御嶽山噴火被害について
【本郷議員】
自由民主党を代表し、今回の御嶽山の噴火災害に関し質問させていただきます。この27日に発生いたしました御嶽山噴火により、お亡くなりになられました皆様に衷心より哀悼の意をささげるとともに、ご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。また、多くの負傷者の皆様、さらには、恐怖の中無事下山されました皆様にも改めてお見舞いを申し上げます。
発災以来、不眠不休で救助に当たられている警察、自衛隊、消防、さらには政府をはじめ、知事を先頭に対応されている県当局、地元王滝村など各行政機関やディーマットなどの医療関係者に加え、災害の初期対応に全力を尽くし被害を最小限に抑えていただいた山小屋の皆様にも心から敬意を表する次第であります。
噴火活動は今も続き、予断を許さぬ状況にありますが、二次災害に十分気をつけていただき被災者の救助に全力を挙げていただきますよう切にお願いをいたします。
さて、秋の行楽日和のまさに昼食休憩の時間帯に、非情にも御嶽山が噴火し、刻々と被害の情報が入るにつけ、犠牲者の数が増えており、専門家でも予知は困難と言われますが、災害発生前に御嶽山という火山の危険性が分かっていればと思わざるを得ません。火災噴火予知連絡会の会長からは今後の警戒レベルの設定について考えていかなければならないとも発言されているようです。
いずれにしても終息までには時間がかかると思いますが、土石流災害の危険性や農作物被害対策なども含め、執行部と議会が共通の認識の上に今後の対応を考えねばならないと考えます。そこで、知事に、現在把握されている状況について、ご説明願いたいと存じます。
【阿部知事】
9月27日に発生いたしました御嶽山の噴火についてのご質問にお答え申し上げたいと思います。まずご答弁申し上げる前に、お亡くなりになられた方々、そしてそのご家族の皆様方に、謹んでお悔やみを申し上げます。また大変な怪我を負われた方々をはじめ、被災された皆さん、被害に遭われた皆様方に、心からお見舞い申し上げたいと思います。併せまして、現在、安否不明の皆様方のご家族の皆様、ご心労、ご心痛いかばかりかとお察しを申し上げる次第でございます。
これまで私ども、まずは人命救助を最優先ということで、被災された皆様方の救助救出に全力で取り組んできたところでございます。しかしながら、本日8時現在、死者12名、心肺停止者24名、重傷27名、軽症32名という、そうした人的被害の状況ということになっております。
現在、火山性微動が増加としている状況の中で、一時活動を見合わせている状況でありますが、本日も、警察、消防、自衛隊による救助隊が救助活動を朝から開始をさせていただいているところであります。引き続き救出活動に全力を傾注して参りたいと考えております。
私ども長野県といたしましては、災害発生後、直ちに情報収集に努め、27日の14時10分に「災害対策本部」を設置させていただきました。また、事の緊急性、重大性に鑑みまして、木曽町、王滝村と相談のうえ、14時31分に、国に対して自衛隊の派遣を要請させていただいたところでございます。
また、消防庁長官に対しまして、火山性ガスへの対応の資機材を有している緊急消防援助隊、この派遣を依頼させていただきました。加えて、国とも協議の上、木曽町、王滝村に災害救助法を適用させていただいているところでございます。
また、災害発生後直ちに、災害医療本部を設置いたしました。木曽病院に災害派遣医療チーム、いわゆるDMAT(ディーマット)の出動を要請させていただきまして、活動を開始いたしました。同日、県内の他の10病院についても出動要請をいたしました。さらに、翌日28日には、新潟、埼玉、群馬、山梨、岐阜、隣県5県と国立災害医療センターに対しましても応援を要請して、28日には最大26チームが木曽病院等において活動をいただいたところでございます。医療救護班につきましては、28日から1チーム、そして29日には更に4チームが活動を開始したところでございます。
私ども長野県といたしましては、現在も各部局を挙げて、総力でこの御嶽山の噴火災害に対応させていただいているところでございます。今回の大規模な災害に適切に対応していくうえでは、県議会の皆様方のご理解、ご協力が不可欠だと思っております。
そういう中で、今回の災害への初期対応のために、県議会にも日程上のご配意を頂きますよう、既に私から議長にお願いをさせていただいたところでございます。県議会の皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げたいと思います。
また、政府の対応でございますが、27日、全閣僚によります関係閣僚会議が開催されました。翌28日には災害対策基本法に基づきます、非常災害対策本部が設置をされたところでございます。28日同日の夜には松本洋平内閣府大臣政務官を本部長とする非常災害現地対策本部がこの長野県庁内に立ちあがったところでございます。政府の皆様方にも全力を挙げてご支援をいただいているというのが今の現状でございます。
国、関係者の皆様方の全面的かつ迅速な御対応、そして近隣都県を始め関係の皆様方のご協力に対して長野県知事として、心からこの場をお借りして感謝を申し上げたいと思います。
次に地元の対応でございます。木曽町、王滝村におきましては、災害発生直後に災害対策本部が設置されました。登山者を対象とした避難所の設置、そして現在は安否不明者の方々のご家族を対象とした待機場所を開設するなど、被災をされた登山者、そしてそのご家族のケアに努めていただいているところでございます。
また、県の災害対策本部木曽地方部におきましては、木曽町、王滝村の災害対策本部へ情報連絡員を派遣させていただき、災害情報の収集、そして町、村との連携確保に努めているところでございます。
次に、被災者、そしてそのご家族の皆様方に対する精神的なケアについてでございます。現在、県内の3つの精神医療チームを現地に派遣をするとともに、保健福祉事務所の保健師を待機施設等に終日派遣をいたしております。精神面での不調を訴えっていらっしゃる安否確認家族等の皆様方に対して、心のケアを含む健康相談、あるいは医療的支援を行える体制を整えたところでございます。
次に、降灰の状況と土石流対策でございます。山頂あるいはその周辺の降灰につきましては、国土交通省のヘリコプターでの調査の上で、上流域に広範囲にわたって降灰が確認されております。
また、土石流対策につきましては、9月28日そして29日に御嶽山周辺の10渓流そして砂防堰堤20基、緊急点検を行ったところでございます。
これまでに、降灰によります渓流への異常流出あるいは砂防堰堤への堆積は確認をされておりませんが、二次災害を防止するため、山麓を流れる、木曽町の湯川流域の砂防堰堤の除石工事に本日着手することといたしております。
また、道路関係でございますが、国道361号線ほか4路線のパトロールを実施いたしております。被害状況の確認と通行止め等必要な措置を取りますとともに、降灰が確認された県道並びに町道につきましては、国とも連携して、路面清掃車等により灰の除去作業を行ったところでございます。
