の将来像について
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【本郷委員】
最近、厚生労働省は医療費に関するデータを発表したようだが、現状はどうなっているか。長野県の数値はどうなっているか。年金、医療、介護、福祉等、あるべき社会保険制度像について伺いたい。
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【野池参事兼健康福祉政策課長】
国の医療費については、先月、厚生労働省から医療費の概況が発表された。それによると、前年度より更に2.0%増加し、34兆円を超え35兆円になろうかという大変大きな額である。年々過去最高を更新している。21年度の医療費の概算が既に発表されているが、長野県も前年度に比べて2.9%増で、こちらも大変な増加を示している。将来の展望であるが、まだまだ高齢者の医療費を中心に伸び続け、平成37年度まで伸びて、そのときには52兆円を超え、今の1.4倍になる。見通しとすれば厳しい状況である。
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【本郷委員】
県も議会も市町村と連携をしながら、新しい時代の社会像を構築しなければならない。
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2.ドクターヘリについて
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【本郷委員】
ドクターヘリについては、本会議においても多角的なご議論があった。長野県、地域によって医療の温度差はあるが、スピード感のあるドクターヘリがもし導入された場合、ステップアップした新しい時代としての救急医療体制の構築というものを、予測していかないといけないと思うが、見解を伺いたい。ドクヘリは急性期の病院に入らなければいけない。そのためには、色々審議されているようだが、諸条件を整えなければいけない。そういう中において、その次の段階で、症状が回復した時に、次の病院にスムーズに移行する体制を配慮していくことが必要だと思うが、現状どのようなご認識とプランがあるか。
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【角田医療推進課長】
ドクターヘリに象徴されるような、救急搬送の仕組みが新たに構築されて、救急医療体制がどのように構築されていくか、それに対する考えというご質問だと理解しているが、救急医療体制については、2つの視点が一般的にあるのかなと思う。加えて言えば、何よりも早く、適切な症状に応じた処置が施されることと要約することができると思うが、今現在、県のほうで構築している救急医療体制のうち、こういった観点から、一つ目は、病院にたどり着く前の救護活動をどう充実させるかという観点がある。これについては、実際に救急搬送業務に当たる消防機関、特に救急救命士の養成・研修・再教育、そういったものを充実させることで、病院前の救急活動を充実させていくという観点が、救急体制の充実に対する一つの考え方と思う。
もう一つは、まさしく病院において、救急救命活動が施されるという意味に置いて、県内の医療機関を、初期救急、二次・三次救急と段階的に整備させていただき、そういった体系の中で、対応させていただくと考えている。こういった考え方は、医療計画の中で体系付けられているわけで、この体制において、先ほどご指摘のあったドクヘリも、より早く、医師による救命処置が施されるという観点から、かなりの貢献が期待できるのではないかと考えている。また、搬送基準に関して、そういった観点から、消防機関との連携を深めるという意味からも、救命救急体制の強化に繋がっていくであろうと考えている。
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【本郷委員】
是非、今の件を確実に構築できるように希望する。特に、地域医療体制の維持向上には、医療機関の機能分担と連携の課題が多いので、この辺を整理することによって、より合理的でスピード感のある医療体制の造形が可能だと思うので、その点はなお、一層のご留意を願いたい。心臓停止3分で50%、呼吸停止10分で50%が死亡というようなことがあるので、これからは、先ほど言ったような合理的な地域医療の機能分担の中において、より一層、救急医療体制を、更に高度化するように一層のご努力を願いたい。
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3.市町村国保の広域化について
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【本郷委員】
広域化に向けての考え方の原点として、赤字の地域と赤字の地域が広域化によって一緒になっても良い方向(黒字)にならないと思うが、なぜ広域化するのか説明いただきたい。
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【野池参事兼健康福祉政策課長】
国の高齢者医療制度が年内に最終とりまとめとなることが、目前に迫っている。赤字と赤字が一緒になっても黒字にならないと端的に指摘されている。国の説明では、今後医療費がまだまだ増えていくなかで、例えば小規模な自治体において大きな病気にかかる方がその年たまたまいて、財政的に行き詰まり不安定な状況になる、このような自治体がますます増えてくるので、一段階財政規模の大きい都道府県で運営の責任を担うことに意義があるとしている。
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【本郷委員】
ある県では広域化を進める、ある県ではそうではないということが制度上認められるのか。
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【野池参事兼健康福祉政策課長】
都道府県が広域化を選択する仕組みがあるかどうかについて、当初国では環境の整ったところからとしていたが、現実的に検討していく中で運営が県であったり、市町村であったりと混在する期間があるのは複雑で制度的に難しいとのことで、現在は平成25年度以降のある時期に、全国一律で都道府県の財政運営に移行する制度を想定している。
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【本郷委員】
広域化について、県内市町村長にもいろいろな意見があると概括的に説明があったが、もう少し詳細に教えていただきたい。
