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コラム(84) 2014年12月
2014年を振り返って
 本年は戦後最大の御嶽山噴火をはじめ、各種災害が長野県をはじめ日本列島各地に発生し、危機管理の観点から極めて不安定感の漂う1年間でありました。
 政治経済も消費税8%決定により、4月〜6月、7月〜9月2期連続の予測を上回るマイナス成長などの要因も加わり、アベノミクス解散となり、まさに近年にない激動の2014年と総括されます。
 一連の国際会議も米国の衰微傾向、中国の台頭が強く印象に残り、主権国家日本の今後の進路について改めて思い深くする1年でありました。アベノミクスによる経済戦略は、マクロ的には良い方向の各般のデータにも表れておりますが、地方創生大臣の新設は地方経済の疲弊の証左であり、成長戦略の軸足は完全に地方再生に置かれることになりました。
 民間の有識者会議による将来の人口減少予測は、日本全体に衝撃を与え、その内容は約半数の自治体が消滅の可能性があると提言されました。1都3県に日本のGDPの4割近くが集中する極めて異形な日本の現況の中で、歴史・伝統・文化を真に有する地方なくして日本の真の存立はあり得ません。各自治体の持つポテンシャルや発想力の輝きをいかに実現するか、政治の責務はそのことに尽きると思われます。
 成熟した国家日本は世界200ヶ国の中で比較すれば、格差問題を視座に入れつつも高い道徳観に立ち、経済・医療・教育の平準化を構築してまいりました。従って明治の近代化以来アジアにおいてそのフロントランナーとしての実績は高く評価しつつも、今求められている価値観は21世紀に向けての日本の日本人としての、豊かな感性による新たなる社会像や人間観の造形に他なりません。
 複合的視点に立った人間復権のための社会の在り方について私たちはもう一度謙虚な姿勢で原点に立ち戻り、人間のための経済社会の構築を目指す必要があります。
 日本の少子高齢化社会は先進国の中でも突出しており、社会保障給付の総額は約115兆円とも言われ、年金・医療・介護・子育てについて持続可能な新たなる制度設計が求められております。一方、それを支えるべく15年続いたデフレから脱却しアベノミクスによる健全なる経済成長路線を軌道に乗せるべく、厳しい試練を乗り越える強い意志が重要であります。従って5年程度安定した政権が続かなければ、その実現は困難であります。
 他の先進国は言うまでもなく、制度上政権に対し数年間のスパンを保証していますが、中長期の戦略性に富んだ政策実現には政治の安定なくして実現困難な事は主権者である国民は本質的に認識しております。新興国があるいは列強各国が国家資本主義とも思われる方法論と国益第1主義で国際社会の中において巧みに外交展開する中、日本も重層的視点に立ち新しい時代の新しい発想力を持って国民1人1人が政治への高次なる知見を醸成することが今日の最大なるテーマに思えてなりません。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(83) 2014年10月
戦後最大なる御嶽山火山災害への対応について
 この度の御嶽山噴火は戦後最大の火山災害となり、多くの尊い命が犠牲となられ、心から追悼の意を申し上げ御冥福をお祈り致します。
 当日の山頂付近には、200名を超える人々が秋の紅葉を見るべく散策を楽しんでいた昼食時の11時52分、突然噴火が起こりました。噴石と火山灰が想像を超える速度で降り注ぎ、大参事となりました。長野県は13時20分、直ちに警戒対策本部を設置、その後阿部知事を本部長とする災害対策本部に移行、自衛隊の救助要請を発動、9月28日には長野県・岐阜県両県警と消防、自衛隊による捜査及び救助活動を開始致しました。
 日本は災害列島と言われておりますが、活火山は世界の7%にあたる110火山が存在します。同時に世界に有数の地震国であります。地震と火山噴火の関連性について専門家は、東日本大震災が御嶽山の噴火を誘発した可能性もあると指摘しております。
 水蒸気爆発は前兆現象として明確に把握することは困難という現況の中で、噴火予知の能力をいかに高めるか、今後最も重要なる課題として考えます。
 安倍首相も衆議院本会議において、国内の活火山を巡る警戒・監視体制を一層強化する意向を表明しました。
 国土交通省は、御嶽山周辺で土石流が発生する恐れがあるとし、山麓の王滝川の支流、鹿ノ瀬川(木曽町)に砂防ダムを早急に作ることを決定しました。林野庁は濁川、湯川にある治山ダム・砂防ダムの除石工事に着手しております。
 県当局は、土石流発生に対応すべく避難勧告などの発令基準の準備に入っております。また、鹿ノ瀬川の砂防ダムも1ヶ月で完成する予定であります。更に土石流を検知するセンサー・監視カメラの設置を検討しております。
 頂上近くで降り注いだ噴石の速度は時速300キロとも言われ、多くの犠牲者は噴石と火山ガスによるものと思われ、シェルターの設置はいずれ重要なテーマになると思われますが、災害現場では自衛隊・警察・消防の最前線の皆様が、極めて厳しい環境の中、不眠不休で救助にあたられており、改めて感謝と敬意を表する次第であります。
 まずは全員の行方不明者の発見が第一であり、県行政・県議会も共通の意識と強い危機感を持って、この度の緊急事態に対応しております。
 今後は予測される土石流への対応、農業・観光・交通等への影響も含め、議会の責務を充分自覚し適切なる議会活動を真摯に進める所存であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(82) 2014年09月
歴史的混乱の中、明確な県政の指針を目指して
 今日の直面する歴史的混乱とも言える様々な危機は、国際社会にあって、グローバルリズムとナショナリズムの対立という構図が各地区において顕在化しております。
 四半世紀前、東西冷戦が終幕し自由主義陣営による新たなる世界秩序が予感され、米国による一極支配の様相が見えかかりましたが結果的には民族・宗教を背景にした紛争が多発し、加えて中国の急速な台頭によってパワーバランスが不安定化し、昨年オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官の役割を終える」旨の発言は、世界の法と秩序に大きな衝撃を与えました。そうした状況を踏まえ、我が国は北東アジアにおけるリバランスをめざし、新たなる安全保障政策の造形に向けてスタートを切りました。
 そうした視点から、今日の状況を世界情勢の無極化、あるいは世界内戦と指摘する論者も多く、世界は新たなる流動化の時代に突入したと言っても過言ではないでしょう。
 一方、経済面ではグローバルリズムと新自由主義の負の課題として先進国間に格差問題という共通の深刻な課題が提示され、新興国も同様であります。
 近代社会が資本主義と民主主義が両輪となって発展してきた歴史的経過を思えば、日本における中央と地方、各個人の所得の格差問題も多面的な分析なくして本質的解決策は、困難と思われます。従って政治の最大の要諦は中間層の拡大であり、それこそが政治の安定の基本であります。一方、IT時代における根源的危惧は大衆社会化状況や情報化社会の中で、自己価値判断の喪失と衆愚化であり、次なる時代における国民のための経済社会はどうあるべきか、ポスト近代の論議とともに21世紀の新しい資本主義のモデルの構築が必然性を帯びてくる中、政治の果たすべき責務は極めて重大であります。
 日本において、さらに重要な視点は急速な人口減少と生産年齢人口の急激な減少問題であり、このような俯瞰的認識のもと、県政は正しい指針の上に立ち、時代に対する明快な理念と戦略的思考を持ったシステムとしての長野県政をめざし、高次元の構想力が求められており、私も身を粉にして事を成す政治を目指し、新しい歴史のうねりを重く認識し、全力を傾注する所存であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(81) 2014年08月