また、降灰の状況等から、今後、その対応が必要な渓流につきましても、関係機関と連携して検討を行う等、二次災害への対策について、万全を期してまいる所存でございます。
次に、農業関係でございます。農業関係につきましては、今回の噴火に伴いまして、木曽町、木祖村、2町村のはくさい、18ヘクタールにうっすらとした降灰が確認されておりますが、品質に問題がなく影響は出ていないというふうに報告を受けております。
その他、そば、水稲などにも降灰が認められますが、農作物の収量あるいは品質への影響は、現時点ではないというふうに考えております。
県としては、27日に農作物の降灰にかかわる技術対策を出しまして、木曽農業改良普及センターが、市町村、生産者団体と連携して、農作物の管理や、収穫・出荷時の対応等について農家への指導を行っているところでございます。
今後も、風向きあるいは降灰の状況を注視いたした上で、農作物への被害防止に努めていきたいと考えております。
最後に、今後についてでございます。引き続き政府を始めとする、関係機関と連携をする中で、人命救助を最優先で取り組んでまいりたいと考えております。救助、救出活動を進めますとともに、被災された全ての方々を一刻も早くご家族のもとにお送りすることができますように、全力を尽くしてまいりたいと考えております。
また、応急対策の後は、木曽町、王滝村を始め、被災地や、経済的打撃を被った地域について、総力を結集して、復興、再建に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。
県の財政運営について
【本郷議員】
地方交付税別枠加算について、国の財政当局が、国よりも地方に財政の余裕があると主張している中でなんとか維持されているものであるが、国の平成27年度予算編成が始まっている中で、地方自治体の財政責任者として今後どのように対応していく考えか。
【阿部知事】
リーマンショック後の対応として地方財政計画に「歳出特別枠」、そしてこれを受けて地方交付税に「別枠加算」が措置されたところ。
今年の6月閣議決定された「骨太の方針」を見ると、「リーマンショック後の危機対応モードから平時モードへの切替えを進めていく」ことが記載されている。年末の予算編成に向けて、この見直しが議論されるものと思われる。
地域経済は緩やかに回復しつつあるものの、地方税収は未だリーマンショック以前の水準まで回復していない状況。また、地方創生が日本全体の大きな政策テーマとなる中で、地域社会の維持・活性化の取組がこれまで以上に重要になると考えている。
こうした観点で、歳出特別枠の堅持、そして別枠加算も含めた地方交付税総額確保について必要なものと考え、引き続き国に対して強く要望していきたいと考えている。
【本郷議員】
県の基金残高について、平成24年3月の「行政・財政改革方針」での推計、平成26年2月の「中期財政試算」、平成26年9月の「長野県財政の状況」の見込を見ると、2年程度のうちに上方修正されてきている。これ自体は喜ばしいことだが、この数値改善の理由がどこにあるのか、改めて所見を伺いたい。
【阿部知事】
平成25年度末の基金残高実績は513億円と、「行政・財政改革方針」策定時の推計値318億円と比べて195億円の増となっている。
これは、景気回復による税収等の増加に加え、「行政・財政改革方針」に基づく歳入確保・歳出削減の取組を徹底して行ってきた成果であり、方針策定後2年間で、計画を大きく上回る効果額が生じている。引き続き、「行政・財政改革方針」に基づく取組を徹底してまいりたい。
【本郷議員】
県債の残高は、平成12年度をピークに減少してきているが、臨時財政対策債の増発などにより、平成20年度以降は増加に転じている。そのような中、建設事業に充てる通常債については、発行抑制に努め今後も着実に減少させるとしている。公的部門があまりにも抑制的過ぎたことがデフレスパイラルの一因ではないかとも考えるが、県債の元利償還のピークがいつであったのか、確認のため伺う。
【阿部知事】
元利償還金については、平成13年度がピークであり1,667億円。以後数年間は同程度で推移した後、減少傾向となり、平成26年度は1,387億円を見込んでいる。
超高齢化社会の到来に向けての課題について
【本郷議員】
人口減少問題について伺います。本年5月の日本創成会議の提言では、東京一極集中と少子化により地方の自治体の約半数が2040年には消滅する可能性があるとし、少子化問題に立ち向かうため、いくつかの提言がなされています。政府においても平成26年6月に閣議決定された骨太の方針2014の中に、50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指し、少子化、人口減少の克服や地方再生などに総合的に取り組む方針を盛り込んだところであります。
安部総理は緊急に取り組む重要課題として人口減少問題を掲げ、第二次安部内閣では、地方創生担当大臣を新たに置くとともに、総理を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を本年9月に設置し、人口減少の克服と地方創生に向けて全力を挙げて取り組むこととしています。加えて、去る9月16日に開催された内閣総理大臣と都道府県議会議長との懇談会の場で、安部首相から、この地方創生の取組は従来の霞が関主導の枠組みを超えて各自治体が主体的かつ創造的な取組を行えるよう次元を超えた対応を行うと明言されたとのことであります。
すなわち、創意と工夫ある自治体については国が積極的に支援する意向を表明されたわけで、既に熊本県ではこの課題に対応すべく「まち・ひと・しごと」を冠した「幸せ実感まち・ひと・しごとづくり本部」という組織を立ち上げ、国とも緊密な連携をとっているようであります。進取の気性を持つ長野県としても、この機会を積極的に捉え、全国に先駆け、従来の発想にとらわれない本県の特性を踏まえた地方創生策を早急に練り上げ、発信していくべきと考えますが知事の所見を伺います。
【阿部知事】
まち・ひと・しごと創生に関する県の取組についてでございます。人口減少を真正面から受け止め、地方創生に全力で取り組んでいきたいと考えております。
そのため、「長野県人口定着・確かな暮らし実現会議」を、市町村、経済団体、労働団体等の参画を得て既に設置し、庁内の企画チームで検討を始めています。
「総合戦略」を策定していきたいと思います。この「総合戦略」は、国の総合戦略を踏まえて、「まち・ひと・しごと創生法案」に基づくものという形で平成27年度中に策定したいと考えております。今年度末までには「総合的な子育て支援戦略」も含めまして、大胆な施策展開の方向性を取りまとめて、必要なものについては平成27年度予算で具体化していきたいと考えております。
また、国の対応が必要なものについては、国に直接出向くなりして、私どもの考えをしっかりと伝えて、単なる要望ではなく、具体的な施策提案を行う中で対応を求めていきたいと考えております。
【本郷議員】
