1.社会保障制度改革について
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【本郷委員】
国では「社会保障と税の一体改革」の検討が進められており、県でも「現場の視点でとらえた社会保障あり方懇話会」を設置するということだが、長野県として今後の社会保障の展望についてどのように考えているか伺いたい。
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【清水健康福祉政策課長】
現行の社会保障制度の大きな柱は皆保険・皆年金であり、これは昭和36年にできたものだが、その頃は平均寿命が男性65歳、女性70歳程度で今より15年くらい短い。合計特殊出生率は2を超えており、高齢化率も6%くらいだった。景気は高度経済成長、岩戸景気で2ケタの成長があった。今は少子高齢化が進み、就業形態なども変わり続けている。
社会保障ニーズが増加する中で世代間の給付と負担のバランスなどの課題にしっかりと対応し、同時に中長期的に持続可能な制度としていくため、給付の重点化、制度運営の効率化とともに、安定的な財源の確保が求められている。
地方に関係することについては、地方単独事業の扱いをどう考えるか、医療保険の広域化の対応をいかにすべきか、税配分をどうするかなどの課題がある。
このことについては、国に対し、寿命が長く、医療費が少なく、保育も充実している長野県から提言するとともに、県として対応が可能な施策については、取り入れていく。
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2.TPP交渉について
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【本郷委員】
TPP交渉への参加について、中長期的に皆保険制度に影響が及ぶとの懸念もあるが、医療分野への影響としてどのようなことが予想されるのか。
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【清水健康福祉政策課長】
11月に三師会で声明が発表されるなど、懸念の声がある。それによると、混合診療の全面解禁で保険対象の医療が縮小するとされている。また、医療への営利企業の参入、薬価の問題など、これまでにアメリカが要求してきたことがTPP交渉の中で改めて要求されることを見越しての懸念であると思われる。
交渉の対象となっている21分野の中に、医療のことは直接にはなく、社会保障制度に交渉が及ぶことはないのではないかと言われている。また、2国間交渉でもそういった事例はないとか、あるいは混合診療も一部解禁されているが影響は出ていないという意見はあるものの、医療がTPP交渉の対象になる恐れはあるとされている。政府は、仮にこれらの議論がされても、国民皆保険制度を維持し、必要な医療を確保していく姿勢に変わりはないと説明しているが、慎重な対応が求められる。
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【本郷委員】
県として、どのように対応していくのか。
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【清水健康福祉政策課長】
11月末に知事、副知事、部局長で構成する「国際的な経済連携に関する対策会議」を設置した。
当面は、関係国協議の進展を注視していくが、健康福祉部としては、根幹である社会保障制度の維持が大切だと考えている。
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3.第6次長野県保健医療計画について
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【本郷委員】
第6次保健医療計画に着手したと聞いているが、4年目を迎える第5次保健医療計画の進捗状況はどうか。
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【山本医療推進課長】
第5次保健医療計画については、毎年、施策と数値目標について、進捗状況の評価を実施している。全体的に見て、施策については、おおむね順調に展開しており、数値目標については、DMATを有する災害拠点病院数は達成しているが、医師数、小児救急医療体制整備についてはまだ達成しておらず、計画期間があと1年あるので、達成に向けて引き続き努力していきたい。
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【本郷委員】
第6次に向けての国の考え方は示されたか。
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【山本医療推進課長】
国は基本指針策定に向けて、11月18日に第8回の検討会を開催したようであるが、国の方針が出るのは、来年1月頃になる見込みである。
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【本郷委員】
第5次と第6次の差異・ポイントは何か。
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【山本医療推進課長】
国の検討状況や、議論の経過を見ると、現在のがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾病に精神疾患を追加して5疾病にすることと、二次医療圏が人口20万人規模を目安に検討されていることがポイントである。また医療と介護の連携である在宅医療も柱に検討されていると聞いている。
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【本郷委員】
第6次保健医療計画策定に向けての現在の準備状況はどうか。
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【山本医療推進課長】
11月2日に第1回保健医療計画策定委員会を開催し、計画策定に向けて着手したところであり、年明けにはワーキンググループ(WG)を開催していきたい。今後は、5つのWGを設けて、専門的なご意見をいただきながら、検討を進めていきたい。
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【本郷委員】
議会でも中期総合計画の研究会が発足する予定になっているが、中期総合計画との整合性はとっていくのか。
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【山本医療推進課長】
中期総合計画との整合性を図って、計画を策定していきたい。
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4.介護センターについて
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【本郷委員】 介護センター廃止に伴う条例の改正案について、介護センターは、16年の歴史の中で重要な役割を果たしてきたと思うが、センター設置当初の役割と現在の役割について伺いたい。
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【吉川地域福祉課長】
平成7年に介護保険制度の知識・技術の普及、特に介護機器の普及を目的に設置された。平成12年にスタートした介護保険制度は、課題を持ちつつも普及してきた。当初、ヘルパー養成研修も実施していたが、民間でも養成できるようになり、役目を終えて、現在は、ケアマネ研修を実施している。
制度の立ち上がり時期、民間が育つまで研修を実施してきた。現在、ケアマネ研修を直営で実施している都道府県はほとんどない。介護機器も16年前のものが多く、民間に任せることが適当である。
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【本郷委員】