地方なくして、日本は立たず
 現代の日本経済を俯瞰してみますと、供給力に対し総需要が並立しない点があります。
 金融界も全体的に未だ資金需要が弱くアベノミクスの成長戦略が軌道に乗りにくい主要な原因であります。総需要とは、消費・投資であり、個人・政府・住宅・設備・公共・輸出部門と理解されれば良いと思われます。
 供給と需要のインバランスにデフレが加わり、失われた20年が経過し、政府与党はその根源的解決のため、金融・財政の大胆な出動をしているのが本質であります。
 更に、日本経済を外の側面から解析しますと日本の外国からの借金は400兆円、逆に外国に700兆円を貸しております。結果、純資産は300兆円であり、多くの方は認識しておりませんが、これは世界最大であります。従って、金融機関が国債や県債を安定的に買うことはそれなりの根拠があるわけであり、日本の政治経済の信頼感が相対的に厚いと理解すべきと思われます。
 つまり、発想を変えれば、国民1人あたり800万円の債権を保有しているということになるわけであります。歴史的に緊縮財政でプライマリーバランスを成し得た国にはなく、かつてクリントン政権はIT革命による経済成長戦略により、プライマリーバランスを実現しました。
 従って、安倍政権の第3の矢である成長戦略は是非とも成功し、15年間のデフレ脱却を実現することが是非とも必要であります。
 特にアベノミクスの標準を地方に合わせ、ローカルアベノミクスなる表現もマスコミに出てきております。宇宙・航空・ロボット・ナノテク・医療等は言い尽くされておりますが、中央一極集中・大手企業に比較して景気回復の実感が乏しい地方経済に視点を当てるのは当然であります。ちなみに、一都三県(東京・神奈川・埼玉・千葉)で日本のGDPの40%近い事は極めて異形であり、各種のインフラ整備も結果的には東京へのストロー現象という指摘は現状の地方経済の疲弊を見れば、現実のことなのです。それに加え、民間有識者会議の発表した2040年には消滅可能性都市が全国の半数になるという予測は、更に地方の深刻さを表しており、従って総理は地方創生本部を立ち上げ、担当大臣を配置するとのことです。有効求人倍率をみても、全国的には1.09倍と高水準ですが、沖縄は0.63倍という状況であります。
 中小企業の活性化、少子高齢化への具体的戦略政策なくして地方再生は困難であり、真の日本を取り戻すことはできません。同時に高速道路・空港・新幹線等の主要インフラを整備してきましたが、結果的に地方が自律できなかったことへの正確な分析が必要なことは言うまでもありません。
 そうした観点から、県政・県議会の果たすべき役割は重く、真の長野県の自律と地域経済活性化に向けて全力を傾注する所存であります。

「安倍政権の主なる地域活性化対策」
(1) 地方の中長期的な構造問題に取り組む
(2) ふるさと納税制度の控除額拡大、手続きの簡素化
(3) 名産品の普及を支援する「ふるさと名物応援制度」の整備
(4) 国の支援策について、自治体から各省庁への申請手続きの一本化
(5) 中小企業の人材確保や定着を支援する地域人材バンクの育成
(6) 地域金融機関などと連携したファンドによる企業の経営支援
(7) 政府系金融機関などを通じた女性や若者らのNPOによる起業支援
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(80) 2014年07月
現代政治の主要課題への提言
 日本における現代政治の主要テーマの1つは、日本列島の隅々まで活力ある経済活動が行き渡ることに他なりません。政治・行政・経済・金融・マスコミの全てが東京に一極集中し、一都三県(神奈川・埼玉・千葉)のGDPの合計が約200兆円を超え、日本全体の4割を占める現況は極めて異形なものであります。
 狭い日本におけるインフラの整備は、それなりに進捗してきておりますが依然として地方経済は衰微傾向にあり、かつ人口の動態も大都市への傾斜が止まらず、約1800とも言われる市町村のうち2040年までにその半数が消滅可能都市という推計が最近発表され注目されております。そうした客観情勢を冷静に分析しながら、やはり未来志向のパワフルな政治判断が今ほど求められる時はありません。瑞穂の国の資本主義を基本理念とした健全で自由な競争と積極的な国内投資により、力強い経済活動を創出することが地方再生に向けての政治の責任であります。成長による富の創出こそが、年金・医療・介護・子育て等の社会保障制度を担保し、安全で安心な国民生活の実現への展望を開くものと思えてなりません。
 その大戦略として大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を3本の柱として、今日まで政府与党は努力して参りましたが、その結果、大局的には株・為替の数値に具体的に現われ、より良い方向性が出ているものと思われ、大企業における本年の賃金アップはその証左であり、地方の中小企業にもその良い影響が少しずつではありますが現れつつあります。
 しかし、国民一人一人の雇用と実質的な所得の増大を持続可能にならしめる為には、一層の政策的努力が必要と思えてなりません。
 その為には、企業の体力をつけるべく地方税収に影響ない法人税の引き下げ、国内立地企業の負担軽減、創業の支援、人材の育成等、必ず実行する必要があります。
 とりわけ、これらを革新的に先導するものは21世紀に対応するイノベーションの推進であります。産学官連携による人財・知財・資金を複合的に連動させ、技術・ビジネスともに優位性を確保することが最も重要な点であります。更には、コンテンツ・プラットホームの研究を進化させ、評価の高いクールジャパン戦略を骨太に戦略化させる必要があります。
 インバウンドが1000万人を超え、2030年には3000万人を目標としておりますが、その為の早急な国内対応が質・量ともに求められており、地方活性化の重要なカードであります。
 今日の貿易収支の赤字化はエネルギー問題であり、再生可能エネルギーを中長期的スパンで視野に入れながら日本の経済水域内の天然ガス、メタンハイドレート、レアアース泥等を本格的に探査し、その利用実現に向けて最大限の努力をしなければなりません。また、米国のシェールガスの輸入を一刻も早く進め、輸入コストの低減を図るべきであります。
 21世紀は女性と高齢者の社会参加と就業率のアップが、新しい日本社会の大切な価値であります。仕事と子育て、介護の両立支援、ワークライフバランスの環境整備、人々の意識改革こそがキーワードであり、高齢者の雇用条件の拡充と併せて少子高齢化時代における生産年齢人口の急激な減少に積極的に取り組まなくてはなりません。更には本格的な成熟社会を迎え、健康長寿を理念とした町会、公民館、スポーツ、福祉等の助け合いのネットワークを軸に、地域政策こそが新しい時代の重要な基本哲学と思えます。
 政治の基本は、やはり教育問題と思われます。新教育基本法、新学習指導要領の理念のもと、21世紀の日本の人材育成は公共心や高い規範意識、歴史・伝統・文化・習俗を尊重する人間力に富んだ人格形成が、その根源的目標であります。そうした精神構造ベースがグローバル化時代に対応した国際社会にも地域社会でも活躍できる人材が育まれるものであります。それらを醸成する中で、世界大学ランキングトップ100に日本の大学が10校以上になることも不可能ではなく、地域社会における真に新しいリーダーも現れるものと確信しております。その為には、教育費の負担の軽減を実施すべく各般の制度の充実が必要であります。
 2020年の東京オリンピックは、スポーツを通して人間力の充実に繋がり、同時に芸術・文化を理解し将来文化的理念を有する人材育成こそ、教育の重要なテーマであります。