財源確保が大きな課題となる医療介護の連携についてうかがうこととします。従来、地域医療計画は県が、介護計画は市町村が作るということでありましたが、社会保障制度改革国民会議の報告書では、地域医療・包括ケア計画という概念が提示されています。
超高齢化社会を迎える中で、第一次ベビーブーム世代が2025年には75歳という後期高齢者に到達することになりますが、その時点の社会を想定した医療・介護体制をどう整備していくのか、少なくとも医療と介護を有機的・一体的に整備しなければならないであろうことは、医療関係者・福祉関係者の見解が一致しているのではないかと思いますが、県行政もしっかりとこのことを前提にした準備を進めなければならないと考えます。
そして、急性期病院から在宅までを総合的にとらえながら医療と介護をどう連携させていくのか、医療資源等に地域格差がある中で、地域ごとに創意工夫が必要となるが、こうした計画を作り上げていくには核となる人材が必要なことはいうまでもありません。
知事が県づくりのトップに挙げているのは人材教育県づくりでありますが、この分野でも人材の養成が急がれているのであります。医療介護計画策定に携わる人材育成には、早急に取り組むべきと考えますが、ご所見を伺います。
【阿部知事】
人材教育県づくりを掲げていることから、医療・介護の人材の確保・育成は県としても大変重要なテーマだと考えております。
まず、保健医療計画、高齢者プランなどの計画の立案・評価を担当する県の行政職員、保健師の育成については、国の研修機関に派遣し、専門知識の修得等を行っています。
また、地域においては、在宅医療を担う医師あるいは訪問看護師、介護を担う介護支援専門員あるいは社会福祉士等、医療と介護の連携を担う人材を育成することが急務でございます。
こうしたことから、在宅医療や介護に関して市町村が開催する研修会により医療と介護の連携ができる人材を育成してまいります。また、医療、介護の多職種が協働してケア方針を検討する地域ケア会議における取組みを通じて、相互に顔の見える関係を構築してまいります。県といたしましては、人材育成に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
【本郷議員】
さらに、国民健康保険を都道府県に移行して、地域医療を立案する都道府県が、財政についても責任を持つことで、地域医療を立て直すということも論じられています。そこで知事に伺います。国民健康保険の都道府県移行について、どのような見解をお持ちでしょうか。
【阿部知事】
続きまして、国民健康保険の都道府県移行についてでございます。本県におきましては、小規模な保険者が多数存在して、健康保険の財政が不安定化しやすいという懸念がございます。市町村からも都道府県への移行を推進する要請がございますので、財政運営を都道府県が担うことにより、国民健康保険を広く支え合う仕組みというものは必要性があるというふうには考えております。
しかしながら、被保険者の年齢構成が高く医療費水準が高いこと、あるいは保険料負担が重いといったこと、こうした国保の「構造的な問題」、これを解決することなしに広域化だけをしても本質的な解決にはならないのではないかというふうに考えております。
したがいまして、まずは国の責任において、国保に対する財政支援を拡充するなど、抜本的な解決を図るべきというふうに考えておりまして、引き続きこうした考え方を国に対して説明して、国の対応を求めていきたいと考えております。
【本郷議員】
知事が、選挙中に訴えられた、子育ての孤立化防止のため、妊娠から子育てまでを一貫して支援する「県総合母子保健センター」の設置構想でありますが、このスキームはどのようなものなのか、この際知事に伺います。
【阿部知事】
総合母子保健センターについてでございます。母子保健業務につきましては、平成8年度に、県から市町村に移管されて、現在、健康診査や訪問指導など基本的な母子保健サービスについては、市町村で実施していただいているところでございます。
しかしながら、最近の医療の進歩や母子保健の課題の複雑化に対応した人材の育成は、市町村だけではなかなか困難でございますし、昨今、少子化対策ということがクローズアップされているなかで、母子保健についても県としてもしっかりとした役割を果たしていくことが必要だと考えております。
こうしたことから、県として、市町村をバックアップする「長野県総合母子保健センター(仮称)」を設置して、県民の皆様の妊娠、出産、子育てを、一貫して支援する体制づくりが必要であるというふうに考えております。
このセンターの構想を今後具体化していかなければいけませんけれども、市町村の母子保健サービスの水準を高めるための技術支援などといたしまして、例えば、乳幼児健診や訪問指導などのマニュアルの作成でありますとか、市町村の母子保健事業に関する情報収集、そして分析、さらにはその結果のフィードバック、また、専門性に応じた研修会の開催や、県と市町村との保健師の交流、こうしたことを、医療機関や大学等、専門的な知見を有する関係者の協力を得て、実施していきたいと考えております。
今後、県民の皆様、市町村、関係機関のご意見をお聞きするなかで、具体化を進めてまいりたいと考えております。
農業振興について
【本郷議員】
地球温暖化の影響は耕作適地の変動をもたらし、農業者一人ひとりの工夫では対応が難しくなっている中、県では農業関係試験場で温暖化への対応を図るための品種改良に取り組んでいるとのことだが、その成果はどのようになっているのか。
【阿部知事】
温暖化に対応する品種改良についてでございます。県では地球温暖化に対応するための品種改良を重要課題と位置付け、研究開発を進めてきたところでございます。
今後の更なる温暖化に備えるため、昨年度、農業関係試験場に高温環境で試験栽培できる施設等を整備し、本年度から水稲、リンゴ、レタスについて、プロジェクト研究に着手し、研究開発を加速しているところです。これまでの成果といたしましては、平成25年に、高温による品質低下を回避できるお米の「風さやか」、また着色が良く蜜も入るリンゴの「シナノホッペ」を開発し、県内への普及を進めているところです。
特に水稲「風さやか」は生産者の関心が高く、栽培面積は平成25年182ha、平成26年700haと急増しております。今後も、高温条件下でも安定生産できる品種の育成、技術開発を進めてまいります。
【本郷議員】
品種改良を商品生産ベースに乗せるには、ある程度のリードタイムが必要になると思うが、農業者と試験場の情報共有を図りながら、信州農業を強い農業に導くための施策展開の方向性について、どのように考えるか。
【阿部知事】
信州農業を強い農業に導くための、施策展開の方向性についてでございます。農業振興にあたっては、マーケットインの視点に立ち、国内外の市場で高く評価される品種を開発し、生産拡大とブランド化による所得向上に繋げることが重要と認識しております。
例えば、「信州ひすいそば」は、試験場が、生産性に加え実需者や消費者ニーズを踏まえて「新そばの色」に着目した品種を、平成24年に育成したもので、生産拡大にあたっては、農業改良普及センターと試験場とが連携して生産者に対する技術指導に取組み、販売にあたっては、平成25年に製粉業者やそば店などの実需者を含む協議会を設立し、商標を活用したブランド化を進め、本年から本格的な生産販売に取り組んでいるところでございます。