健全な意味での官から民への流れと認識している。今後、研修については、どのような機関を指定していくのか。
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【吉川地域福祉課長】
県社会福祉協議会を県福祉人材研修センターとして、唯一指定しているので、できるだけここに一元化していきたい。蓄積したノウハウを十分活用できると考えている。
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【本郷委員】
社会福祉協議会は複合的な要素を持っており、専門性も高い。研修受講者に不利益がないよう総合的な配慮をお願いしたい。
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5.看護師確保について
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【本郷委員】
民間の看護師養成校への補助を拡大できないか伺いたい。
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【山本医療推進課長】 県も国に対し補助金の増額について要望している。今年度、一部は拡充されたが、今後も継続的に増額要望を行いたい。
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【本郷委員】
慢性的な看護師不足に対処するために、看護師確保対策室を設置し、課長職の看護師を配置することはできないか伺いたい。
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【山本医療推進課長】 県では医療推進課内に看護係を置き、保健師、看護師を配置し、他の医療対策と併せ、総合的に看護師確保対策を行っている。なお、他県にも看護師確保単独で室を設置した事例はなく、今後も医療推進課において、総合的に対策を進めたい。
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6.歯科保健について
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【本郷委員】
歯科保健事業実施における県単独予算の確保を要望する。
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【小林健康長寿課長】 歯科保健事業については、国庫補助メニューの活用だけに頼っていられない。計画策定の協議会の中でも検討し、予算の確保、事業の実施に取り組みたい。
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【本郷委員】
県民歯科保健実態調査結果では、成人の定期的な歯科健診を受けている者の割合は前回調査と同様に低い現状であり、青・壮年期における歯科健診事業が充実できる基盤整備をお願いしたい。
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【小林健康長寿課長】
昨年、県民歯科保健実態調査を行ったところ、青・壮年期の歯周疾患者が、前回の調査よりも増えていることが浮き彫りになっている。大人の歯周疾患は歯を失う大きな原因ともなるので、歯科健診事業の重要性は認識している。現在、健康増進法に基づき、市町村が行うとともに、事業所でも行われている。県の協議会の意見も聞きながら、効果的な実施方法、体制整備について検討していきたい。
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【本郷委員】
在宅歯科医療連携室整備事業を本年度から実施するということだが、継続実施できるよう要望する。
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【小林健康長寿課長】
在宅要介護高齢者や障害者のQOLの大きな課題である歯科保健は重要と考えているが、今まで、在宅の方々について具体的に把握する仕組みがなかった。現在、県内の在宅の方々の口腔衛生についても、条例に基づく計画策定に合わせて、実態の把握を始めている。
また、在宅で困っているとき、相談できる窓口を設置し、訪問歯科を行う歯科診療所の情報も備え、歯科医師への橋渡しができるような事業を計画し、今年度中に開始する予定である。歯科医師、歯科衛生士、介護の現場の方々の資質の向上も含め、在宅の歯科を向上させていきたい。
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【本郷委員】
在宅歯科医療に従事できる資質の高い歯科衛生士の育成・確保についてお願いしたい。
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【小林健康長寿課長】
歯科衛生士は歯科診療所で、歯科医師の補助的な役割を担っているが、在宅に出るということは、診療所の業務とは大きな違いがあり、人数がそろえばよいということではないと認識している。どのように歯科衛生士に、在宅の口腔ケアを担ってもらえるか、歯科衛生士会と協議しながら、歯科衛生士が活躍できる環境整備を進めていきたい。
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【本郷委員】
歯科技工士会への講習会、研修会への費用の補助をお願いしたい。
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【小林健康長寿課長】
県の歯科保健推進とどのように協調して進めていくか、協議の場で意見を頂きながら、取組んでいきたい。
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7.災害時の薬局開設対応及び在宅医療について
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【本郷委員】
東日本大震災において、薬局が壊滅的な被害を受けたため、臨時となる薬局の開設を検討したが許可には至らなかった。災害時は行政の柔軟な対応及び災害時の拠点薬局の設置が必要ではないか。
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【丸山薬事管理課長】
災害発生時等の緊急時における、いわゆる「あおぞら薬局」などの許可については、今回被災した3県及び薬剤師会との情報交換により情報を共有し、問題点を整理した上で、今後の対応に活かしていきたい。県では薬剤師会と災害時の薬剤師の派遣に係る協定も締結しており、その中でも考えていきたい。
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【本郷委員】
在宅医療の支援、推進のための基幹となる薬局の整備や、医薬品・衛生材料の供給体制の整備等に係る予算措置をお願いしたい。
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【丸山薬事管理課長】
在宅医療については、現在診療報酬上からも議論されているところであり、国の状況を見ながら検討してまいりたい。
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【本郷委員】
医薬品の進歩は急速なものがあり、関係機関との連携、情報共有を一層図るようお願いする。
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【本郷委員】
柔道整復師会は、県と災害時に応援協定を結んでいるが、柔道整復師は、搬送役に回るのではなく、軽症被災者に対して、応急の仕事をすることを認められないか伺いたい。
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【山本医療推進課長】
内容を確認して、今後対応できるものは対応していきたい。
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