 いずれにしても、政治の持つ強制力は社会工学的にも最も影響力が強く、政治や行政機能の高度化は、現代日本の本質的課題であり、国・地方の抜本的な役割分担、業務の見直しを含め日本の統治機構について次なる時代に向けて真剣に取り組まなくてはなりません。激動する国際社会において、日本が真に成熟した先進国の位置を占める為には、山積する各分野の課題に対し果敢に挑戦する政治を国民は求めており、ポリティシャンではなく真のスティツマンとしての政治家が、今ほど求められている時はないと深く自覚しております。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(79) 2014年06月
国民生活・経済を守るため、地球温暖化対策とエネルギー政策の一層の推進を
 地球の気候の変動は、人類の生存基盤や社会経済の存立基盤を揺るがす大きな脅威です。この脅威から、将来にわたり国民の生命、身体、財産の安全を確保していくため、環境と経済の両立を担保していくことは、政治に課せられた大きな課題です。
 ご案内のとおり、地球規模の環境問題として、地球温暖化の進行による気候変動が懸念されております。18世紀半ばの産業革命以来、石油や石炭などの化石燃料が大量に消費されるとともに、食糧の増産のための開墾等による森林の減少などにより、大気中の温室効果ガスの濃度は急激に増加し、大気の温室効果が強まりました。
 過去千年以上の歴史の中で、現在の気温は最も高い状態であり、特に20世紀後半以降の地球規模での気温上昇の原因は、人間の活動による二酸化炭素等の温室効果ガスの増加であることが、ほぼ確実であると言われています。
 気象観測データを見れば、百年当たり、世界の年平均気温は0・68℃、日本では1・15℃上昇していますが、特に1990年代以降、高温となる年が頻繁に現れており、このまま温室効果ガスが増加した場合には、今世紀末の世界の平均気温は、20世紀末と比べて1・1〜6・4℃の範囲内で上昇すると予測されています。
 このような人間の活動による気候変動に関し、科学的、技術的、社会科学的な見地から包括的評価を行うことを目的として、世界気象機関(WMO)と国際環境計画(UNEP)により「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が1988年に設立され、地球温暖化に対する国際的な取組に科学的根拠を提供してきました。
 折しも、本年3月、IPCCの総会が横浜市で開催され、「IPCC第5次評価報告書第2作業部会報告書」が公表されたところです。
 この報告書では、温暖化の影響が広範囲に観測されていることが示され、気候の変動性に対する生態系等の著しい脆弱性等を明らかにしています。また、将来、温暖化の進行が大きくなると、適応の限界を超える可能性がありますが、政治的、社会的、経済的、技術的システムの変革により、効果的な適応策を講じ、緩和策を促進することにより、強靱な社会の実現と持続可能な開発が促進されるものとしています。
 端的に申し上げれば、気候変動の影響が一定の水準を超えると対応できないため、温室効果ガスの排出を削減する方策が必要ということになりますが、我が国の国民と経済を守るためには、地球温暖化への対応とエネルギー政策の適切なバランスが求められているところであります。
 我が国はエネルギー資源に乏しいことから、エネルギーの安定的な確保は安全保障そのものですが、東日本大震災の結果、海外からの化石燃料への依存度が一層高まっていることから、安全保障上の脆弱性が明らかとなっています。加えて、化石燃料への依存の高まりは、エネルギーコストの上昇(貿易赤字の常態化)と温室効果ガスの排出量増大の原因ともなっており、我が国の経済や地球温暖化への取組に大きな影響を与えています。
 このような中、本年4月、政府は「新たなエネルギー基本計画」を閣議決定し、今後20年程度の中長期的なエネルギー需給構造を視野に入れ、取り組むべき政策課題と、長期的、総合的、計画的なエネルギー政策の方針を示したところです。
 この基本計画では、発電コストが低廉で継続的な稼働が可能なベースロード電源(原子力等)、比較的コストが安価で需要の動向に応じて調整可能なミドル電源(天然ガス等)、コストは高いものの需要の動向に応じた調整が容易なピーク電源(石油等)のエネルギーミックスが提示されているところであり、太陽光、風力発電などの再生可能エネルギーについては、これまでに示した水準(2030年には比率を約2割とする)を上回る導入を目指すこととされています。
 エネルギー政策に奇策は通用しないものであり、我が国にとって最適なエネルギー需給の方策を見出すことは、簡単な加減乗除の算術から算出できるものではなく、複雑な高次方程式により回答を導き出すように、詳細に状況を把握し、現実的な取組を実施することにより実現できるものと考えております。
 いずれにしても、中長期的には再生可能エネルギーの導入を加速していくことがトレンドでありますが、国に対しては、国民と経済を守るため、責任あるエネルギー政策を実行し、安定したエネルギー需給構造を確保するとともに、地球環境への配慮も求めてまいたいと考えております。
 一方、本県におきましては、平成23年、長野県省エネルギー・自然エネルギー推進本部を立ち上げ、さわやか信州省エネ大作戦等を展開し、県民生活や経済活動に支障を及ぼさない範囲で、県民総ぐるみによる節電・省エネルギー運動を推進してきました。
 また、しあわせ信州創造プランにおいて、環境・エネルギー自立地域創造プロジェクトを掲げ、県民の貴重な財産である自然環境や資源を守り、活用しながら、地球環境への負荷が少なく、水資源や食糧が安定的に確保される自立した地域とすることを目指し、1村1自然エネルギープロジェクトを推進するとともに、地域主導型自然エネルギー創出支援事業を実施し、地域の意欲的な事業主体の後押しを行っているところであります。
 さらに、本県の恵まれた自然環境、気象条件、資源を活用した再生可能エネルギー発電の取組は、官民問わず県内各地で推進されています。大規模太陽光発電所(メガソーラー)が、飯田市、佐久市などに次々と設置されており、木質バイオマス発電所も既に長野市内で運転されていますが、信州F・POWERプロジェクトとして、塩尻市に県内初となる木材の集中型加工施設を整備し、全国初の森林資源活用型バイオマス発電施設を建設する予定であります。
 冒頭でも述べましたように、地球規模の気候変動は、人類の生存基盤等を揺るがす大きな脅威となります。仮定となりますが、気候変動やそれによる経済的な打撃は人々に他の地域に移住することを迫ることとなり、移住先での紛争を招く結果になることも考えられます。
 英国の宰相、ウィンストン・チャーチルの語録に、「歴史から教訓を学ばぬ者は、過ちを繰り返して滅びる」というものがありますが、歴史を鑑みれば、気象変動を原因とする民族の移動により国が滅びた事例として、ゲルマン民族の大移動によるローマ帝国(西ローマ帝国)の滅亡が挙げられます。
 地球の気候は寒冷期と温暖期が周期的に繰り返されておりますが、紀元3世紀から5世紀にかけての寒冷化により、中国の北方や中央アジアの草原の砂漠化が進み、その地域に居住していた騎馬民族(フン族)がユーラシア大陸を西進し、バルト海沿岸に暮らしていたゲルマン民族を圧迫しました。そのため、ゲルマン民族がローマ帝国の領内に頻繁に侵入した結果、栄華を誇ったローマ帝国も疲弊し、紀元476年に滅亡することとなりました。
 この気象変動は自然現象によるものでありますが、人間の活動の結果として生じている現在・未来の地球温暖化に対応できなければ、世界に混乱が生ずるであろうという示唆を与えてくれるものと考えております。
 紛争の発生や継続は、国民に貧困をもたらし、災害などのアクシデントの発生に対して「強靱な社会の実現」が難しくなるものであり、決して許されるものではありません。