今後も、試験場・農業改良普及センターが連携して、生産者や流通・販売関係者と一体となって、市場で高く評価される県オリジナル品種の育成、生産拡大とブランド化がスピーディーに進むように努めてまいります。
県内産業成長に向けた取組について
【本郷議員】
新たな成長戦略として、宇宙航空機分野、医療機械分野、ロボット機械分野など日本が蓄積してきた技術力の能力ボルテージを活かせるような産業構造を実現するために、長野県としても積極的な対応が求められるところであります。将来的に有望な産業分野には地域間競争をリードできるような条件整備が重要です。国の政策をいち早く取り込み、研究開発拠点の整備や人材養成につなげていかなければ高付加価値産業を展開していくことはできません。更に、県内経済を支えてきた中小・零細企業への目配せも大変重要な取組みと考えます。
県の機構改革で産業労働部ができ、産業を正面から捉えることのできる体勢が整ったわけですから、具体性を持った県の産業政策についてのスピード感を持って示し、中小・零細企業の方とも一緒になって県内産業を成長させるべく早急に取り組むべきと思いますが所見を伺います。
【阿部知事】
県では、信州の強みに立脚した「貢献と自立の経済構造」への転換を進めるため、「産業イノベーション推進本部」を設置し、6つのタスクフォースにより、今後成長が期待される分野への中小企業の進出を目指す等、具体的な事業の実現を全庁を挙げて進めております。
例えば、そのうち一つのタスクフォースにおきましては、今年度から、医療機器産業の振興を図るために、県内の中小企業と医療機関が連携して行う機器の開発に対する支援事業を始めております。
この事業で現在進められている試作開発テーマとしては、県立こども病院のニーズに応じた、子ども向けの「ポータブル眼底カメラの開発」や人工透析患者の負担軽減を図るための「超音波を活用した血液流量計の開発」などがあり、本年度中に具体的な成果が出てくる見込みでございます。
県としては、こうした取組によりまして、基幹産業でありますものづくり産業の成長期待分野への進出を積極的に支援してまいります。また今後、雇用の受け皿として期待される「情報通信」、「健康関連サービス」分野など、サービス産業の振興策につきましても、今年度中にその方向性の骨子を作成し、早急に具体化していきたいと考えております。
建設産業の基盤強化について
【本郷議員】
今年2月の大雪の際ほど、除雪体制が脆弱になっていると感じさせられたことはありませんでした。そして、その中で感じたことは、除雪業務に関わる建設業の皆さんのご苦労であります。
長野県では、いち早く、公共や県単の建設工事費を大幅に削減し、更に、コンクリートから人へという政策転換もあり、建設投資額に大きな期待ができない中で、入札制度も大幅に見直されるという、建設産業を持続することが、非常に困難な時期が、この10年余り続いてきました。
何とか費用を圧縮して会社を維持するということで、大型機械は、リース化が進んでおり、更には、若い人たちが将来に希望を持って就職するという環境ではなかった時期を経てきております。
道路という基幹的なライフラインが維持できない程に、建設産業が追い込まれていることを、多くの県民も、初めて知ったのではないかと思うのであります。
【阿部知事】
建設産業の基盤強化についてでございます。本年2月の大雪、あるいは今年の夏の豪雨災害をはじめ、様々な局面で建設業の皆さま方には、昼夜を分かたず大変な御尽力をいただいております。この場をお借りして感謝を申し上げたいと思います。
建設産業、公共投資の縮小など経営環境が変化する中で、従事者の高齢化や技術者の減少などの課題を抱えております。
他方で、社会資本の整備やメンテナンスを通じて地域社会を支えていただく重要な産業であると考えております。
「しあわせ信州創造プラン」などにおきまして、中期的な目標を定め、計画的な投資を進めると同時に、維持修繕に係る予算の重点的な措置、あるいは景気動向を踏まえた補正予算、また、債務負担(ゼロ県)の活用による端境期対策など、年間を通じた発注にも配慮してきております。
また、本年4月1日に施行しました「長野県の契約に関する条例」に沿いまして、受注機会の確保、あるいは技術の継承などの取組を進めていきたいと考えております。
これからの公共投資は、限られた財源の中、選択と集中により着実な投資効果の発現とともに、既存ストックの有効活用に意を用いることが必要だと考えております。
【本郷議員】
加えて、トンネルや橋梁など、道路の重要工作物の寿命という危険も、クローズアップされてきたところであります。今までに整備された社会基盤を、どのように維持していくのかは、財源も含めて大きな課題でありますが、その基盤のメンテナンスを行う産業として、建設産業の重要性は、再認識されるべきと考えます。
建設産業の土木部門は、国や地方自治体が発注主体の大半を占めていますので、公共投資の基本的な方向付け、発注の平準化対策など、中長期的な整備方針や、そのための財源確保策などを示していくことが、極めて重要と考えますが、いかに対処されていくお考えなのか、知事にお伺いいたします。
【阿部知事】
持続可能な財政運営を行う観点からも、とりわけ、インフラの維持管理については、中長期的な見通しを持ちつつ、事業を進めていきたいと考えております。
信州まつもと空港について
【本郷議員】
平成6年にジェット化開港し20年が経過した松本空港は、関係者の努力により各就航便も高い利用率を上げているが、方向性としては次のステージを目指すべき時期に来ていると考える。長野県の高速交通整備の中核を担うべき松本空港を次のステージに引き上げるため、今後如何に取り組むのか具体的な見解を伺う。
【阿部知事】
信州まつもと空港が、本県交通体系の中でより大きな役割を果たすためには、現在の福岡便・札幌便の複便化、大阪便の運航期間拡大はもとより、国内の国際空港あるいは東アジアまでを視野に入れた就航路線の拡充等、こうしたことについて具体的に考えていかなければいけないと思っております。
まずは、旅客需要等の基礎的調査を早急に実施したいと思います。また、専門家の意見をお聴きしながら、MRJ等新しい航空機材の松本空港への就航可能性等についても検討を行い、来年度には、県としての「路線拡充と空港機能強化に向けた方針」を明確にしていきたいと思っております。
その上で、必要な施設整備も含めて、松本空港の抜本的な活性化に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
教育に関する問題について
【本郷議員】
次に教育に関する問題について何点かお伺いいたします。昨今の教育問題と言えば教員の不祥事対策というような、本来あってはならないし、問題として議論すべきでないようなことが、教育問題の全面に出てきていることに忸怩たる思いを持っております。しかも、多感な子どもたちの模範となるべき教師が反社会的な行為を行うことにより、教育そのものの信頼を失うことになるのは間違いありません。そしてこの問題は、長野県ばかりでなく、全国でも頻発していると言っても過言ではないと思います。