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【野池参事兼健康福祉政策課長】
市町村長の受け止めが両意見あり、広域化を進めるべきとの意見としては、(1)負担の平準化を進めて、全体で支えあう仕組みづくりがベストである。(2)県の段階で負担と給付を決められるのがよい。(3)国保財政の状況は待ったなしの状況にあり、広域化に手をつけていかなければ破綻が迫ってくる。一方是非慎重にとの意見もあり、(1)広域化すると財政運営する県と保険料を徴収する市町村が別々になるので、収納率をあげるインセンティブが働きにくくなり、収納率の低下につながる。(2)保健予防事業で、一定程度保険料を低く抑えていることが、市町村ごとにできなくなるようでは困る。以上のような意見があった。ある新聞社の広域化に関する県内市町村長へのアンケートでは、賛成が75%、どちらかといえば反対・反対は22から23%になっている。
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【本郷委員】
保険料がいずれ県一本になるシミュレーションになるので、現在でも県内市町村では格差が大きいので現実的にはハードルが高いと思うがその道筋はどうなるのか。
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【野池参事兼健康福祉政策課長】
保険料を一本化するということは非常に高いハードルと思っている。特に長野県のように全国2番目に格差があるという現実があるので、現実問題として県が標準保険料率を設定するとなると大変難しい問題が出てくると予想される。まだ、みんなで広域化を進めようと合意には至っていない状況にある。市町村国保の広域化について様々な角度から検討する委員会を本年度設置したので、この場で丁寧に議論を積み上げていくことかと考えている。
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4.療育センターについて
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【本郷委員】
療育センターの施設整備については、松本市幹部との懇談会で毎回要望がある。6月に部長が直接厚生労働省に出向いて補助制度の創設を要望したと聞いているが、国の動きはどうか。
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【寺沢参事兼障害者支援課長】
発達障害児や重症心身障害児が増加しており、障害の早期発見から療育までを担う療育センターの整備に係る要望は毎年いただいている。飯田市や佐久市では、障害者自立支援法等のサービスの中でセンター機能を展開している。国には今年度だけでなく、昨年度も補助制度の創設を要望したが、前向きな回答はなく、進んでいない。
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【本郷委員】
発達障害は、大きな社会的課題であるので、知事も含めて要望活動の継続をお願いしたい。県内の他の地域の動きと、療育センターの整備に対する県の支援について伺いたい。
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【寺沢参事兼障害者支援課長】
北信地域では、療育センターの施設はないが、県内で最も早く巡回型を実施している。これは保健師、OT、PT、心理士等がチームを組んで、保育所や学校を訪問し、気になる子どもをピックアップして必要な療育を実施するもの。今年度から松本市でも巡回型を実施している。飯田市は、療育センターひまわりに配置したコーディネーターを中心に療育支援を行っているほか、佐久市では保育所を改修して療育センターを整備して取り組んでいる。長野市でも知的障害児通園施設を療育センターにする構想がある。公立施設に対する補助制度はないが、児童デイサービスや知的障害児通園施設として整備する場合は、国庫補助制度が活用できるので、計画が具体化した場合は、採択に向けて国に働きかけを行いたい。
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5.発達障害者支援センターについて
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【本郷委員】
こども病院に設置している発達障害者支援センターのスタッフを増やし、療育、相談の充実を図っていくことについて、踏み込んだ判断を頂きたいと思うが、どう考えているか。
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【小林健康長寿課長】
平成17年から、こども病院に発達障害者支援センターの中南信駐在所を設置し、職員が保健福祉事務所等へ出向き、専門的な相談等の支援を行っている。この駐在所はあくまでも中南信地区への出張の便を図るもので、市町村に対する専門的、技術的な支援としては、精神保健福祉センターに設置している発達障害者支援センターと健康長寿課が協力して、市町村に対し、人材育成の研修会、パンフレットの作成、市町村サポートコーチ等の支援を行っている。今後も市町村に対し、よりサポートできるよう、発達障害者支援センターを中心に取り組んでいきたい。なお、参考までに、来年4月に松本の旭町庁舎に開所する「松本あさひ学園」に発達障害者支援センターの中南信駐在所を移転する予定だが、現時点では機能の変更までは考えていない。
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【本郷委員】
発達障害は社会的ニーズの強い問題でもあり、専門性の高い職員の配置など、体制整備について、一層の努力を願いたい。
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6.管理栄養士の配置について
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【本郷委員】
健康づくりの観点からも「食育」は重要な位置付けであり、その実践面を担う管理栄養士の増員について、現状及び方向性を伺いたい。
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【小林健康長寿課長】