 我が国は、最先端の技術で世界の温暖化対策に貢献し、低炭素社会を実現していくという方針でありますが、今後とも切れ目なく地球温暖化対策を進め、国益に資するエネルギー政策を具現化することを期待するとともに、この実現のため、我々、政治家が行動していかなければならないとの決意も新たに、引き続き全力を傾注してまいる所存であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(78) 2014年05月
成熟した国家日本と長野県の進路
 本年に入り、国際情勢は新しい大きな課題に直面しております。とりわけ、グローバルリズムとナショナリズムの対立が顕在化し、昨今のクリミア・ウクライナ問題についての展望は開けず、本質的に極めて困難な情状にあります。約20年前、東西冷戦が終幕し自由主義陣営による新たな秩序が予感され、ある意味でアメリカの一極支配の構図が見えかかりましたが、結果的にはこの20年間は民族、宗教を背景として紛争が続出し、昨年オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官の役割を終える」旨の発言は世界の法と秩序に大きな衝撃を与えました。一方中国の世界第2位の経済大国としての存在感は、あらゆる分野に多くの影響を与え、その対応に各国とも明確な戦略が提示されておりません。
 そうした意味で現代社会を世界の無極化あるいは第2次冷戦と指摘する論者も多く、21世紀の今後は極めて不透明感の強い時代に突入したと言っても過言ではないかと思われます。
 先般のオバマ大統領が国賓として来日し、日米同盟の更なる強化を明言し、安全保障の視点では高く評価すべき訪日であったと思われます。国家の安全保障は、基本的には防衛・食料・エネルギーの3点に絞られますが、日本は主権国としていずれも自律性に弱く、今後の最大なるテーマに他なりません。そうした大状況を俯瞰しながらこれからの日本経済、地方経済の在り方について考察してみます。
 グローバル資本主義の負の課題が、我が国に限らず先進各国において、格差問題を核として急速に進み、新興国も同様の結果であります。グローバル資本主義は単に経済的側面だけでなく、社会の基本である民主主義にも影響を与えており、近代社会が資本主義と民主主義が両輪となって発展してきた歴史的経過を思えば、この点に対する正確な分析なくしては、日本における中央と地方の格差問題も本当の意味での解決策は聊か困難と思われます。
 本来、民主主義の経済側面からの真の目的は、健全なる労働分配率の実現であります。しかしながら1999年を境として企業の収益と勤労者の所得が分離傾向にあることは、各般のデータが示す通りであります。政治の最大の要諦は言うまでもなく、中産階級の拡大であり、政治の安定の基本であります。ウォールストリートにおける1%運動をはじめ、各国は新自由主義の流れの中で中産階級の没落を加速し、本質的危機の中にあると思われます。超資本主義とも言われる今の経済社会の環境に深く思いいたし、新しい時代における真に国民の為の経済社会はどうあるべきか、私たちは冷静に一度立ち止まり、深い考察をすべき状況の中にあります。
 近代資本主義として、いずれ新しいモデルの造形が必然性を帯びてくる中、政治の果たす役割と責務はかつてない以上に重く受け止めなければなりません。急速な情報革命の今、政治・経済社会の現況に人々は大きな不安を抱いております。大きなパラダイムシフトを迎えた資本主義が、近代経済学の観点からどのような新しい進路を見出せるのか、まさに政治は歴史の分水嶺に立たされていると認識すべきと考えます。そのための政治体制や思想・哲学を含め、新しい方向性を提示する責任を自覚すべきと思われます。
 翻って日本経済は戦後50〜60年間に渡り、輸出振興によりジャパンアズナンバーワンと言われたごとく、多くの資産を堆積し世界のNo2までに成長してきました。従って現況の日本が成長から成熟のスパンに入り、人間に例えれば青年期から壮年期に移行したとも思え、経常収支、貿易収支ともに縮小していくのは、歴史を振り返れば多くの繁栄した国家の宿命ともいえると思えます。同時にNo1である米国が常に近年、経常収支の赤字を続けながらもイノベーションを軸に活力ある新たな経済成長戦略を維持している時、今後日本も経済の軸足が内需中心になっていくだろうと認識すべきと思われます。従って、問題の本質はデフレギャップであり、賃金も10数年ぶりに上昇になりながらも、企業の投資意欲のモチベーションが上がらないことであります。更に重要な視点は、日本の人口減少それに伴う生産年齢人口の予測以上の急激な減少に、どのような大局的な政策を打ち得るかということではないでしょうか。少子化の抑制、女性労働力の活用、高齢者の再雇用を含め、抜本的政治判断を早急にしなければなりません。
 雇用と経済成長は、政治の最大のテーマであり、その解決によってこそ社会保障制度が担保できることは言うまでもありません。日本の輸出が予測したよりも伸びず、海外経済の回復の遅い今、国内の原材料や食料の値上りが続く中で、消費は着実に上昇傾向にありますので、ここは長期的観点から日本経済再生について前向きな考えをすべきと考えますが、消費税による成長率が予測以上に落ち込んだ時は、一層の追加緩和をするべきと思います。日銀は7月〜9月にかけて回復起動に戻るという予測をしていますが、いずれにしても本年は新しい日本の経済社会のスタートラインであり、冷静に経済情勢の推移を注視すべきと思われます。
 ふるさと長野県は、「確かな暮らしが営まれる美しい信州」を基本目標とする新しい総合5ヶ年計画「しあわせ信州創造プラン」をスタートさせ、本年は2年目になります。その理念は『「貢献」と「自立」の経済構造への転換』、『豊かさが実感できる暮らしの実現』、『「人」と「知」の基盤づくり』の三本を柱としております。そうした方向性の中で長野県のGDPの4分の1を占める製造業は、背骨であり「健康・医療」をはじめ新しい次世代産業をイメージしながら、長野県産業イノベーション推進本部を中心として、医療・福祉機械・健康づくり産業・環境・エネルギー・農業の6次産業化、国際観光地づくり・ICT産業・航空宇宙産業・高齢者向け食品などを柱に、よりパワフルな経済成長戦略のもと、実効性あるものとする必要があります。
 県内のGDP8兆円の中、1人当たりの県民所得13位(270万円)を10位以内に、創造支援資金利用件数376件を2400件に、企業誘致件数34件を200件へという中期目標を実現することで、県民の皆様に対しても、実行力ある迫力に満ちた長野県政、長野県議会として認識頂けるものと思われます。
 新しい時代に対応すべく資本主義も豊かな発想力が求められている中で、歴史の危機とも言える今日の社会情勢を踏まえ、500年ぶりとも言われる現代社会の変革期の中で、政治は真に何をすべきかと問われております。私も政治家として、そのような本質的な観点に立ち、光輝く世界に誇れる真の長野県復権のため、強い危機認識を持って県議会を通して微力ながら県民の安心安全な社会の構築に向けて、今後とも全力で取り組む所存であります。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(77) 2014年04月
最近の経済情勢と今後の進路について 〜 生産性の高いサービス産業の創造 〜
  【はじめに】
○今年は、アベノミクスの成果が問われる重要な年である。
○アベノミクスの第1の矢(大胆な金融緩和)がめざすインフレ率2%に対する日銀や市場の動きにもなかなか目が離せない。しかし、私は、第2の矢(機動的な財政政策)に依存せず、「持続的な成長」が可能となる健全な状態を実現することが急務と考えている。そのためには、第3の矢の「新たな成長戦略」の成果を早期に出さなくてはない。
 なぜなら、財政出動には自ずと限界があるからだ。1000兆円を超える財政赤字は常に念頭に置くべきものと考える。
 よって、第2の矢(機動的な財政政策)の効果が効いているうちに、成長戦略を確実なモノにし、日本経済を本当の「好循環」の軌道に乗せなくてはならない。