テレビで教育長や校長先生が頭を下げて謝罪している映像が何度も流れ、あってはならないことが起きてしまい、綱紀を粛正すると表明されても、その効果が上がらぬうちにまた不祥事がという、何とも言えない状況が現出しているのであります。
これらは、どこに原因があると考えればよいのでしょうか。これだけ頻出すれば、教員個人の責任に帰すだけではなく、組織運営上にも問題があると考えるのが当然だと思いますが、教育長の所見をお伺いいたします。
【教育長】
まず、教員の不祥事の原因についてのお尋ねをいただきました。不祥事を起こした教職員本人から聞き取りをいたしますと、他で起きた不祥事を自分事として捉えられていなかったなど個人の資質に基因することが根本にはあると認められますものの、周りに悩みを相談できる人がおらず孤立感を覚えていたなど、組織に関する課題があることも窺えるところでございます。
また、様々な問題を学校だけで抱え込むなど学校自体の運営面の課題も存在しており、「教員の資質向上・教育制度あり方検討会議」の提言におきましても、学校運営のあり方の見直しの必要性が指摘されたところでございます。
こうした点を踏まえ、県教育委員会では、学校における風通しの良い職場環境づくりや地域に開かれた学校づくりを進めているところであり、今後もこうした取組を含め、様々な施策を実施し、教員の不祥事防止に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
【本郷議員】
経済協力開発機構から先般、主として日本の中学校と同等クラスの先生を対象とした国際教員指導環境調査の結果がレポートされました。それによりますと、日本の先生は、国際比較の中では、相当忙しく負担が大きいことが分かります。日本の先生の1週間の労働時間は53.9時間で、調査対象の国の平均が38.3時間ですから15時間以上多く働いているということです。内訳を見てみますと、授業に使った時間は平均より少ないとのことで、課外活動や一般的な事務仕事が多くなっており、授業以外のことに忙殺されている姿が浮き彫りとされてきております。非違行為を起こすのは一部の先生で、多くの先生は教育現場で真摯に対応しておりますし、これを裏付ける客観的なレポートが先生たちの真の姿を現していると思います。先生方の忙しすぎる状況を早急に改善し、先生方に自信をつけていただき、正当な評価の下に学校現場における運営を進めていくことが昨今の不祥事への対策につながるものと考えますが、いかがでしょうか。
そこで、教育長にお伺いしますが、この経済協力開発機構のレポートをどのように評価しているのでしょうか。また、先生方の多忙な状態を改善するための方策を早急に取るべきと考えますが、所見を併せてお伺いします。
【教育長】
次に、経済協力開発機構の調査結果の評価と改善の方策についてのお尋ねでございます。本年6月、経済協力開発機構が発表いたしました中学校教諭の勤務状況に関する調査結果によりますと、週当たりの勤務時間は日本が53.9時間と調査参加国中、最長でございます。特に部活動などの課外活動に当たる時間が長いことが、主な要因となっていると認識してございます。
長時間勤務につきましては、本県におきましても同様の課題があり、県教育委員会では、教職員の時間外勤務時間の縮減を始めとする業務の改善について、解決すべき喫緊の課題と受け止めております。
このため、今年3月には、「教職員の業務を改善し、子どもと向き合う時間の確保・充実を図るための総合的な方策」を策定いたしまして、公立小中学校の時間外勤務時間を本年度から毎年10%程度、3年後に30%程度の縮減を目指し、各学校に対して、教職員の勤務時間の把握や時間外勤務の原因分析を行い、業務改善計画の策定を求めているところでございます。
また、県教育委員会といたしましても、各種会議や調査等の見直しや中学生期のスポーツ活動指針に沿った適切な運動部活動の推進など、教職員の時間外勤務時間の縮減を始めとする業務改善に取り組んでいるところでございます。
【本郷議員】
さて、地方教育行政法の改正により、首長の権限が強化されることになりました。従来は政治の教育への介入を避けるように教育委員会が運営されてきた訳ですが、いじめ問題への対応など、責任の所在が判然としていないということもあり、首長に責任を持たせる方向での改正で、知事も主張されてきたことが法制化されたと捉えております。
そこで知事に伺いますが、信濃毎日新聞の対論の中で、知事の発言として「最終的に知事が責任をとる仕組みと、すべてにおいて権限を振りかざすことは、必ずしも同じではない。」との記事が掲載されておりました。知事は今回の改正を受けて、教育委員会とどのような関係を構築したいと考えているのか、この際お伺いいたします。
【阿部知事】
順次ご質問にお答え申し上げます。まず教育関係、教育委員会との関係構築についてでございます。教育、人づくりは、すべての施策の基本だと考えております。教育行政は、子育てや青少年の健全育成、地域振興、文化振興等々、知事部局として所管する様々な分野と深く関わりがあるというふうに考えております。
教育委員会とはこれまでも、連携を図りつつ本県の教育行政の充実に努めてきたところであります。こうした連携を一層深めていくという観点で、総合教育会議を年内に設置することといたしたところであります。こうした場を活用して、教育委員会とは忌憚のない、率直な意見交換をさせていただき、目指す方向性をしっかりと共有をしていきたいと考えております。
【本郷議員】
少子化の歯止めがなかなか効かないまま、学齢期の子供は確実に減少しており、社会的な移動を積算対象としなければ、これからの児童生徒の規模はかなりの精度で予測できるので、着実・計画的な学校の統廃合をどのようにしていくのか、地域の皆さんと論議を重ね結論を出していかなければなりません。残された時間もそう長くはないと思っています。地域にとって学校はシンボルでもあり、地域活力を維持する上で極めて重要な施設ですから、この調整には教育委員会だけではなく、地域振興を担う知事部局も積極的に関わらねばまとまらない事案も出てくると思います。地域高校の存続に多くの県民の視線が集まっていますが、知事はこの問題にどのように対処していく所存なのか、お伺いいたします。
県立の中高一貫教育校が屋代についで諏訪清陵にも設置され、県下各地から生徒が集まっています。長野県は全国4位の面積を有し 南北に長く、山や川で生活圏が分断され、あたかも信州合衆国という様相で、交通の便も生活圏も跨ぐ地域は枚挙にいとまがありません。県立の中高一貫教育校の整備も地域バランスを考えて統廃合だけでなく、知事の公約である人材育成に繋がるよう積極的に対応することをこれは強く要望しておきます。
【阿部知事】
地域高校についてでございますが、地域高校、高等学校のあり方については、本県の地域振興あるいは産業振興、さらに今テーマとなっている地方創生そうしたものと、重要な関連性を有していると考えております。このため、今後の高等学校の将来像検討におきましては、地域の活性化、地域の産業を担う人材の育成等、地域振興あるいは産業振興の観点から各部局の施策と積極的に関連を図っていくことが、ご指摘にもありましたように重要な視点だと考えております。