現在、健康長寿課に管理栄養士を2名配置している。今年4月、健康増進係長に管理栄養士が就いたことから、いわゆるスタッフの管理栄養士は1名となっている。そして、食育に対する関心の高まり、健康増進に関する取組の増加があり、今年度も「3つの星レストラン」の新規事業や県民栄養調査等、例年に増して、管理栄養士の業務が増加しているのも確かである。係では喫煙対策、歯科保健対策も行っており、栄養士には幅広い分野の活躍を期待している。現在の対応は、栄養士でなくてもできる業務については、係内、係外において業務の調整を行っている。また、来年度、係内に歯科医師1名を配置する方向で準備しており、何とかやり繰りする中で体制をとっていきたいと考えている。今後、業務の必要性を精査していく中で、場合によっては人員増も含めて検討していきたいと考えている。
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【本郷委員】
少し踏み込んだ発言も頂いたので、総合的な視点から御高配を願いたい。
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7.歯科衛生士の配置について
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【本郷委員】
歯科衛生士の保健福祉事務所への配置、市町村への配置促進について、当面の方向性を伺いたい。
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【小林健康長寿課長】
歯科保健を担当する課としてお答えする。県における歯科専門職員の配置について全国と比べると、本県は必ずしも充実している状況ではなく、大きな課題として認識している。市町村における歯科衛生士の配置については、市町村によって差はあるが、先進的な取組を他の市町村へ情報提供することを通じて、市町村における歯科保健の取組が進んでいくようにしていきたいと考えている。歯科保健の推進における市町村の役割は大きいと考えており、歯科衛生士のみならず歯科保健の充実について、歯科保健推進条例も踏まえて市町村に対し働きかけていきたいと考えている。
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8.歯科保健対策について
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【本郷委員】
歯科保健推進会議(仮称)の予算化、歯科保健実態調査の有効な活用及び8020運動の事業仕分け結果を踏まえ、県独自の事業化について伺いたい。
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【小林健康長寿課長】
歯科保健推進会議については設置する方向で予算要求をし、会議の内容については、歯科医師会等関係団体と協議してまいりたい。歯科保健実態調査については、今年度は既に第1弾を実施済であり、来年度は、介護保険施設、福祉施設等、サービスを受けにくい方へのサービスの提供状況について調査ができるよう検討している。8020運動については、先駆的事業は補助事業として残るため、国庫補助事業を活用できる形を考えながら、対応してまいりたい。
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8.県薬剤師会の「お薬相談室」業務への県の支援等について
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【本郷委員】
長野県薬剤師会では、2009年3月に「お薬相談室」を設置しているが、この業務を県の業務として位置付けられないか。また、県から応分の負担を得られないか。
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【角田医療推進課長】
現在、県では、医療法の改正を受け、医療安全支援センターを設置しており、当課及び各保健福祉事務所で医療問題に係る一般の方からの相談を行い、必要に応じ医療機関とも調整を行っている。一方、薬剤師会の「お薬相談室」の相談内容は、一般の県民からの薬の相談に加えて、ドーピングなどかなり専門性が高い相談の比率が高いと聞いている。従って、医療安全支援センターの業務を県の業務として位置付けるのは、一般論として、今の段階では難しいと思うが、議論をしながら検討を加えてまいりたい。
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【丸山薬事管理課長】
県薬剤師会の「お薬相談室」での相談内容は専門的なものが多く、それらへの対応は県薬剤師会の本務のひとつと考えるが、県民の安全対策という点では、県でも対策を講じていることから、県薬剤師会と相談しながら、県からどのような支援ができるのか検討していきたい。
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9.県生活衛生営業指導センターへの国の補助金について
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【本郷委員】
長野県生活衛生同業組合連合会は、県民生活にあらゆる分野で密着している非常に大きな組織である。会長さん、役員さんとコミュニケーションしたが、都道府県の生活衛生営業指導センターの経費は国、県の補助金が90%を占める。長野県は4人態勢で主に衛生、経営、融資等の相談をやっている。厚生労働省の事業仕分けの結果で一旦廃止になったようであるが、新たにゼロから再構築して、総額で1割カットの概算要求がなされた。1割カットも大変なことである。長野県生活衛生同業組合連合会は裾野が広い組織であるので、国に対し、強く要望していただきたい。もちろん、私ども議会も党、関係諸機関に要望していく。ぜひ、その点、御高配いただきたい。
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【小林食品・生活衛生課長】
生活衛生営業指導センターの補助金について、一次の事業仕分けで整理され、また、二次の事業仕分けで再度、一旦廃止と整理された。その中で、最終的には、精査をした上で、再度要求するようにという意見が出されている。県としては、一回目の事業仕分けの際にも、全国的な取りまとめのなかで、長野県も趣旨に同意して国へ要望を行った経過がある。クリーニング、理・美容などの中小の事業者がかかわっている部分であり、経営相談を行うなど、なくてはならない組織であることから、従来の補助金の確保を要望していく。
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