【当面は、賃金アップ】
○まず、注目したいのは、この春に「賃金」が上がるかどうかである。
 ご存知のとおり大胆な金融緩和と消費税増税によって、否応なしに物価が上昇するため、私たちの賃金が上がらなければ国内消費が細り、政府の考える「好循環」は到底不可能となるからだ。
○賃金は本来、経営者と労働者の話し合いの中で決められるモノである。しかし今回は「政労使会議」がつくられ、政府によって積極的に賃上げの環境づくりが行われてきた。
○そのため大手企業を中心に、賃金(ベア、一時金含む)アップが最近の新聞を賑わしている。しかし残念ながら、県内中小企業まではその影響がなかなか届かないのが現状である。折角動き始めた「好循環」を次のステップに進めるためには、「賃上げ」は必要なものである。まずは早期にくま無く、アベノミクスの効果が広く日本全土、県内各所に届くよう関係者のご理解とご努力に期待すると同時に、県議会においてもその実現のための活発な論議を進めたい。

【新しい産業づくりのイノベーション、その基本は、人づくり】
○今後、本当の成長を軌道に乗せる為には、賃金アップも円安等による内部留保などに頼った一時的なものでなく、「労働生産性」(就業者1人あたりの付加価値)の上昇による継続的な賃金アップでなくてはならない。私は中長期的には、今までになかった新しい産業を創り、多少高くてとも世界中の人々が是非買いたいと思う魅力ある商品やサービスを絶えず世の中に供給できる仕組みづくりが必要と考えている。日本のブランドの凋落が囁かれているが、今日ほど日本にイノベーションが求められている時代はない。
○資源のない日本は、今後も原材料を輸入し付加価値をつけて輸出していくしか、基本的には生きていく道はない。そして、そのためには常に新しい技術を創り出していくしかない。
○新興国の追い上げが厳しい昨今、技術大国と言われた日本も相当に厳しい競争になる。新しい技術の優位性が担保される期間も短くなってきている。ここは、正面からしっかり取り組む必要がある。
○ご存じの通り、技術の基本は人である。これまでも、日本人はその英知により、幾多の困難な状況を乗り越えてきた。技術に対する日本人の「こだわり」が、日本の技術の信頼性を支えているといっても過言ではない。よって今後も、日本においては「人づくり」が大きなポイントとなる。
○しかし昨今の状況を見ると、日本はあまりにも危機意識が希薄で真に新しい時代に対する挑戦力が衰微している。「人づくり」については、長野県もその重要性を認識し、県の新しい5か年計画「しあわせ信州創造プラン」では、至るところに「人づくり」の重要性が述べられており、このプランの基本となっている。今後の長野県の人づくりに対する施策展開に注目していきたい。

【労働生産性の高い、サービス業の創造】
○他方、少子高齢化の進展により人口減少が進む中においては、労働生産性の向上が大きな課題となる。特に、サービス産業(非製造業)の労働生産性が製造業の労働生産性に比べて、かなり低いことが大きな問題と認識している。
 事実、日本のサービス業の労働生産性は米国の約6割ともいわれている。またサービス業界では、小規模事業所が多く経営革新も進まないという状況にある。そのような中で、この20年間のデフレ下、値引きを強いられてきた。
○さらに、サービス産業で働く従業員は全従業員の約7割を占めるようになったが、残念ながらその平均賃金は製造業よりもかなり低く押さえられている。
○私は、長野県の得意とする製造業にも大きな期待を持っているが、多くの雇用を支えるサービス業の重要性も同等に考えている。そして、サービス業の労働生産性や賃金を製造業と肩を並べるような状態にする有効な施策の推進が肝要と考える。
○県でも新年度、雇用において大きな役割を担うサービス産業の振興を図るため、産業政策課に「サービス産業振興室」を設置しサービス産業振興についての基本戦略の策定を予定している。
 多様なサービス業や労働形態がある中で、サービス産業の基本的な戦略を創るということは極めて難しい試みと思うが、是非とも実効性のあるものを創ってもらいたい。

【ポイントは、「新陳代謝」】
○さて、昨年6月に発表された「日本再興戦略」では、収益率の低い成熟事業から収益率の高い成長産業に転換したり、積極的に事業を再編成することが求められている。また、経済産業研究所のレポートにおいても「新陳代謝が生産性の変化に大きな影響を与える」と報告し、大胆な新陳代謝が産業の活力と雇用機会を増やすと報告している。特に、生産性の低いといわれているサービス業においては、「新陳代謝」がその復活のポイントとなるのではないだろか。
○日本の製造業の雇用は、IT化や海外展開により、1000万人を割り、非製造業(サービス業等)の雇用の方が大きい状態となっている。しかし労働生産性においては、非製造業はまだまだの状態である。よってこれからは、労働生産性の高いサービス産業(非製造業)の育成が急務である。
○政府は、規制緩和等による「新陳代謝」を突破口にした「新たな成長戦略」を模索しているが、相当の困難も予想されている。しかし、これは、実現しなければならない改革でもある。

【今後の主なる対応策】
○1つは、「転業・廃業の支援」である。
 これまで創業や起業に関する支援施策は多かったが、転業・廃業に対する支援は少なかった。私的整理の指針づくりの中で、短期間による会社精算方法が検討されたのが記憶にあるのみだ。場合によっては廃業を余儀なくされた経営者やその家族がソフトランディングすることも必要なことと考える。
○実際の現場では、中小企業の不良債権処理に踏み切れるかどうかの地元金融機関の判断が、その企業の将来を左右している。先日金融庁は、従来の「返済猶予」から「抜本的な企業再生」に大きく舵を切り、集中的に転廃業(新陳代謝)が進むよう検討を始めている。
○2つ目は、転業先の成長分野をつくるための「規制改革」である。
 新陳代謝を促すにあたり、規制改革は2つの意味で重要である。1つは新たな成長領域を創るため、もう1つは規制改革で生産性を上げるためである。
○例えば高齢化に伴って、介護分野での需要や雇用が確実に増えることが予想されているが、その生産性は必ずしも高いとは言えない状態にある。賃金もまた低い状態だ。雇用の需要があるのに雇用の条件が悪いままというジレンマに規制改革の余地があると考える。
○3つ目は働く人が、そのスキルを磨き(労働生産性を高め)、失業することなく成長産業に転職できる労働市場を創ることである。
○現在の労働市場は、さまざまなサービス業や多様な勤務実体に、十分に対応できていないのではないかという一抹の不安を常々感じていた。
○先ほども述べたように、サービス業の雇用は年々増えている。しかし、サービス産業には中小企業が多く、その雇用が不安定な状況にある。なかには、組合がなかったり解雇時にもきちっとした対応がとれない場合も少なくないといわれている。
○失業なき労働移動は難しい課題ではあるが、イギリスの職業能力評価制度(NVQ)などを参考に労働者の技能を高めるとともに、その技能を適性に評価し、新しい採用に繋げるような仕組みづくりが求められている。
以上述べた議論の多くは、容易に解決できるものではないが、サービス業の労働生産性の向上という課題には様々な障壁を乗り越え、その解決には時間もかかると思われるが、いずれにしてもいつかは着手しなければならないことと考える。
 人口減少傾向の続く中で、サービス業を担う多くの人々の生活の安全・安心を確保するためにも、勇気を持って取り組むべきものと考える。
長野県議会議員
自由民主党県議団
団長 本郷 一彦

コラム(76) 2014年03月
国土強靭化を目指し、国家一丸となっての取り組みを
2月14日から東日本一帯に降り続いた大雪は、県下各地で大きな被害をもたらしました。県内で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。私も長野県議会議長として登庁し、県災害対策本部を激励するとともに情報収集に努め、改めて危機管理の重要性を認識するとともに、議長としての責任の重大さに身の引き締まる思いであります。
