「ジェット化開港20周年を迎えた空港は、次のステージを目指す時期だ」との平成26年9月県議会における私の代表質問を契機として、県が「信州まつもと空港の発展・国際化に向けた取組方針(以下、取組方針という。)」を策定して4年が経過しました。これまで私は、具体的な戦略のもと、スピード感を持って取組を進めるよう県当局に要望してまいりました。こうした県議会の後押しもあり、昨年度の空港利用者数が17年ぶりに15万人の大台を突破するなど、信州まつもと空港は、取組方針のロードマップ第2期に入り、着実にステップアップしています。
□ 可能性を秘めた神戸空港との路線開設
平成22年5月の日本航空の撤退以来、信州まつもと空港にとって関西方面への通年での定期路線の開設は長年の悲願でありましたが、昨年10月27日からFDAにより松本・神戸線の運航が始まりました。
神戸空港との路線開設が実現した要因は、一体運営が行われている関西3空港(関西国際空港・大阪伊丹空港・神戸空港)の最適活用を議論する場として昨年開催された「関西3空港懇談会」において、神戸空港の発着枠が拡大されたことです。更にこの懇談会では、2025年頃までの中期的な視点として、神戸空港の国際化を検討することとしており、関西3空港の今後のあり方が見直されようとしています。
こうしたことから、神戸空港は国内線での利用に留まらず、海上ルートで近接している関西国際空港とともに、信州と海外を結ぶ世界との窓口となる可能性を秘めています。
□ GPSを活用した新しい進入方式の導入
信州まつもと空港は、周辺の山岳が障害となるため、悪天候などの視界不良時に航空機の着陸を誘導するILS(計器着陸装置)を設置することができず、それが空港の大きな弱点と指摘されてきました。こうした状況を解消するため、県ではGPSを活用した航法精度の高い「RNP−AR進入方式」の導入を取組方針に位置付け、国と連携して取組を進めてきたところであり、本年7月20日からその運用が開始されました。
「RNP−AR進入方式」では、地上施設の配置に左右されない柔軟な経路設定が可能となることから、飛行距離・時間の短縮が図られるとともに、滑走路中心線上への誘導や垂直方向の航法ガイダンスにより、パイロットの負担軽減が図られ、より安全性が向上します。加えて、従来から運用されてきた進入方式に比べて、パイロットが着陸を判断する最低高度が低くなるため、視界が悪くても着陸できる可能性が高まり、就航率の向上にも効果があります。
最新の進入方式の導入は、信州まつもと空港の新たなアピールポイントとなり、発展・国際化のより一層の進展が期待できます。
□ 入国審査用臨時施設の整備
信州まつもと空港の国際化の最終目標である東アジア地域との国際定期便就航の実現に向けて、県では、まずは国際チャーター便の就航実績を積み上げることに注力しており、その結果、昨年度は過去最多となる44便の国際チャーター便が就航しました。
神戸線の新規就航など国内線の拡充に加え、このように多くの国際チャーター便が就航しており、空港ターミナルの国際化も必須となっています。こうした観点から、今年度より国際線旅客が入国する際に必要となる国の審査(検疫・入国管理・税関)を行う施設を整備することとしており、年内を目途に施設の設計作業を完了させる予定と聞いております。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各国で国際線の運休・減便が続いていますので、そうした状況も踏まえながら、施設整備を進めていく必要があります。
□ 第2駐車場の供用開始
県が実施した搭乗者アンケート調査の結果によると、国内定期便に搭乗する県内居住の旅客の8割は、空港までのアクセス手段として自家用車を使用しています。国内・国際路線の拡充が進み、空港利用者が増加している中、GW、お盆、年末年始等の繁忙期を中心に、空港の駐車場容量が慢性的に不足しており、駐車場の拡張は重要な環境整備として喫緊の課題となっていました。そのため、新たに空港東側に土地を取得した上で、220台分の第2駐車場として整備し、昨年11月末から供用を開始しています。空港の発展・国際化には、今後もこうした利便性向上のための機能強化が必要と考えます。
□ 発展・国際化に向けた今後の展望
現在、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るっており、その影響が航空業界を直撃しています。日本国内のみならず世界各国で航空需要は大幅に減少しており、感染収束が見通せない中、その回復の時期も不透明な状況となっています。世界の航空会社でつくる国際航空運送協会(IATA)では、世界の航空需要がコロナ前の2019年の水準に回復するのは、2024年になると予測しています。
このように空港を取り巻く情勢は極めて厳しいものとなっていますが、こうした時こそ、空港の将来を見据えた検討を進めていくべきだと私は考えています。
その参考となるのが宮古諸島にある「下地島空港」です。航空会社がパイロットの訓練から撤退した後の利活用が課題となっていた中、大手不動産会社の三菱地所が「空港から、リゾート、はじまる。」をコンセプトに下地島空港のターミナル施設を整備して魅力向上を図るとともに、その運営を担いながら国内外との路線の誘致に取り組んでいます。
私はここに信州まつもと空港の将来に向けた1つのヒントがあると考えます。これまで空港は行政が主体となって運営や路線誘致を担ってきましたが、効率的な運営や更なる路線拡充、機能強化、賑わいの創出を図っていくためには、適切な役割分担のもと、その道に長けた民間事業者と連携し、そのアイディアやノウハウを積極的に活用していくことも効果的な方策と考えられます。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は多方面に及んでおり、先行きが読めない状況が続きますが、こうした官民連携方策も含め、県を中心に関係者が一体となって信州まつもと空港の将来を見据えた施策をしっかりと検討し、進めていくことが重要です。そのため、県議会としても県当局とともに全力で取り組んでまいりたいと考えております。