私も地域の皆さんの声を充分お伺いするとともに、今後設置いたします「総合教育会議」を活用するなどして、教育委員会と充分に連携を取りながら、進めていきたいと考えております。
新県立大学について
【本郷議員】
新県立大学が、県内の高校生に真に魅力あるものとして評価される必要がある。また、大学を卒業しても大半の学生が県外に就職してしまうことにならないよう、今から準備していく必要があると考えるが、今後、県内既存大学との高等教育についての合意形成・連携が進み、予定通りの開学ができるのか、改めてその見通しと対応策を示していただきたい。
また、開学時に受験年齢を迎える生徒に対する県立四年制大学の独自性とアドバンテージをどのように考えているのか、所見を聞かせていただきたい。
【阿部知事】
新しい県立大学についてでございます。予定どおりの開学ができるのか、そして独自性とアドバンテージについてというご質問でございます。
先月初め、安藤理事長予定者、金田一学長予定者に、私立大学の学長の方々とそれぞれお会いいただいているところでございます。
お二人からは、新しい県立大学をつくることに対して、それぞれの私立大学の学長からエールをいただき、同じ大学人という立場で、率直な意見交換ができたと伺っております。
今後、長野県の高等教育振興に共に取り組んでいくこと、また、引き続き意見交換をしていくということで、各大学の学長と意見が合致したということでございます。お二人を中心として、各大学の皆さんと意見交換を継続していく中で、県立大学構想について、今後の具体化についてご理解を得ていきたいと考えております。
私立大学からは、県としても志を下げることなく質の高い大学をつくるということをご要望いただいてきております。安藤理事長予定者、金田一学長予定者、お二人とも高い志を持って大学を実現していこうという強い意志をお持ちであります。平成30年の開学に向け、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。
また、県立大学の独自性とアドバンテージということでございます。学長予定者の金田一先生は教育重視の大学という視点で考えていただいておりますし、私も同じ考え方でございます。
例えば、地方の小規模な大学だからこそできることがあるだろうと、大規模校ではできない少人数でフェイス・トゥー・フェイスの質の高い教育を行っていきたいと考えております。
また、「厳しい大学」であり、「身に付く大学」にしていかなければいけないと思っております。日本の大学生、アメリカの大学生等と比較して勉強しないということをよく言われるわけであります。新しい県立大学では、全寮制も活かしながら、学習習慣そして健康な生活習慣を身につけさせていきたいと考えておりますし、また初年次教育を重視する中で、入学したときのやる気を持続させ、学ぶことはおもしろいことだと思ってもらえるようにしていきたいと考えております。こうした観点で全寮制ということは、効果があると考えております。
また、全ての学生が海外プログラムを履修あるいは地域の企業の皆さんにご協力いただく中で地域の企業と連携したインターンシップを行っていきたいと考えております。こうしたことを通じて、未来を担う若者たちが夢をかなえることができる大学にしてまいりたいと考えております。多くの県内高校生の皆さんに志願していただけるように、私どもとしてもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
県土の均衡ある発展について
【本郷議員】
知事は今回の選挙を通じて県内を一巡し、地域の皆さんの声をしっかり受け止められてきたと存じます。その中で、県都が県の北よりにあることから、かつては信州南北戦争と言われた分県論や県庁移庁論があったように、県内各地の県政を見る目は、今日でも地域ごとに大きく異なっているように思っておりますが、知事はどのように受け止められておるのでしょうか。
特に、県土の均衡ある発展という言葉は、誰から見ても、県内のどの地域から見ても、長野県政に寄せる期待を総花的に表すフレーズでありますから、その方針について批判はありませんが、具体的な施策を展開する場面では、県民が望む県土の均衡ある発展に関して意見が相違するということも往々にして出てまいります。地域から選出される我々議員としては、執行機関とは異なる観点から県民意見を集約していくという、合議機関としての議会に課された使命を今後も果たしていく所存でありますが、知事の基本認識について、二期目のスタートにあたり改めて伺います。県土の均衡ある発展ということについて、知事はいかに受け止め実践していこうとしているのか、基本的な考え方をお聞かせください。
【阿部知事】
各地域の県政を見る目に対する受け止めというご質問でございます。広大な県土を有している長野県、地理的・社会的に様々な個性・魅力を有する県であります。
今回の選挙戦を通じて県内くまなく回らせていただくなかで、改めて、県庁からの距離感というもの含めて様々、それぞれの地域の皆さんの思いがあるなということを改めて認識したところでございます。行政の利便性の向上等によって、県政をより身近に感じていただける取組ということをしていかなければいけないと思いますし、また、様々な特色がある県土を抱える長野県として、それぞれの地域の皆さんの思いにしっかりと寄り添った取組が重要だろうと思っております。
県土の均衡ある発展ということでございますが、分野によって、施策によって、大きく県全体をしっかり見ていかなければいけない施策と、各地域の個性・魅力を伸ばしていく視点との2つが必要ではないかと考えております。
福祉、医療、あるいは教育といった基本的な行政サービスにつきましては、どの地域でもあまねく提供していくことが重要だと思います。
また、まちづくり、地域の活性化については、各地域の思い、そして取組、こうしたものを尊重しながら地域の個性を伸ばしていくことが重要だと考えております。
こうした視点を持ちながら、「確かな暮らしが営まれる美しい信州」の実現に取り組んでまいりたいと考えております。
【本郷議員】
移動知事室について、現時点でどのようなスキームで実施しようとしているのか。また、地方事務所の機能強化についてもどのような方針で臨むのか伺う。
【阿部知事】
移動知事室についてでございます。長野県は県庁への移動に多くの時間が必要な地域がございます。こうした地域の皆様が県庁にお越しいただく際には、時間的あるいは金銭的にも負担があるという状況がございます。こうした皆様方の負担についても配慮しなくてはならないと思いますし、また、それぞれの地域の皆さんの思いや声といったようなことを、私としても、また県全体としてもしっかりと受け止めて、尊重していくことが重要だと思っております。
これまでも、タウンミーティング等の開催もしながら、県の各地訪問してまいりましたが、移動に多くの時間を要し、また、単発の用務でうかがうと、用務が終わればまた長野に戻って仕事ですとか、そういうことも多々ございました。