 我が国にとって未曽有の国難となった「東日本大震災」、さらにはその翌日に発生した「長野県北部地震」から3年が経とうとしています。極めて広範な被災地、甚大な被害に加え、地震、津波、そして原子力発電所事故と、人類史上類のない複合的大災害からの復興を目指し、「東日本大震災復興基本法」のもと、迅速な復興と日本の再生が政府主導により行われており、未だ道半ばとはいいながら、社会基盤の復旧、港湾施設の再建、大規模な防波堤の新設など、被災地復興への道筋が見えてきました。
 歴史を振り返れば、大正12年に発生した関東大震災の際には、現在でも東京の都市骨格、そして公園や公共施設の整備の骨格として生き続けている「帝都復興計画」が、帝都復興院総裁、後藤新平自らの手によって立案されました。このような大災害の時にこそ、政治的指導者の力量が問われるのであります。
 今回の大震災は、我が国の国家建設の根本を問い直す契機となりました。国は国土強靭化に向けた取り組みを加速させるため、昨年12月、「南海トラフ地震対策特別措置法」、「首都直下地震対策特別措置法」とともに、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法」を制定し、内閣総理大臣を本部長とする国土強靭化推進本部が、大規模自然災害などに対する社会資本の脆弱性評価を行った上で「国土強靭化基本計画」を策定し、省庁の縦割りを解消し、地方自治体や民間などと連携して強靭な国土づくりに取り組むこととなりました。この法律は、基本理念として大規模災害時の「人命保護」、「社会機能維持」、「財産及び公共施設の被害の最小化」、「迅速な復旧復興」を掲げ、国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにした上で、全体の基本計画に加えて、首都圏や近畿圏、中部圏ごとの「広域地方国土強靭化計画」と都道府県、市町村レベルでの計画を策定することとしています。同月には国土強靱化政策大綱が示され、国土強靭化推進本部会議の冒頭、安倍総理は、「東日本大震災の発生と、今後首都直下地震や南海トラフ地震の発生が懸念される中、「国土強靱化」はまさに我が国として「焦眉の急」であり、「国家百年の大計」の国づくりとして取り組んでいく必要がある」と述べられており、内閣一丸となって取り組んでいく決意がうかがえます。
 災害に強いまちづくりは、長期的視野に立った一貫した理念と科学的な都市工学により生み出されます。また、いかに都市設計が強固でも、公共建築物や住宅といった建築構造物が脆弱では都市機能の効果は発揮できません。事実、平成7年1月の阪神・淡路大震災では、実に亡くなられた方の約80%は木造家屋の倒壊によるものであり、これを教訓として、ホテルや病院・老人ホームなど避難先となりうる建築物の耐震診断とその結果公表が義務化され、建築物の耐震強化により、安全で安心して暮らせる国土実現に大きく前進したところであります。
 国家としての災害への備えは、公共事業による道路、河川、橋梁、鉄道といった社会基盤の構築であります。これら社会基盤は、インフラストラクチャーとも呼ばれ、下部ないし基盤を意味する「infra」と、構造、建造などを意味する「structura」というラテン語からきており、国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設を指します。このインフラストラクチャーが整備されてこそ、都市は機能を宿したものとなりうるのです。
 インフラストラクチャーの語源ともなった古代ローマにおいては、インフラストラクチャーとは「人間が人間らしい生活をおくるためには必要な大事業」とされており、「安全保障」「食糧の確保」と共にローマ皇帝の三大責務と考えられていたものであります。そのような考えのもと、都市や工場地に水を供給するために数多くの水道が建設され、さらには属州にさえも張り巡らされたローマ街道による迅速な物流によって、国民への食糧の確保、公共浴場の廉価な提供による公衆衛生の実現に成功したのであります。インフラストラクチャーの効果的な整備によって、200年以上にわたる「パクス・ロマーナ」は実現したのです。現代文明は古代ローマの遺産によって成り立っているのであり、マンチェスター、ウィーン、ケルンのような現在の大都市は、全て古代ローマ軍の基地がその源となっています。
 日本においても、甲斐国守護の武田氏は、古来より大雨による水害が発生する地域であった甲府盆地において20年以上にわたる築堤工事を行い、新田を開発し、安定した生産力の確保に成功しました。現在この堤防は「信玄堤」と呼ばれ、公園としても整備されており、観光資源ともなっております。
 我が信州においても、16本の支持柱を基礎工事として地盤に埋め込んだ国宝松本城を中心として松本の都市計画は行われており、信州における最大の商業都市として、古くから「信府」と呼ばれてきました。現在も松本城は「美しい日本の歴史的風土100選」に選ばれるなど信州のシンボルとして確固とした地位を築いております。
 さらに松本市には、激しい風化により「大化け」と呼ばれる急峻・脆弱な地質の谷地を明治18年から大正7年までの30年間にわたって工事を行い、現在日本で最も美しい砂防施設と称賛されている国の重要文化財「牛伏川フランス式階段工」があります。水害による被害を防ぐことで、松本、さらには日本の近代化に貢献したこの砂防施設は、現在砂防の学習ゾーンにもなっており、「牛伏川いこいの広場」として、地域の住民のみならず、児童の社会学習の場としても大いに活用されています。明治20年に麻績村に造られた芦澤石積堰堤などとともに、県の防災遺産として、これからの国づくりを考えるうえでも大きな存在となっています。
 信州には、糸魚川−静岡構造線や中央構造線などの断層帯に加え、多くの活断層、急峻で脆弱な地形や地質、活動中の火山などがあり、東海地震や南海トラフ地震などによる被害も懸念されており、自然災害による被害を最小限に抑えるための災害に強い安全な県土の形成に取り組む必要があります。そのために、県民の防災意識の高揚や地震や火災に強い建築物の普及、情報伝達体制の確立、住民に身近な社会インフラの長寿命化対策、大規模地震や頻発する風水害・土砂災害に対する事前防災・減災対策などを一層積極的に進めていかなくてはなりません。
 インフラストラクチャーの整備を主導し、それを推進することは、公職にあるものの責務であります。明治の元勲大久保利通は、内務卿として明治11年、「野蒜港(宮城県)の建設」、「新潟港の改修」、「清水峠(新潟県)の道路新設」、「那珂港(茨城県)の水運整備」、「阿武隈川と阿賀野川(福島県)の改修」、「貞山運河(宮城県)の整備」、「印旛放水路(千葉県)の開設」を行う「土木7大プロジェクト」を立案し、実行しました。これは近代日本にとって最も初期の総合的な国土開発計画といわれています。まさに国土強靭化は、狭い意味での防災の範囲を超えて、国土政策、産業政策も含めた、いわば新たな総合的国土構想でなければなりません。今後策定される県の強靭化計画においても、長期的な視野のもと、百年、二百年の計として県土づくりを総合的に進めていく覚悟が必要であります。私も県議会議長としての任務を全うし、長野県における県土強靭化の基盤づくりを、全力をもって進めていく決意であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(75) 2014年02月
我が国の未来を見据えた教育再生の推進を
 我が国は、数百年規模での大きな転換期の真っただ中にあります。先進各国は成熟社会に入り新たな課題に直面しておりますが、変化する時代の潮流は、将来を担う子どもたちを取り巻く環境にも影響をもたらし、教育のあり方についても再構築が求められてきております。
 「少にして学ばざれば、長じて無能なり」という孔子の言葉もありますが、「人づくり」という観点で考えるとき、子ども達に対する教育は国家の最重要課題と言えます。
 歴史的に一国の発展過程を眺めると、教育の普及とともに教育の目標・内容、質の充実は、その国の社会・経済の発展と極めて密接な関係にあります。具体例としては、古くは古代ギリシャの教育が挙げられます。よく対比されるのが、スパルタとアテネであります。
 スパルタは、そこを征服した少数の移住民が、大多数の先住民を農業奴隷とする軍事国家で、一説では2万5千人の市民階級が22万人の被征服民を隷属させたと言われております。国内の統治のため軍国主義がとられ、それを支えるため採用されたのが忍耐・服従・計略といった集団教育、いわゆる「スパルタ教育」でありました。
 一方アテネは、海外貿易を基盤とする商業で栄えた国家で、「美にして善なる人」が教育の理想像とされました。ホメロスの叙事詩に出てくるような英雄をモデルとし、体育や音楽に重点が置かれるとともに、自分の考えを説得力を持って伝える「弁論術」も重視されました。
 翻って我が国の教育史を見ますと、近代的な教育制度の導入が本格的に開始されたのは明治以降でありました。近代教育は、欧米先進国の教育を模範として成立、発達しました。その意味で、我が国近世の教育と明らかに区別され、そこに教育の一大転換があったことは間違いありません。
 ただし、江戸時代の教育内容は、それまでの我が国の長い歴史と文化により形成された、欧米諸国に引けを取らない高い水準のものでありました。
 特に幕末期においては、幕府の昌平坂学問所、大久保利通や西郷隆盛も学んだ薩摩藩の造士館、吉田松陰も教鞭をとった長州藩の明倫館、信州では松代藩の文武学校などの多くの教育機関が設立され、民間の私塾や寺子屋が広く普及しておりました。我が国が明治以降、短期間に高度な近代社会を実現させることができたのは、幕末における高い教育水準があったからに他なりません。
 我が国が開国とともに独立国家として生存を遂げるためにも、中央政府にとって国家的な教育制度の導入が喫緊の課題だったわけであります。このため、維新後すぐに西欧諸国の学校制度についての調査が開始され、明治4年には中央省庁として文部省が設置されました。そして翌明治5年には、日本で最初の体系的な教育法制である「学制」の公布に至ります。
 当時は教育によって欧米先進国に比肩しうる国力を培養することを目指し、国民に教育を施して国民全体の資質向上を図ったことで、国民所得は飛躍的に増加し、国家としても大きな発展につながりました。
 その後、大正・戦中期を経て、戦後は教育が日本の民主化を推進する役割を演じ、平和国家の構成者の形成がその目標とされました。
 高度経済成長期には、家計の安定、学歴主義の浸透などにより、国民の進学需要は増大した一方、経済の一層の発展を見越して、産業界から教育に対して技術者の育成、理科・職業教育の振興等の要求も出されていきます。
 教育は、我が国の経済的、社会的、文化的発展の推進力であっただけでなく、産業界、そして日本社会が求める資質を備えた人材、言い換えれば、基礎的な知識と技能、勤勉さ、忍耐力、協働作業能力を身につけた人材を数多く送り出す礎であったのです。
 近年、人口減少や少子化、価値観の多様化に加え、あらゆる分野でグローバル化が進行し、文化や価値観が国境を越えて流動化するとともに、海外との競争も一層激化しております。
 国際社会において我が国が引き続き名誉ある地位を占めていくためには、日本人としての誇りを持ち、自立して力強く生きる上で必要な「人間力」、即ち、知識・技能のみならず、社会や対人との関係を構築する力、そしてそれらを発揮するために自らを律する力を総合したインテリジェンスを育成する教育がますます重要となってきております。
 こうした中、第1次安倍内閣では、平成18年、約60年ぶりに教育基本法を改正し、教育の目標として、道徳心を培うこと、伝統と文化を尊重すること、愛国心を養うことなどが示されました。また、第2次安倍内閣でも、教育を「危機」に位置付け、「人づくりは、国づくり」であるとして、21世紀の日本にふさわしい教育体制の構築と、教育再生に現在取り組んでおります。
 長野県に目を移すと、明治初期に私塾・寺子屋の数が2千6百余あったとされ、また、学制発布前に他に先駆けて民間出資の郷学校が設立されたことなどが示す文化的土壌によって育まれた県民が、全国的にも早い時期から教育的自覚を持ってきた「教育県」としての伝統があります。また現在でも、全国1位の公民館数と利用者数、人口当たり図書館数が全国2位であることなどが示すように、県民は高い学習意欲を持っています。加えて美術館・博物館数は全国2位であり、我が地元松本市で開催されているサイトウ・キネン・フェスティバルなど新たな文化の創造も活発であります。
 このような中、県では昨年「一人ひとりの学びが生きる教育立県“信州”の創造」を基本理念とする「第2次長野県教育振興基本計画」を策定いたしました。人間力を養う教育など、概ね20年後を見据えた長期的な方向を示すとともに、県民総ぐるみで教育振興を図り、「信州教育」の伝統を次世代に受け継いでいくため、本県ならではの具体的な姿を「信州教育スタンダード」として掲げ、重点的な施策として、30人規模学級編制やICTを活用した学力育成、キャリア教育の推進等の事業に取り組んでおります。
 学力育成の面では、全国的に実施されている「全国学力・学習状況調査」の25年度の本県の結果を見ますと、小学校ではこれまでの学力向上の取組の成果がみえてきた一方、中学校では、論理的な思考力や表現力などの面で課題があり、特に数学では全国平均と大きな開きが見られました。それらを解決するため、結果を詳細に分析し、先進県の取組を研究することで、学力向上策を再構築していく予定であり、学校の設置者である市町村教育委員会と更なる連携を深める中で、確かな学力の定着を図っていくこととしております。
 全国的にも課題であるいじめ対策では、昨年9月にいじめ防止対策推進法が施行され、10月には国の基本方針が策定されました。これらを受け、本県の実情も踏まえながら、3月までに県の基本方針を策定するとともに、いわゆるネットいじめに対するネットパトロール事業や、児童生徒の悩みに対応するスクールカウンセラーの配置事業などを実施し、いじめの未然防止や早期発見・対応に取り組んでおります。
 今後もグローバル化や価値観の多様化が一層進展すると見込まれる中、地域を担い世界に貢献できる人材の育成のため、「人間力」を育む教育の重要性が増してきています。
 教育の再生なくして、地方の再生もあり得ません。
 全国から「教育県」という評価を得てきた伝統と、本県の強みを今一度見つめ直し、その蓄積された英知と県民の創造力を発揮して、全国に誇る「信州教育」の再生を図っていくことが必要であります。
 『敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花』
 これは、新渡戸稲造の「武士道」の中でも紹介された本居宣長の和歌で、日本人固有の心情をよく表したものであります。我が国には脈々と続く伝統と文化があります。
 それらを基盤とし、子どもたちの未来、ひいては我が国の未来のため、経済再生と並ぶ最重要課題として、21世紀の日本にふさわしい骨太の教育体制を構築し、教育の再生を強力に進めていくことが求められております。
 私も未来への責務を深く自覚し、愛する長野県の教育再生に全力を傾注していく所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

コラム(74) 2014年01月
未来に対する責任と勇気ある決断を
皆様には、希望に満ちた新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