移動知事室は、私が地域へお伺いをして、一定期間一つの地域で腰を落ち着けて執務をしながら、各地の皆様方と意見交換をしたり、それぞれの地域をご訪問させていただいたりということで、長野県のそれぞれの地域の皆様の思いを直接お伺いすることが出来ると考えております。また、様々な立場の方のご意見、そして地域や現場の専門家のご意見をお聴きする中で、長野県としての課題の検討を行っていくということもできると思っております。
加えて、やはり県政を進めて行く上では、県職員の協力ということも不可欠だと思っております。現地機関の職員ともこうした折にしっかりと意見交換するなどして、膝を交えて人間関係を作っていきたいと言うふうに思っております。こうしたことを通じて、それぞれの地域の思いをしっかりと受け止めて、そして、そうした地域の思いを具体化する上で重要な一歩をまずは上伊那地域で踏み出して行きたいと思っているところでございます。
地方事務所の機能強化方針についてでございます。先程も申し上げたように、長野県、それぞれの地域の個性、特色がございます。私が出掛けて行くということだけではなくて、やはり、現地機関がしっかり現地の声を把握して対応していくことが重要だと思っております。これまで以上に現場のことについては、極力現場で対応できる形というものを、この地方事務所の機能強化の中でしっかりと考えて、県民の皆様方にとって良い形になるようなものを目指していきたいと考えております。
【本郷議員】
さて、知事もあらゆる場面で人材育成の重要性に言及されていますが、県行政を担う県職員の人材育成についても急務であると考えています。とりわけ、地方事務所の機能強化ということになれば、どうしても考えておかなければならないことがあります。
高速道路等を始め、高速ネットワークの急速な整備により、県内の通勤事情は大きく改善され、長野市を起点としますとその通勤範囲は松本市、大町市、中野市、佐久市等に大きく広がっております。
これを異なる側面から見ますと、かつては通勤に長時間を要したため人事異動があると居所を在勤地周辺に確保する必要があった地域も現在では通勤可能地となっており、これが県行政に与える影響についても考えておかざるをえません。
特に問題になるのが、災害時の対応であります。
災害は勤務時間中に起きるだけでなく、夜間、休日等いつ起こるか予測不能であります。今回の広島豪雨災害は午前3時と、未明に災害が発生しました。また、台風災害等であれば、ある程度の準備期間が確保できるので、人的体制整備も可能と思いますが、大規模地震やこの度の御嶽山の噴火なども予測レベルがどの程度のものか判然とせず、準備時間がほとんどないだろうと想定せざるを得ません。
その時、県内情報収集の拠点である各合同庁舎の人的体制整備がどのようなものであるのかしっかり確認しておく必要があると思っています。
県内の合同庁舎で休日に突然地震災害が起きた場合、どのような人員配置が可能となるかシミュレーションしているならば、合同庁舎ごとに実態を教えていただきたいと思いますので、知事のご所見を伺います。
【阿部知事】
次に、合同庁舎の危機管理体制についてのご質問でございます。県の合同庁舎におきましては、地方事務所をはじめとする現地機関等による地方部体制を構築して災害の対応別に非常時の参集体制を確保しております。各地方部におきましては、「災害応急対策活動要領」等を定めて、基本的に平日時間外そして土日・休日におきましては、職員2名程度を防災当番として指定して災害の発生に備えております。
また、災害の影響によりまして自らの所属に参集できない場合であっても、最寄りの現地機関、市町村に参集することとしております。
今回の御嶽山噴火災害には、今総力を挙げて対応中でございますが、発生当日、土曜日でございまして、発災後に第1回本部会議を開催いたしましたが、私も木曽の合同庁舎で本部会議に参加をいたしました。その際、合庁の職員約50名既に対応にあたっていたという現状でございます。
非常時も想定した人員配置に今後とも努めていきたいと考えております。
【本郷議員】
県職員の生活の本拠地がどこにあるのかという情報も重要となってくるが、県職員の生活本拠地を10広域別に見た場合、どのような状況なのか。【総務部長】
【総務部長】
県職員の生活の本拠地の状況についてのお尋ねでございます。本年4月1日現在の県の一般行政職員数6,047名でございまして、これを職員の世帯の住所であります「生活の本拠地」、例えば職員が単身赴任している場合には、その家族が暮らす場所と捉えまして、10の広域別に見ますと、順次申し上げますが、佐久地域377名、上小地域378名、諏訪地域201名、上伊那地域396名、飯伊地域365名、木曽地域97名、松本地域1,004名、大北地域115名、長野地域が一番多くございまして2,843名、北信地域207名、そういう状況でございます。
【本郷議員】
本県と同様に県土が広い新潟県では、県職員採用に「魚沼勤務」枠を設けたという記事を目にした。本県でもこうした視点を導入する必要があるのではと考えるが所見を伺う。
【阿部知事】
勤務地域を限定する職員採用についてでございます。面積の広い長野県でございます。こうした御指摘を受けたわけでございますので、やはり私としては検討していかなければいけないテーマでないかと思っております。
県職員が県内の様々な地域の勤務を経験していくということは、幅広い経験をする上で有意義な面もあると思っています。
しかしながら、他方で、議員御指摘のとおり、災害対応を始めとして、職員の生活の本拠地ということも考慮した人員配置も必要だというふうに思っております。
今後、人材確保に向けて職員採用の在り方を検討する予定でございます。勤務地域を限定する採用の必要性についても、他県の取組も参考にしながら、検討していきたいと考えております。
危険ドラッグについて
【本郷議員】
危険ドラッグ使用による交通事故及び事件の発生状況等について
【阿部知事】
本年は、8月未現在、長野県下において、危険ドラッグに関連して発生している事件・事故は、5月14日、中野警察署管内で発生した死傷者を伴う多重交通事故1件であります。なお、薬事法に係わる指定薬物事犯の検挙はありません。
危険ドラッグについては、乱用した者による事件・事故が全国的に発生しており、依然として予断を許さない状況にあります。政府では、本年7月、薬物乱用対策推進会議において、危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策が策定され、これを受けて、長野県馨察ではこの8月8日に、各部門横断的な組織で構成する対策会議を開催し、危険ドラッグ対策プロジクトとして、「危険ドラッグ」対策に対する認識を共有し、組織的に取り組むべき3点の対策について、意思統一を図ったところであります。
具体的には先ず、1点日として、「実態把握と指導の徹底」であります。 現在のところ、県内で危険ドラッグを販売している店舗は把握しておりませんが、情報収集活動を強化しており、今後、危険ドラッグを販売する可能性のある店舗を把握した場合には、その経営者、管理者(店長)に対して、県薬事管理課と連携し販売自粛等の指導を、行うこととしております。
次に、2点目として、「取締りの徹底」であります。交通事故捜査等のあらゆる警察活動において、危険ドラッグを念頭に置いた捜査を推進して各種法令を駆使し、乱用者及び供給源に対する積極的な取締り等に努めて参ります。
最後に3点目として、「広報・啓発活動の推進」、であります。薬物乱用防止教室の開催のほか、交通安全教室、防犯教室等の各種会議・会合やミニ広報誌の発行、巡回連絡等あらゆる警察活動により、危険ドラッグを話題にした広報啓発活動に努めて参ります。
【本郷議員】
新聞で情報を得たのでありますが、岐阜県では、危険ドラッグの濫用が社会問題化しているのを受け、危険ドラッグを独自に指定し、所持や使用などを規制する条例案を9月議会へ提出するとのことであります。
そして同様の条例は、東京都など6都府県で施行されている状況です。本県でも、本年5月に中野市で19歳の少年が危険ドラッグを吸って車を運転し、1人が死亡、4人がけがをするという重大事故が起きています。その後も全国で、連日、危険ドラッグを使用して自動車を運転するという事案が度重なり、大きな問題になっているのは御承知のとおりです。
長野県でこの事故が起きた時、その広がりの速さに驚くとともに、都会だけではなく地方都市もこうした社会問題のただなかにあり、平穏な生活を維持するためには毅然とした対策が、どうしても必要だと認識させられました。
国の法整備が後手、後手になっている現状では、地方自治体がその持てる力を全力で発揮して、不幸な事案が起きないように、最善の努力をすべきではないでしょうか。
知事には、警察と連携を強化して、条例化を視野に早急に取り組むべきと存じますが、所見を伺います。
【阿部知事】
危険ドラッグに関してでございます。この危険ドラッグの問題、私も深刻かつ重要な問題ととらえて対応しなければいけないと考えております。
条例についてのご質問がありました。今、全国的には、6都府県で条例を制定しているところでございますが、その主な内容は、法律による指定に先駆けて薬物を指定し、販売、所持等を規制しようというものでございます。
こうした中ではありますが、国において、実は本年7月以降、従来3カ月程度かかっていた指定までの期間を、パブリックコメントの省略等によりまして、最短3週間程度に短縮したということで、かなり国の対応がスピードアップしてきている状況であります。
こうしたことによりまして、法律による指定と条例の指定との時間差がほとんどなくなってきているという状況でございまして、9月末現在で、6都府県で条例による指定薬物はないというふうに聞いております。
従って、現時点で直ちに条例の制定の必要性は少ないものというふうに考えておりますが、引き続き情報はしっかり収集していきたいというふうに思っております。
なお、本県には現在、危険ドラッグを扱う店舗は確認されておりませんが、引き続き警察と情報共有をして店舗の把握に努め、発見された場合には、警察とも連携して立入検査を行うなど、迅速に取り組んでいきたいと考えております。
国土強靭化に向けた取り組みについて
【本郷議員】
最後に、国土強靭化に向けた取り組みについて伺います。毎年、異常気象、異常気象と言い続けてきていますが、本年の夏の大雨は、観測史上初めてという一時間降雨量を各地で計測し、長野県では南木曽の土石流災害、そして広島の豪雨災害、さらには礼文島の豪雨災害など死傷者が出た災害だけでなく、床上浸水や河川の氾濫など日本中が豪雨災害のニュースに連日占拠されているような状況で、国土の脆弱性、県土の脆弱性を思わずにはいられない夏となりました。
お亡くなりになられた方々に対しては、心からご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様には衷心よりお見舞い申し上げる次第であります。
それにしても、2月の大雪から始まり台風災害、豪雨災害、御嶽山噴火と、自然の驚異を思い知りながら、これからも地域の発展を遂げるためには、災害に強い地域づくりが急務であると実感されています。
さて、昨年十二月に強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法が成立し、大規模自然災害等に備えるには、事前防災・減災と迅速な復旧・復興に資する施策の総合的、計画的な実施が重要であり、国際競争力向上に資していくことを基本理念としています。
そして、国土強靭化に係る指針として基本計画を定め、国土強靭化に関しては、国の定める整備計画等、他の計画は本計画を基本とするということで、この基本計画をアンブレラ計画と称しています。
国土強靭化基本法第十三条では国土強靭化地域計画について規定し、都道府県が定めることができる計画で、その都道府県の地域における国土強靭化に係る当該都道府県の他の計画等の指針となるものとされ、個別事業については、重点化・優先順位付けを行うことが肝要で、組長の指導力がカギとされています。
今年度は、モデルとなる地方自治体を選定し専門的知見に基づく助言等を通じ、地域計画の検討過程等について情報を収集、集約する調査を実施し、計画策定にあたってのノウハウ等の蓄積を図り、全国の地方公共団体等に提示し、共有することにより、地域計画の策定を全国的に促進しようとしています。
長野県に隣接する山梨県、静岡県、愛知県、岐阜県がモデル地域として、この六月に選定されたと伺っています。
本県もこうした動きを十分承知されていることと思いますが、火山噴火、土石流や地滑り等脆弱な県土の抱える災害の危険性の中に暮らしている県民の生活の安全を守るということは県政最大の課題であります。
モデルに選定された県は一足早く準備が進むことになりますが、その調整過程も十分参考にして、本県の今後を左右するとも言える計画が、モデル県の水準を凌駕する計画となるよう、策定に万全を期していただきたいのですが、知事のご決意をお聞かせください。
【阿部知事】
最後に国土強靭化に向けた取り組みでございます。これはやはり災害に強い県土づくり、これは長野県としても重要な施策として位置付けて、全力で取り組んでいかなればいけないというふうに考えております。
この強靭化に向けた計画の策定につきましては、今回の噴火災害等を含めて、過去の災害経験、そうしたものを十分踏まえていかなければいけないというふうに思っておりますし、また、本年度末にとりまとめを予定しております新しい地震被害想定等も踏まえて、長野県の災害特性に詳しい精通された防災の専門家の意見も十分に取り入れまして、今までの取り組みにさらに重層的な施策となるように、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。
先行して策定いたします国のモデル調査実施県、あるいは本県と同じような脆弱性を持つ県の策定過程も参考にしていきたいと思いますし、また東日本と西日本の結節点としての地理的な特徴を生かすなど、広域的な視点を持ちつつ、綿密なしっかりとした計画にしてまいりたいと考えております。以上でございます。