 また、平素より本県議会運営に格別のご理解、ご協力を賜り心から感謝申し上げます。
 さて、現代の国際社会は、近年の経済のグローバル化や情報通信技術の著しい進歩により、冷戦後の優位を保ってきた米国の影響力低下に加え、新興国の台頭や国家を超えた企業体による国際的な巨大資本の移動によって、その枠組みは一層不透明なものとなりつつあります。
 このような地球規模での変動の中、これまで世界経済の中心であった米国や欧州の優位が相対的に低下する一方で、アジア太平洋地域が目覚ましい経済成長を遂げ、今や世界の成長センターとなっています。これらの地域では、2012年に約6億7,000万人であった「中間層」(1家計当たり年間可処分所得が5,000ドル超35,000ドル以下の層)は、2020 年には約20億人に達すると予測されており、この地域の経済的重要性は、今後も増大し続けることが予想されています。
 特に、21世紀に入り急速に国力を増大させた中国は、この中間層の約半分に当たる9.7 億人を抱えると予測されるなど成長が著しいものがありますが、その一方で、70年代以降の人口抑制策によりもたらされた人口構造の変化により、急激な高齢化社会へ突入するなど経済的・社会的な課題に直面しており、その他のアジア諸国においても、北朝鮮情勢や領有権を巡る諸問題等、依然として国家間の安全保障上の脅威などの不安定要因が存在するなど、国際社会を取り巻く情勢はさらに混迷の度を深めています。
 このような中、我が国は、バブル崩壊後のデフレの下、不況が長期化し、加えて急速な少子高齢化の進行等により社会全体が停滞し、失われた20年といわれておりましたが、安倍政権の経済政策(アベノミクス)により、将来の成長への期待が高まり、昨年来、各種経済指標に改善の兆しがうかがえます。今年はそれを確実なものとし新たな飛躍の出発点とできるかどうかが問われる年となります。
 さらに、東京での開催が決定した2020年夏季オリンピック・パラリンピックは、多くの国民に夢と希望を与えるとともに、消費者・企業マインドの改善を通じ、消費・投資が拡大することによるデフレ脱却と経済活性化への契機であり、ある意味でアベノミクス「第4の矢」となることが期待されます。
 この機を逃さず、企業収益を拡大し、これにより給与の上昇、雇用の拡大を起こし、それが消費の拡大、投資の拡大へつながるといった好循環を生じさせ、経済を成長軌道に乗せなければなりません。
 そして、経済成長を持続させていくためには、技術革新をはじめとして、新しい市場の開拓といった、経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターのいうところの「新結合=イノベーション」を起こすことが必要とされています。これらを実現するためには、成長力を底上げする成長戦略「日本再興戦略」の実行を加速し、強力に推進することが極めて重要であります。
 本県においては、昨年策定した新しい総合5か年計画「しあわせ信州創造プラン」の2年目として、政策推進の基本方針である「『貢献』と『自立』の経済構造への転換」、「豊かさが実感できる暮らしの実現」、「『人』と『知』の基盤づくり」を具現化させるための総合的な施策を本格的に実施していく必要があります。
 特に、経済構造の転換のためには、県内企業の持つ高度な技術や健康長寿などの地域の強みや資源を活かし、健康・医療や次世代交通など今後成長が期待される産業分野への事業展開が促進されるよう、産官学連携による技術革新や規制改革への取組を加速させるとともに、人材の育成を図っていくことが期待されます。
 一方、旧開智学校や旧制松本高等学校の設立に見られるように、古くから、学問を尊び、学生を大切にする「学都」、国内屈指の3000m級の峰々が連なる北アルプスを擁して多くの登山者が訪れる「岳都」、サイトウ・キネン・フェスティバルが開催される「楽都」であり、これらを総称して「三がく都」と言われている、地元、松本地域の今年の課題を展望いたします。
 まず、商業に関しては、片倉工業(株)社有地へのイオンモールの開発計画について、地域の歴史的背景を尊重し、景観特性への配慮がなされた、適正な規模で、松本中心市街地の活性化に寄与するものとなることが必要とされています。
 教育に関しては、現在検討が進められている新県立大学について、県全体の将来にわたる高等教育の基盤充実とその安定的な持続の観点から、慎重な対応と適切な判断が求められております。
 社会資本整備に関しては、昨年12月、交通網を生かした地域活性化を図るため、諏訪・松本・大北地域の交通体系のあり方を考える「本州中央部広域交流圏(仮称)結節機能強化検討会議」が開催され、県、松本市をはじめとする7市、11の関係団体が一体となって、中央東線の高速化や新型車両導入による快適性向上、県営松本空港の利便性向上、中部縦貫道の整備促進、松本糸魚川連絡道路の整備等の早期実現に向け、スピード感をもって取り組むことが確認されました。
 また、長年の懸案であった、三才山・新和田トンネルの利用者負担軽減のため、県では、市町村による財源の一部負担の可能性も含め制度の検討を始めており、議会としても、地元市町村と連携し早期実現を図るよう要請していきます。
 国道158号は、大型車のすれ違いが困難となっている奈川渡ダム周辺の2.2kmの道路改良について、早期工事着手に向けた調査・設計が進められています。
 松本市内の中心部を通過する国道19号は、慢性的な交通混雑の緩和と交通安全確保のため行われている拡幅事業について、全体延長の1.6kmのうち0.4kmの平成27年度の供用が見込まれます。
 国道143号は、中信地区と東信地区を結ぶ主要幹線道路であり、未改良区間11kmのうち、平成23年度から着工している四賀地区の会吉工区1.3kmについて、今年度、会田川の付替工事が実施されています。
 県道大野田梓橋停車場線は、土砂崩落による度重なる通行止めのため、周辺住民の生活や観光シーズンの交通に支障をきたしており、崩落個所の落石防止対策を実施してきていますが、県において抜本的な対策が検討されています。
 観光に関しては、上高地において、梓川の河床上昇対策として堆積土砂の除去を継続して実施することが求められております。また、増加する登山者の安全で快適な登山のために、登山道の維持管理を松本市と関係者が協力して行っていきます。
 また、かつてブリ街道によって野麦峠を境に飛騨高山と結ばれ、峠を越えて工女たちが往来した、歴史ある奈川地区については、山間地の寒冷な気候に適したそばの栽培や、「とうじそば」をはじめとした古くから伝わる食、温泉、さらに大自然を生かしたアウトドアを活かした観光振興が期待されます。
 地域の活性化なくして日本経済の再生はありません。日本再興のためのアクションを、地元・松本地域から興そうではありませんか。
 かつて、近代社会科学の創始者であるマックス・ウェーバーは、政治家の重要な資質として「情熱」・「責任感」・「判断力」の三つを挙げ、政治家は、自らの選択に対するいかなる結果に対しても「責任」を負わなければならないとし、政治とは、「情熱」と「判断力」の二つを同時に用い、堅い板に力をこめて徐々に穴をくりぬいていく作業であると述べています。
 社会が成熟し、それゆえの停滞感や閉塞感が漂う一方で、将来への飛躍の兆しも感じられる混沌としたこの時代において、今まさに政治家に求められているものは、マックス・ウェーバーが言うところの、情熱と高い志を持ってあるべき社会の理念と未来への確かな方針を示すとともに、それを実現するため、勇気と責任を持った決断をすることであります。
 年頭に当たり、地方自治制度における二元代表制の一翼を担う議会を代表する立場を改めて深く認識し、県政の発展と県民福祉の向上のため、本年も全身全霊をささげる所存であります。
長野県議会
議長 本郷 一彦

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